失敗勇者と辺境の冒険者達
冒険者ギルド――異世界ファンタジーで出てこないことが無いほど有名な組織に遂に――
到着した???
俺がグランツに案内されて到着したのは、二階建ての――普通の一軒家の様な建物だった。
一応扉の横には冒険者のマークなのか、剣と杖を×マークのように合わせた看板が付けられているが――
余りにもぼろい。
グランツ達は躊躇いもせずその建物に入って行くので間違いはないとは思うので、一緒に付いて建物に入って行く。
建物の中は何故か外見と違いかなり綺麗で、表から見た感じだとぼろい一軒家みたいだったけど意外と奥まで建物が続いているようで、俺が足を踏み言えれたのはホールの様な場所になっていた。
壁際には依頼書でも貼ってあるのか、冒険者達が何やら話しながら壁に貼られた紙を覗いていたり、何やら交渉しているような人たちが居た。
先を行くグランツ達は他の冒険者たちから色々声を掛けられていることから、恐らくそれ内のパーティである事がなんとなく雰囲気から察することが出来る。
いきなり良い冒険者と巡り合えたようだなと少しホッとしながらグランツ達の後を追って行くと、奥にあるカウンターに座る中年の女性に声を掛けた後俺に手招きをして呼び寄せる。
「ケイティー、このトマってやつが冒険者の登録をしたいようで連れて来たんだ」
「あら、グランツありがとう。初めましてトマさん。私はユピリル支部受付をしているケイティーよ、よろしくね。早速だけで、この紙に必要事項を記入してもらってもいいかしら。もし文字が書けない様であれば私が代筆するけどどうする?」
差し出された紙に書かれている必要事項を見ると、登録名と性別それに何が出来るか――例えば剣とか魔法が使えるとか――そう言った簡単な事だけだったので、そのまま受け取り記入してケイティーさんへ渡す。
「あらあなた魔法が使えるのね。そうなると、基礎か応用どちらが使えるかしら」
「応用魔法が使えます。何が使えるかも言った方が良いですか?」
俺がそう言うとケイティーさんは俺の手招きして顔をよせ、耳元で小さな声で言う。
「初めてなのはわかったけど、あなたがどんな魔法が使えてどの程度の威力が出せるかとか、仲間じゃない人には言わない方が良いわよ。ただでさえ魔導士なんて少ないんだから、あなたに寄生したがる冒険者がいないとも限らないわ。まあ、グランツ達と一緒に行くのであればよっぽど絡んでくる奴らも居ないでしょうけどね」
「気を付けます、忠告ありがとうございます」
「良いのよ。それが私の仕事だし、ギルド員どうしで争われたりした方が面倒なんだから」
俺から顔を話し、手をパタパタさせながら笑いながらそう言ってくれた。
「じゃあとりあえずはあなたの力が見たいからこっちについて来てもらえる? グランツ達もくるのよ」
そう言ってカウンターから出て来たケイティーさんの後に付いて行き、階段を下に降りて行きその先にある金属製の扉を開け放つ――そこは、周りを石で囲まれた訓練場の様な場所だった。
「ここが試験会場ね。トマさんは魔導士だったわね? ちょっとまっていてくれるかしら。」
ケイティーさんはそいうと、入り口の脇に置いてあった人形のような物を抱え上げて少し離れた所に設置して戻って来た。
「ふぅ、おまたせ。それじゃあ試験をはじめるわね。まあ、試験と言っても実際に魔法が使えるのかとか、実際にどの程度の実力がありそうなのか見るだけだから気楽にね。――それじゃあ、何か得意な魔法をあの人形に撃ってみて」
「わかりました」
とは言いつつも、俺が今まで見た魔法だと……どれもそれなりに威力がありそうなんだよな。
ここはひとつ、威力のある魔法を――ともおもったけど、やっぱり普通の応用魔法でそれなりの威力になりそうなものにしておこうかな。
「それでは行きます。『上級風刃』」
俺の放った風の刃は、人形へと一直線へと飛んで行き――人形を吹き飛ばした。
それを見たケイティーさんは吹き飛んだ人形へ近づいて行き、回収して戻って来た。
「トマさんお疲れ様、これで試験は終わりになります。人形を吹き飛ばして魔法で傷もつけているので、今の魔法は応用魔法で間違いないですね。それでは上で手続きの続きをしますので戻りましょう」
「傷がついたから応用魔法が使えた証明になるんですか? 」
「ええそうよ。これは試験用の特殊な人形で、基礎魔法なら吹き飛ぶだけ、応用魔法なら何かしらの傷が入って、私も見たことは無いんだけど超越魔法だとバラバラに粉砕されたりするらしいわ」
そんな仕組みの人形だったのか。まあ、熊を一撃で倒した魔法なのに切れなかったのは、なにか特殊な素材で作られた人形で魔法に対して抵抗でもあったのだろう。
「トマ、お疲れさん。あれが、熊を仕留めた魔法なのか? 」
「そうですよ。あれ以外にも魔法は使えますけど、威力のある魔法でわかりやすいのはあれかなって」
「なるほど――」
「ねえねえトマ! 他にも魔法を見せてよ! ねーお願い! 」
「マリア止めてあげて、トマ困ってる」
「そうなの? ねえトマ嫌なの?困ってるの? 」
「その辺にしておけマリア。そのまま抱き付いているとトマが他の奴らに絡まれる原因になるぞ」
「……はーい」
上の階に戻る途中でグランツと話をしていると、魔法が大好きなマリアに他の魔法も見せて欲しいとせがみながら腕に抱き付いて来たが、イサベルとグランツがマリアを説得してくれて良かった。
最近――と言うかこの異世界に来てから女性達のスキンシップが元の世界と違って色々と――まあ、こまるんですよ色々と……。
……流石に体には胸当てをしていたから感触はなかったけど、絡みついて来た腕の感触に少し悩みそうだ。
一連の流れを見ていたケイティーさんは「若いわね」と小さく呟いていたのを聞き逃さなかった。
「それではこれから審査しますので少々お待ちくださいね。グランツさんちょっとこっちに来てもらってもいいかしら?」
そう言ってグランツさんはケイティーさんに連れられて、受付の奥の部屋へと入っていた。
「それでねー、その時アシュリーがさ――」
「さっきからピーチクパーチクうるせぇぞ!!!」
審査結果が分かるまで暇だったので、マリア達と今までの冒険などを聞いて話をつぶしていると……大声を出して突っかかってくる冒険者が俺達の近くへドシドシと足音を立てながら寄って来た。
「キルヒナーあんたね……パーティを追い出されたからって逆恨みして突っかかってこないでくれる? 」
「そんな事は関係ねえ! それに、なんだその瘦せっぽちは! またインチキして仲間の等級を上げようってのか! 」
「そんなことしてないわよ! ギルドが実力もない冒険者のランクを勝手に上げる訳ないじゃない! そんなこと言って僻んでるからあんたはずっと銅級なのよ」
「てめぇ! ――っ!」
キルヒナーと呼ばれた男は不自然な形に後ろへ倒れ込んだ……まあ、俺の仕業だけど。
「おや? 足でも滑らせましたか? マリアも少し落ち着きなって、こんな所で喧嘩したらケイティーさんにおこられるよ」
売り言葉に買い言葉か、元パーティメンバーだったらしきキルヒナーと呼ばれた男性がマリアと言い争い、キルヒナーがマリアに手を上げようとしたので、ひざかっくんをして態勢が崩れた所に素早く掌で肩を押して床に転がしておいた――ついてでにマリアも宥めておく。
キルヒナー自体は何が起こったのかよくわからず目を白黒させていたが、周りで見ていた何人かの冒険者達は気が付いたるようで周囲と何やら会話していた――そして、部屋の隅から一人やけに鋭い視線で見つめる人が居たが、特にこちらを同行するつもりは無い様なので放っておく。
少しして、自分が俺に倒されたのだと気が付いたようで、顔を真っ赤にしながら何か叫び散らしていたけど、流石にこれ以上の騒ぎはまずいと思ったのか捨て台詞を言ってギルドから逃げ出していった。
「――はぁああああ。流石にビビったわ! 」
「え! あれでビビってたの! 物凄く堂々としてたのに! 」
「いや、だって俺本職魔導士だよ? あんなゴリゴリ戦士の人にあの距離から殴られたらと思ったら、流石に怖いって」
本当は全くビビって居たりはしなかったんだけど、流石にこの状況であまり堂々とし過ぎているのもどうかと思って嘘をついた。
あのキルヒナーって男は、過去にこのパーティに所属していたらしいんだけど、マリアやイザベルを口説こうとして失敗し、あまつさえ夜這いを掛けようとしてぼこぼこにされて追い出されたんだとか。
まあ、イザベルの様な見た目おっとりとしたお姉さんや、マリアのような美人を口説こうと思うのはわからなくもないんだけど、無理やりはダメだよね。
その後は、遠くで眺めていた冒険者たちもこちらにかかわろうと言う物も居らず、部屋の隅に居た男もいつの間にかいなくなっており、マリア達と面白おかしく話をしていると奥の扉からグランツ達が戻ってきた。
「トマさん……お待たせしました。えーランクの件なのですが……」
ケイティーさんは何か言いずらそうに言葉を濁すし、不思議に思いグランツを見るとそっぽを向いて頭を掻きだした……いったいなんなんだ?
「あの……ですね。もう一度地下に着て頂いてもよろしいですか? 」
「はぁ。構いませんが……なにかありました? 」
「ええっと。そのことも下で説明したいと思いますので、お手数ですが一緒に地下まで着て下さい 」
「わかりました」
頭を傾げながらマリア達を見るが、マリア達も何が起こっているのかわからず小さく手を挙げている。
まあ、良くわからないけど行くしかないので再び地下の訓練場に降りると――そこにはさっき鋭い視線をこちらへ向けていた怪しげな人が立っていた。
「ギルドマスター、トマさんをお連れしました」
え! この人がギルドマスターなの! あ、でもそうなるとさっきの視線もそう言う事か。
「お前がトマだな。今から俺と立ち会って貰おう」
「――は? え? 何でですか? 」
「お前が実力を隠しているのが分かっているからだ」
「……何でそう思うんですか?」
「お前の立ち振る舞いや動きを見れば、騎士並みの動きが出来ることは想像がつく。それに、さっきのあれは並みの騎士では行えない。であれば、応用魔法も使え剣も使えるとなれば、冒険者で言えば銀級に値するからだ」
流石に立ち振る舞いとかでそう思われるとは思わなかったな。
まあそこは、さまざまな冒険者達を見て来たギルドマスターとしての経験で見破られてしまったんだろう。
どうしようかな……うん、これで行こう。
「わかりました。俺は魔法が主体の戦闘に特化しているので、魔法を使用しても構いませんか? 」
「かまわん。それでお前の実力がわかるならな」
仕方ないか。ま、でも魔法を加減すれば問題ないだろう。
「マリア、双剣の一本を貸してもらっても良いかな? 」
「良いわよ。でも壊したりしないでね? 」
マリアにショートソードの一本を借り受け、軽くその剣を振ってみる――やっぱり重いな。
今の俺でも、ショートソード程度であればある程度振ることが出来るみたいだけど、流石に思い通りに振るとなるとやはり身体強化魔法が必要になってくるね。
鞘から抜いた剣を持った腕をだらりと下げた状態で、訓練場の真ん中に居るギルドマスターに近づいていく。
騎士団ではある程度型も教えてもらったけど、流石にその型をを使うと色々とばれそうだから使わないけど、身体強化状態での戦闘位なら問題ないだろう。
俺とギルドマスターの距離は五メートル程、元の世界であればかなり遠い距離だけど魔法があり、人々の身体能力がかなり高いこの世界では一息で手が届くギリギリの間合いだ。
俺は息を大きく吸い吐き出して集中する。
「行きます」
セクメトリーの勇者の力を無くしてからの初めての本格的な戦闘。
そして、力量はわからないけど恐らくかなり強いと思われるギルドマスターとの立ちたいが始まる。
いつも読んで頂きありがとうございます。
第一章は召喚された志倉が周りに翻弄されながら、色々な人々と会う召喚編でした。
第二章からはしがらみが無くなった志倉が、ようやく好き勝手に異世界に旅立っていきます。
ようやく放浪が出来るようになった志倉に立ちはだかるギルドマスターの真意は……




