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16 出番


遂に、マドンナリリーコンテストが始まってしまった。私は自分の番になるまでの時間が長く、ひたすらソワソワしている。舞台袖の椅子に座って手をぎゅっと握りしめた。

(ああもう、なんだかやたらと緊張してきたわ・・・!折角観客席でニーナを拝もうと思っていたのに・・・!)

先程まで気楽な第三者だったというのに、今の私は代打でこの場にいるのだ。なんとも気が進まない。うぬぬと眉を寄せていると、ステージ側からわっと歓声が聴こえて振り向く。気になってコソコソと覗くと、視界にヒラリと白いワンピースが映る。

(あ、ニーナ!?やだ、もう順番だったのね!)

すっかり緊張して周りを見ていなかった私は驚く。

「あの子可愛いね」

「投票しようかな〜」

舞台袖付近の観客達の声が聞こえて私は一人うんうんと頷く。

(ニーナは可愛いのはもちろん、優しくて可愛らしくて気配り上手、それに加えて可愛らしいのだから当たり前ね)

ステージ上で恥ずかしそうに笑う彼女は正しくヒロインで、攻略対象達が惚れるのも納得である。

「次、十番の方スタンバイお願いします!」

「あ、はい!」

幸せ気分でいると、自分の番号が呼ばれて私は早足で向かう。

そういえばルークは見てくれているのだろうかと、ぼんやり考えながら。



緊張でガチガチの私は至る所でミスをした。普段なら出来ることなのに!という事ばかり。公爵令嬢として培ったもの達も、この場において私は活かしきれなかった。

(“リリアーナ”ならきっと完璧にこなすんでしょうね・・・。でも残念ながら“私”だから基本スペック高くないのよ・・・!)

何も人前が苦手な訳では無いが、これは訳が違う。“審査される”という事が嫌なのだ。あたふたしつつもなんとか及第点クリアをしていると、ふとルークと目が合った。彼はそれに気づくと、心配そうな顔から一転させて安心させるように微笑んだ。

(ああ・・・いつも通りのルークの笑顔だわ・・・)

それだけなのに、何故だかスルスルと緊張がほぐれていって、いつもの私に戻っていく。

私はふう、と息をつく。そして、ゆっくりとルークに視線を戻した。

(──ありがとう、ルーク)

そう思って彼に笑顔を見せた。緊張から解放された私は多分、かなり締まりのない笑顔を向けてしまったと思う。彼は何故かびっくりしたように目を見開いて動かない。そんなに締まりのない笑顔だっただろうか?と疑問に思いながらも、その後は普段通りに振る舞って、私の出番は終わり舞台袖に戻る。

その間会場はとても静かで、やはりこれはニーナが優勝で間違いないということを確信した。



「はぁああ・・・!!疲れたわ・・・!」

「リリアーナ様、お疲れ様です!」

「あはは、リリアちゃんお疲れ〜」

私は終わったと同時にコンテスト会場を飛び出し皆の元へ戻った。ミアとサイラスが労ってくれる。

「リリア」

「ルーク!」

振り向くとなんだか複雑そうな表情をしたルークがいて、私は首を傾げる。

「何?そんな顔をしてどうかしたの?」

「うーん、どうかしたというかなんというか」

「ええ??」

ルークの曖昧な反応に私はますますよく分からない。なにかコンテストでやらかしただろうか。──うん、心当たりしかない。

「あ、もしかしてコンテストで色々ミスをしたことかしら?確かに第一王子の婚約者とか公爵令嬢とかに相応しくない事を色々してしまったけれど・・・」

「いや、そうじゃないよ」

ルークは否定すると、私の手を取り顔を覗き込んできた。その事に驚いて私は固まる。

(ちょちょ、突然の至近距離は勘弁してくださいあーもー顔がいいですわね!最推しの上目遣いとかどんなご褒美ですかありがとうございます!)

驚いても固まっても私の脳内は相変わらず元気である。・・・・・・というか早く私から視線を外して貰えないだろうか。こんなことを考えている間も何故かルークはじいっと私を見ている。

「・・・あの、ルーク?」

さすがに耐えきれず話しかけると、ルークは覗き込むのをやめてくれた──と思ったらグイッと引っ張られて耳元に口を近づけてきた。

「!?!?え、ちょっと!!」

「──妬けるな」

「は!?」

サイラスやミアがいる前で何をしているんだと慌てると、耳元でそんなことを囁かれて、しかも抱き締められて混乱する。

(妬けるって何!?なんでこんな体勢に!?え、私なんかした!?)

「い、いい加減離して!こ、こんな公衆の面前で・・・!」

「んー・・・」

「ルークっ!」

友人たちの前でこんなことをするなんて、どんな羞恥プレイだ。羞恥メーターが振り切れそうである。なのに、サイラスは「お邪魔かなぁ?」とか言っているし、ミアも私の羞恥メーターの危機だと言うのに何故か目を輝かせている。これはもう実力行使かと思った時、

「リリアーナ様!ミア様!」

タイミング良くニーナがこちらに来るではないか。

「! ニーナさん!」

私はニーナの声に反応して緩んだルークの腕を押しのける。良かった、実力行使しなくて済んだ。

「・・・あ、えーと、お邪魔でしたか・・・?」

「え!?いいえ!むしろありがとう!」

ニーナは私が抱き締められているのを声をかけたあとバッチリ見たようで、しまったという顔をする。慌てて否定すると、「リリア、君ね・・・」とルークのなにか諦めたような声が聞こえた。

「ここまで来ると流石に同情しかないね〜」

サイラスは何故か心底可哀想なものを見る目でルークを見ていた。



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