禁煙外来
タバコが健康いいとされている現在医師のもとにはタバコが吸えない人が患者として訪れる。
タバコが健康いいとされている現在医師のもとにはタバコが吸えない人が患者として訪れる。
医師は煙草を吹かしながらながら患者に尋ねる。
「初診療の方ですね。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
「では、あなたはなぜ煙草を吸えないのか教えてください」
「はい。私は元々喉が弱く少しでも吸うと咳き込んでしまうし、目も痛くなります。それに匂いもあまり好きではありません、両親も煙草を吸う人間ではなくあまり煙草とは縁のない家庭環境でしたから」
医師の顔が険しくなった。
「それはいけませんな、昔はいざ知らず今は煙草が体に良いものであると国が保証しています。それに煙草を吸う人間には保証金も出ますし、就職、昇進にももちろん有利になります。煙草を吸う事は国民の義務とさえ言われています…いや、失礼しました。ご両親は今存命で?」
「ええ、今はまだ生きています。未だ頑なに吸おうとはしませんけれど」
「ふぅむ。しかし、あなたは賢いですな。そのようなご両親と一緒であるにもかかわらず自ら進んで喫煙外来に訪れているのですから。分かりました、さっそく今日から治療を始めましょう」
それからその患者の喫煙治療が始まった。体を検査し、合う煙草を選別し、実際に吸う。合わなければ別の煙草を試し、また吸う。吸っているうちに初めは煙たくて仕方がなかった患者も次第に慣れていき吸えるようになっていった。治療を始めてから一年と少しが経った。
「ふむ、問題ありませんな。来たころとは比べようもない健康体です」
「有難うございます先生。これで私も立派な喫煙者になることが出来ました、これも先生のおかげです」
「いえ、私は少し手伝いをしたにすぎません。頑張ったのはあなたです。おめでとうございます」
そうして彼は喫煙外来の日々を終えた。煙草吸うようになって周りは彼を歓迎した。勤めていた会社では昇進そして海外栄転が決まり恋人もでき人生におけるより良い位置へ上っていった。
ある日の海外出張中のこと、彼はいつも通りに煙草に火を付け一服していた。しかし、周りには誰一人として吸っている人はいない。みな何かひそひそと噂話をしているようだ。すると地元の警察菅が寄ってきた。
「ここは禁煙区域内だ。煙草吸うのを今すぐにやめてくれないか」
「禁煙区域?」
「ああ、君たちの国ではどこでも吸えるかもしれないがここの国では煙草を吸っていけない場所があるのだ」
「ああ、何か引火したり火が近くにあると危ないものがあるのか。すまない、今消すよ」
「いやそうゆう事じゃない。単に煙草が健康を害するからここでは吸わないでほしいのだ」
彼は警察官の言った言葉の意味がよく分からなかったが、とりあえず火を消した。