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召喚失敗勇者の異世界放浪旅  作者: 転々
第三章

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失敗勇者と神殿

 冒険者から仕入れた情報は確証は得なかったが、シクラ様である可能性が十分にある情報だった。

 なんでも、半年ほど前に急に現れた黒髪の魔導士で単銀クラスの強さ、名前はシクラではなくトマ――おそらくトウマと言う名前からとった偽名でしょう。

 そしてギルドに一緒に来ていた鉄の盾と言うパーティに加入しており、今は別の街に向かって行ってしまったとの事だ。

 ただ、同じパーティに所属していたメンバーが街に残っているとの事だったので、その人の所へと向かってみることにした。

 街の外れにあるそれなりの大きさの道場いる元鉄の盾のメンバーに話を聞くことが出来たのですが、容姿はシクラ様と似ている感じがするのですが、剣を使わずに魔法主体で戦っていたとのことでした。

 確かにシクラ様の魔法であればよっぽどの魔物は問題ないはずですが、元々剣の勇者としての能力で剣の方が得意だったはずなのです。

 名前も似ていますし強さも常人よりも強かったこともありますので、私はこのトマと言う冒険者がシクラ様の可能性があると信じ探しに行くとこにしました。


「必ず見つけ出して見せます、シクラ様」


 そして彼女は歩き出す、トマと言う冒険者を探すために――。


 

 


 一晩野営した後、俺達はイカザヤムの街に到着した。

 イカザヤムの街は城壁気に囲まれた城塞都市で、城壁の高さもユピリルとは違い十メートル程ある。


 大量に盗賊を引き連れたまま街に行くのは色々問題があるだろうと言う事で、グランツが先行して街に行きギルドへと報告へ向かってもらった。

 そのおかげか、街が見える辺りに俺達が付くころには門前には大勢の冒険者やギルド職員たちが待ち構えていた。

 グランツの報告をあまり信じていなかったのか、俺達が引き連れている盗賊たちの人数に皆驚いて目を見張っていた。


 街にたどり着きギルド職員たちに盗賊たちを任せようとしたのだが、衛兵達とギルドの職員たちが少し揉めていた。

 しかし、後から他のギルド職員達を引き連れた真っ赤なローブを着た明るい金髪の女性がやってきて、衛兵達と話をすると急に怯えた様な表情をしてギルドに盗賊たちを引き渡していた。


 俺がその女性を視線で追っていると隣からグランツが「あれがこの街のギルマスだ」と教えてくれた。

 そして、この街で絶対に逆らってはいけない人だとも教えてくれた。

 

 女性はローブを着ているせいで体型などはわからないが、顔を見る限り三十代後半くらいに見える。

 服装などから魔導士であるのだろうが、周りに指示ている表情は穏やかで母性を感じさせる雰囲気を醸し出している。


 俺の視線に気が付いた女性がひらひらと手を振った後、近くの職員から何か耳打ちされて頷いていた。

 一瞬視線が鋭くなった気がするが、その後隣の職員と何やら話した後その場を去って行った。


 ギルマスと話をしていた職員がこちらへと向かって来て、ギルドへ報告へ来て欲しいと言われたので皆で向かう事にした。

 皆と言うのは鉄の盾+αのベロニカさんとエリク、ルーシーの三人だ。

 ベロニカさんの護衛として雇われていた冒険者達は今朝には意識を取り戻していた。

 多少まだふらついたりする感じもあるが、流石にこのまま連れて行くには問題がありそうなので護衛完了と言う事で解散させた。

 エリク達が少し心配そうに見つめていると、空元気を出してこちらに手を振りながら街に入って行った。



 街に入ると大量の盗賊たちが捕縛されたことが噂になっていたのか、門の当たりには人だかりが出来ていた。

 街に人達が何かぼそぼそと話しているが、何を言っているか分からなかった。

 ただ、表情を見る限りあまりいい話ではなさそうだけど、流石に今は話を聞くことが出来そうになさそうだ。


 少し気になるけど、ギルド職員の後に付いて街を歩いて行く。

 到着したのは石造りのかなり立派な建物で、外観を見た限りでは三階建ての建物だ。

 ユピリルにあった冒険者ギルドとくらべるとかなり豪華なつくりだね。

 ベロニカさんの乗ってきた馬車を他の職員に任せ、先導してきた職員の後に付いてギルドに入る。

 ギルド内には人気が無く受付に職員が数名居るだけだった。

 恐らく盗賊移送の件で冒険者たちが駆り出されている為だろう。

 職員の先導のまま俺達はギルドのロビーを横切り、部屋の隅にある階段でそのまま三階まで上がっていく。

 

 三階上がり廊下を進むと、彫刻の施された豪華な扉が現れた。

 職員がその扉をノックすると中から女性の声で応答があり、職員に続いて俺たちもその部屋へ入っていく。

 部屋は少し小さめの事務所のような広さで、正面にある執務机には先ほど門前で見た女性がこちらを向いて座っていた。

 

「ようこそ鉄の盾の皆さん。私がイカザヤム冒険者ギルドのマスターをしているリコリスよ」


 彼女が俺達に座るように促した。

 グランツ達は背筋を伸ばして緊張しているようだが、俺は特に気にせず普通に腰をかける。 

 ベロニカさんも同様に普通にしているが、その横に座るエリクとルーシーはガチガチに固まっていて少し可愛そうな気がした。


「さて、皆さんにここにきてもらったのは――外の騒ぎの件といえばお分かりになるでしょうか?」


 ギルドマスターの用件は、予想通り大量の盗賊を連れてきたことだった。

 まあ、それ以外にここへ呼び寄せる理由は無いよね。


「その件でしたら自分が説明しますね」


 俺はギルドマスターに俺たちがベロニカさん達を襲っていた盗賊を見つけた状況と、俺が盗賊たちを捕縛したことを説明した。

 にこやかな表情をしながらも目だけは真剣に俺の方を向けながら、俺の説明を最後まで聞いていた。

 その後少し黙考した後小さくうなずき、今度はベロニカさんへと顔を向ける。


「今の説明であっていますか?」


「私が確認できていない森の中などはわかりかねますが、その後の周囲の盗賊を捕縛したときの状況は間違いありません」


「……そうですか。ベロニカが襲われた原因はやはりアレのが原因でしょうか」


「それもあるかと思いますが、もしかしたらそちらに居るシ――トマ様と合流するのを阻止する為かも知れません」


「トマ様? あなたが探していた人は……いえ、そういうことですか」


 その言葉にリコリスさんこちらへ向きじっと俺の顔を見つめ、なにかわかったのか納得した顔をした。

 ベロニカさんはリコリスさんとは初対面じゃないみたいだから、たぶん俺のことも何か話していたのかもしれない。

 召喚された勇者ってことは話していないとは思うから、合流する相手の人相を伝えていたんだろう。


 それにしても、ベロニカさんが襲われた本当の原因は何なのかな。

 俺と合流して困ることがあるのかわからないけど、どこかで俺を探しているベロニカさんの情報が漏れたのかもしれないね。

 二人の会話に出てきたアレが気になるけど、言葉にしないということは重要なものだろうから流石にこの場では聞くことはできそうもない。


「わかりました。皆さん退出されてかまいませんわ。ああ、ベロニカとそこのトマと言う人は残ってください」


 俺はベロニカさんに視線を向けるとうなずき返して来たので、問題なさそうなのでグランツたちに大丈夫だとうなずいた。。


「じゃあ先に宿を取っておくから、決まったらマリアに迎えに行かせるよ」


 そう言ってグランツたちはさっさと退出したが、マリアが心配そうに最後までこちらを見ていた。

 ベロニカさんが大丈夫といっているので、心配要らないよという意味を含めてマリアに笑顔を向けておいた。


 そうして、部屋にはギルドマスターのリコリスさんとベロニカさん、それと俺だけが残った。


「それで、ベロニカ。これは一体どういった状況なのですか?」


 リコリスさんは先程とは違い、くだけた口調でベロニカさんに話しかけた。

 ベロニカさんも同様に普通の口調で話し始めた。

 先ほどまでとは違い、表情などもギルドマスターとしてではなく友人と話しているような感じだね。


「ごめんなさいリコリス。先ほど話したように急に盗賊に襲われたのよ。その時にこの方――トマ様に助けて頂きまして」


「それはわかっています。ですから、この方があなたの目的の方で良かったのです?」


「……そうです」


「そうなのですね。よかったですわ」


 そして、どうやらベロニカさんが俺を探していたことを知っていたようだ。

 見た感じ、ベロニカさんが目的を達する事が出来て本気で喜んでいるみたいだ。

 

「先ほどは失礼いたしました勇者トマ様。私は冒険者ギルドイカザヤム支部のギルドマスターをしておりますリコリスと申します」


 恐縮したように頭を下げるリコリスさんに慌てて話しかける。


「あ、いえ。トマは偽名なのでシクラで大丈夫です。それに、勇者と言う事もあれなので……普通に呼び捨てで良いですよ。それに、今ここに居るのは只の冒険者ですので、敬語も必要ないですから」


「わかりました。それでは、シクラさんとお呼びしても?」


「はい大丈夫です」


「私はベロニカからある程度の事情をお聞きしていますが、シクラさんの方からも教えて頂いてもよろしいですか?」 


「……そうですね。まずイオリゲン王国に召喚され……」


 俺は一通り召喚されてから今までの経緯を説明した。

 ただ、リコリスさんがどの神を信仰しているか分からないし、あぶなそうなガーネット達の話は省いてある。

 悪魔が元神だとか言っても信じれない可能性も高いから、イオリゲン王国で悪魔のゲートをくぐったらユピリルに出たことにした。


 二人は俺の話を静かに耳を傾けているが、表情が微妙な感じになっていた。

 

「あの、シクラ様。リコリスはタケミカヅチの信徒で、神々達の話は既に知っております」


「そう言う事ですか。私はタケミカヅチ様の信徒でベロニカから詳細な話は聞き、シクラさんを支援させて頂きたいのです。それに、おおよその冒険者はタケミカヅチ様の信徒であることが多いですよ」


 そう言えば、前にグランツ達にもそんなことを言われた気がするな。

 でも、冒険者だから全員が全員タケミカヅチ教の信徒と言う訳でもないのだから、その辺りは注意しておかなければいけないだろう。


「では、その事を踏まえて……」


 先程誤魔化したガーネットやアメトリンについても二人に話をする。

 その内容にに二人とも驚きを隠せない様だった。


 不思議に思ったのだが、二人ともガーネットの事は知っていたが既に他の神であるアメトリンと会っているとは思っていなかったみたいだね。

 そして、全て話し終えた後リコリスさんから一つ提案された――それは。


「タケミカヅチ様の神殿ですか」


「はい。お話をお聞きする限りではシクラ様はまだ一度も伺ったことが無いよご様子ですから、一度寄って頂いた方がよろしいかと思いまして。」


 その言葉にベロニカんも首肯していたので、後で一度寄ってみますと返事をした。

 大体どこの街にでもあるらしいんだけど、この辺りは大きさが小さい為気付かなかったんでしょうとのことだった。


 二人にこれまでの事と今後の事を話し終え、その場を後にする。

 帰り際にリコリスさんとベロニカさんが少し何か話していたけど、流石に聞き耳を立てるのはどうかと思ったので先に階下に降りておく。


 ギルドの一階に降りると先ほどとは違い冒険者であふれており、皆何故かほくほく顔をしているのが見て取れた。

 

「トマ! 」


 ギルドの様子を眺めていると、俺を見つけたマリア手を振りながら近づいて来る。

 周りの冒険者達も俺の事に気が付き、何やら視線が集中してくる。

 何だろうと思っているうちにマリアが人をかき分け、俺の元にたどり着いた。

 少し気になるけど用事があるなら向こうから話しかけてくるだろう。

 

 グランツ達は宿取り、昨日は野営だったこともあり先に休むとの事だった。

 そして、エリク達は兄さんたちが心配だからと言って、家に――というか養護院に帰るとの事だったので別れたそうだ。一応今晩一緒に食事をするという約束はしてあるらしい。


「それで、何の話だったの?」


「ああ、今までの経緯を話していただけだよ」


 流石にこの場で詳しく話すわけにもいかないので適当に言葉を濁す。

 マリアもそれは承知しているので「そうなんだ」と言って頷いていた。

 

 その後、ベロニカさんが降りてくるまでしばらくマリアと会話をしつつ時間を潰した。

 その間も多少視線を向けられてくることはあったが、嫌悪的な視線ではなく羨望に近い感じの気がしたので無視する事にしておいた。

 

 後で聞いた話だが、大勢の盗賊を俺が捕まえてきたために冒険者達が移送依頼があって簡単なのに美味しい仕事になって俺達に感謝していたらしい。

 しかも、普通は中々面倒な移送なのに今回の盗賊たちは従順に牢へと入って行き、短時間の臨時収入を得れたてほくほくだったんだと。

 因みに、報酬は銀貨一枚だったらしいので、そりゃ美味しいわと思ってしまった。



 そして、五分程した後ベロニカさんが降りてきたので、合流してギルドを出る。

 グランツが取った宿に一度寄った後、タケミカヅチ様の神殿に向かうことにした。

 疲れているだろうから休んでていいよと二人に行ったのだけど、一緒に行くと言って譲らなかったので三人で向かう事になった。


 そしてタケミカヅチ様の神殿は――まるっきり神社だった。

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