表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚失敗勇者の異世界放浪旅  作者: 転々
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/220

失敗勇者と辺境都市ユピリル

「っは! ここは!? 」

 

 意識が戻り周囲を見渡すと……そこは百八十度どこを見ても木しか生えていない山奥だった。

 そしてなぜこんな所に居るかを思いだした。

 

「となると、ここはガーネットに送ってもらったイオリゲン王国から西北の、大陸の端にあるオシロス王国の更に僻地に当たるユピリルと言う街の近くのはずだよな? でも……」

 

 俺が寝ていたのは大木と言えそうなほど大きな木の根元だたが、周りには街はおろか道すら見当たらない。だけど、予定通りであれば少し移動すれば道に出て街があるはずだ。

 

「ま、とりあえず周囲を確認する……ちょっと待てよ、流石にこれは脱いでおくか『アイテムボックス』」


 周囲を確認しようと立ちあ上がった際に、ガチャガチャと金属の擦れる音がすることに気が付き、自分が未だ鎧姿だったのを思い出し空間魔法のアイテムボックスを使用して鎧と剣を収納する。

 アイテムボックスの魔法は、ガーネットに貰った空間魔法を扱う知識に使い方があったので使わせてもらった……まあ、異世界物であればアイテムボックスかストレージの様な物は必須だよね。


 ただ、俺のアイテムボックスは未だ使い慣れていないせいか収容量が少なく、馬車一台分ほどしか収容できないので、あまり使い勝手は良くないだろう。

 鎧と剣を収納し、今は革製の服を上下来ているだけなのでそこまでおかしな格好ではないと思う。



 さて、これからどうした物かと思い思考を巡らせる。

 まず、所持品はさっきまでつけていた剣と鎧、そして今着ている服だけだ。

 そして所持金はなしで食料や水なども持っていない。


 ……その辺りをガーネットに言うのを忘れていたけど、流石にさっき出て行って直ぐにあの異界に戻るのはバツが悪い気がするしな。

 とりあえずは、街を探しつつ動物か魔物を狩って旅の資金にでもしますかね。




 転移した大樹から歩き出して数時間……道はおろか魔物や動物すら遭遇せずに未だ森をさまよっていた。


「どんだけ広いんだよこの森は! ちくしょう! もういいや、自重なんてしない! 」


 流石に数時間歩き通りして空腹とのどの渇きにイライラし、人里も近くにある予定だったのであまり魔法を使うつもりはなかったのだけど……流石に限界だった。


上級(アドバンスド)探査(サーチ)!』


 無詠唱で魔法を行使すると俺を中心に魔力がドーム状に広がって行く。


 この超越(トラセンド)探査(サーチ)、自分のオドを薄く広げて出来たドーム内の魔力を探り、ドーム内で魔力をを有する物全てを探査する魔法だ。


 まあぶっちゃけ、アルルさんが使ったソナーの魔法はあまり使い勝手が良くなかったので、新しく魔法を考えてみたらオドの消費は少し多いけど問題なく仕えたようだ。


 ふむふむ、この魔力消費なら半径三キロ程の範囲全て探査することが出来るのか。

 サーチのドームの範囲内を地図として受け取り、その中に大きく反応する魔力を確認していく。


 んー、この森ってあんまり魔物とかいないんだな……おっ、少し離れた所に大型の動物がいるみたいだしその近くには川もあるみたいだ。それ以外にも動物の反応はそこかしこにあるな、何で全く遭遇しなかったんだか。


 ん?範囲内ギリギリの所に複数の魔力反応があるな……もしかして人かな? 人であれば街への道とか聞きたいけど、とりあえずは腹ごしらえと水分補給の方が優先かな。


上級(アドバンスド)身体強化(ボディブースト)


 身体強化魔法を使用し反応があった動物の元へと駆けだしていく……駆けだすというよりも跳ねて飛んでいるような感じだけどね。

 ある程度近くまで行ったら速度を落とし忍び足で反応のあった場所へ向かうと、体長三メートルほどありそうな熊が俺の方を向きながら立ち上がっていた。


「ブッフォー!」


上級(アドバンスド)風刃(ウインドカッター)

 

 威嚇の様な荒々しい声を上げる熊に一瞬たじろぐが、上級風魔法を受けた首と体が泣き別れ、体を震わせながら熊の巨体が地面に倒れ伏す。


「ふぅ。一瞬焦ったけど、流石に魔物でもない動物相手であればビビる必要すらなかったな」


 とりあえず、熊の亡骸をアイテムボックスへ収納し川がある方向へ歩き出す。

 熊と出会ってから数百メートルの所に小川の様な川を見つけ、顔を突っ込むように川の水でのどの渇きを潤す。


「ぷっはー! 冷たくて美味しい水だな。アイテムボックスに液体って入れることできるのかな? 」


 のどの渇きを潤した後、アイテムボックスを川の中で展開して水を入れてみる。

 その後、自分の近くでアイテムボックスを開き確認すると、確かに水が入っている事が確認できたが、取り出そうとするとそのままアイテムボックスの空間から漏れ出してくる感じになるので、水筒代わりに使うには少し不便な感じだった。


 近くに太めの枝がある気を見つけると、そこの地面に魔法でくぼみを作ってからアイテムボックスからさっき狩った熊を取り出し、魔法で木の枝を操り熊を釣り上げて血抜きをする。


 血抜きが終わったら地面を魔法で埋めなおし、どうやって解体しようか悩んでいると……少し遠くから何かが近づいてくる物音がしたので一旦熊をアイテムボックスへ収納しなおす。

 

 物音は複数、しかもカチャカチャと金属が擦れる様な音も聞こえているので、恐らくさっき探査の時に引っかかった人達だろう。


 現れたのは五人の恐らく冒険者のようだが、こんな所で一人見慣れない俺に警戒しているのか直ぐに戦闘が出来る様な態勢でリーダーっぽい人が話しかけてくる。  


「おいあんた、こんな所で何してるんだ? 」

 

「どうもこんにちは。まあ、色々ありまして狩りをしていたんですけど」


「……狩りにしては獲物の姿が見えないが? 」


「アイテムボックスが仕えますので収納してあるんです。流石にこんな山奥ではどんなに人に合うか分からなかったので念のためにですけど」

 俺はそう言いながらアイテムボックスを開け、中から先ほど狩りをした熊を取り出した。

 冒険者達は俺が熊を狩っていたとは思っていなかったのかどよめき驚いていたが、本当に狩りをしていたのだとわかったのか、リーダーが後ろ手で合図をすると体から力が抜けるのが見えた。


「いや、すまない。ここらで見ない顔だったのでついな」


「気にしないでください。それで……ここってどこか分かります? 」


「……? どういう事だ? 」


 流石に土地勘のない人間がこんな所に居るのもおかしな話なので、異世界物で良くあるカバーストーリーを冒険者の人に伝えた。

 

 簡単に言うと、今まで人里離れた山奥で師匠と魔法の修行をしていたのだが、一人前になったかのテストとして冒険者としてランクを上げながら、ウグジマシカまでてこいと言われたので、まず町に向かう所だったのだけど着の身着のままでおいていかれたので、食料確保と販売も含めて狩をしていたと言う事にしておいた。

 それに、この場所には師匠が転移の魔法を使って送ったので現在迷子中と言う事にしておいた……実際迷子なんだけどね。


「なるほどな。そうなるとまずこの近くの町に行って冒険者の登録をする感じか。俺たちが案内してやっても良いんだが、俺たちはまだ狩をしてないから」


「ねえ君、着の身着のままっていってたのにどうやって熊を狩ったの? 」


 リーダーっぽい人と話していると、急に仲間の女の子が話に割り込んできた。

 

「これは、熊を見つけたので風魔法を使って狩ったんです」


「やっぱり! じゃあ君って魔導士なんだね! 他にどんな魔法が使えるの? 」


「マリアちょっと落ち着け。すまんな、この子は魔法が使いたいんだが才能が無くて魔導士に合うといつも晃なんだ」


「むぅ。いつもじゃないよ! グランツだって見たでしょ、魔法であの熊の首を一撃で落とせるような魔法使いなんてこのあたりじゃいないじゃない。最低でも応用魔法、もしかしたら超越魔法も使えるような魔法使いかもしれないでしょよ!」


 ほう、鋭いな。しかし、俺が使えるのは超越魔法を超えた勇者魔法も使えるんだぞ……とは流石にいえないので、魔法は基本属性と回復魔法と空間魔法が応用魔法まで使えるということにしておいた。

 それを話すと、マリアと言われた女の子は目を輝かせてあれこれ聞いてこようとしたが、詰め寄ろうとした瞬間に他のパーティメンバーに取り押さえられていた。


「いや……本当にすまない」


「いえ、起きになさらずに。そういえば、あなたたちも狩りに来ているという事ですが、この森って何がいるんですか? 」


「ああ、俺のことはグランツで良い。そうさな、この山は何故か魔物が少ないから普通の動物がメインなんだが、鹿か猪あたりが目標ではあるが鳥や兎でもそれなりに稼ぎにはなるからな。あんた見たいにきれいに熊が狩れるならかなり儲かるんだが


な」


「そうなんですか。俺はトマと呼んでください。何匹くらい狩れたら戻れそうなんですか? 」


「んあ? 鹿か猪の大人なら一匹でいいが、鳥や兎なら十匹くらいだな」


 ふむ。さっき俺が探査魔法を使った時一番反応が大きかったのがここだったから、もう少し小さい反応があったのは猪か鹿でさらに小さいのは小動物あたりなのかな?

 俺が協力してあげれば道案内もお願いできそうだし、この人たちも早く戻ることができウィンウィンな気がしたので提案してみると、仲間内で少し話をしてから了承してくれた。


 そして、一応上級探査魔法(アドバンスドサーチ)を使用して動物を探し出しグランツたちを案内し、結果鹿の親子と猪一匹を狩り上場の成果を得た。




「トマすまんな。獲物のところまで案内してもらっちまって。それにアイテムボックスで運搬までした貰って」


「いえ、気にしないでください」


「それにしてもトマの魔法って少し変わっているわよね。ソナーじゃない索敵魔法なんて始めて見たわ」


「そ、そうなんですか。俺は師匠から習っただけなのでその辺りは詳しく無くて」


「そうそう、それに魔導士なのに結構体力あるよな。こいつなんて直ぐにへばりやがるし」


「こいつ言うな! お前こそレンジャーの癖に弓はへっぽこじゃねぇか! 」


「あ、あの……二人とも、お、落ち着いて」


「「このバーサーカーは黙ってろ!!」」


「……ああん!? 二人ともぼろ雑巾になりたい様ね! 」


「お前ら少し黙ってろ! すまんトマ、こいつら悪い奴らじゃないんだがちょっとうるさくて。お前らもいくら魔物が少ない街道だからと言っても稀には遭遇することがあるんだ、もう少し気を引き締めろ! 」


 たははと乾いた笑いを浮かべながら同行する冒険者達を見る。

 彼ら彼女らは、グランツのパーティーメンバーたちだ。

 前衛で敵の攻撃を盾ブロックしつつ戦う、筋骨隆々で頭を剃り上げた少し厳ついリーダーのグランツは、見た目は老けて見えるが年齢は二十五歳。


 前衛では双剣、後衛では弓が使える器用貧乏。背は少し低めだが瞬発力を生かした動きが出来、明るく人懐っこいマリアは十八歳で、金髪の笑顔の似合う美人さんだ。


 索敵と斥候で、後衛で弓を使い狩り中も周囲に気を配り皆をフォローするアシュリー。少しふざけ癖の様な物があるが、狩りの最中などはいたってまじめだった。アシュリーもマリアと同じく十八歳だ。


 部隊の真ん中で味方の動きに合わせ、魔法を使うコンラート。アシュリーと悪友の様な感じで良くふざけているが、俺とはあまり話をしようとしてくれない。人見知りなのかな?彼は十六歳で、まだ冒険者を始めて一年との事だ。


 最後に、見た目おとなしめの顔をしているのに凶悪そうなバトルアックスで暴れまわるイザベル。普段は彼女の赤い髪で目のあたりまで隠れてあまり顔はわからないが、いざ戦闘になるといの一番に駆け出しバトルアックスを振り回しながら笑っているバトルマニアっぽい子だ。見た目の印象で歳が若く見えるが、二十二歳とこのパーティではグランツに次ぐ年齢だ。


 計五人のパーティで、前衛後衛共にバランスの取れた一団の様だった。

 彼らは鉄クラスの冒険者になるわけだが、なぜあの森に居たのか聞くとあの森は何故だか魔物が殆ど近づかず、安全に動物の狩りや薬草採集が出来る場所だからまだ魔物との戦闘に成れていないコンラートの訓練も兼ねて狩りに来ていたそうだ。

 

 

 彼らの案内で、彼らのホームでもある辺境都市ユピリルに向かい街道を歩いていく。

 街道とはいっても舗装などは全くされておらず、でこぼこの土がむき出しだし草はぼうぼう。元の世界で言うと草がぼうぼうの林道のよな感じだろうか?

 

「トマ! あれがユピリルよ! 」


 そんなぼこぼこの道を一時間程歩くと、二メートル程ではあるが街を囲うような石の壁が見えてきて、マリアが大声で俺に教えてくれる。

 

 ユピリルの街は大陸北西のに位置し、海に面している為防壁は海に面していない部分のみしか存在しておらず、半円形の様な形をした街だ。

 

 イオリゲン王国のキザオカの街と比べるとかなり小さく、家屋の密集度も建物の高さも低く田舎町といった感じがする。

 ただし、この街は港が在る為貿易が盛んで様々な物資が行きかい活気のある街だそうだ。

 普段冒険者達は、先程の俺が転移した南にある森ではなく南東方向にあるダンジョンに向かっている人が殆どなのだとか。

 

 ただ、ダンジョン周囲には村があるそうだが冒険者達にはぼったくり価格で宿屋物資が販売されている為、ユピリルを拠点として活動するものが殆どなのだとか。



 

 そんなことを教えてもらっている間にユピリルの街の門までたどり着くが、グランツが衛兵と一言二言話しただけで素通り出来てしまった。

 

 素通りで大丈夫なのかと思っているとグランツから、この街の陸路側はかなり緩いらしくいつもあんな感じなのだとか。

 しかし、船が頻繁に行き交う港だとご禁制の物資の密輸などがあった過去が在る為、かなり厳重に警備されているらしい。


 門をくぐるころには、鼻腔に海の香りが漂ってきて大通りのそこかしこで露店が軒を連ねていた。

 色々なものが興味を引くようなものが売っていたが、今の俺は素寒貧なので眺めながらグランツ達と共に冒険者ギルドへと向かうのであった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ