失敗勇者とダンジョン探索
前書きのような物を載せるのを忘れていました。
最近俺って空気じゃね?
そんなことを思いつつ祭りでにぎわう街をアシュリーはうろついていた。
彼が今歩いている大通りには大勢の人が行き交い、露店で様々な物を買っているのが見て取れる。
いつもはコンラートと一緒に街をぶらつくことが多いのだが、今日はコンラートがトマと特訓をすると言う事で一人でぶらついている。
行き交う人々は家族やカップルもしくは友人同士居る者が殆どで、アシュリーのように単身で歩く者は殆どいない。
しかし彼はリア充爆発しろ――など言う事はない――彼も故郷彼女が待っていて彼が大成して街に呼んでくれるのを待っているのだ。ただ、その彼女とこの祭りをいつか一緒に楽しむための事前調査をしているだけだ。
それにしても森で彷徨っていたトマは規格外だったな。やっぱりあのクラスでなければ銀や金に上がることが出来ないのだろうか。
彼自身それなりに冒険者をやって来てはいるが、未だに鉄等級止まりでトマのように一気に銀に上がることが出来ずにいる。
ただ、グランツがトマを鉄の盾に入ってくれないか聞いてみると言っていたが、トマのように有能な奴が俺達みたいなチームに入ってくれるものかな。
まあ、マリアの事を気にしている様だしマリア自身もトマの事を気にしている様だから、もしかしたら上手く行くのかもしれないな。
ま、トマが俺達のチームに入ってくれるのであれば万々歳だ。実践不足のコンラートとは違って実戦経験は豊富そうだし、まともな修行もしている様だから即戦力間違いないだろうしな。
そろそろあっちに行く時期だから何かしらの手土産が出来ればいいんだけどな……はぁ、早くエリーに会いたいぞ!
雑踏の中、アシュリーは故郷の恋人に思いを馳せながら祭りをぶらつくのだった。
鉄の盾 スカウト アシュリー
あれからどの位時間が経っただろうか――ついにコンラートは超越魔法を習得することが出来た。
この時のコンラートの喜びようは今まで見てきた中で一番はしゃぎまわり、オドが尽きるまで超越魔法を使いまくっていた。
「コンラートは超越魔法が使えるようになったのね」
「そうだな。俺も使えるけど、超越魔法が使える人にあったのはコンラートで二人目だな」
俺が倒れたコンラートを壁際に横たえると、側で見ていたマリアがそうつぶやく。
そう言えばマリアは魔法の才能が無く魔法が使えないんだったな。
獣人族はオドを持ってはいるが放出系の魔力操作が苦手で、身体強化に向いていると前日本で読んだ覚えがあるな。
ただマリアはハーフでどちらもうまく使えない様だが、ハーフだから魔法や身体強化が使えないといった記述はなかったはずだよな。
「良かったら魔法の訓練に付き合ってあげようか?」
「え、いいの? でもわたし基礎魔法も殆ど使えないよ」
ほとんど使えないと言う事は多少は使えると言う事だろう。
「とりあえずどの程度なのか見せてもらってもいいかな」
「わかったわ」
とりあえずこの場でマナが豊富な土魔法を練習してもらったのだけど……ある意味マリアの魔法の才能は無かった。
マリアは基礎魔法を使おうとしていたのだが、何故か大量にマナを集めることが出来ているんだけど問題ないんだけどそこからで、集めたマナをまとめることが出来ずに拡散させてしまっている。
通常であればその集めたマナを魔法に変換して魔法として行使するのだが、イメージの問題なのか種族的な問題なのかわからないがうまく使う事が出来ない様だ。
「……やっぱり無理そうですね」
「すまない」
暫くマリアの特訓にも付き合ったのだが、俺ではどうする事も出来ずに訓練場の利用時間が終わってしまった。
そしてコンラートがオドを使い切り倒れたままで未だ目を覚まさなかった為、俺はコンラートを担ぎ宿へと戻って行った。
因みにマリアとの訓練中に今日買った魔剣を少し試したけど、特殊効果は刀身が熱くなるみたいだが木材を焦がす程度で燃やしたりは出来ない様だった。
微妙な性能だけど剣としては使用できるしやすかったから良いかな。
一応マリアには、コンラートが超越魔法の理論を説明しながら実践したおかげで俺も超越魔法が使えるようになったと言う事にしてもらった。
まあ、いついかなる時に使う時が来るか分からないし、もし使えることが分かっていれば何とかなったという場合の為の他のメンバーにもそう伝えてもらう事にした。
そしてこの日はお祭りの熱と色々あったことで疲れてしまい、コンラートを部屋に寝かせお互い部屋に戻った……んだけど、部屋付きの子から俺に手紙が届いているといわれ受けとった。
手紙の差出人はハンナさんで手紙と共に先ほどマリアが書いた契約書が同封されていた。
手紙には、王族らしい丁寧な言葉で書き綴られていたが要約すると、契約書はあの時マリアの事を信用するために使用したものなので処分は俺に任せると言う事。
この契約書を破棄した場合、マリアにそのことを伝えるかは俺の判断に任せてくれるらしい。
それ以外に書かれていた内容は、冒険者は危険な稼業で恨みや妬みを買いやすい職業だから身の安全には注意し手と言う事と、後悔しない判断をすることと書き綴られてた。
先に書かれていた内容はわかるが、後半に書かれていた内容が少し引っかかりを覚えたが、アカリの兄だから心配してくれているのだろうと考えれば特段おかしなことはないのでそう受け取っておくことにした。
今日は色々な事があったな。
アカリの元従者のハンナさんに出会って色々話をしたり、マリアに俺が勇者である事や一緒に露店を周ったし、最後にコンラートとの超越魔法の特訓に手伝ったりと色々あったな。
流石にちょと疲れた気もするけど、この世界に来て一番充実していた日かもしれないな。
そんなことを思いつつ、俺は眠りに付いた。
「トマ! 俺達のパーティに入ってくれるんだって!?」
翌朝、朝日と共に目覚めた俺が優雅に朝食をとっていると昨日と同じようにグランツが勢いよく扉を開け部屋に大きな声で叫びながら入って来る。
後ろから他のメンバー達も入って来て、皆思い思いに席に座った。
グランツだけは俺の背後に回り込み力いっぱい肩をバンバンと叩いている。
「昨日マリアに入っておいたんだけど、グランツ達さえ良ければ入れてもらえるとありがたい」
「いやいや、トマ程の実力者なら大歓迎っていうよりもこちらからお願いしたいぐらいだ!」
他の面々に視線を向けるとグランツと同意見なのか、みな首肯して俺を歓迎してくれている様だ。
俺にも色々と考えが合って鉄の盾に入れてもらおうと思ったんだけど、ここまで歓迎されて悪い気はしないな。
「それじゃあみんな、これからよろしく」
「やったー! 本当にトマも入ってくれるんだね! 」
「トマ、よろしくね」
「よろしくな。これは中々バランスのいいパーティになったんじゃないか」
「ふふふふふ、我がライバルよ歓迎しよう! ともに魔導の深淵を覗こうではないか!」
三者三様、様々な言い回しではあるが皆俺の加入を歓迎してくれている様だ。
まあ一人だけ相変わらず魔法馬鹿は健在だけど、俺が少し手助けしたが独自の超越魔法まで到達したのだからかなり優秀な魔法馬鹿なのだろう。
朝っぱらからそんなことがあり、そのまま俺のパーティ加入結成宴会をする――為に鉄の盾の初めて会った森で宴会資金を稼ぎに行くことになった。
今回の目的は訓練ではなく宴会の為の金策だったので、森に着くなり俺が前回同様に上級探査の魔法を使用して動物の位置を把握して狩りをちゃっちゃと行う。
上級探査に引っかかったのは、大き目な反応が五か所に小さ目な反応が数十か所反応があった。
だけど今回は金策なので大き目な反応の場所に向かう。
そこはそこまで大きくはないが池になっており、トナカイのような巨大な角を持った鹿の一群が池のほとりで水を飲んでいた。
「周囲に散って逃げ場を無くしてから狩るか」
「待ってくれ、俺が新しく使えるようになった超越魔法で動きを止めるからそこで仕留めたほうが効率が良い」
グランツからの指示で散開して鹿を狩ろうとしていたんだけど、コンラートが使えるようになった超越魔法を使って行動不能にすると言い出し、グランツが承諾を出したのでコンラートが超越麻痺を使用し一団を行動不能にした。
「――冗談じゃなく本当に使えるようになっていたんだな。今のうちにさっさと仕留めるぞ」
特訓に付き合っていないグランツ達は本当に超越魔法が使えることに驚いていた。
その様子にコンラートは気を良くしていたが、直ぐに鹿の処理に皆が向かってしまったため少し不機嫌になってしまった。
まあ、魔法の効果があるうちに狩らないとまた動き出しちゃうからね。
コンラートの魔法のおかげで体高二メートル程ありそうなオスの鹿が一頭とメス六頭の大成果だ。
しかも今回は前回と違い、コンラートの魔法で動けなくしてから止めを刺し血抜きもしているので皮なども傷つけることなく狩れている。
流石にこれだけあれば今日宴会してもかなり余るくらいの利益が出るので、俺のアイテムボックスに七頭とも収納してピクニックのような狩りを終え街に帰還した。
帰還して解体所へ持って行くが、ゴンズの親父さんは奥の方で大型の海洋魔獣の解体をしていたり皆大忙しので船団が持ち込んだものを解体していた。
入り口付近でしばらく待っていると俺達に気が付いた解体場の人がやってきて、俺達が持ち込んだものはその場で査定してオスが銀貨六十枚になりメスは全部で銀貨六十枚になった。
オスが銀貨六十枚なのは首にとどめと血抜きの後しかなく、毛皮や角などに損傷が無いからかなり高額で買い取ってもらえた。
角だけでも薬の材料として使用するらしいが、今回は首から上をそのまま剥製にすることが出来るとの事でかなり高額なのだという。
午前中に出て行って昼過ぎに帰ってきたのだけど、一人当たり銀貨二十枚のかなりの稼ぎになり過去に類がない程の金額に皆頬が緩んでいた。
「それではトマの鉄の盾加入を祝って――乾杯!」
「「「カンパーイ!!!」」」
狩の費用をもらった俺たちは宿へと戻りながら宴会用の酒や食材を買い込んで俺の部屋でグランツの音頭で宴会を始めた。
祭りをやっている間は宿では朝食と夕食以外は注文を受け付けていないのもあるけど、今は祭りで様々な物が売られているから特に問題は無かった。
今回買い込んだ料理は俺が教えて宿の人が露店をやっていたフライドポテトや、他の露店で売っていた串焼きなどのつまみ類を大量に買い込んだ。
この辺りでは野菜などを食べる習慣がほとんど無いようで、どの店も肉や粉物、それと芋類などのお腹にたまる物ばかりだった。
グランツ達に聞いてみたが野菜などは家庭では食べるが外食のでは食べたりしないそうだ。
それに、どの野菜も煮込んでスープのような料理か具材として使われるばかりで、健康の為に野菜を取ろうというのは無い様だった。
恐らく新鮮な野菜が露店に並ぶのは農村部のみで、そこから輸送していくと日にちが経ちすぎて生で食べるには危なくなってしまい火を通すことが必須になってしまっているみたいだね。
そんなことを考えつつもどんちゃん騒ぎの宴会はその日の夜更けまで続いた。
酔っぱらって絡んだコンラートとアシュリーにイザベルとの関係を突っ込まれ白状したグランツ。
イザベル自体はそのことはみなに知られても気にしていなかったみたいだけど、グランツが相手のいないマリアや故郷に彼女たちを残しているコンラート達に気を使っていたとの事だ。
コンラート達は余計なお世話だといいつつも、やっぱり気を使ってくれていたグランツには多少感謝している様子だった。
なんでも、月に一度は彼らの故郷周辺で狩や遠征をわざわざしていたらしく、毎回その村に二泊ほど滞在していたんだとか。
そしてそろそろその村へと行く時期なのだが、ここでグランツから思いもよらない提案を受けた。
「トマが正式加入した事で戦力的な面でも運搬的な面でも、ダンジョンに入る条件を満たしたと思うのだがどう思う?」
そういえばコンラートの訓練のために野営訓練をするために俺と最初なった森に行ってたんだったよね。
そして俺が加入したことにより火力不足が解消されアイテムボックスがある為、野営道具や素材の運搬などの問題が解決されたとの事だ。
「だけど俺はダンジョンに入った事ないけど大丈夫なのか?」
「それを言ったらコンラートも入った事が問題はないはずだ。他のメンバーは何度か大規模パーティーでは参加済みだし、初めて単独で入るからそこまで深く潜る予定ではないしな」
グランツ達鉄の盾の他のメンバーも賛成したことにより、明日は準備して明後日からダンジョン遠征に向かうことになった。
ダンジョン探索といえば異世界物語の鉄板の話だし、一体どんなところか楽しみだね。




