表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚失敗勇者の異世界放浪旅  作者: 転々
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

78/220

失敗勇者とダンジョン下層

 巫女の人の先導に付いて私は砂利が敷かれた道を歩いて行く。ジャリッジャリッと()()()の足音のみがあたりに響き渡る。

 二人――私と先導する巫女の二人しか今この場に居ない。

 私は巫女に言われるがまま門をくぐれたのだが、アイリスが門をくぐろうとしたら何か壁のような物に当たったかのようにしてはいる事が出来なかった。

 アイリスは眉間に皺を寄せた程度だったのだけど、巫女の人の視線は先ほどよりもさらに鋭く物凄く冷たいように感じた。


「……相変わらずのようですね。それでは参りましょう、タケミカヅチ様がお待ちになっております」


 一瞬どうしたら良いのかわからずアイリスの方へ視線を向けると、彼女は一言「ベロニカは行ってください」とだけ言い門を後にしてしまった。

 

 そのまま促されるまま歩いて来たのは良いのですが、巫女の方はそれ以降一言も喋らず黙々と歩いて行き、私はこのまま本当について行っていいのか迷いだしたのだが。


「そろそろ付きます。この先の神殿入り口で履物を脱いで頂いたあと、中へお入りください。中では中に居る者にしたがって下さい」


 巫女の人はそう言いながらニコリとほほ笑んだ後、来た道をそのまま戻って行ってしまった。

 

「……笑った? なぜ?」


 アイリスにあそこまで冷たい巫女が何故と考えようとしたが、今はそんな事よりも拝謁することが先だと思考を振り払い言われた通り中へと入って行く……そこには――。






 三人が風呂に入っている間にグランツとエリクに見張りを任せ、俺は一人最下層への階段へと向かった。


 最下層――前勇者でもある妹と従者たちが先に勧めなかったといわれている、このダンジョン最難関の場所……と言われている所ではあるのだが。

 実はこの最下層、ある条件さえ満たせば誰でも簡単に行き来できるのだ。

 

 最下層へと続く通路を歩きながら道中の魔物を倒していくが、魔石持ちでもない魔物の実力はそれ程でもなくサクサクと解体せずに収納しながら通路を歩く。

 魔石持ちトロールを倒したことから比べて魔物の行動や弱点などを色々わかってきたからかもしれないが、このダンジョンの中層では銀級で装備がしっかりしてさえいれば問題なく狩りが出来る感じかな。


 キャンプ地から十数分駆けた所に最下層へと向かう所があるのだが、そこには漆黒の巨大な扉が佇みこの扉には物理的な攻撃や魔法は一切通じない――過去に全力で魔法を使ったけど傷一つ付かず、今はグランツが持っている剣ですら全く歯が立たなかった。


 その理由はこの奥にいる……まあそれは追々わかるとして、その破壊不能の扉を開く条件は簡単に言えば異世界人――というよりも、日本語を読むことが出来てこの世界発祥神々を信仰していない事だ。

 ある意味普通の日本人であれば、ほぼ誰でも侵入可能な場所なのである。

 この世界でも日本語は読める人は少ないが存在するし、この世界の神々を信仰していない人は確かにいるのだが、その両方に当てはまる者はこの世界の人々の中にはいないだろう。




 俺は扉の前に立ち、扉に刻まれている日本語の問い……それは。


「好きな漫画のタイトルを一つ答えよって、どう考えてもまともじゃないよな……」


 ため息を付きつつも、俺はこの世界に来る前によく読んでいたデ○マと呟く。

 すると漆黒の扉が内側に開き最下層へと続く階段が現れた。

 

 階段は少し薄暗く何となく嫌な感じもするのだが、別に罠などがあるわけではなく普通に降りていけるので問題ない。

 ただ……この先にいる――の相手をするのがすこーしばかりメンドクサイのであまり行きたくないのだが、一応行かなければならない理由もありため息を付きながらとぼとぼと階段を降りていく。


 しばらく階段を降りると再び扉が現れるが、この扉は常識内のサイズで縦横二メートル程の木製っぽい扉だ。木製っぽいというのも、これも同様に破壊できないらしいので何の素材で出来ているか全く割らないからだ。


 俺は扉の前に立ち、気を取り直した後ノックをする。


「あは! シクラよく来たね。 アイテルから入っておいで」


 扉の中からは少し上機嫌な女性の声で入室を許可する返答が聞こえてくる。

 俺は意を決して扉に手をかけ、押し開くように扉を開ける……そこには、ダンジョンの中とは思えない程の明るさで一瞬目が眩む。

 目が慣れてきて扉の中を覗くと、そこには何もない平原が広がっていた……いや、平原の先に一応建物があるのだが遠すぎてここからでは良く見えないのだ。


「アメトリン、ゲートが遠すぎるんだが…… 」


 俺が肩を落としながらつぶやくと、目の前に黄色と紫のもやっとしたな得体のしれない物が――まあ、これはゲートなんだけどね。

 前に入ったゲートとは違い、真っ黒ではなく淡く黄色と紫色の光を放っている。 


「何が得体のしれない物だよ! 入らないんだったら閉めちゃうぞ!」


「へいへい、私がわるう御座いました。というかナチュラルに思考よ読むのやめろって!」


「あーついな。まあ、気にするな! 男がそんな細かいこと気にしてると嫁が出来んぞ! そしてハゲる!」


 まったく、相変わらず騒々しいな……おっと、あんまり変なこと考えて本当に閉められては面倒だ。

 俺はそそくさとゲートを通過し、あの長距離を走らされずに済んだ。

 

「よう、久しぶりだな! お前がダンジョンに居たことは知ってたんだけど、私から行くわけにはいかないからな」


「絶対に来るなよ! お前が来たらダンジョン内は大惨事になるし、ギルドや周辺の街が大騒ぎ……に……な……ななななな、なんて格好しているんだ!」


「んあ? 別にみられても減るもんじゃないし気にするな」


 アメトリンの軽口に付き合いながら返していた俺の視線に入ってきたのは……その当事者の半裸だった。

 俺は後ろを向きながらアメトリンに文句を言うが、彼女は気にした様子も無く手をパタパタさせてまったく気にしていない。


 うん、半裸……まあ、一応下の部分は隠しているが、女性が全く恥じらいも無くショーツしか纏っていない状態でビーチベットの上に寝転がっていた。  

 あまりみない様にしていたが、胸元の綺麗に整った大きすぎず小さすぎない理想的な……って、そんなこと考えたら――


「うふん。なるほどなるほど。私の体はシクラにとって魅力的な体系なのか」

 

「うひぃ! な、何してやがる!」


 一瞬で気配が俺の真後ろに現れ、からかうような声と背中に柔らかな物が当たる感触がする。

 この世界である程度女性に対する耐性が付いたとは思うが、流石にこっち系の耐性は未だに付いておらず変な声が漏れてしまう。

 

「あはははは。ほれほれ、理想的な物が当たってるぞー……あ」


「いい加減にしなさい!!!」


「うきゃぁ!」


 怒鳴り声と共に俺の背中にあった幸せな感触が無くなると同時に、アメトリンが悲鳴を上げる。

 

「ごめんって。ちょっとからかっただけじゃない」


「――今のがちょっと!? 」


「はい、すみませんでした! 今後このような事は致しません!」


「……はぁ。とりあえず服を着なさい。そんな恰好じゃシクラが話が出来ないじゃないの」


 誰が来たのか声でわかっているのだが、今俺が何か言うと藪蛇になりそうなので後ろを向いたまま無言を貫いておこう。

 そして背後から淡い光と緩やかな風が吹いた。恐らくアメトリンが魔法を使って服を着たのだろう。


「もうこっちを向いて良いわよ」


 俺が振り返るとそこには二人の美女が――まあ、一人は中身が残念だけど――二人に合ったドレスを着て俺の方を見ている。

 一人はさっきから騒がしかったアメトリン。

 彼女は人懐っこそうなボーイッシュな雰囲気をしており、黄色と紫色の二色のグラデーションのかかった髪を肩辺りで切りそろえている。

 そして特徴的なのは、左目が紫色で右目が黄金の様な黄色をしたオッドアイなのである。

 少しやんちゃそうに見える彼女に合わせたかのようなドレスは、見た目の美しさよりも動き易さを重視した形のようだ。

 今はドレスを着ているので体型はわかりずらいが……うん、かなり良いスタイルをしている。

 

 さて、途中から乱入してきたもう一人だが、血の様な真っ赤なドレスを纏い燃える様な赤い瞳に炎のような色の髪をした――俺をユピリルまでゲートで転送してガーネットだ。

 彼女が何故ここにいるのかというと、ここも神の領域に他ならないからだ。


 あの残念なアメリトンも彼女もこの世界の旧神の一人で、この世界では珍しく自分の領域であれば侵食を受けないらしい。

 侵食を受けないというのは語弊があるが、それは彼女が浄化と金運の神なので、五柱の神の浸食を受けても自領域にさえ戻ればその権能で浄化されて元に戻れるんだとか。

 因みに、彼女自身は悪魔化したとしても意識を完全には乗っ取られてはいないのだけど、完全に反抗できるわけでもなくある程度制御が出来ると言った事らしい。

 感覚的にはものすごく寝ぼけている状態で物事を進めるような事らしい。

 

 アメリトンの領域は自分以外の神にも効果があり、ガーネットもこの領域にいる間は完全に元に戻れるのである。


 そして俺が初めて会ったあの悪魔マウシルと言う悪魔の正体こそ、このアメトリンだったのであるのだが……同一人物とは思えないほどの変貌ぶりである。

 まあそれでも誘導は出来ていたようで、実力を試すと言った感じに誘導できるていた。そうでなければ森での下級悪魔とに戦闘で、白虎の誰かしらは再起不能もしくはそれ以上の状態になっていただろう。


 なんか少し脱線した気もするが、ここはアメトリン神の領域であり旧神達が来ることができれば浄化可能な特別な領域で、領域内であれば意識が保てるようになったガーネットが俺を通じてこの領域へ城下の為に定期的にやってきているのだ……それともう一つ理由はあるのだがそれは――。

 

「ガーネット久しぶりだね」


「久しぶりねシクラ。それで、これからの事は決めたのかしら?」


「いや、まだ詳しい時期については話をしてはいないんだけど、そろそろ金銭的にも余裕が出てきたから切り出してみようかと思ってはいるよ」


「……そう。でも、あなたは本当にそれでいいのかしら? あなたがウグジマシカ神聖国に向かうと言っても他の皆が付いて来てくれるとは限らないのよ?」


 俺はそろそろタケミカヅチ神に拝謁した方が良いかと思い、今のユピリルからウグジマシカ神聖国に向かおうと考えているのだ。

 ガーネットと初めて会った時に話をした他の神々への対処、俺がこの世界に残ると決めたことについてタケミカヅチ神に話をしに行くためである。

 ここからウグジマシカ神聖国に向かうには幾つかルートはあるが、大陸の真反対まで向かうため数か月は移動にかかる旅路になる。

 抜け道があるにはあり、それにはある種族の協力必須になるのだが俺自身がその種族との会い方を知らないため、陸路で街道を進むか海路で大回りしながら向かうかの二通りに絞られる。

 

 陸路は徒歩か馬車での旅になり費用は安いが時間が掛かり、海路は交易船に乗船し色々な街を経由しながら向かうのだが、ウグジマシカ神聖国まで向かうとなるとかなりの金額が必要だ。

 一応どちらでも問題ない程度の費用は稼いでいるし、陸路なら道中で魔物退治などして稼げばいいし、海路でもアイテムボックスの事を公にすれば問題なくなるだろう。

 ただし、アイテムボックス持ちと分かると色々面倒事に巻き込まれる可能性もある為、可能な限り陸路で移動しようと考えてはいる。


「出来れば鉄の盾の皆で行ければとは思っているけど、最悪一人でも――何とかなるだろうしね」


「鉄の盾って、始めてここに来た時に一緒にいた子達だったよね? あの子達なら頼めば一緒に行くんじゃないかな。あの、なんだっけ? シクラと仲が良いあの子は絶対来てくれると思うよ」


「……まあね。ただ、強要はしたくないしさ」


 アメトリンの言う通りマリアは付いて来てくれるだろうし、何のかんの言っても結局は皆が付いて来てくれるんじゃないかとは思ってはいる。

 ただ一人であってもウグジマシカ神聖国には向かう必要はあるので、どこかの商人などにくっ付くいて向かえばいいかなっとは考えてはいる。

 ……まあ、最悪一人旅になった場合は大体一日歩く距離ごとに宿場町(もしくは村)があるから、そこに毎日泊まりながら向かえば何とでもなるだろう。


「なんにしても早く話をしておくべきさね。どちらにしても準備は必要になるのだから打ち合わせは早めにってね」


「アメトリンらしくないまともな意見だけど私もそう思うわ。それに、行くとしても来週の入港祭が終わってからなのでしょ?」


「そうだね、だから今日か街に戻る明日には話をしようと思っているよ。それに、陸路なら良いけど海路で向かう場合はその船に乗せてもらえないかって考えているからね。入港している間にどこかの商船の人と交渉するつもりだったし」


 前回の入港祭か半年がたち来週には再び入港祭が開催され、貿易船が再びユピリルの街へとやってくる。交易船にそもそも乗船させてもらえるのか、そして金額がいくら位なのかによってどちらで行こうかと考えていたのだ。

 

「それなら良いのよ。あなたが仲間をうまく説得できることを祈っているわ。ただ、五柱の神を信仰している信者には気を付けなさい。あなたやアイリスの様になっている者もいるかもしれないし、もし気付かれてしまった場合の対処は考えてあるのかしら」


「信者に対しては気を付け様が無いんだけどね。そもそも船乗りは代々五柱とは関係ない海神を信仰しているから問題ないだろうけど、商人は誰を信仰しているか分からないからな。まあ、もし気が付かれたら全力で逃げるかしかないよね」


「それもそうよね……」


「じゃあさ、その時は私が迎えに行こうか!」


「はぁ!?」


 突拍子もないアメトリンの一言に、俺もガーネットも驚き訝し気に彼女を見る。

 すると彼女はふふんと胸を張りながらどこかから水晶球のような物を取り出した。

 取り出した球はアメトリンの髪と同じようにグラデーションのかかった黄色と紫色をした野球ボール位のサイズだ。


「これがあれば私が即座に顕現するわよ!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ