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召喚失敗勇者の異世界放浪旅  作者: 転々
第二章

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57/220

失敗勇者とギルドマスター

 最近かけていなかった、冒頭分を今回から再開します。

 森の中で変な奴と出会った。トマとか言う奴で、なかなかの凄腕魔導士ではあるがすこし世間知らずの所がある奴だ。

 何でも、師匠と方々山中を旅しながら修業していたが、強さの確認の為に一人で冒険者になろうとしているらしい。

 魔獣ではないが動物の中でも強い熊を単独で撃破できる実力で、俺の知らない魔法を使い俺達の狩猟を手伝ってくれたお人好しだ。

 応用魔法まで使える魔導士は冒険者であればそれなりに居るが、こいつの魔法は少し特殊で恐らく実力を知ればどの冒険者もトマの事を欲しがるだろう……うちにも魔導士は居るが、火力となり得る魔導士は何人いても良いし性格も悪くなさそうだから登録したら誘ってみようと思う。

 試験の方も見たが、恐らく鉄級の実力はあるようだから実際実力も問題ないだろう。

 ただ、少し気なるのがマリアとイザベルがトマの事を気にして……と言うか好意を抱いている様にも見える……まあ、二人ともいい年だしうちのメンバーの男どもは皆相手がいるから丁度いいと言えばいいが、二人で争われても困るんだが……二人ともトマが引き取ってくれるなら問題はないんだけどな。

 なんか、ギルドマスターも気にしている様だし、その辺りの実力を見てから勧誘するか決めるかな。


 鉄の盾リーダー グランツ



「身体強化を使いたまえ。そのくらいは待とう」


「……わかりました『上級(アドバンスド)身体強化(ボディブースト)』」


「準備はいいかね? それでは始めよう」


 ギルドマスターは開始の合図と同時に剣を抜き放ち、片手でロングソード程の長さの細剣を左手に持ち、右手は後ろに隠した半身で構える。

 構えから察するに、スピードを駆使した突きを主体とする攻撃スタイルのようだ。



 ギルドマスターは俺に初手を譲ってくれるみたいだから、初っ端から一気に行きますかね。


「『多重(マルチプル)火矢(ファイアアロー)』」


「ふん! 」


 俺が放った多重(マルチプル)火矢(ファイアアロー)は、ギルドマスターの振るう剣に迎撃されたり、地面に着弾し辺りを焦がす。

 俺も魔法を剣で切ったりすることは出来るけど、あの速度の物を切りつけるとはなかなかいい腕をしているみたい。流石はギルドマスターだね。


「っは! 」

「甘い! 」


 俺は魔法発動と同時に駆け出し、順次発射される火矢ファイアアローを追い越してギルドマスターの背後に回り込み横なぎに切り込む――が、俺の剣の軌道に回り込んだギルドマスターの右手辺りで、何か硬質的な物に当たり剣が弾かれる。

 

 一瞬で決めようと思った俺の思惑は外れ、火矢ファイアアローはすべて撃ち落とされ、こちらに振り向こうとしたので反射的に飛び退き距離を取る。

 さっきのは一体なんなんだ……ギルドマスターの右手には何も持ってはいない……何かのマジックアイテムか特殊な魔法か……。


「考えることは悪いとは言わないが、今はそのような時間は与えんよ」


「っち! ちょ、ま! 」


「うまく防ぐじゃないか! これならどうだかな? 」


「っ! ――よっと 」


 距離を離し考えている俺の思考を邪魔するように、ギルドマスター高速の突きの連撃を放ってくる。

 それを何とか回避や受け流しながら受けていると、俺の剣とわざと打ち合わせ弾くと崩れた体制のまま回し蹴りは放ってくる

 流石に体制が崩れていた事と、予想外な動きに対処が出来ず蹴りを受けてしまったけど、少しだけど後ろへ飛び勢いを削いで着地をする。


「ふむ。対処能力はそれなりか、それでは――」

多重(マルチプル)石弾(ストーンバレット)

「っと、なかなかやるじゃないか。しかし、まだまだ甘いな」

  

 ギルドマスターが次の行動をする前に隙を作ろうとして、多重マルチプル石弾ストーンバレットを放ってみたが、簡単に剣で撃ち落とされてしまった。

 何だあの剣、火矢ファイアアローはまだわかるけど石弾ストーンバレットを切り落とすって、いったいどんな材質の剣なんだ? もしかしたら、魔剣の類の可能性もありそうだけど近接戦をやるにしても、右手の見えない盾みたいなもので防がれるし、そもそも剣術自体がかなりの腕前――多分騎士団長のヒューズさんクラス――だから、俺の多少訓練した程度の剣術でしかも使い慣れないショートソードでは全く太刀打ちできない……。


「多少の怪我は覚悟してもらいます!『酸性雨(アシッドレイン)』」


「甘いわ! 」


 俺の上方から降り注ぐ酸の雨を物ともせず走り込んでくるギルドマスターは、右手を前方に出しながら走って来ている。

 ギルドマスターの右手の手前辺りで雨は、見えない巨大なカイトシールドの様な物に弾かれ、ギルドマスターに殆どダメージを与えては居なかった。


「これで終わりだ。」


 そう言うと、一瞬緑色の燐光に包まれたギルドマスターは、今までの速度とはかけ離れた超高速で突っ込んできて――俺の首元に剣を突き付ける。


「参りました」


 こんな所だろう。最後の一撃は無理をすれば受けるくらいは出来ただろうけど、そうなると上級ではなく超越クラスの身体強化を無詠唱で行使しなければならず、流石にそこまで大っぴらにするのは問題が起きそうだからあえて降参することにした――負け惜しみじゃないよ? ほんとだよ?


「……なるほどな。ケイティー、後で俺の部屋まで来てくれ」


「――っは! わ、わかりました!」


「トマと言ったか、お前には期待している。あとでケイティーからギルド章を受け取っておけ」


 そう言うと、ギルドマスターはさっさと階段を上がって行ってしまった。


 ……それにしても、あの装備――反則級に強くなかったか? 威力はそこまで上げていなかったとはいえ、簡単に魔法を切り裂く剣に全く目に映らない大盾。

 恐らくどちらもかなりの高級品で扱いも難しいだろうが、それをうまく操るギルドマスターの腕は確かなものだ。 


 ……それはともかく――ちょっとやりすぎたかな?


 俺とギルドマスターの戦った辺りには、地面は焦げたり穴が開いたり酸で溶けていたりと結構壮絶な状況になっていた。


「……ちょっとやりすぎました? 」


「い、いえ、だいじょぶです。流石にここまでの状況は今までありませんでしたけど、優秀な冒険者の方が入って頂けたと思えば問題ありません」


 ケイティーさんは少し慌てたように言っていたけど、この辺境では優秀な冒険者が増えることは嬉しい事だそうで、この惨状の事は許して貰えてみたいだ。


 そしてグランツ達の所へ戻って行くと、マリアのが勢いよく腕に飛びついて来た! 腕に絡みついてきてくれるのはとっても嬉しいんですが、なにせ鎧を着ているから女性の柔らかさなどは皆無――と言うか硬くて痛い。


「トマってすごく強いんだね! あの熊が倒せるんだからそれなりに強いとは思っていたけど、前衛も後衛も出来るなんてすごすぎる! どうやったらあんなに強くなれるの? 」

 

「あ、う、うぇ! ど、どうって、お師匠様に鍛えてもらっただけだから」


「だ、か、ら! その方法を教えてよ! もし教えてくれるんなら……一晩つきあってア、ゲ、ル」


「いやいやいやいや! ま、マリアさん、ちょっと待ってください! そもそも、そんなに密着されると嬉しいんですけど、ちょっと痛い。そ、それにですね、そういったことは双方の同意が無ければですね!」


 いえね、マリアが魅力がないってわけではないんですよ。身長はそこまで高くないけど、顔は美人だし体つきもボンキュッボンとまでは言わないけど、全体的に魅力的な体系をしているのは間違いないんですよ! ただ……俺はそう言った経験無いし、どうしていいか分からないから!


 周りに視線を向けて助けを求めてみるけど、みんな流石に呆れているのか何も言わなかった。

 その後も、あれこれマリアが聞いて来たけど、俺自身この力が自力の物ではなく神様の力なのを知っているので教えることが出来ないんだよね。


 それでも後に引いてくれないマリアに、今度一緒に訓練をしようと言う事で何とか逃げ延びた……絶対だからね!と念を押されたけどね。


「グランツ……なんで助けてくれないんだよ」


「あ、ああ。マリアがあんなにトマを気に入るとは思っていなくてな。それに、俺達はパーティを組んではいるが個人の恋愛などにはノータッチだ! デリケートな部分だから、基本どのパーティでもそこは関わらないぞ」


 少し恨みっぽくグランツに文句を言ったけど、冒険者達のパーティは基本的に実力が近い個人が集まっただけのパーティが多いみたいで、白虎の人達みたいにカップル同士――ハルとアルルはくっついてはいないけど――になっているのは少ないんだそうだ。


 実際にくっついて結婚した場合、どこかに家を買ったりして女性が家に残って男だけ冒険者を続けるか、冒険者を引退して他の職に就くことが殆どなのだとか。

 受付のケイティーさんも元は冒険者だったそうで、結婚して引退してからギルドの受付をやり始めたんだとか。ちなみに旦那さんも転職して、今は漁師兼護衛みたいな感じで漁にでているとのことだ。


 アシュリーとコンラートがもしかしたら嫉妬しているといけないと思ってちらっと見たんだけど、どちらかと言うと我関せずといった感じでまったく気にしていなかった。

 後で聞いたら、二人とも近くの村出身でそこに二人とも恋人が居るらしく、別にマリアをどうしようが気にしないっていうよりこちらを巻き込むなって感じだった。


 だから、お前とマリアの問題だから好きにしてくれって言われてしまった……別に嫌と言うか嫌いではないよ? でもね、強くなりたいがためにそうゆうことするのはよくないよね。


 


 そんなわちゃわちゃした状況を何とか収めて、元のギルドのロビーに戻ってくる。

 ケイティーさんに結果を確認してくるから待っていてと言われ、マリアにはおとなしく待っていようくぎを刺していた。

 

「ねえねえ、トマってどこから来たの? 」


「うーん。山奥を転々としていたからどこって言われても困るけど、もともと住んでいたのはイオリゲン王国だよ。そこで師匠に合ってから山奥で修業しながら、転々と移動していたんだ」


 本当はウグジマシカとか出身にしたかったんだけど、流石に行ったことのない場所だとぼろがでそうだからね。


「ふうん、そうなんだ。どんな修行していたの?」


「どんなって言われても困るけど。魔法の反復練習だとか、魔物を狩ったりしていただけかな? マリアは魔法がつかいたいんだっけ? 」


「基礎的な事ばかりなんだね。一応魔法はつかえるんだよ? 応用魔法の初期魔法なら……でもこれじゃあ戦闘では使えないし、コンラートは天才肌だから教えるの下手だし」


「下手っていうな! マリアが俺の言ったことをちゃんと理解できないのがいけないんだ! 」


「ちがいますー! コンラートがへたなんですー! 」


「まあまあ二人とも落ち着いて。そう言えばコンラートも魔導士だったよね? どんな魔法が使えるの? 」


「……一応、応用魔法の放出系は一通り」


「すごいじゃん! コンラートってまだ十六だっけ? その年でそれだけ使えるんだったら、将来超越魔法もつかえるようになるんじゃない? 」


 マリアが煽るからコンラートが少し苛立ってしまっていたので、話を変えてコンラートの話を聞いてみたんだけど、この年齢で応用魔法を殆ど使えるなんてかなりの才能だったはずだ。

 確か前に読んだ本には、基礎魔法の初期はだいたい誰でも練習したら使えるけど、応用魔法以上はかなり練習しないと使えなかったはず。しかも、大体の人が俺がさっき使ったような多重魔法が使えるようにならずに、単体魔法のみしか出来ないのでかなり優秀なはずだ。


「ま、まあね。一応僕に昔魔法を教えてくれた人が居たんだけど、その人は超越魔法が使えて僕も練習したら到達できるかもしれないって言ってくれたから頑張っているんだけど……なかなか壁が越えられないんだ」


「あーまあ、そうだよね。と言うか、そんなに簡単に使えるんだったらみんな超越魔法使いばかりになっちゃうって。なんだっけ? マナとオドの制御がうまくいかないと超越魔法にとうたつできなかったんだよね? 」


「そう! そうなんだよ! 基礎魔法を練習するとマナの訓練になって、応用魔法を使えばオドの訓練になるんだだけど、どうやってもその両方を使って魔法を使う事が出来ないんですよ! トマさんはその辺りどうやって練習しているんです? 僕に教えてくれた人は流石にこんなに早く超越魔法の足がかりが出来るようになるとは思っていなかったのか、その辺りの方法を教えて行ってくれなかったんですよ! やっぱり同じ方式ですか?もしくは違うやりかたならどんな方法なのか教えてください! 」


 机に手を付いてまで前のめりになって俺に質問してこないでよ。問題にならない様に超越魔法が使えることを隠してはいるんだけど……うーん、どうしたらいいのかな。


 とりあえず、俺が超越魔法を使う時の感覚は――なんだろう、自分のオドを誘引剤のように使ってマナを呼び寄せて、その呼び寄せたマナとオドを混ぜて魔法を作るってイメージといったらいいのかな?

 因みに、勇者の魔法はオドを使って強制的に周囲のマナを引っ張ってきて、強制的に魔法を使うイメージだけど――勇者の魔法を使おうとすると勝手にマナも集まってきている感じもするんだよね。


「俺も流石に詳しくわからないけど……オドを使ってマナを呼び寄せるみたいな話は聞いた事があるかな? なんていうのかな、たぶん基礎魔法のマナはそこにあるマナをそのまま利用する形だけど、超越魔法はそれを変質させて使っているイメージかな?」


「……なるほど。そうだよな、基礎魔法は土なら土、火なら火しか出せない……いや、そうなると……応用魔法の魔法でも……」


 俺が少し説明すると、自分の中で何か思うところがあるのか小さな声でぶつぶつと何か言って、自分の世界に入って行ってしまった。

 うん、なんだろうこの感じ誰かに……ああ、コジーラさんと同じタイプなのかマッドマジシャンの。


「こうなるとしばらくは自分の世界に入ったままだな。それにしてもトマよ、お前魔導士なのにあんな剣術や体術が使えるんだな。正直、魔導士って後ろから魔法を使っているだけのイメージだったぞ」


「あれは身体強化魔法のおかげだね。それに、師匠に健全な体には健全な力が宿る、ってな感じの人で基礎トレーニングはそれなりにやっていたし、魔力切れの時に最低限剣位使えないとこまるからね」


「そんなものか。まあ、確かに最低限身を守る程度には剣は扱えた方が良いな。こいつにも時間がある時に護身術位は教えておくか――お、来たみたいだぞ」


 グランツの指さす方向には、奥の扉から出て来たケイティーさんがお盆の様な物を持ってこちらに来るのが見える。


「トマさんお待たせしました。こちらがトマさんのギルド章になります」


 そう言って机に置いたのは、銀色に光る首から下げるドッグタグのようなものだった。

 そこに書かれているのは、トマと言う名前とユピリル冒険者ギルドが発行したと言う事が書かれていた。


「おいおいマジか! 」

「トマすごーい! 」

「ま、まあ、あの実力ならそうだよね」

「おめでとう」

「……でもそうなると……多重魔法って……」


 一人他の事に夢中になっているが、皆が一様にお祝いを言ってくれる……なぜだ?

 一応ギルド章を手に取ってみるけど、特に皆との違いは無いよう――あれ? なんか光沢が違う気が。


「トマさん銀等級ご登録おめでとうございます。このギルドでは数人しかいない銀等級ですが、初回からこの等級になるのは始めですよ! 」


「ぎ、銀……等級? なぜ? 」


 何故だ、目立たない様に応用魔法しか使わなかったのに、なぜ銀等級に。しかも始めから銀等級って、騎士団上りの人よりも上だし、熟練冒険者の証……


「えええええええええええ!!! 」


 予想外の事態に椅子をけり倒し立ち上がり絶叫を上げたのだけど、皆は感激の咆哮だと思たみたいでおめでとうを連呼されてしまった……。


 いつも読んで頂きありがとうございます。

 次回の更新も月曜日になります。


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