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召喚失敗勇者の異世界放浪旅  作者: 転々
第三章

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失敗勇者と旅立ち

 ウグジマシカ神聖国に入国する際に少しごたごたしましたが、問題なく入国することが出来ました。

 まあ、問題があったのはアイリスなのですが、そこは彼女の立場では仕方のない事でしょう。


 その後も何度か街や村に立ち寄りシクラ様の情報収集をしているのですが、一向にシクラ様の情報を得るとこが出来ません。

 そしてついに、目的地であるウグジマシカ神聖国の首都ミカヅチに到着しました。

 このミカヅチと言う街は我々の国とは建物が違い、なんでも江戸時代風の家屋? という勇者様達の世界の建物が殆どなのであります。

 少し変わった形の建物ですが、海の近くにある町としてはかなり合理挺な作りの建物の様な気がします。

 

 街の見学もしたいことはしたいのですが、そんな事よりまず行かなければならない所――そう、タケミカヅチ様を祀る教団本部への訪問です。

 教団本部は街の外れの山肌に建てられたジンジャと呼ばれる建物で、真っ赤な門をくぐり建物へ向かうようです。

 アイリスはセクメトリー教支部の教会に向かいたいようですが、先にタケミカヅチ様にご挨拶をするのは当然ですので、アイリスを引っ張りながら連れて行きます。


「そこのあなた達」


 真っ赤な門をくぐろうとした瞬間、何処からか声をかけられ声のした方に顔を向けると、そこには……。

 白い上着に真っ赤な……たしか袴とか言う物を着た女性が立っていた。


「タケミカヅチ様があなた達をお呼びです。私に付いて来てください」


 とんでもない事を急に言われ、私は頭にはてなマークをいくつも浮かべるのだった。

 そして、すごーく嫌な顔をしたアイリスを引っ張りながら、その女性について歩いていくのだった。







 ウユシウコダンジョン一層の最深部、薄暗い――はずの洞窟のはずなのだが、彼らが居る周辺は外と見間違うほど明るい。

 その理由は天井付近に幾つも浮いている光の玉が、彼らが見渡せる範囲全てを照らしていた。

 

 そして、その光に魅かれるように一匹の魔物が地響きを上げながら向かって来ていた。


「グランツそっちへ行ったわよ」


「任せろ!」


 イザベルの声に答え、グランツが銀色に輝く大盾を構え魔物を迎え撃つ。

 グランツに迫っているのは大型のイノシシの様な魔物で、体長は四メートル程はであり勢いがあるこの状態では重量差でグランツが弾き飛ばされてしまうはず――なのだが。

 

「っぐ、ぉおおおおおりゃ! フン!」


 魔物に押され地面に二本の筋が走るが、グランツは相手の勢いを殺し切り反対の手で持っていた短剣を魔物を切り裂くように動かした。

 

「ピィギャア!!」


 短剣の長さ的に魔物に届かないはずなのだが、魔物の首筋辺りから夥しい血が流れ落ち――魔物は体勢を保つことが出来ず倒れ伏す。

 グランツの持つ短剣――これはシクラが所持していた魔剣で、魔力を込めると目に見えない刃が形成されショートソード位になる剣だ。

  

 グランツは魔力で形成された刃から魔物の血を落とすように振った後、倒れている魔物に止めを刺すように首筋の傷に更に一撃を加え――微かな鳴き声と共に魔物の瞳から光が消えた。

 

「ふぅ。こっちは終わったぞ」


「了解。こっちももうすぐ終わるから少し待っててくれ」


 俺達に声をかけたグランツだが、こちらももうすぐ終わりそうなのを確認して魔物の解体を始めた。

 その間、イザベルが周囲の警戒をしている。

 グランツ達が戦っていたのはグランボアと言う大型のイノシシで、強力な突進と牙での一撃は鉄を張った盾なのは簡単に貫通してしまう威力があり、鉄級クラスであればかなりの強敵の部類に入る。

   

 そして俺達の方はと言うと――こちらも人型の大型魔物と対峙しているが、既に満身創痍の状態になっている。

 こちらはデミオーガと呼ばれる三メール程の大きさの魔物だが、ゲームなどでおなじみにの筋骨隆々の体躯をして居るが知能はゴブリン並みしかなく、攻撃をうまく捌くことが出来ればそれ程難しい相手ではない。


「はぁあああ!」

 

 二条の剣線がデミオーガの体にまた新しい傷を作っていた。

 二本の剣を自在に操りながら細かなステップでデミオーガを翻弄するのは、整った顔立ちの金髪美人のマリアだ。

 かなり激しく動き回っているが、彼女の額には薄っすらとしか汗をかいておらず、動きに合わせて長い金髪が美しく舞い踊っている。

 

 マリアは一撃離脱を繰り返しながら徐々にデミオーガを追い詰めていっている。

 しかしデミオーガも一方的にやられるわけもなく、反撃とばかりに岩でできたこん棒を振り下ろしてくるが、既に距離を取っていたマリアにその一撃は届かずめり込む様に地面に突き刺さった。

 そして、その隙をマリアが見逃すはずもなく――振り下ろされた腕に飛び乗り、その巨躯を駆け上がり日本の双剣をデミオーガの両眼へと突き刺した。


「グガァアアアァァァ」


 反応する事も出来ずに視力を失ったデミオーガは、なりふり構わず腕やこん棒を振り回していたがそんな適当な攻撃が当たるわけもなく、ダンジョンの壁や床を壊すことしかできない。

 マリアは攻撃をした直後にすぐさま後退し、いつも間にか俺の側まで来て様子を伺っていた。


「ふぅ。トマそろそろ止めお願い」


 流石にダンジョンが壊れることは無いにしても、いつまでも暴れ放題にさせていては他に魔物が寄ってきたら面倒なのでちゃっちゃと倒してしまおう。


「わかった『上級風刃アドバンスドウインドカッター』」


 一陣の風の刃が暴れまわるデミオーガへと迫るが、目の見えないデミオーガは避けることも出来ずに魔法が直撃する。

 デミオーガが闇雲に暴れていたせいで、風刃の進路上にあった相手の腕斬り飛ばし、体に袈裟切りに斬られたかのような一筋の傷が走る。

 

「……ゴヴアァ」


 腕が邪魔した部分は多少傷は浅いが、かなりの衝撃があったようで口元から大量の血が零れ落ち、そこ以外の場所からは夥しい量の血が流れだし――ドウッと重そうな音と共に地面に倒れ伏した。

 腕が邪魔をして倒し切れないかと思ったけど、問題なく倒せたようで良かった。

 マリアに止めを刺すといったのに倒せなかったらかっこ悪いしね。


「流石はトマよね。それじゃあ解体しちゃいましょうか」


「よろしくねマリア。俺は念のため周囲の警戒をしておくよ」


 マリアがデミオーガの解体をてきぱきとしている間に、念のため周囲に魔物が居ないか確認をする。

 ま、周囲に魔物が居ない事は既に魔法で確認済みだが、急に魔物が発生する場合もあるので目視で周囲の確認は必要なんだよね。

 

 マリアとグランツが解体している間に魔物が寄ってくることは無く、解体された魔物を俺がアイテムボックスへ収納し皆でキャンプにしている広場まで戻って行く。

 

 大きな広場の真ん中には俺の魔法で作った石の正方形の物体があり、こちらからではわからないが反対側に入り口が作ってあるキャンプ地だ。

 一応こちら側には小窓は付いては居るが、今までそこから覗いて魔物を確認したことは無いんだけどね……まあ、形式美とでも思ってくれたらいいかな。


 俺達がその小屋に近づいていくと、中から二人の男女が出てきてこちらへ手を振っている。


「皆さんお疲れ様です! 」

「そろそろお戻りになるかと思い食事を準備してあります!見張りは私たちが遣りますので休憩してください」


 男の子の方は年齢は十四歳で、身長も百七十まで達していない様な成長途中の子だが、短く借り上げた茶髪に少し無邪気な顔つきをした人懐っこそうな少年だ。

 女の子の方も二つ上の十六歳で、身長は少年よりも少し低いくらいではあるが……まあ、それなりに子供ではない体型をしている。この子は髪を肩辺りで切りそろえ少し気の強そうな顔つきをして居るが、色々と周りに気が使えて優しい子だ。


 この二人は同級冒険者で、今回のダンジョン探索時の補助要因として臨時パーティを組んでいる……まあ、ちょっと縁があってたまに臨時で入ってもらっているわけだが……。


 この二人と会ったのはおよそ半年前――俺達がトロールを討伐した時の事だ。

 トロールを討伐してダンジョンを出た後、入り口付近にはかなりの人だかりが出来ていた人達から一斉に視線を向けられた。

 何だろうと思っていたら、俺達にギルド職員が駆けてくるのが見えた。


「今ダンジョンを出てこられた冒険者の方ですよね? 中はどんな状況でしたか?」


 ギルド職員が何を聞きたいか一瞬わからなかったが、恐らくトロールが出現したことが伝わっていたのだろう。

 ちらりと周りを見渡すと、集まっている冒険者達は全員完全武装で扉から一定の距離を保っていることが分かる。


「魔石持ちトロールの事か?」


 グランツが問いかけると職員は頷き、周りに待機していた冒険者達からピリピリとした緊張が伝わってきた。

 トロールは単体で銀等級、それが魔石持ちとなれば金等級か銀等級が複数パーティで挑んでどうにかできるかと言ったレベルだ。

 ダンジョンに入る際にはぐれのトロールが出るとの掲示板に書いてあったが、それが魔石持ちと言う事が分かりギルドが冒険者を招集したのだろう。


「……はい。はぐれは通常のトロールと思われていたのですが、魔石持ちだと連絡がありまして……それで、中の状況は――」

 

 職員の顔色があまり良くない――恐らく既に中では被害が出てるのを知っていたのだろう。

 はぐれが普通のトロールと思っていた冒険者も多く、通常種であれば動きもそこまで早くはないので問題ないと思っていた者も多かっただろう。

 しかし、遭遇してみたら魔石持ち――しかも異常な速さで動き再生力も半端なく、どうする事も出来ずに壊滅したパーティもあるのだろう……だけどね。


「そいつなら倒したぞ」


 グランツが珍しくドヤ顔でギルド職員に告げる。


「……そうですか倒したのですね。………………え? 倒した? あの魔石持ちを? え、え、えええええ!?」


 ギルド職員の驚愕した叫び声が辺り一帯に響き渡った。

 すると周囲の冒険者達からもざわめきが起こっている。


「倒しただと? 魔石持ちをか? 」

「あいつらって、確か鉄級のパーティだったよな」

「いや、最近入った奴が単銀だったはずだ」

「単銀だって! ……それならありえるかもしれんな」


 何か聞き覚えのない単語も聞こえるけど、トロールが倒れたことに対しての驚きの声を上げている人が殆どだ。


「あ、えっと、な、何か証拠となる物はありますか」


「ああ、それなら――これで良いですか」


 俺がアイテムボックスから取り出したのは、トロールの素材で唯一残っている拳より少し大きい魔石だ。


「ええと……っひ! こ、これですか!? こ、こ、このサイズの魔石が取れるなんて……」


 取り出して見せた瞬間には何かわからなかったようで一瞬眉に皺をよせていたけど、魔石である事が分かると明らかに動揺して言葉を失ってしまった。

 遠巻きに見ていた冒険他者たちも覗き込むように俺が取り出した魔石を見て驚いていた。

 中には嫌な目つきの男とかが居たが、流石にこれだけ周りに人が居る状態では何かする訳では無い様だ。


「っは! これがその魔石だと言う事は、本当に――」


「ああ、俺達鉄の盾で討伐した」


 グランツが再度討伐したと宣言した瞬間――周囲から絶叫にもにた歓声が沸き起こった。

 歓声と共に冒険者達が集まってきて、周囲を冒険者達に取り囲まれた。

 

「おいおい、マジかよ。お前達スゲーな!」

「ありがとう! お前たちのおかげで探索が再開できるぞ!」


 はぐれが魔石持ちと分かりダンジョンの入場が規制されてしまったため、ダンジョンに入る事が出来なかったので物凄く喜ばれ、俺達男衆は胴上げまでされてしまった。

 流石に女性陣にそう言ったことをする人は居ないようで、その代わりに女性冒険者たちとなにやら話し込んでいた。


 ある程度騒ぎが収まった頃、ギルド職員が話しかけてくる。


「ええと、あなた方は鉄級パーティの鉄の盾の皆さんでよろしかったですよね?」


「そうだ。俺達五人が鉄級で、こっちのトマが銀級になる」


「それと、一応どういった状況だったのか簡単に教えて頂いてよろしいでしょうか? 一応ギルドに報告しなければいけませんので」


 ギルド職員はそう言いながら、板切れに紙を置いてメモを取る態勢になっている。

 鉄の盾の面々からの視線が俺に集まるのを感じた。

 

 さて、どうしたものかね。

 普通に報告したら異常な状態ばかりで俺が勇者と言う事がばれてしまいそうだけど、あんまり端折っても違う意味でなにか疑われそうだな。

 それに、切り落とされた腕が元に戻ってピンピンしているグランツの説明なんてしようがない。


 俺はグランツに近づき、小さな声でこうした方が良いと話しかる。

 その内容にグランツもうなずき、職員への説明はグランツに任せることにした。


 それから数分後、状況確認を行ったギルド職員は急いで街へと帰って行った。

 

「それじゃあ俺達も帰るか」


「そうね……あら? 何か用かしら」


 街に戻ろうと移動しかけていた時、イザベルがこちらを見ている若い冒険者の男女二人が話しかけてきた。

 二人は少しおどおどしながらこちらへ近づいて来る。


「あ、あの。トロールを倒したのはあなた達なのですよね」


「ええそうよ」


 その言葉に二人は一瞬視線を合わせ頷きあう。


「でしたら、僕たちのパーティの人達を知りませんか?」


「? どういうことかしら?」


 話を聞くと、彼らはパーティのでダンジョンに入っていたらしいのだが、そこに件尾トロールが現れて先頭になったのだと言う事だ。

 しかしこの二人は未駆け出しで戦闘に参加できるレベルではなく、相手の力量から彼らが退治すらすることが出来ない事を悟ったリーダーが、外から二人に援軍を呼んでくるようにと言って逃がしてくれたのだという。

 

「それはどの辺だ?」


 グランツが地図を広げて場所を確認すると――そこは、俺達が一番初めにトロールと対峙してコンラートの魔法で一撃を入れて逃げ出したところだった。

 確かあの時――奴の口周りやこん棒に赤いものが付着していたことを思い出した。


「あそこか……俺達もあそこで鉢合わせたんだ。近くに冒険者は居なかったから恐らくは……」


「……そうですか。ありがとうございました」


「やっぱり皆さんは……グスッ……」


 男の子の方は頭を下げてお礼を言い、女の子の方は空を見上げながら泣き出してしまっていた。



 これが、エリクとルーシー二人との出会いだった。

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