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21 素敵な友情


「お前が、リリアーナ・オルコットか」

「・・・・・・ロイ、殿下・・・」

目の前の冷たい瞳の持ち主の登場に、私は動揺を隠せずにいた。

(なんで、このタイミングで・・・!?ていうか、何故私なの!?こんなに沢山人がいる中で一歩下がっていた私に何故話しかけるのよ・・・!)

混乱して動けない私と、尚も私を見据えるロイという謎の構図の出来上がりである。

「まあ、どうしたのかしら?おふたりとも見つめあってらっしゃるわ」

「リリアーナ様はロイ殿下とお知り合いなのかしら?」

(いや、見つめあってないですから!!あと知り合いでもないわよ!!?)

近くの令嬢達の疑問の声に私は全力で否定する。

「お前──」

「久しぶりだね、ロイ」

色々なことでいっぱいいっぱいな私に話しかけようとしたロイの言葉は、静かな、しかしよく通る声によって遮られた。

「・・・兄上か」

遮ったその声の主を見て、ロイは少しだけ眉を動かした。ロイの視線のその先には、微笑みという名の仮面を貼り付けたルークがいた。近くにサイラスやディランもいる。

「僕の婚約者に何か用かな?」

「用という程のことでは無い。ただ、“あの”兄上の婚約者とは、一体どのような令嬢かと思ってな」

やり取りする声は至って普通の大きさなのに、バチバチと効果音が聞こえてくるような気がする。ロイは不敵な笑みを浮かべているし、ルークはルークで笑みが黒いし、ピリピリしているのを肌で感じた。ああ〜やめて欲しい、ルークが怒るとろくな事にならないんだから・・・。

「ちょ、ちょっとルーク・・・」

堪らず声をかけると、ルークはチラッと私を見て、かと思うとぐっと彼の方に私の腰を寄せた。

(うっ、ちょっと苦しい・・・)

声をかけたところで変わらず険悪な雰囲気。ルークもロイも美形なうえに長身なので、威圧感がすごい。わー、長身美形すごーい。

「それで?何か分かったのかな?」

「・・・収穫を得る前に兄上に声をかけられてしまったからな。これと言って成果はない・・・ああでも、そうだな」

ロイはそこまで言うと、ルークから視線を外して私に向けた。現実逃避し始めた私だったが、強制的に現実に引き戻される。

「俺はお前に興味が湧いた」

「・・・・・・はい?」

彼の言葉に私はポカンとする。いや、私に興味が湧いたって・・・。

「近いうちに使いを遣る」

ロイは端的にそう宣言すると、先程までのバチバチがなかったかの様にパッと身を翻して外へ歩いていった。

「な・・・なんだったの・・・」

緊張が解けて力が抜ける私をルークが支えてくれた。

「あ・・・、ありがとうルーク」

「リリア、大丈夫?なにかされてない?」

「ええ、話しかけられたくらいよ」

心配そうに覗き込むルークの顔が近くてドキマギしながら受け答える。今更だが、ルークは毎回私との距離感がちょっとおかしいのではないだろうか。

「気をつけてね、リリア。使いを遣るなんて言っていたし」

「気をつけろって言われても・・・」

相手は第二王子、王族だ。いくらルークの婚約者とはいえ、例えば話しかけられたら蔑ろには出来ない。

そう言えば、ルークが渋い顔をする。

「頼むから、出来るだけアレとは関わらないでね」

「・・・善処するわ」

一応は実の弟であるロイをアレ呼ばわりとはどうなんだと思ったが、彼の言葉に頷いておく。

ふと視線を感じて振り返ると、少し遠くからニーナが心配そうにこちらを見ていた。目が合うと、彼女はふわっと微笑む。

(あ、あらまー!!不意打ち美少女スマイ・・・ル・・・?)

通常運転で感動しかけた所で、違和感に気づいた。それは、いつもの笑顔とは違った。

──ニーナの目は、常にはない強い意志を宿していた。



「リリアーナ様、今日は街のカフェに行きませんか?」


「リリアーナ様!今度のテストの範囲のここが分からなくて・・・。教えてくださいませんか?」


「リリアーナ様!」


最近、放課後にニーナとミア・・・・・・いや、主にニーナからよく様々な誘いを受けていた。よく、というよりほぼ毎日だ。

「・・・ねぇニーナ?」

「はい、なんですか?」

「・・・・・・最近無理して私を誘っていないかしら?」

「いいえ、無理なんてしてませんよ!」

「・・・・・・・・・そう」

最近は誘われる度にニーナにこう訊くのだが、毎度これである。

(可愛い子と一緒にいられるのは嬉しいけれど・・・。この頻度は変よね・・・。もしかして──)

「やっほ〜、リリアちゃんにニーナ嬢」

「あら、サイラス!」

悩んでいると後ろからサイラスがやって来た。

「珍しいわね、この時間にルークと一緒にいないなんて」

「んー、まぁね。あの過保護王子がリリアちゃんの側にいろってうるさいからさ〜」

普段ならサイラスはこの時間はルークと共にいるはずだ。それを護衛に付かせるとは・・・。

「ねぇ、そんなにロイ殿下は危険なの?」

「う〜ん、あの方自体がなにかしてくる事はほぼ無いとは思ってるよ。むしろ危ないのはあの方の周りだね」

サイラスはふう、とため息をつく。

「特に母親の第二王妃が危険度高め。殺意──・・・じゃなかった。行動力が凄いから、ね?」

そう言って私を見る。殺意ってもう言っちゃってるじゃないかサイラスよ。

「ニーナ嬢がやたらとリリアちゃんといたがるのも、それなんでしょ?」

「!!」

柔らかいいつもの雰囲気はそのままに、彼はニーナに問う。ニーナはハッと目を見開いた後に恥ずかしそうに俯いた。

(サイラス、気がついていたのね・・・。まぁ私が察せられるくらいの事だし、サイラスが分からないわけないか・・・)

これでもサイラスは頭の切れる“黒の使徒”次期筆頭だ。毎日ルークと行動をほぼ共にしているにも関わらず、それ以外の周りをよく見ている。

「私なんかが出来ることはこれくらいしかないので・・・。一緒にいれば、少なくともリリアーナ様が一人にはならないから、使いも寄りつけないかなって・・・」

「ニーナ・・・」

「わ、私、リリアーナ様のお役に立ちたかったんです!」

ぐっと手を握りしめるニーナに、私は感動で泣きそうだ。ああ、私を心配してこんな事を言ってくれるなんて!なんて友達思いのいい子なんだろう・・・!

「ありがとうニーナ。とても嬉しいわ。それに、たくさんあなたといられて楽しいのよ」

そう言ってキュッと彼女の手を包み込むと、ニーナが何故か途端に真っ赤になった。

「でも、ロイ殿下の事など関係なく誘ってくれると嬉しいわ。あなたの誘いを断るなんてこと、しないから」

私は満面の笑みを浮かべた。嬉しくて上手く笑えている自信はない。すると、ニーナの肩がプルプルと震え出す。バッと上げた彼女の顔は、ケトルのように湯気が出そうだった。

うーん、なんだか似たような光景を色んな人でよく目にするわね。最近だとケリーとか・・・。

「り、リリアーナ様の・・・・・・天然人タラシ・・・・・・!」

「はぇ!?」

プシューという効果音が聞こえそうなくらい真っ赤なニーナがそうさけぶ。素っ頓狂な声を上げた私の隣で、サイラスは「ふ、あっはははは!!もうダメ・・・!!」と腹を抱えて笑っていた。なんなんだ一体。



前話を更新した際に感想を頂きまして、とても嬉しかったです!ありがとうございました、原動力になります!

スピンオフのリクエストの件もありがとうございます!本編と並行して進めてみようと思っています。

そして、誤字報告いつもありがとうございます。とても助かっていますm(_ _)m

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