11.『禊の森』攻略③
頂上にある神社を目指して、石段を登る。
MP節約の為出来るだけ魔術の無駄撃ちは控え、可能な限り近接攻撃で対応。
…やってて気付いたが、【ケガレ】は剣の攻撃なら一撃で倒せた。
これは魔術が弱いのか…いや、俺が脳筋ステータスだからだろうな。
一撃とはいえ、接近戦になればそれだけ敵の攻撃を受ける危険は増すワケで。
攻撃モーションを見てからのバックステップで十分に避け切れるのだが、それなりに集中が必要であり精神力も消耗していく。
もう少し…もう少しの我慢だ俺ぇ…。
あとちょっとで鳥居が見える…そこまでの辛抱だ…!
道中、レア枠なのか槍持ちの【ケガレ】が出現、速攻で倒しドロップを回収、装備。
攻撃力4の【青銅の槍】…そのまんまなネーミングではあったが、リーチが長く大変重宝した。
そしてとうとう──
「…見えた!!」
画面上端に映る黒い鳥居を見た俺は、全速力で石段を駆け上る!
うおぉぉぉぉっ!!急げ急げぇぇぇっ!!
鳥居からボコボコと湧き出し始めた【ケガレ】達を目掛けて急接近し、問答無用で【フレアブレス】を叩き込んだ!
お前等まとめて火葬してやる、燃え尽きろ骨共っ…!!
スワイプして…三秒、おかわりの【フレアブレス】をタップし、またスワイプ…!
うわぁ…【ケガレ】共がガンガン成仏していく。
消滅エフェクトがキラキラ散って綺麗だなぁ。
…いや、見とれてる場合じゃ無かった!急げ急げっ!!
俺は三発目の【フレアブレス】をばら撒きながら、頭からダイブする様に黒い鳥居へと飛び込んだ。
「イテテ…ど、どうだ!?」
石段側にスマホを向けると、鳥居を境に紫がかったオーロラの様なヴェールが波打ち、外側に居る【ケガレ】達は恨めしそうにこちらを見ているだけ。
どうやら外界とは完全に遮断されているようだ。
…ふぅ、とりあえずはこれで一安し──
「ひっ…!?」
胸を撫で下ろし、何気なくスマホの画面を見た俺は…思わず悲鳴を上げてしまった。
そこに映っていたのは、お世辞にも綺麗とは言えない神社の本殿。
…その開け放たれた格子扉の奥から、二メートルはある巨大な眼球がこちらを睨みつけていた。
…うっわ、怖っ…!!
ただでさえデカくて不気味だってのに、何が気に入らないのか心の底から忌々し気にこっちを睨みつけてやがる…。
…スマホ越しの映像じゃ無かったら、ガチの心霊現象だな。
辛うじて、目玉の上に表示されているモンスターネーム…【ヤソマガツヒ】の文字が、「アレはゲームなんだ」と俺を少し安心させてくれている。
アハハ、凄ぇな…なんて臨場感だよ。
ゲームだと分かっていても、悪寒が半端無ぇ…!
…マジで下手なホラーゲームなんか目じゃないな…いや、目なんだけど。
『Dungeon Boss【ヤソマガツヒ】と接敵しました。戦闘を開始します。』
…なんか始まった!!
警戒していると神社の中の大目玉…【ヤソマガツヒ】がスッと姿を消す。
そして入れ替わるように姿を現したのは──
見上げるような巨大な大蛇…では無く、巨大な腕。
それが開け放たれた扉からニュルニュルッと伸びてきて、大きくのけ反り…あ、マズい。
ドンッ!!ドンッ!!ドンッ!!
隕石の様な強烈な三連撃が石畳を叩き割る!
…と言っても、それはもちろんゲームの中の話。
現実の世界では、寂れた境内でスマホを構えたオッサンが一人大騒ぎしてるだけなんだが。
しかし危なかった…直前に気付いて離れられたからセーフだったけど、アレは直撃したら不味いヤツだ。
スマホに映し出された境内は、石畳が大きく陥没し蜘蛛の巣状の亀裂が境内中に走っている。
…ひぇぇぇ~、あんなのまともに直撃してたら…。
今も巨大な腕は、何かを探す様に割れた石畳を弄っている。
…いや、何かじゃ無いな。
俺を探してるんだ、アイツは。
何にせよ今が攻撃のチャンス…小手調べに【フレアアロー】を巨腕に打ち込む。
燃え盛る炎の矢が腕に命中…が、炎上する事も無く…こりゃあダメージ入って無いな。
腕はしばらく境内を弄っていたが、唐突に元来た道…本殿の扉へと吸い込まれる様に戻って行く。
そして…あの目玉が再び現れた。
…成程、全て理解した。
コイツ、ギミック式のボスだな?
巨大な瞳が侵入者の位置を捕え、巨腕がそれを攻撃する。
アイツ自身は本殿内から出られない…恐らく封印されているみたいな設定か?
なのであの扉からしか外部に干渉出来ず、索敵と攻撃を分けて行わざるを得ない。
…っとまぁ、全部俺の想像だけど、当たらずとも遠からずってトコだろ。
俺みたいな古のゲーマーなら、この手のギミックは慣れたモンだ。
…となれば、おのずと弱点も想像がつくわな。
全速力で本殿へと駆け寄る俺へ、【ヤソマガツヒ】から邪魔する様に【ケガレ】が数体放たれる。
これも「あるある」だな。…むしろコレで弱点に確信を得たぜ。
ええい邪魔だ!【青銅の槍】の錆となれ!
一撃の元に【ケガレ】を討ち、目玉へと駆け寄った俺は睨みつける瞳へと【青銅の槍】を突き入れた!
『亞怨っ…!亞怨っ…!!』
【ヤソマガツヒ】のくぐもった叫び声が境内に響き渡る。
…口有るんだな、お前。
目が引っ込み、慌てて飛び出した腕が発狂したように石畳を叩く!
コレもよくあるパターン…深追いしてたら殺られてたな。
…しかし予想通り、弱点は目か。
となると、コレは…うん、たぶんそうだな。
…攻略パターン入ったわ。
『亞……怨……亞……』
巨大で攻撃力の高い序盤ボスは、攻撃パターンに乏しい。
これもゲームではよくある事だ。
目が開けば突き、腕が出れば距離を取る。
それを何度か繰り返すうちに、ヤツの動きは目に見えて鈍くなっていった。
俺は弱々しく叫び声を上げる【ヤソマガツヒ】に、とどめの一撃を突き入れた。
「…いやぁ楽しかったぜ、ありがとな!」
『Dungeon Boss【ヤソマガツヒ】を討伐致しました。』
『解き放たれた強大な神威をEXスキルとして再構築します。』




