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召喚失敗勇者の異世界放浪旅  作者: 転々
第二章

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66/220

失敗勇者と超越魔法

 シクラ様の事についてどうしたら良いのか考えがまとまらない。

 船に戻ったハンナは何が一番良いのか思案していた。


 アカリ様の予定していた未来……この通りに事が進めば、シクラ様と仲の良いあのマリアと言う子は命を落とすことになる。

 しかし、私がシクラ様に未来の事を教えて差し上げればそれは回避が出来るのでしょうが、そうなると未来は未確定のどうなるか分からない世界になってしまう。

 あの仲睦まじい姿を見なければ特に悩む必要はなかったのですが……いえ、恐らくこれもアカリ様の予定通りなのかもしれませんわね。

 それに、予定通りの未来でなくても大筋は変わらないから結果はそれ程変わらないと言われましたが、流石にこの結果は将来に大きなゆがみが発生する可能性が在ります。

 

 ため息を付きつつ手元にある紙を見つめるハンナ。

 これは先ほどマリアと言う子に書いてもらった契約書で、あの部屋での事を口外しない様にした物だが……この扱いについても悩んでいる。

 あの子は躊躇することなくこれにサインをした、そのような者であればそもそも口外することも無いでしょうし、逆にシクラ様が他の者にお伝えする際に邪魔になる代物かもしれない。


「はぁ、一体どうしたら良いのでしょうか――アカリ様ならどうしたでしょうか」


 誰も居ない船室で一人ハンナは悩み続けるのだった。


 キサガナ王国王太子妃 ハンナ=キサガナ




 解体小屋を出た後マリアに手を引かれ、現在入港中の船団の見学に向かった先で見た光景に俺は感嘆の声を上げる。


「これは、すごいな……」

「ね、すごいでしょ。私も初めて見た時は感動したの」


 湾港に寄港している船は十隻程で、全長三、四十メートル程キャラック船と呼ばれる帆船だ。

 そして寄港はしていないがもう一隻の船が少し離れた沖に停泊しているのは、距離が離れているめよくわからないが寄港している船より全長も全高も大きなガレオン船がいた。

 

俺が元の世界で見たことのある客船やタンカーなどと比べればかなり小さいのだが、巨大な帆船をまじかで見たとは無かったため感動してしまうな。


 しかし、この立派な船団を眺めている人は少ないようで殆どの人は少し離れた船団の出している市のに集まっている様だ。

 

 市が模様されている場所は船が寄港している場所から少し離れ、巨大な広場になている様な場所に所狭しと様々な店が並んでいた。


 ここから見える範囲でも数十――もしくは百はあるかもしれない露店が広がり、売っている物も様々で衣類から食料などの生活用品から、貴金属から冒険者や傭兵が使う武具など様々な物が売られている。


 見た感じ値段はどれもそれなりにするのだが、この周辺では入手できない物ばかりなため市は人でごった返していた。


「そう言えばトマは何か買いたいものはあるの? 」


「そうだな、掘り出し物の安い剣があれば買いたいかな。今のままだと魔法しか使うことできないし」


 剣自体は持ってはいるのだが、流石にオリハルコン製の魔剣を持って狩りに行くことは出来ないので、何か代わりになる剣があった方が良いと思ったのだ。

 ただ、鉄製のロングソードですら金貨一枚以上するので、そこまで多くは望めないだろう。

 

 俺の剣が欲しいという言葉にマリアはうーんと少し唸っている。


「トマ所持金じゃちょっと厳しい気がするのよね」


「まあ、こういったところでしかない掘り出し物もあるかもしれないし、適当にみてまわろうよ」


「そうよね。それに魔物素材の短剣とかなら意外と安値で売られていることもあるしね。それじゃあレッツゴー!」


 マリアと共に市を一通り周った。

 貿易船の市と言う事だけはあり、この街やイオリゲン王国でも見たこと無い様な様々な物が売られている。

 食品から装飾品まで様々な品が売られていた……そして武具類も取り扱う露店などもあったのだが、どこの店も高級品一択と言うか最低でも金貨数枚はする武具しか取り扱っていなかった。


 それもそうだろう。わざわざ危険な航海をしてまで安物の武具を取り扱うような所は無いだろうし、そもそも輸送費分も加味されているのだからどれもそれなりに良い値段がしていた。


「やっぱりないね。まあ、今の段階ではそれほどまで重要じゃないから良いんだけどさ」


「そうですね。唯一あった物も中古の魔獣素材の短剣でしたし。あれだとトマが本気で殴ったら一発でこれちゃいそうですよ」


「まあ仕方ないか。それじゃあお祭りなんだから、何か食べながら回ろうか」


 少し残念な気もするが、今の懐事情で無理に武器を買う必要も無いだろう。

 それに、とりあえずはソロじゃなくて鉄の盾と一緒に行動することになるんだから焦る必要はないかな。


 貿易船の市が行われている広場から離れ、別の露店を見て回りながらマリアと祭りを楽しむことにした。

 貿易船の市から少し離れ大通りに向かうと、前日は殆ど店が出ていなかったはずなのに今はそこら中に露店でにぎわっている。


 ほとんどはこの街の店か近隣の街から来た商人たちが開いている露店だが、時折遠方から来ているらしき露店もあるらしくここでもそれなり珍しいものがあったのだが……財布の中身が少ない為購入は諦めておいた。


「ねぇトマ、あれって」


「ん? どれのこと?」


 マリアが露店と露店の隙間から少し細い通りの方を指を指していた。

 そこには、数は少ないが小さな露店がぽつりぽつりと並んでは居るが、人通りは閑散としていて売れ行きが悪そうな店が並んでいた。


「あそこに剣が売っているみたいだからちょっと寄ってみましょうよ」


「そうだね。あそこまで立地が悪いとあまり売れていないだろうし、もしかしたら本当に掘り出し物が見つかるかもしれないしね」


 そう言いながら二人で人混みをかき分け、マリアが見つけた露店の方へと歩いていく。

 目的の店に向かうまでの間に露店を少し覗いてみたが、どの店も他の露店同様の店構えだが立地のせいか殆ど売れておらず、店主たちも気力のない顔をしている。

 

 あまり期待しない方が良さそうだと思い目的の店にたどり着いたのだが……めっちゃ高い。

 店の前で立ち止まった俺達を店主が値踏みするように見るが、あまり期待していないような感じの態度をしてくる。

 

「あーいらっしゃい。何か欲しいものが合ったらいってくださいねー」


 やる気のない店主の声を聞きながら品物を一通り眺めるが、品物自体は問題ない物なの様なのだけど如何せん値段が高い武具関係しか並んでいなかっ――あれ、なんかこれだけ異様に安い。

 

 並んでいる武具の中で唯一格安で売られている物が一つだけ存在した。

 黒く塗られて鞘は装飾も施されておりかなり立派で、柄も細やかな細工が施されてはいるが実際の使用には問題なさそうな短剣だ。


「これを見させてもらっても良いですか?」


「好きにしな」


 ぶっきらぼうな店主の許可を貰いその短剣を鞘から抜く――何か少し違和感があったが特に問題なく抜くことが出来、両刃の刃渡り二十センチほどの刀身が現れた。

 長さはそれ程な長くはないので戦闘では使用できなさそうだが、緊急事態の際には何か役に立つかもしれない。


「……後で文句言われても困るから言っておくが、そいつは何故か何も切れないなまくらだぞ」


「何も切れない……ですか」


「何でそんなもの売ってるのよ。鋳つぶして鉄にした方が良いじゃない」


「鋳つぶすにも金がかかるんだよ。元々は冒険者がダンジョンで見つけたものだったんだが、いざ使ってみようとしたらなにもきれねぇんだ。仕入れでそれなりの金額で買っちまったんだが使えなきゃ売れないが、もしかしたら見た目だけで誰かが買わないかと思って並べてあるんだよ」


 この店主は知らない様だけど、恐らくこれは魔剣の一種なのだろう。

 ヒエンさんから魔剣は所持者の力量を剣自体が見極めて扱えない人には只のなまくらになってしまうと言っていたしね。


 手に取っている魔剣をじっと見つめる――先程の違和感は恐らく魔剣特有の何らかの効果があった影響だろう。

 効果があると言う事は恐らく俺が使えば使用できるだろうから、この短剣を購入することにした。

 因みに値段は銀貨一枚と物凄くお値打ちだったが、店主も不良在庫がはけたことに喜んでいたからウインウインだろう。



「何であんな使い道がない剣を買ったの?」


 魔剣を片手にほくほく顔の俺を訝しげな表情でマリアが覗き込んでくる。


「ああ、これはたぶん魔剣だよ」


「魔剣!? あの勇者とか上位の冒険者たちが持ってる剣の事だよね」


「流石に誰が持っているかはわからないけど、剣を扱うことが出来る技量が無いと使うことが出来ないから使い手は少ないだろうね」


 マリアが感心したようにこちらを見てくるが、実際の所まだ使っていないので本当に魔剣なのかは定かではない。

 それに、魔剣であってもどの程度の効果があるか分からないしから、戻ってから使ってみてのお楽しみかな。


 

 短剣を買った店を後にした後、マリアと一緒に再び露店を見て回り肉串や肉まんみたいなものを食べ歩いていると、コンラートとの待ち合わせの時間になったので名残惜しいがギルドの訓練場へと向かった。


 ギルドの扉をくぐるが、先日の賑わいとは打って変わって受付に一人ギルドの人が居る以外閑散とした状態だった。

 受付のギルド職員に話をすると、コンラートは既に訓練場に行っているらしいので向かう事にした。


「遅い! 」


 地下に降りて訓練場へと続く重厚な扉を押し開けると、既に準備万端の状態のコンラートが仁王立ちで立ち、俺達の姿を見ると叫んで隣にいたマリアに視線を向けたがすぐに俺に視線を戻す。

 

「まあいい、それじゃあ始めようか。まずは確認だ、魔法には三段階あり……」


 コンラートは意気揚々と魔法について説明をしていく。

 魔法には三段階に分かれているといわれている。

 まずは基礎魔法は大気や周囲のマナを用いて使用する魔法で、基本的には使用する魔法と同種のマナを用いないと使用できないとされている。


 次に応用魔法、これは体内にあるオドを使用して使用する魔法で自分のオドを変換し魔法使用する為属性関係なく使用できる魔法と言われている。


 そして超越魔法、これは使用できるものはそこまで居らず魔人やエルフのような魔法が得意な種族は使える者は多いが、人族や獣人族は使える人が少なく詳細が詳しくわかっていない魔法と言う事。

 ただし、使える人が少ないだけでいるにはいるのだが、何故だが誰もその使い方を教えてはくれないのだ。


「ここまではトマも知っていると思うのだが、俺が発見した超越魔法への糸口は『(ファイアー)』これだ。今この場には火を使えるようになるマナは無いし、俺はオドを使用して魔法を使っているんだ。先日トマがギルマスと戦った際に使った魔法もランクで言えば基礎魔法のはずなのだが、あの時もこの場所では火のマナは存在しなかったんだ」


 これは先日の宴会前にコンラートが言っていたことだが、俺も言われるまで全く気が付かなったのだ。

 おそらくだが、魔法を初めて習った際にはこの基礎魔法や応用魔法の理論については覚えているのだが、段々と魔法を使うのに慣れてくると忘れていってしまうので誰も気が付かなったのだろう。


「そこで俺は気が付いたんだ、基礎魔法と応用魔法とは習う際にはマナとオドと区別しているのだが、本来はマナでもオドでも使用できると言う事に。そして、恐らくこれは超越魔法を使う事に必要な事だと考えた。その結果、基礎魔法でマナの制御訓練をして応用魔法でオドの制御をすると言う事は、超越魔法はその両方を同時に制御成しえて初めて使用できる魔法なのだと言う事だ」


 俺は超越魔法が使えるからその辺りはわかっているのだが、コンラートが言っていることは微妙に間違っているのだ。


 基礎魔法も応用魔法もマナとオド両方で使用することが出来、マナとオドの制御が出来ればどちらの魔法でも威力増加やオドの節約が可能なのだ。

 ただし、超越魔法は少し違いマナとオド両方使うのだが、マナをそのまま魔法に変換して使うのではなく、体内に取り込み自分のオドと混ぜ合わせて使うのだ。


 簡単に説明すると、大地が持つマナを体内に取り込み変質させて火のマナにして、自身のオドと混ぜ合わせて使う魔法だと言う事だ。

 俺は何となくで使えているが、恐らく他の魔導士が超越魔法の事を教えてくれないのは、これの事を説明することが出来ないからなのだと思う……まあ、プライドもあるんだろうけどね。


「そして今! 俺はその超越魔法に挑戦して見せるのだ! アルル師匠やって見せますよ俺は! トマ、もし俺が魔法制御に失敗して危険だったら魔法で相殺して欲しいんだ。頼めるか?」


「わかったから、あんまり無茶苦茶するなよ?」

 

 なるほど、俺をこの場に呼んだのは失敗した場合に備えての事か。

 そして、コンラートは叫び声を上げながら両手を天に突き出し、変なポーズをしながら超越魔法に挑戦しだした。


「うおおおおおお! 行くぞ! 『超越(トラセンド)火球(ファイアーボール)』!」


 コンラートが掲げた両手の先に膨大なマナとオドが集まりだし……。



 ……一時間後


 「何で出来ないんだよ! 俺の理論は間違っていないはずだ! 」


 幾度か超越魔法に挑戦していたが、結果としてコンラートは超越魔法を発動することが出来なかった。

 まあ、コンラートがやっているのはマナとオドを混ぜ合わせているだけだから、そもそも超越魔法として完成していないのだから発動することが出来ないのだ。

 もしこれが大地のマナを使用した魔法であれば間違って発動することもあるかもしれないが、火のマナは周囲には存在していないので大地のマナと火に変換したオドでは魔法を発動させることが出来なかった。


 因みにマリアは一応ついて来てはいるが、コンラートが一人で騒ぎ立て魔法を発動させることが出来ないのが分かってから、部屋の隅に座り込み暇そうにこちらを眺めていた。


「マナとオドの混合が超越魔法の仕組みじゃないのか? じゃあどうやったら超越魔法が使う事が出来るんだよ!」


 コンラートは叫び声を上げながらも必死になって超越魔法にチャレンジしているが、このままではいつまでたっても完成することは無いだろう。


 流石に少しお節介を焼いた方が良いかな……うーん、何て言おうかな。


 俺は少し考えた後、コンラートに助言することにした。


「なあコンラート、超越魔法ってマナとオドを今後することで出来る魔法なんだよな?」


「そうだ……いや、そのはずだ。だが、先程から何度やっても制御したマナが散ってしまうんだ」


「思うんだが、コンラートはここで基礎魔法のマナだけを使って火の魔法は使えるか?」


「はぁ? そんなことできるはず――まさか!」


 俺の言ったことをが理解できたのか、ぶつぶつと呟きながら思案するコンラート。


 恐らくコンラートはこれで超越魔法が使えるようになりそうだなと考えつつも、コンラートの考えがまとまるまで手持ち無沙汰で俺は立ち尽くすのだった。

次回も月曜日18時ごろ更新出来ると思います。

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