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28 避けてもろくな事にならない


よく晴れた朝。私は上の空で教室に向かっていた。というのも、昨日の事が頭から離れないのである。

(いや、だって・・・私がルークを恋愛的な意味で好きだなんて思ってもみなかったんだもの・・・)

「おはようリリア」

「ひゃああ!?」

突然考えていたその本人が現れて、朝とは思えない程の大声が出た。ルークもそこまで驚かれると思っていなかったらしく、珍しく目を丸くしている。

「あ、おおお、おはようルーク!」

明らかに挙動不審な私を見た彼は、驚いた表情から一転して怪訝そうな表情になる。

「リリア?どうかしたの?」

「い、いいえ!?いつも通りよ!」

「明らかに挙動不審じゃないか。何かあった?」

グイッと近づいてきたルークに私はパニックになる。

(うわ、あああ!近い近い近い!相変わらず顔がいいわね!っていや違う!兎に角近すぎるのよ無理!!)

限界を感じ助けを求めるべく視界を巡らせると、そこに丁度ニーナとサイラスの姿を捉えた。

「ねえ、リリア?これまでにないくらい顔が赤いよ?本当に大丈夫?」

「・・・・・・う」

「う?」

本気で心配するルークを他所に、私はもうオーバーヒートしていた。

「うわぁぁぁ!無理だわ!助けてニーナ!!」

「リリアーナ様!?」

物凄い勢いでルークから距離を取ると、そのままニーナに抱きついた。

「もうやだぁ・・・・・・!」

「あ、ああの!り、リリアーナ様、あの、私心の準備が!」

ぎゅむぎゅむとニーナを抱きしめて、柔らかくていい匂いのする彼女に顔を埋めた。頭の上でニーナが何か言っているが私にはよく聞こえない(正しくは理解しようとしていない)。

「・・・・・・・・・リリア・・・」

「あっはははは!!ルークがこ、こんな全力で避けられちゃって!む、無理!お腹痛いあはははは!」

サイラスは呆然としているルークの隣で遠慮なく笑い転げていた。



「リリア」

「わ、私用事があるの・・・!」


「・・・リリア」

「・・・あっ、あー!ニーナ!ミア!私も行くわ!」


「・・・・・・リリア」

「お兄様!!今少しいいかしら!!?」


朝から放課後まで、私はできる限りルークを避けて避けて避けまくった。それはもうあからさまに。

いやだって、今の私がルークを前にして平常心でいられるはずがない。ルークは鋭いから、好きだとバレる訳にはいかないのもある。・・・・・・のだが。

「リ・リ・ア?」

現在、ゴゴゴという効果音が聞こえてきそうな程の怖すぎる笑みを携えたルークに、空き教室の隅っこにて捕まっている最中である。

「明らかに俺を避けてるよね?」

「さ、避けてないわ!」

反射で否定するものの、彼にそんな嘘は通用しない。

「・・・・・・俺、何かした?」

ふ、と笑みを消して、彼らしくない傷ついたような、不安そうな表情で問われて口ごもる。

「それは・・・その、ルークは何も悪くないわ。ただ、私の心の問題というか・・・」

「心の問題?どういうこと?」

その言葉に、彼は俯く私の頬を撫でながら聞き返す。・・・・・・頬を撫でる必要はないでしょうとは言えない。というか近いのは心臓に大変悪いのでやめて欲しい。

「ええと、それは・・・」

上手く説明出来るだけの言葉が浮かばない。焦りだけが積もっていく。そんな私をどう捉えたのか、彼は撫でていた手を止めて私の顔を上に向かせた。

「・・・俺の事が嫌いになったとか?」

「え」

突然そう聞かれて狼狽える。何も言えないでいると、彼は無表情になって更に言葉を重ねていく。

「嫌いになったから避けていたの?それとも・・・他に婚約したい奴でも出来た?例えば、・・・ロイとか」

「!?」

な、なにを言い出すんだこの王子は!?私はルークに対しての恋情で悩んでいるというのに!

「それは違うわ!!絶対ありえないわよ!!」

勢いのままに否定する。彼は急に元気に声をあげた私に驚いたのか、少しだけ目を見開いた。

「じゃあどうして?・・・理由もわからず君に避けられるのは・・・・・・流石の俺も辛い」

「うっ・・・」

そう言われると強く出られない。そりゃあそうだ。私だって理由も分からず誰かに避けられていい気はしない。

(けれど!それでも理由を言うのはさすがに無理というか・・・!)

理由が理由なのであっさり言うことも出来ない。ここでそれを暴露するということは告白と同義だ。

「・・・嫌いになったとか、そういう事じゃないのよ、本当に。ただそれは、その・・・簡単に言えることじゃないのよ・・・」

あくまで折れるつもりがない事を感じ取ったのか、ルークは短くため息をつく。

「わかった。リリアがそこまで言うんだから、もう無理には聞かないよ」

「・・・!」

珍しく彼が折れた。そういえば、こういうやり取りで私が折れなかったのは初めてかもしれない。

「・・・けどね、リリア」

そう言うと、グッと更に顔を近づけられる。

「───────」

「なっ・・・!!?」

耳元で囁かれた言葉、そしてその後に耳に軽くキスをされて、私は再びオーバーヒート寸前まで追い込まれた。

「ルーク、今のどういうこと・・・!?」

真っ赤になった私を見て満足そうな表情をした彼は、私を引っ張って友人たちの待つ寮へと歩き出す。


『今更逃げられると思わないでね』

なんて。


──今更逃げられるなんて思っていない。幼い頃からじわりじわりと逃げ道を無くされて、まんまと罠にかかってしまった。

・・・全く、こういうことは勘違いするのでやめて欲しい。


ルークも私を好きなんじゃないか、と。



気づいてる方もいるかもしれませんが、サイラスは笑い上戸です。アレでいてよく笑います。

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