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召喚失敗勇者の異世界放浪旅  作者: 転々
第二章

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60/220

失敗勇者と宴会

 ガーネットに転移してもらいグランツ達と会って、冒険者としての登録も出来たし思ったよりいい滑り出しだ。

 グランツ達は良い人たちだけど、彼等は彼等で今までパーティを組んで冒険者をしていたので、恐らく俺が入り込む隙間は無いだろうな。

 それに世話は焼いてくれるし街とか案内してもらったけど、俺と一緒だとトラブルに巻き込まれてしまう恐れもあるし、俺が勇者と言う事を説明するのが――少し怖い。

 今は良い、この辺境の街で特に何もなければゆっくり暮らしたい気持ちもあるけど、ガーネット達元神々をどうにかしなければならないから、いつかウグジマシカに行ってタケミカヅチ様に合いに行かないといけない。

 六柱神と戦う事になるかもしれないし、戦わず何とか出来るかもしれないがそんな簡単な事ではないだろう。

 そうなったとき彼等では……たぶん無理だろう。

 はぁ、とりあえずこの街で冒険者として滞在して色々考えなければいけないな。


 シクラ=トウマ

 


 なんでも、基礎魔法、応用魔法、超越魔法は分類的にはすべて同じでは無いかという推論だ。

 基礎魔法は大気中や周囲のマナを利用して魔法を使用する魔法で、応用は魔法はマナではなく自身のオドを使用して魔法を行使する。

 そして超越魔法は、マナもオドも双方使用して行使する魔法だ。


 そしてコンラートが気が付いたのは、何故応用魔法で基礎魔法が使えるかと言う事だった。

 初めは何を言っているのかわからなかったが、詳しく聞いて行くうちに納得がいく部分が出来てくる。


 コンラートが疑問に思ったのは俺がギルドマスターとの時に使った、多重(マルチプル)火矢(ファイアアロー)はランクで言えば基礎魔法に当たるのだが、あの場所で俺が使ったような大量な火気は無くなぜあの魔法が使えたのか気になったのだそうだ。


 地下訓練施設が明るいのは火による明かりではなく、壁の燭台に付けられた晶石の明かりだったので大気中に火のマナはほとんど存在していない。

 その状態で火の基礎魔法が使えると言う事は、オドを使用して基礎魔法を使用したと言う事になると言う事だ。

 

 そう言われてみるとあの時は気にしていなかったが、普通にオドを消費して魔法を行使していた気がする。無意識に魔法を使いすぎていて魔法のそんな理論なんて忘れていたよ。


 そしてそれが出来ると言う事は、その魔法の種類の差は何があるのかと言う事だ。

 基礎魔法はマナ、応用魔法はオド、超越魔法はその両方を使うとなっているのだが、コンラートがたどり着いた答えはもしかしたら()()()()()()()なのではないかと言う事だ。

 

 俺はそれ以上の魔法も使えるからそこまで気にして居なかったが、よくよく考えてみたらコンラートが出した答えは間違っていない気がする。


 今すぐにでも実践したがっていたが、この後食事があるから我慢して明日俺にも訓練に付き合ってほしいとの事だったので、一応同じ魔導士として承諾しておいた……流石にこれで行かないと何か言われそうな雰囲気だったからね。


 

「待たせたな! 食事はこれから用意してくれるみたいだから、先につまみと酒をもってきたぜ! 」


 コンラートととの話がひと段落した所に、タイミングよくグランツと部屋付きの子が部屋に入ってきた。

 グランツが酒瓶何本かが入った木箱を持ってきて、部屋付きの子がお盆にゆでた豆やスルメイカの様な乾きものが何種類かを机の上に置いて退出しようとしたので、チップとして鉄貨一枚を渡した。

 

 部屋付きの少年は少し驚いていたようだが、お礼を言って部屋から退出して行った。


「トマよ、えらく張り切ってチップを渡したな」


「まあね。ただこれから何回も最上階まで食事を運んで貰うんだから、多めに渡しておいても問題ないかなって」


 目ざとくチップを渡していたところを見ていたグランツに突っ込まれたが、建前上そう言っておいたが実際にはたぶんこの部屋に泊まるような人はあのくらいは出しているだろうし、家の手伝いでやっているのだろうけどそのくらいのお小遣いはあっても良いかなって思って渡してみた。


 そんな様子を相変わらずじーっと見ているマリアだが、流石にイザベルにつんつんと注意されていた。


「あーとりあえず全員席付けー。あ、トマはそこの中央な。何てったて今回の狩りの立役者だからな」

「だよねー! トマのおかげでいつもだったら一週間森に入らないといけないくらだったしね」

「流石にダンジョンと比べれば少ないが、それでも一日での報酬としては破格だったしな」

「俺はそれよりトマと魔法の話がしたいんだが! 明日は理論の確認の為に付き合ってもらうぞ! 」

「はーい。コンラートはちょっとうるさいわね。グランツそろそろ乾杯ましょう」


 うーん、ここまで感謝されるような事はしていない気もするんだけど、まあ本人たちが良いなら良いのかな? 相変わらずコンラートだけずれているのはいつも通りだけど。

 俺は三人掛けのソファーの中央に座り、左右にマリアとイザベル。反対側の椅子には、グランツ達が座ってる。両サイドが女の子なのは嬉しいんだけど、ちょっと距離が近いのが少し気になる……が、正直少しうれしい気が無いわけではない。

 これがあれかな? 大人のお酒を女性店員と飲む店みたいな感じなのか?


 そんな状況にドギマギしている間に、テーブルにはつまみと皆の手元にはグランツおすすめのお酒が入ったジョッキが皆に配られ、皆がジョッキを持ったのを確認するとグランツは立ち上がり皆を見渡す。


「ん、んん。それでは、狩の成功とトマ協力に感謝して――乾杯! 」


「「「「「「カンパーイ」」」」」


 一斉にジョッキを打ち合わせ、一気にお酒を煽る。


 うーん、このフルーティな感じはエールかな? ただ、何というかぬるくてあまり美味しくない。

 周りを見渡すと、皆美味しそうにエールを飲んでいるのでたぶんこれが普通のなんだろうな。でもやっぱりお酒は美味しく飲みたいよね。


「ちょっと魔法使うけど気にしないでね。『冷却(クーリング)』これで……うん、これの方がうまい! 」


「なになに? エール冷やしたの? 一口頂戴」


 俺の承諾を得る前に、マリアは俺のジョッキに口を付けて飲んでしまった。


「おいしい! 私のも冷たくしてー! 」

「わかった、わかったから! 」

 

 マリアが自分のエールも冷やして欲しくて俺の腕に絡みつくような形でくっついてくるんだけど、あーうん、ぽよぽよとしたものが俺の腕に当たって気が気でない。


「あートマ、俺のも冷やして貰ってもいいか? 」

「あ、俺も俺も!」

「わたしもー! 」

「俺は自分で冷やす『冷却(クーリング)』……うま」


 グランツ達も冷やして欲しくて言ってくるが、魔法が使えるコンラートだけは一人で冷やして飲んだみたいだけど、シンプルにうまいといったせいで全員分のエールとまだ子樽に入っている分も冷やすことになった。

 

「なんで今まで誰も気が付かなかったんだ? 絶対にこっちの方がうまいだろ! 」


「まあ、普通冷やすことなんてないし、みんながみんな魔法が使える訳じゃないからな。お代わり」    

 

「グビグビグビ……っぷはぁ! アシュリーあんた飲み過ぎよ! 次渡しなさい! 」


 みんな一気に飲み干して、子樽に入ってる分も新しく注ぎ始めエール争奪戦のような感じになって来ていた。


「本当に何で気が付かなかったんだ。なあなあ、もしかして他の酒も冷やしたらうまくなるのか? なあグランツ、他の酒何持って来たんだ? 」


「んあ? 後はワインを何本かとビールとか言う種類の酒と、トマ用の果汁酒だな」


「なんだそのビールって――」


「ビールだって! ビールがあるのか! グランツちょっとそれをくれ! 」


 そんな中、静かに飲んでいたコンラートがポツリと呟くが、そんな事よりこの世界にもビールがあったのか!

 大学の先輩達に世界のビール祭りみたいなところに連れて行かれ、世界各国のビールやエールを飲んだことがあって、その後一時期ビールにはまっていた時期があったんだよね!


「お、おう。なんか、この部屋を借りた人のみ限定で新作のビールとか言う酒が飲めるらしくて、一応子樽一つ分は買って来てあるぞ」


「うっし! グランツそれを注いでくれ! ……っと、そして冷却の魔法っと」 


 グランツの注いでくれたビールは、薄い黄色ががかった色味の見た目は紛れもなくビールだった。

 泡立ちが少し悪い感じもするが、口に含むと少し薄い感じもするけどこの苦みとのど越しは――まぎれもなくラガービールだ!


「っぷはー! 本当にビールだ! やっぱりこれだよな! 」


 俺は一気にそれを飲み干し、久しぶりに飲んだビールに感動していた。

 その様子に他のみんなもビールを飲んでみたのだが、のど越しは評価されたがグランツ以外はあまり好みではなかったようで、冷やしたビールは俺とグランツだけで飲み干した。


 部屋付きの子が料理を大皿で五皿ほど持ってきてたが、どれも肉類かおつまみで食べる様なものが大半だった。

 取りの姿焼きやクラッカーのような物にバターを塗ってベーコンのような物が乗った物、それとチーズや輪切りにしたドライソーセージものなど、どれもお酒に合いそうだ。

 

「フライドポテトでもあればもっと良かったんだけどな」


「お客様、そのフライドポテトとはどのような料理なのでしょうか? 材料次第ですが、お教えいただければ作ることができるかもしれません」


 俺の呟きを拾った部屋付きの少年が、作り方を教えてくれれば作ってくるといってきたので、簡単に作り方を教えてあげる。

 流石につぶしたポテトを整形してあげるほうじゃなくて、芋を切って油で揚げる方法だけどね。

 輪切りに薄切りにした方法と、少し大きめの棒状に切るタイプの二種類を教えて、揚げたての物に塩を振って出来上がり。

 そして、出来れば植物油で上げると美味しくなると伝えておく。


 少年は簡単すぎるレシピに少し首を傾げそうになったが、我慢して恐らく作れると思いますと言ってそのまま礼をして退出して行った。


 みんなからフライドポテトに付いて聞かれたけど、簡単に出来るおつまみと言う事だけ伝えて出来上がってからのお楽しみと言う事にしておいた。


 ちなみに、冷やしたワインも美味しかったけど皆からは冷やしたエールにはかなわないと言われていた。


 お酒を飲みながら、グランツ達といままでの冒険の話などを色々聞いた。

 

 グランツ、マリア、イザベルの三人でパーティを組み始めた頃は、大体あの森で狩をするか他のパーティと臨時を組んでダンジョンや討伐任務に当たっていたらしい。

 その当時はかなりの極貧生活で、週に三回ほどある教会の炊き出しを手伝ってご飯を貰っていたらしい。

 

 その後、アシュリーが加入して狩りの効率が上がり、たまに酒を飲む位まで稼げるようになったんだとか。

 そしてコンラートが加入して更に効率が上がって行き、ランクも鉄級まで来たので今度はパーティメンバーのみでダンジョンに潜る為に訓練として、森でキャンプしながら狩りをする予定だったみたいなんだけど……俺のせいでキャンプする前に撤収してしまったんだとか。


 そのことは別に問題はなく、逆にかなり儲けさせてもらったから気にするなって言われてしまった。

 まあ、この食事会もそれのお礼だしね。


 少し気になってダンジョンの話を聞いてみたんだけど、良くある地下に潜って行き魔物達が徘徊する地下迷宮と言った感じで、ここでまともに狩りが出来るようになるのは大体鉄級以降からで、それよりも下の階級だと全滅とか良くある話らしい。

 ダンジョンはこの街から南東に半日くらい歩いた所の村にあるみたいで、現在確認されているのは六層までとの事だった。

 一層目は基本的に低ランクの魔物が徘徊し、通路が合って広間があるといった感じで続いて行っているみたいで、その広間ごとに大体出てくる魔物が決まっているらしい。

 

 グランツ達が過去に入った際には、一層の半ば程まで行って七日間キャンプして戻ってきたらしいのだが、十五人のパーティで一人当たり金貨一枚相当貰えたらしいんだけど、ダンジョン村での宿泊費や運搬用アイテムボックス持ちの雇用費など色々経費を引くと、一人当たり銀貨八十枚ほどになったんだとか。

 

 そこまで儲かるならもっと潜ればいいのにと思ったんだけど、その後の装備の手入れやマリアやイザベルに言い寄ってくるような男どもが居たせいで、二人が絶対に行きたくないと訴えたらしい。

 まあ、二人とも美人だからわからなくも無いけど……流石にダンジョン内で口説くのはどうかと思います。


 それで、今度は自分たちのパーティのみでダンジョンに行けるように人員を強化して、来月当たりに一度チャレンジしてみる予定だったらしい。


 危険なダンジョンに準備万端で向かうグランツ達には好感が持てるね。

いつも読んで頂きありがとうございます。

次回も月曜日の投稿になると思います。


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