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召喚失敗勇者の異世界放浪旅  作者: 転々
第三章

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失敗勇者と子供達

 こいつら一体何なんだよ。

 そんなことを考えながらグランツはバリケード越しにこちらを攻撃してくる民衆を抑えていた。

 凶器を持って襲い掛かってくる民衆だが、周囲には数十人の冒険者たちが防衛に回っており、今の所どこも破られたりはしていない様だ。

 隣にイザベルも居るのだが、彼女の場合武器が戦斧の為受け流しなどには向いておらず、グランツの護衛をしている、

 民衆たちは多少の傷では止まることは無く、戦闘不能に陥るまでこちらに襲い掛かってくるので、最初の方は結構な冒険者達が被害を受けていた。

 だが、気絶させたり麻痺をさせると糸の切れた人形のように動かなくなるので、グランツ達の様な前衛冒険者が押さえた後、後衛の魔法職などの冒険者達が次々と民衆を昏倒させてゆく。


 そして、イザベル達の様などちらにも参加が出来ない冒険者達は、気を失った人々を捕縛して後送していく。

 そしてまた数人の人々が粗末な武器を持ってこちらへ襲い掛かってくる。

 心の中で舌打ちをしながら、グランツは再び襲って来る人々を抑え、後方から魔法が飛んできて昏倒させた人をイザベルが捕縛していく。

 その後も何度か人々が襲ってきたが――突如として襲い掛かって来ていた人たちが全員倒れ伏す。

 この時、アオイちゃんとチュンちゃんがセクメトリーから力を奪い依り代から追い出したのだが。

「トマがやってくれたみたいだな」

「そうみたいね」


 っと、騒ぎを抑えた本人ではないシクラが称賛されていた。


 暴徒たちによって店の破壊やけが人は双方とも結構な数が居たが、最終的な死亡者はゼロだった。

 ただし、行方不明者が一人いたのだが、数週間後彼は元気な姿で街に戻っていた。









 アオイちゃんに鎧貸す事――半強制的にだけど――になったんだけど、流石にいろいろと体系が違うから流石に無理じゃないかと心配してたんだけど。

 

「少し重いですが大丈夫そうです」


 アオイちゃんが鎧を装着すると、彼女の体に合わせるかのように鎧が変化する。

 そして、少し柔軟の様に体を動かすが問題なく装備できている。


 忘れていただけど、この鎧ってたしかかなり重量があって性能は良いけど使える人が居なかったんだよね。

 まあ、アオイちゃんはチュンちゃんの従者になっているから、筋力などが上がって装備が出来るのだろうね。

 鎧が無くなったので、俺の装備が元の冒険者の装備に戻っちゃったんだけどね。

 まあ、鎧を着たアオイちゃんがいるから俺が勇者と言う事はばれなさそうだから良いんだけど。


「それで、どうやって教会に行くんだ」


「え? どうやってっ、そのまま正面からじゃないんですか? だって、その何とかって神様から力を奪うんですよね。それならそのまま行って案内してもらった方が楽ちんじゃないですか」


「あ、うん?」


 ま、まあ、アオイちゃんが言っていることもわかるんだけど、それだと――今まで色々考えていたのが無意味になってしまう気がするんだけど。

 そんな思いを込めつつ周りに目線を向けるが――みんなアオイちゃんと同意見の様で、俺を不思議そうな目で見つめ返してくる。


「はぁ。わかったよ。神主さんに結界は張ってもらうんだよね?」


「そうですね。外から直接中を覗けませんが、中の人が情報を出せばわかってしまう程度ですが、一応効果はあるでしょう」


「なんかすみません」


「勇者様がお気になさることでは御座いませんよ。私は神の神託に沿って皆様に力をお貸しするだけですので」 

 

 意味があるようでない結界を神主さんに張らせてしまう事に俺自身は申し訳なく思ってしまうが、当の本人はまったく気にしていないようだ。

 アメトリン達曰く、セクメトリーが直接覗け無くなれば呼ばれるまで降臨することは無いから、不意打ちなどをされる心配がなくなるから効果はあるとの事だ。

 それと、その結界が発生すると神石との連絡が途切れるから、再び呼びかけないと二人と連絡を取ることが出来なくなるみたい。


 因みに、アオイちゃん達が考えた作戦でアメトリンの力が必要らしいので、神石はアオイちゃん預けることになっている。

 

「名づけて『ヒットアンドウェイ』作戦です!」


 と、自信満々に言っているけど……心配だなと考えていたらその視線に気が付いたチュンちゃんが教えてくれた。


「もしアオイに何かあった場合でも問題ないチュン。最悪お前と同じように元の世界に強制送還されるだけチュン」


 なるほど。彼女も俺と同じ召喚者であるから、安全のセーフティーのようなものがあるそうだ。

 

「それにチュン。アオイに渡した従者の力はシクラの従者とは違って、シクラと同等に近い力だチュン。そうそう遅れをとることはないチュン」


 さらりとチュンちゃんが爆弾発言をして、俺はおでこに手を当てた。

 俺と同様の力って勇者ってことだよね……それってチートやん。

 アオイちゃんはチュンちゃん以外に興味はないから問題ないと思うけど、誤まって何か起こらないように一応注意しておこう。

 

 それにしても何でこんな危険なことをやろうと思ったのか気になって聞いてみたんだけど――理由はチュンちゃんを守る為の一点張りだった。

 目線をそらしながら微妙に怪しい感じもあったけど、チュンちゃんから補足として二人の間には言葉を交わさなくても意思疎通が出来るからといわれた。

 ちなみにこれは俺とマリアとベロニカさんも出来、意識を集中すると念話のようなことが出来た。


「えっ!?」


「なんですかこれ!} 


 急に二人に念話したせいで驚かせてしまったようだ。

 二人に謝りつつ、チュンちゃんから教えてもらったやり方を二人にも伝える。

 確認した所この念話は、三人の間であれば好きなように話をすることが出来ることがわかった。

 一対一でも出来るし、グループトークのような使い方も出来るみたいだ。


 他の人に聞こえず、話していることにも気が付かれない秘匿性などを考えるとかなり重宝しそうだ。

 これがアオイちゃんとチュンちゃんの間でこれが使えるのであれば、二人に(一人と一鳥?)に任せて問題なさそうだ。


 

「それでは私は準備してまいります」


 そう言って神主さんは神社へと戻っていった。

 街を覆うほどの結界を張るには神社の本殿で行なう必要があるらしく、結界が発動かどうかわかるのかと聞いた見た所「シクラ様たちであればお分かりになります」といっていた。


 結界が発動するまでの間、俺達は装備や作戦を確認しつつ待っていると。


「ん? これが結界か」


「――そのようですね。とても綺麗です」


「――すごいね」


 一瞬暖かな風が吹き抜けたような気がした後、空に淡い虹色の膜が街を覆っていく。

 タケミカヅチの神社から広がった膜は瞬く間に街を覆い尽くした。

 しかし街の住民達は騒いだりした声は聞こえず、特に気にした様子もないようだ。

 もしかして、俺たちしか見えていない? それとももしかしたら頻繁に同じような事が起きるのかな?


 まあ、気にしても仕方ない。

 結界ができたから、これでセクメトリーが外からその街を覗き見る事ができなくなったはずだ。

 神主さんに感謝しつつ、俺たちは教会へと向かう。


 

 教会は塀に囲まれており、入口は扉などなく開け放たれている。

 ただ、塀が二メートルほどあるから隠れられていたりしたら分からないかもしれないなから、一応索敵の魔法で確認してみる。

 

「待ち伏せか……しかもご丁寧に嫌がらせもしてくるんだな」


 索敵に引っかかったのは十数人の子供達で、おそらく孤児院の子供達だ。

 そして、その中にはエリク達も含まれている。

 エリク達は冒険者の装備だが、他の子供達はそこらにあるような枝や農具を持っている。

 恐らくこれはフリーダーの嫌がらせ、もしくは俺だけ中に入る様に仕向けるためなのだろう。


「エリク達が門の所で待ち構えているみたいだから、戦闘は出来る限り控えて」


「そんな……エリク達まで」


 俺の言葉にベロニカさんは頷き、マリアはエリク達の事を心配しているみたいだ。

 アオイちゃんは良くわかっていないみたいだったけど、頷いてくれた。

 

「行ってみないとわからないけど、たぶん勇者だけ教会の中に入れとか言ってくるかもしれないね」


「それは好都合ですね。そして私が中に入って、セクメトリーから力を奪い取ってきたらいいんですね」


 まあ、そうなんだけど……アオイちゃんがポカをしないかちょっと怖いんだよね。

 念のため、アオイちゃんが俺の役と言う事再度伝え、基本的にはアオイちゃんが皆に指示を出すようにと念押ししておく。

 心配しても仕方がないし結界がいつまで持つか分かっていないので、なるべく早く済ませるようにと歩みを進める。


 俺達が門の近くまで歩いて行くと、予想通り子供たちが飛び出し、一列に並んで武器を構えてこちらをけん制する。

 一瞬俺が手で制止させようとしてしまったが、それよりも早くアオイちゃんが俺達を制止させるために手を振りだした。

 

「こ、ここから先は、セクメトリー様のきょ、教会です。御用のない方は、お、お帰り下さい」


 出来て子供たち中でも年かさの少年が、怯えながらも俺達を来させないように警告する。

 エリク達は俺達がいる事を知らなかったのか、二人で顔を見合わせていた。

 

「こちらの鎧の方はセクメトリー様に召喚された勇者様です。その勇者様がセクメトリー様の教会に入れないのはいかがなものでしょうか。それに、こちらのフリーダー司祭が勇者様を探しているとの事でこちらから出向いたのです」


 自分は勇者の従者ですよと言った感じで子供たちに説明する。

 アオイちゃんは一瞬キョドキョドした感じになったが、すぐさま胸を張る感じに堂々とした立ち方になった。

 その様子に子供達はたじろぎ、こちらに話しかけてきた子が他の子達と相談を始めた。

 エリク達もその輪に加わっており、俺たちのことを話しているようで、時々こちらをチラチラと見ていた。

 集まって輪になっている今の状況であれば簡単に侵入してできてしまうが、そこは流石に自重しておいた。

 俺たちが無理やり入った事でこの子達に何かあってもいけないからね。

  

 しばらく話合いをした後、話がまとまったのかまた一列に並びなおしていた。

 

「そ、そこの勇者様だけ中に入っても大丈夫です。ほ、他の人はそのままそこで待って……ください」


 おどおどした様子にもう少し強く出ればこの子達が引いてくれそうだ気もしたけど、もともとアオイちゃんが一人で向かう予定だったので了承してしておく。


「それでは勇者様、セクメトリー様との拝謁頑張ってください」


 アオイちゃんは俺の言葉にうなずいた後、一人教会に入っていった。

 子供達もアオイちゃんの扮した勇者を見送っていた。


「あの――トマさん、マリアさんは――勇者様の従者だったんですか?」


 こちらをチラチラと見ていたエリクが、おずおずとこちらへ話しかけてくる。


「私はそうだけどトマは従者じゃ無いのよ。それにしても、どうしてこんなことになっているの?いつもなら教会には誰でも入れるはずじゃ無いの」


「いつもならそうなんですけど……なんか今日教会に来る人たちがみんなおかしいんです。しかも特に何かある日じゃ無いんですけどすごい人だったし、みんな興奮しているのかおかしかったんです」


 エリクがそう話すと、周りの子達もボソボソと小声で話し始める。

 近所の気のいいおじいさんが鍬を持って振り回していたとか、いつもお菓子をくれるおばさんとかも包丁を持ってこわい顔していたとか。

 他にも何かないかエリクとルーシーを通して子供達に聞くと、街中のセクメトリー教徒の人が集まったんじゃ無いかってほどの人数が最終的に集まっていたみたいとか、司祭様が最近ちょっとおかしかったけど今日は特におかしかったとか。

 そして、みんながおかしくなった頃に孤児院を管理しているシスターまでおかしくなって、集まっていた人たちが散らばった後子供達に教会に誰も入らないように指示したみたい。


 街の人たちはあらかた俺が無力化したから大丈夫だと思うけど、シスターの方は合っていないからどんな状態かわからないんだけど、今日からおかしいってことだから街の人たちと同じだろう。

 時間経過で洗脳が解けるのかどうはわからないから、アオイちゃんが戻ってきたらチュンちゃんに浄化してもらおう。


「――これは!?」


「す、すごい気配。アメトリン様以上の気配よね」


「神々である事は間違いないのでしょうけど――この気配はなにか禍々しい気が致します」


 子供たちと話をしていると突如として異様な気配が現れた。

 だけどこの気配、前にセクメトリーと拝謁した時に感じた気配に似てはいるが、この圧迫感や恐怖を感じる様な気配ではなかったはずだ。

 俺がセクメトリーの力を失ってタケミカヅチ神の力を受けているせいかとも思ったけど、気配に子供たちは皆頭を抱えてうずくまっていた。

 中には泣き出してしまった子もいるが、震えながらも何とか耐えているエリク達がその子達を宥めている。

 

 暫くした後、その気配は突如として消え失せた。

 恐らくアオイちゃん達が成功して、セクメトリーの力をチュンちゃんが吸収したのだろう。


「みんなこっちに来て」


 突如俺達の背後から声が聞こえてきた。

 振り返るとそこにはゲートが出来ていた。


「アメトリン! 何があったんだ」


「作戦は成功したんだけど、司祭もこっちに来ちゃったから手伝ってほしいのよ」


 マジか。成功というよりも大成功過ぎて手が足りなくなってしまったみたいだね。


「わかった二人とも行くよ。エリク、ルーシー、何か困ったことがあったらグランツ達がギルドにまだいるから相談に行くといいよ!」


「トマも早く行くよ! 二人とも気を付けてね!」


 



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