表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚失敗勇者の異世界放浪旅  作者: 転々
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

94/220

召喚失敗勇者と支援者達

 ベロニカは問題なくシクラ殿と合流する事が出来たようだな。

 そうなると、次は恐らく――彼との合流する事になるのだろう。わざわざあのような格好であの場所に居るのであれば、そこには何らかの意図があるはずだからな。

 報告書を読みながら、彼は次に打つ手を考えていた。

 シクラ殿が移動するとは思っていなかったですが、恐らく彼が居るのであれば再びあの町へ戻るでしょう。

 まあ、彼女らの滞在が少し長くなるかもしれませんが面倒は娘に任せましょう。 

 それに、何かあれば彼らが付いているから問題は起こらないでしょう。


 ヒエン=ミュラー侯爵はそんなことを考えながら事、シクラへどのような支援が出来るか考える。

 

 前勇者との約束もあるが、シクラに対しても個人的な恩がある侯爵は、シクラの行動を予測するためにかなり大掛かりの事をしていたりもする。

 世界各地に散らばる諜報員にシクラの行方を探させたのだ。


 普通の侯爵であればそれ程の人員も財力も無いのだが、ミュラー侯爵の国での役職である()()()()としての力を存分に最大限に発揮させたのである。


 魔法で何かしら指示を出した後、侯爵は報告書を机にしまう。

 その際ちらりと見えた文字に侯爵は少し口角を上げた――そこには見慣れぬ文字でこう書かれてあった。


『お兄ちゃんお助け大作成!! 侯爵用だよ!』


 

  




「ッち!やっぱり正攻法で行くしかないか!」

「三十六計逃げるに如かずチュン!」


 ゾンビのような雄たけびを上げながら迫ってくる人々に背を向け手走り出す。

 フリーダーにチュンちゃんが効かないと言う予定外のことがあったが、俺は元の予定通り人々を誘導する。


 迷路のような路地を追ってくる人たちを完全に引き離さないように手加減して走る。

 だだ、流石にもともとの身体能力の差か狭い路地のせいか、集団がいくつかに分かれているみたいだ。

 

 俺から確認できる場所の集団は男性が多く、その中でも体格が良い人が多い。

 その後方は目視では確認できないので魔法で確認すると、先頭集団に入っていない男性や女性などの成人したと思われる人々がいる。

 さらに後方からは老人や子供たちが追いかけてきているみたいだ。


「まるで追っかけされてるアイドルみたいだな」


 持っているものが色紙とサインペンならそう見えなくも無いけど、実際には包丁などの凶器を持っているから違うんだけどね。

 

「トマこっちだよ」

「シクラ様こちらです」


 二人が屋上から俺を見つけて手招きしているのが見えた。

 俺はその誘導に従い路地を駆け抜け、ガシャンガシャンと音を立てながら駆け込む。

 井戸から少し離れた開けた場所で立ち止まり追いかけてくる第一陣を待ち構える。

 広場で俺が立ち止まっているのを見つけた人々は、俺を取り囲み武器を構えて牽制してくる。

  

「はぁはぁ……鬼ごっこはおしまいか勇者」


 全力で走ってきたのか皆肩で息をして疲労しているみたいだ。

 洗脳の影響下にある彼らはそれでも俺捕まえたいみたいだけど、罠に掛かったことに気が付いていないみたいだ。

 それにしても、この世界にも鬼ごっこという言葉があるとは……まあ、いつの時代なのかわからないが勇者が広めた言葉なのだろうな。


「――そうだね。みんなこれで正気に戻れ!チュンちゃん!」

「任せろチュンチュン!」


 俺の合図で先ほどまで普通の打ち刀サイズだったチュンちゃんが、最大サイズのおよそ九尺まで巨大化する。

 大太刀をも超える巨大化したチュンちゃんを横薙ぎ――というか、振り回される感じで一回転する。

 流石に身体強化を行ったとは言え、体重との重量差や遠心力の関係もあり、金属製の巨大な直刀ではまともに切ることが出来ない。

 振り回した剣と化したチュンちゃんが、俺を取り囲んでいた人々の胴を切り裂く。

 ――まあ、切り裂いたのは服のみで相変わらず体に傷は無い様だが。


 そして斬られた人々はと言うと――そのままの体制で固まっていたかと思ったら、皆意識を失って倒れ伏した。


「あんまり量は無いチュン、けれど多少現地神の力を吸収できたチュン」

「と言う事は、これでこの人たちは解放できたって事で良いのかな?」

「そうチュンね。力はすべて吸い出したチュンから、小一時間もすれば目も覚めるチュン」


 よしよし、これなら予定通りセクメトリーに洗脳された人々を解放できそうだ。

 ただ、今無力化できた人数はせいぜい十人程……さっき見た感じでは数百人はいたからどれだけ時間がかかるんだか。


「トマ、そろそろ次が来るよ」

「わかった」

 教えてくれたマリアに手を振って礼を言った後、倒れている人たちを壁際まで寄せる。

 この広さなら後二回くらいは同じことが出来そうだから、そしたら次の場所へと移動しようかな。


「いたぞ! 勇者だ!」

「はいはい、勇者ですよっと!」


 先程と同じように何故か俺を取り囲む人々を同じように斬って昏倒させた後、また壁際に寄せて寝かしつける。

 同様に第三波もかたずけ――なんかゲームの魔物湧きの波みたいだと感じてしまったのは仕方のない事なのかもしれない。


 それはさておき、今解放した人たちはそのまま残しマリア達に合図をして次の場所への誘導を頼むが……。


「そのまま移動すると街に散らばっちゃうかな? 」


 今は俺を追ってきた人達を後続が追いかけてきているけど、ここで俺を見失って街中にバラバラに散られると面倒だな。


「まあ、だったらわざと見つかって誘導するだけか」

「面倒くさいことするチュンね。ちゃっちゃと突っ込んで片付けてしまえばいいチュン」

「まあまあ。それをやると怪我人とか出そうだからもう少し数が減ったらね」


 実際考えなかったわけではない。

 ただ、それを行った場合の被害が結構大変な事になり相談だよね。

 

 移動しながら斬りつけると持っている武器とかに当たって、それが人に当たるかもしれない。

 それに、後ろから追いかけてくる人たちがいる所で呆然自失状態になれば、突き飛ばされたりして大怪我になりかねない。


 路地裏へ歩みを進め、後続が来るのを待つ。


「いたぞ!勇者だ!」


 先頭を走っていた人が見つけて叫び声を上げるのと同時に、俺は駆け出し次の場所へと誘導していく。

 誘導時に大通りを一度横切ったが、周囲に人気は無くなっていた。

 恐らくギルドの方で住民の避難が始まったのだろう。


 再び路地裏を駆け抜け――といっても、追いかけてくる人たちが疲れ気味なのでそれなりの速度だけどね。

 そして、再び広場のような所で待ち構え――と言う事を何度か行った。


 マリアにルートの指示を貰いつつ行っていた。

 結構順調に行けてるなと思っていたのだが、実はベロニカさんが魔法で障壁を張り人数を抑制していたらしい。

 どおりで毎回一薙ぎで無力化できるだけの人数だと思ったよ。


 因みにアオイちゃんはチュンちゃん以外に用はないと言った感じで、俺の行動を常時上から眺めているだけだった。

 まあ、いいんだけど。

 彼女は俺の従者じゃなくてチュンちゃんの従者だからね。


 セクメトリー教徒からの襲撃収まったので索敵魔法で確認するも、住宅内に隠れている一般人は居るようだけど路上に出ている人はこの周辺には居なくなっていた。

 なので、これからの対応を考える為に一旦集まることににした。

 

「とりあえずは状況は収まったけど、あとは司祭をどうにかしないといけないよね」

「恐らくですが、彼が基点となってセクメトリー教徒を暴走させているのでしょうから、彼をどうにかしないと再び同じことが起こると思います」

「でも、その剣でもダメだったんでしょ? 」

「そうなんだよな――」


 フリーダー司祭にはチュンちゃん――韴霊剣が効果が無かった。

 これが効いていれば韴霊剣で解決することが出来たのだけど、フリーダー司祭は当たっても服が切れただけでケロッとしていた。


「なら殺すしかないんじゃない?じゃないとまたみんな操られて同じことが起こっちゃうんじゃない?」

「そうですね。今後のことを考えるとそれが妥当でしょう。どうせ捕縛したとしてもこれだけの騒ぎを起こしたのですから、犯罪奴隷で鉱山送りか処刑でしょうから」

「ッ! それはそうかもしれないが……」


 二人の言葉に俺は動揺してしまう。

 それは、この世界の倫理観と俺が元居た世界の倫理観では違いがありすぎるからだ。

 

 目には目を歯には歯をとまではいかないが、盗賊など犯罪者が襲ってきた場合は殺しても罪にはならないし場合によっては報奨金も出る。  

 盗賊など自分の命が危ぶまれる状況下であれば納得出来なくも無いが、それ以外の場合に個人で無暗に人の命を奪うのは流石に問題があるのではと思ってしまう。

 

「最悪それでも仕方が無いかもしれないど……それでも俺は……」

「そうおっしゃるのであればそれに従います」

「まあ、面倒だけど仕方ないわよね」


 ベロニカさんは目を伏せ、マリアは肩を竦めながらも了承してくれた。

 二人に甘えてしまっている気もするが、流石に人殺しをする気にななれないからなー。


「それと、フリーダーを教会から誘き出す必要があると思います」

「教会から出す必要あるの?」

「マリアは教会がどう行った場所かわかっていますか?」

「どうって……神様に祈りを捧げる場所?」

「一般人ではその程度ですが、司祭などであれば神に拝謁する事が出来ますし神託を頂く場所でもあります」


 そう言えば、俺も前にセクメトリー神と会話したは教会の特別な部屋だったな。

 拝謁するには特別な部屋に行く必要があるかもしれないけど、神託であればもしかしたら教会内であればどこでも受けられれるのかもしれない。

 

「それって、教会内だと神様に覗き見られる可能性があるってこと?」

「概ね正解です。正確には、神々はどこでも見ることが出来ますが教会という特定な場所であれば力を与えたりすることも出来るのです」

「そう言えば、俺も勇者の力を貰ったのは教会内だった気がするな」

「そう言う事です」


 ベロニカさんは俺の言葉に頷き、教会の敷地内での戦闘の危険性を示唆している。

 そうなると、如何にして教会からおびき出すかと言う事なのだけど。


「さっきみたいに近づいて行けば勝手に出てこないかな?」

「何とも言えませんが、先程とは状況が違いますので出てこない可能性はありますね」

「じゃあ、どうやっておびき出すのよ!」

「皆様お困りのようですね」

「誰!?」


 気配もなく突然俺達の近くに人が現れた。

 

「あ、あなたは!」

「またお会いしましたね勇者様」


 そこに現れたのは、タケミカヅチ神の神社であった神主さんだった。

 気配無く現れたことにも驚いたけど――ここって建物の屋上なんだけど……まあいいけど。


「そこの方は異界の神でしょうか――どこかタケミカヅチ神と同じような気配ですが」

「流石チュン。俺っちは日ノ本の国の神の一柱、八咫烏だチュン。タケミカヅチからこの勇者の力になる様に言われたチュン」

「日ノ本! と言う事はタケミカヅチ神と同じ! これは申し訳ございません。私は、タケミカヅチ神のイカザヤム神社を預かる神主でございます」


 タケミカヅチ神と同じ世界の神と言う事もあり、神主さんは畏まって礼をしていた。

 因みにチュンちゃんは今はスズメ形態でアオイちゃんの頭の上に居るので、傍から見るとアオイちゃんに礼をしているみたいに見えてしまう。


「えっと、神主さん?」

「ああ、申し訳ございません。勇者様方がお困りとタケミカヅチ神よりご神託がありましたので、そのお手伝いに参りました。皆様は教会敷地内に入ると神に覗き見られることを危惧されていると思いますが、私はそれを阻害する事が可能でございます。」


 物凄くタイミングよく都合のいい能力を持っている神主さん……まあ、本当に神様がいる世界なんだから何でもありか。

 何か腑に落ちない感じもしたけど、今はその力を借りるしかないのだろう。


「それはとてもありがたいですが、どの程度阻害する事が出来るのでしょうか?」

「神が外から教会を覗くことを阻害する事は出来るのですが、内側に居る者から神に伝えることは出来てしまいます。それと、阻害できる時間も恐らく半刻程となります」


 直接中を覗くことは出来ないけど、フリーダーがセクメトリーに情報を渡すことは出来る訳か。

 それに、半刻――約一時間程の時間があれば何とかできそうだ。

 後は、どうやって無力化するかだけど……。


「神主さんはセクメトリー教の司祭――フリーダーの無力化などは出来ませんか?」

「無力化ですか……いえ、私では無力化は難しいでしょう」

「……そうですか」

 

 やっぱりそう都合よくはいかないか。

 となると、気絶させて捕縛してから領主か何かに突き出すしかなさそうだな。


「……ラ……」

「ん?何か言った?」

「いいえ? 」

「何も言ってないよ?」


 いま誰かの声が聞こえた気がしたけど気のせいかな?


「……シ……もし……なさい」

「やっぱり何か聞こえる」

「あの、シクラ様の腰袋の所から聞こえた気がしたのですが」


 ベロニカさんは、鎧の腰に付けてある革製の袋にから声がすると指摘してきた。

 この袋の中身は――ああ、それでか。


 何が起こっていたか分かった俺は、腰袋から紫色と黄色の二色の宝石を取り出した。


「もしもーし! おーい! シクラ聞こえてるー? おーい、返事しろボケー!」


 取り出した宝石から騒がしい声が聞こえてくる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ