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召喚失敗勇者の異世界放浪旅  作者: 転々
第三章

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失敗勇者と従者

 私はただただ流れる景色を見つめながら、シクラ様との再会出来ることを願い馬車に揺られる。

 最初は商隊や冒険者の人達がいちいち話しかけてくるのが面倒ではあったが、必要な事と割り切り適当に話をするのだった。

 商隊の人達は殆どが男性で私や銀翼の人達へ意味ありげな視線を向ける人たちもいたが、少数居た女性達がそれに気付くと烈火のごとく注意していた。

 彼女たちは皆商隊の方の奥方達で、野営の際に調理などを担当している。

 流石商家の奥方と言うのか、彼女達は話し上手であまり気乗りをしていない私に気遣ってあまり話を振らない様にしてくれていた。

 ただ、少しでも興味がありそうだと話に引き込まれてしまうが――引き際が上手く嫌な思いする前に開放してくれている。

 私は知り合いの男性を探すために旅をしているという事にしているが、確実に彼女たちの中では恋人を探す旅をしていると思われてしまっていた。

 シクラ様の恋人……なれたらどれだけ嬉しい事か……そんな考えを見抜かれているのか、男性を手管にする方法などを事細やかに教えて頂けた。

 私や銀翼の人達が興味津々で聞いていたのも原因かもしれないわね。

 少し退屈と思っていた道中が少し楽しく思えたのだった。

 そして数日後――私の目に映るのはイカザヤム街だった。

 



 加護のありきたりな単純なパワーアップもさることながら、勇者との魔力的なパスが繋がりなんか色々出来るらしい。

 出来るらしいというのは、神主さんは流石にそこまで詳しい事は知らないみたいだった。

 一応ベロニカさんが前回の従者から多少聞いていたらしく、少し説明してもらった。


 まずパワーアップの件では、元々剣術を使っていた鉄等級クラスの従者が単銀相当まで強くなる程だとか。

 基礎魔法の簡単な者しか使えなかった者が応用魔法で超越に近い威力で放つことが出来、何らかの条件があったみたいだけど超越魔法も使ったんだとか。


 魔法についてはアイリスがそれにあたり、ほぼ魔法が使えなかったのに従者になったことでかなり自由に魔法が使えるようになったとの事だ。

 それに、三段階ある基礎、応用、超越は、魔法の理解度などでそれぞれ使えるかどうかなので、従者となり知識を得たアイリスが現在でも応用魔法が使えるのはそのためだ。

 剣術の方も力などは元に戻ってしまうが、感覚的な物は残るので従者で無くなった後もその辺り関係ないらしい。


「従者になると言う事でわかっていることは……こんな所になります」


 最後にまだ少し間があって何か他にもあった様だけど、この場で言う必要が無いのか言わない方が良い事なのかもしれないので、俺はそれを聞かない事にしてベロニカさんに説明の感謝を告げた。

 

「――従者になると強くなれるのね。私でも……強く……」


 そして、その話を聞いていたマリアは神妙な顔つきでつぶやく。

 マリアは人と獣人のクォーターなのだが、その血筋のおかげで俊敏性と危機感地能力は高い。

 だけど、混ざっているのが――おそらく兎人――と思われ、筋力が殆ど普通の人と変わりが無いのだ。

 そのせいもあって考え込んでいるのだろうけど、今の現状でも皆の役に立ってくれているので無理しなくても良いとは思うんだけど。

 まあ、その辺りは本人に任せるしかないかな?


 それに、この辺りの事は従者だったアイリスが居れば詳しくわかるんだろうけど。

 流石に今接触するには色々と面倒事が起きるので無理そうだから無理だね。

 他に知って居そうなのは元従者で現キサナガ王国王太子妃のハンナさんだけど――勇者と言う事を隠した状態では会う事は出来ないだろう。

 まあ、勇者ですと言って会いに行ったとしても、現在勇者が召喚されたと言う事は周知されてはいないし確認の取りようもないのでまず無理だろう。


「従者になれば強くなれると安直に考えてはだめですよ。勇者の従者になると言う事は今後シクラ様が立ち向かわれる苦難の道を共に行かれる覚悟が必要です」


「私は……トマと一緒に居たいんです。そのためにトマの邪魔にならない程――強くなりたいんです」


 神主さんが釘をさすように言った言葉に、マリアは少し考えた後凛とした表情で神主さんに言葉を返した。

 その言葉を聞いた神主さんは小さく一度頷いた。


「その後覚悟があるのであれば、後はシクラ様とご相談してお決めになさるのがよろしいでしょう。しかし……いえ、これは私から言う事では御座いませんね。マリア様、どのような事になろうともシクラ様を御信じください」


「はい! そのつもりです」


 神主さんは自分でマリアに従者にならないかといいつつも、マリアを試すような事を言っていたのが少し気にはなるけど――まあ、従者になれば簡単に強くなれると言う事を気にして言ったのかもしれない。


 二人への話はこれで終わりらしく、その後は普通に雑談をして神主さんと別れた。

 とりあえず宿ヘ戻ろうかと話し戻ったのだけど、終始緊張している感じのベロニカさんの事が気になった。

 だけど俺が聞いても「いえ、大丈夫です」としか言ってくれないので、何か気を遣わせてるのではないかと心配になった。





 宿の部屋に戻るとグランツは居なくなっており、机に書置きでエリク達の様子二人で見に行って来るとあった。

 神社で話をしていた続きをするにはちょうど良いと思って、二人にそのまま部屋に入ってもらう。


「封印の事はグランツ達が戻ってからでいいと思うから、まずは従者についてかな?」


「トマ。私はトマの従者になりたい。今の実力だとトマの横に立つにはふさわしくないと思うから」


 マリアはハッキリとした口調で俺の従者になる事を宣言してくる。

 ぶっちゃけて言えば、マリアが強くなって一緒に来てくれるのは有難い。

 

「マリアの気持ちはわかったよ。実際の従者を見たことのあるベロニカさんは従者について何か知ってます?」


「そうですね。前勇者様の従者は元々勇者様の従者になるべくして訓練された方たちで、全員が貴族階級なのに鉄等級程度の実力という少し特殊な感じでした。ただ、皆さん身分や立場で対応を変える様な方たちではなく、勇者様の従者らしい方たちでしたから」


 なるほど、皆貴族階級と言う事は全員最低限の礼儀作法などを身に付けているだろうし、人柄もかなり良い人ばかりだったみたいだね。

 

「ただ、戦闘面での実力があるかといわれると――やはり同程度の冒険者達よりも少し劣る感じでした」

 

「同程度と言うと俺と同じ単銀クラスですか?」


「彼らに比べるとやはり一段見劣りする形でしたね。やはり力はありますが実戦経験不足という所は否めないかと。その辺りを考慮すると、マリアさんなら経験もありますので従者に成られれば確実に強くなられるかと思います」


 そりゃそうか。力だけパワーアップしてもそれを扱うだけの技量が伴わなければ実際に強いとはいえないよね。

 とは言え、最低限自力さえあればそれなりの実力にはなれるみたいだね。

 それにしても、何でパーティなら銀等級なのにそれとは別に単銀と呼ばれるのか不思議な感じではあるよね。

 

「そうなると、マリアなら単金級? になるって事かな?」


「いえ、単金級というのはないんです。しかし、銀等級の方が従者になっても恐らく白金ではなく単銀も等級になるかと思います」


 詳しく聞いてみると、金等級や白金等級と言うのは中々なれない物らしい。

 冒険者は薄銅、銅、鉄、銀と上がって行きそのまま金――とはならず、単銀級と呼ばれるようになる。

 そして、銀等級のパーティがギルドや国への貢献によって金等級に昇格を許される。

 更に、金等級に上がった冒険者が災害級と呼ばれる街を一匹で破壊できる魔物や悪魔など、討伐戦に参加し一定以上の戦果を認められると白金級に上がることができる。

 白金級は他にも上がる方法はあり、前勇者が参加した魔王との大戦での戦功などでも昇格可能だとか。

 白虎の人たちがこれに当たるが、トラオウさん達のような猛者であっても悪魔と戦って勝つことは難しいので、実質白金級というのはほとんど存在しないらしい。

  

「そうなると、マリアも俺と同じ単銀級になるのか」


「クラス的にはシクラ様と同等になりますが、実力差はあると思います」

 

「それはそうよ。私の実力がある程度上がった所でトマに勝つことなんて出来ないわよ。そもそも超越魔法も使えて騎士クラスの剣術が使える魔導士なんて見たこと無いわよ」 

 

 あきれたように言うマリアに俺は笑いでごまかしておく。 

 そう考えると一般的な冒険者の最高位は単銀――単体銀等級になる。

 それ以上の等級は強くてもすぐにはなれないので、実際の実力差がかなりあるみたいだね。


「強さとしてはそれほどでもなかったのですが、団結力と勇者様への忠誠心はかなり高かったですね」


 団結力と忠誠心か――団結力はいいとしても忠誠心は必要ないよね。

 まあ、ここは本人たちの資質の問題だとは思うから従者になったからと言うわけではないだろう。


「私が知っているのはこの程度ですかね」


「ふむふむ……これだけだとメリットしかないんだけど、デメリットとかはあったりしないのかな?」


 今聴いた話ではいいことしか言っていない気がしたので確認したんだけど、ベロニカさんは特に聞いた事がないと言った。


「――っあ! 一つだけありました。確か従者の方のステータスは勇者様に筒抜けになると言うことです」


 ステータスとはまた……ファンタジーがゲームになったかのような言葉だな。

 いやいや、もしかしたら俺の予想と違うステータスなのかもしれない。


「ステータスって何がわかるの?」


 一縷の望みをかけて確認してみた。


「シクラ様はご存知ありませんでしたか? ステータスとはその人の身体能力などを数値化して表したものや、所属や偉業などが書かれているものだそうです」


 ダメだったー! どこから来たんだよステータスって!

 この世界って異世界のファンタジーって感じだと思っていたのに、これじゃあファンタジーRPGゲームみたいな世界になっちゃうじゃないか。

 

「マジカヨー」


 俺はうなだれながら一人つぶやく。

 その様子に二人が困惑しているようだったので、一応すぐに立ち直った振りをして「ナンデモナイデスヨ」と二人にぎこちなく伝える。

 はぁ……神は死んだ。


 いやまあ、本当の神様はいるみたいだけど比喩的表現の絶対的な視点はいないと言う意味でだけど。


「ええと……大丈夫ですか?」


「ああ、うん――大丈夫。それで、従者になるとステータスがみられるんだっけ?」


「そうです。但しこれはその勇者の従者のみ該当するらしく、他の勇者の従者のステータスは見ることが出来ないとのことです」


 ですが、今はシクラ様しかいらっしゃいませんがとベロニカさんが小声でつぶやいていた。

 そっか、いつもは二人の勇者が召喚されているんだっけ?

 前回の勇者も一人で今回も俺一人……まあ、手違いで後から召喚されたんだけど、普通はふたりなんだよね。


「それとご存じないかもしれませんが、他国に入国や王都などで簡易ステータス調査の魔法道具で検査されます。それに、領主などの特定の人であれば簡易式ではない魔法道具を扱えますので注意が必要ですね」


「なにに注意が必要なの?」


 別に俺はセクメトリーから逃げてはいるけど、別にお尋ね者ってわけじゃないよね?


「それは、シクラ様が勇者だからです。簡易式でも見抜かれる恐れもありますが、正式な方であれば確実に見抜かれてしまいます。それに従者と言う事もステータスでわかりますので、従者になるのであればそこも注意が必要です」

 

 中々面倒な代物の様だけど、全ての国で入国の際に必要と言う訳ではないらしい。

 ユピリルとイカザヤムは別の国ではあるが関所などは無く、街に入る際にもチェックなどは無かった。

 国や入国場所によってあったりなかったりするらしいが、イオリゲン王国やウグジマシカ神聖国の関所には設置されているとの事だ。

 まあ、所謂大国と呼ばれる国だけに設置されているらしい。

 俺が向かおうとしている海岸沿いの方であればチェックが入るのは、ウグジマシカ神聖国を除けば一国だけらしい。


 ウグジマシカ神聖国はいいとしても他の国であれば確実に問題になる。

 そこで、このステータス回避する手段として韴霊剣で勇者の力を封印をすることで簡易式の方は回避が可能になるらしい。

 らしいというのはベロニカさんもタケミカヅチ様より聞いただけで、過去に誰もそのような事をして居なかったのでわからないそうだ。

 因みに、従者のステータスも韴霊剣で封印可能だそうだ。


「そういえば、韴霊剣はベロニカさんが持っているって事だったけど見せてもらう事って出来るのかな」


 封印に必要な韴霊剣を一回見ておきたい――というよりも、神話級の宝剣を見てみたいというのが本音だったりもするんだよね。


「あ、そ、そうです。えっと、その……韴霊剣を取り出すには……その……」

 

 俺の言葉にベロニカさんが口籠りながら顔を段々と紅潮させていく。


「ベロニカちょっとこっちに来て」

「え、あ、はい……」


 俺は頭を傾げたのだが、マリアはその様子が気になったのかベロニカさんを呼んで壁際にでこそこそと何か話している。

 俺の方をチラチラ見ながら何か話している様だが、段々とマリアの方も顔が赤くなっているように見みえる。

 何となく不穏な気配を感じつつも、俺は二人の会話が終わるのを待った。


「お、おまたせしました……そ、それでは韴霊剣をお見せしたいと思うのですけど……」


「ん? どうかしたの? 」


 少し俯きながら上目遣いで俺を見つめた後、一度視線を外してマリアを見て小さく頷く。


「はいトマこっちに来て座ってね! 今からベロニカが儀式をするからね!」


「ちょ、いきなりなんだよ……まあいいけど、座ってればいいのか?」


 急に後ろに回ったマリアに両腕を抑えられ、後椅子に強制的に座らされる。 

 座った後もマリアが俺の両腕を抑えたままで、おとなしくしているように言われそれに従う。

 

 一体何をしようとしてるか分からないけど、二人で話した結果がこれなのだろうから指示には従っておく。


「それで、この後俺はどうすればいいんだ?」


「これからいいというまで、絶対に! ぜえぇぇぇったいに! 目を開けちゃだめだからね! 何があっても絶対だよ!」


 いつもとは違い物凄い剣幕で目を開けるなと言われ、俺はコクコクと首を振った後目をギュっとつむる。

 一体何が起こるのかと考えつつしばらく待っていると、何かが擦れる音が耳に届いた。


 そして、俺の顔をベロニカさんが両手包んだ後――過去に感じたことのない柔らかな物に包まれた。

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