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26 お友達宣言


「あー・・・、はぁー・・・・・・」

次の日の朝、現在私は寮の庭に出てベンチに座っている。どよん、と公爵令嬢らしからぬ重い空気を纏いながら、ため息をついた。今日は休日のため、この時間から起きて庭に出ている者はおらず、ここには一人だけである。

(思い出せば出すほど、私は最低だわ・・・・・・。クララ様とこれから仲良くなれるかもしれないのに・・・)

リリアーナとして生きてきてこの方、あんな感情になった事も思考に陥ったことも無かった。いつも真っ直ぐ元気に生きてきたと自負している。

「・・・自分がこんなことに苛まれるとは・・・」

「──あら、リリアーナ様?」

ぐた、と背もたれに背を預けた時だった。驚いてバッと後ろを振り向くと、そこには目を丸くしたクララが立っているではないか。

「く、クララ様・・・!?」

「やはりリリアーナ様でしたのね。おはようございます」

「あ、ええ、おはようございます・・・」

クララは驚く私を気にした様子もなく、微笑みかけてくれた。

「ええと、なぜこちらに?」

「今日は早くに目が覚めたものですから、少し外の空気を吸おうかと思いましたの」

「な、なるほど〜・・・」

勝手に気まずくなっている私は、それでも会話をしようとした。だってクララ様は何も悪くないのだ。すると、彼女はふふ、と穏やかに笑う。

「ごめんなさい、緊張させてしまいましたか?」

「え!?そんなことはありませんわ!」

「いえ、仕方ありません。昨日、ロイ殿下とお話していただけですのに、あのように邪魔してしまったのですから・・・」

しゅんとするクララに私は慌てる。言葉だけ聞くと何やら嫌味っぽく聞こえるが事実そうであるし、表情にも申し訳ないという気持ちが物凄く出ている。そもそも、あの場においてクララの登場は救いだった。

「そんなことございませんわ!むしろ助けて頂いたくらいで・・・!」

「ですが・・・」

「それに、何も知らない状況で自分の婚約者が他の女性と二人で話しているのを如何なものかと思われるのは、当然ですもの」

ようやく普段の落ち着きを取り戻せた私は、「ね?」とニッコリ微笑むことに成功する。ついでにクララの手を取ってみた。

「・・・・・・ありがとうございます、リリアーナ様」

すると、クララも安心したように私にふわりと微笑んでくれた。よかったよかった、これでとりあえずは波風立てずに過ごせる・・・と思ったその時だった。

「リリアーナ様、これも何かの縁ですし、よろしければお友達になりましょう?」

「・・・・・・・・・はぇ?」

優雅に微笑むクララの提案に、私は間抜けな声でしか返事ができなかった。

「バチュラー家とオルコット家は同じ爵位ですから気兼ねなくいられますし、同じ王族の婚約者としてお話できることもきっとありますわ」

「はぁ・・・」

「それに・・・私、恥ずかしながら同じ年頃のお友達がいないのです。リリアーナ様とそういった関係になれたら・・・と思ったのですが・・・」

「うっ・・・」

クララは申し訳なさそうに眉を下げる。

うう、やめて欲しい。そういう表情は私に効くのだ。

ルークからはロイに近づくなとは言われているが、クララにも近づくなとは言われていない。こんなにもいい子なのだし・・・。しかしロイの婚約者なのだから関わっていれば必ずロイと接触してしまう・・・。

揺れに揺れる私の心だったが──、

「ごめんなさい、やはりご迷惑でしたよね。ルーク殿下とロイ殿下は対立していますし、私と関わっては・・・・・・」

「いえ!大丈夫ですわ!!是非お友達になりましょうクララ様!」

──ごめんなさいルーク。私は女の子の悲しげな表情に弱いのです。





「ねぇリリア、これはどういうこと?」

「・・・・・・ええと」

その日の昼間、寮の食堂でニッコリいい笑顔のルークと、真っ青な顔の私という図が出来上がっていた。それもそのはずである。何故なら──、

「クララ嬢、何故お前がここにいるんだ」

「・・・・・・婚約者であるということをお忘れですか」

「特大ブーメランだよ愚弟(ロイ)。そもそも僕はここにいることを許した覚えはないんだけどな?」

そう、ロイとクララが同席しているからである。いや、クララは私の友人になったのだから一緒にいるのも分かるのだが・・・。

「クララ嬢がいるから“表向き”の兄上か。ゾワゾワするからやめて欲しいところだが」

(ぎゃぁあー!?ロイ殿下ほんと何言ってるのよ・・・!)

あくまで面白がる様子のロイに私は肝を冷やす。とはいえ、この程度で怒るルークではないのも知っている。とりあえずこの険悪な雰囲気を何とかしてくれ・・・!と願うと、

「お待たせ致しました、ルーク様」

「やっほ〜ルーク、リリアちゃん」

(ナイッッスタイミングよディラン、サイラス!!!!)

待ち望んでいた存在に私は心の中でガッツポーズをする。とりあえず救われた、と喜んだのも束の間、ひょこりとサイラスの後ろから揺れる髪の毛を見つけた。

「リリアーナ様、ルーク様、こんにちは!」

「ニーナ!?」

まさかこの二人と行動を共にしているとは思わなかった私は盛大に驚く。

(えっニーナ、いつの間にこの二人とそんなに仲良くなったの・・・!?)

まさか私が目を離している隙に、ディランルートかサイラスルートにでも入ったのか!?と妄想を膨らませていると、ふとクララとニーナの視線が合う。

「・・・・・・はじめまして、ニーナ・ダンヴィルと申します」

「クララ・バチュラーと申しますわ。よろしくお願いしますね」

一瞬、この二人の間に緊張が走った──ような気がした。しかし、ニーナもクララも既に穏やかに笑っている。

(・・・?見間違いかしら)

私は不思議に思いながらも、きっと見間違いだと結論付けて目の前にあるすっかり冷めてしまったお昼ご飯を食べ始めた。

──ニーナがその小さな手でこっそりと拳を作り、握りしめたのを知らないまま。



前回は少し駆け足展開だったかなぁと反省しています・・・。眠いときに文章を考えるものじゃないですね・・・(汗)

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