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31 夏、開幕


「え?王族所有の避暑地に行くの?」

「そう、折角だからどうかなと思って」

季節は夏へと移り変わり、夏休みが始まろうとしていた。そんな時、先程のルークからの提案があった。

「それってニーナやミア達も呼べるのかしら?」

「ああ、もちろん友人達も呼べるよ。サイラスもディランも来る」

「それは楽しそうね!是非行きたいわ!」

私の回答にルークはよかった、と微笑んだ。おおう、今日も相変わらず美しい。

「ありがとうルーク!」

満面の笑みでお礼を言えば、ルークは一瞬「ンンッ」とかなんとか唸った。何故だろう。



夜になり自室でこれからの予定をたてている時、ふと気がついた。

(待って?このタイミングで避暑地って、なんか、引っ掛かりが…)

ニーナの来た年に王族の避暑地。友人達も来る。

──あ。

「ああっ!そうだわ!!夏イベ!!!!」

攻略対象達と夏を楽しむという、乙女ゲームによくあるアレがあるではないか。ということはつまり、だ。今回のこのイベントはそれということになる。

(悪役令嬢(わたし)…どうなったっけ…?そもそもいた?)

夏イベでの自分の立ち位置を思い出そうとして──しかし、肝心のそこが思い出せない。

(あれ?どうしてモヤがかかるのかしら……こんなことなかったのに)

釈然としないが、思い出せないものは仕方ない。私は夏休みもとい夏イベをクリアしなければならないのだ。

(最近恋だのなんだので忘れかけてたけど、そもそも私はこの学校生活で命が懸かっているのよ!生き抜くわよ、私!)

こうして、私の夏イベは幕を開けたのである。





「凄い!凄いわルーク!海が綺麗ね!それに景色も綺麗!」

「喜んでもらえてよかった」

かくして、王族所有の避暑地に着いた。メンバーはいつもの人達と、そして、

「……暑い。避暑地と言いながら…暑いぞ。謀ったな兄上。涼しいと、くっ、言っただろう」

「そうだったかなぁ?そもそも、来なくてもよかったんだよ、愚弟(ロイ)?」

「……愚弟と書いてロイと読んだな」

「ふふ、なんの事やら?」

「クララ様もご一緒できてよかったです!」

「ええ、そうね」

ロイとクララも来ていた。ロイに関しては、彼から「俺も行ってやる」という謎の上から目線での参加表明があったためこの場にいる。ルークがかなり渋ったものの、私にとって彼は友人なのでゴリ押した。

(正直なところ、この二人を同じ空間にいさせるのはちょっと考えてしまったけど…。でも婚約者なのだし…大丈夫…よね?)

というか、普通は大丈夫でなくてはいけないのだ。これを機にどうにか関係を改善して欲しいというのは、お節介が過ぎるだろうか。

「おい、リリアーナ。お前からも何か言ってやれ」

「…んっ!?」

不意にロイに話を振られて虚をつかれた。

「おや、残念だったね。リリアは俺の味方なんだからそんな事しないよ」

「ぎゃっ」

グイ、とルークに腰を引かれて変な声を上げてしまった。

「ちょ、やめてルーク!暑いわ!」

「……」

真夏に外で婚約者営業のためにくっつかないで欲しい。正直に文句を言えばルークは無言になるし、ロイは口を押さえているが肩が震えているので笑っている。

「リリアーナ様、あちらに行きましょう。涼しいですよ」

「本当、ニーナ!?今すぐ行くわ!」

後ろから来たニーナの一言に私は飛びついた。こんな所に長居する必要はないとばかりに。

「涼しさに負けたな、兄上」

「……その首今すぐ掻き切ってあげようか?」




避暑地にある屋敷はとても広く、もちろんそれぞれに個室が用意されていた。私はひとまず状況と荷物を整理しようと自室となった部屋にやって来た。

(ううん、相変わらず夏イベの内容が思い出せないわ。…ここに来れば多少は思い出せるかと思ったのに)

現地に来れば、何かこのイベントの手がかりがあると期待していただけにショックも大きい。

一体このイベントはどういう趣旨のものか、何が起きるのか等、分かっておきたい事が山ほどある。

(細かいことはともかく、このイベントはヒロインのためのもの。ニーナの周りで何かしらが起きる…はず)

攻略対象はそこそこ揃っているし、なにか起きない筈がない。例えばそれが、ルークだったりしても──。

そこまで考えてズキズキと胸が痛くなる。

(…っ!今はそんな場合じゃ、ないのよ!このイベントを無事クリアして普段の生活に戻るんだから!)

“悪役令嬢”という立ち位置はどう足掻いても変わらない。何が起こるかわからない分普段より気をつけなければ。

「はぁ……。最近平和だったから、平和ボケしたわね…」

昔は襲撃、誘拐、暗殺未遂が日常茶飯事だったからもっと警戒心が強かった。しかし、ロイが留学していた影響でそれらもすっかり落ち着いて最近はてんで平和だった。

(いい機会なのかもしれない。私の身には何が起きてもおかしくないのだと、もう一度自覚できた)

恋をしたのは想定外だった。ニーナと仲良くなったのも、ロイと仲良くなったのも。

予測不能な終わり(エンド)が存在しているような、そんな気がしてならない。…いや、兎に角、目下の事を無事に乗り越えなければ。

──どうか平和に、終わりますように。

願わずにはいられない。不安にまみれた夏イベントが、幕を開けた。



現在多忙により執筆時間がとれない為更新を停止中です。今しばらくお待ちください…m(*_ _)m

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