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召喚失敗勇者の異世界放浪旅  作者: 転々
一章

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46/220

失敗勇者と人形

 アイリスはあの件をシクラさんに伝えるのだろうか?

 僕とアイリスだけが持つ、シクラさんの未来の一部が書き示された子の紙束の事を。

 この神の通りに行けば、僕は元の洞窟へ戻り新しく同族を迎え入れて暮らすことが出来るし、アイリスはシクラ様と結婚し幸せな家庭を築くことが出来る。

 ただし、この紙に書かれていることは確実ではなく起きるかもしれない事件やその時の対処法などが書かれているが、既に多少のずれが出てきている。

 そもそも、僕の持つ紙とアイリスが持つ紙の内容に齟齬があり、その差がどうなって行くのかがまだわからない。

 まあ僕はこの未来から外れても問題ないと思っているし、好きにしていいと言われているので特別干渉する気はないんだけど、白虎の皆が危険な場合や困っている場合だけこれを見てアドバイスするだけだね。

 あのままだったら野垂れ死するしかなかった僕を救ってくれた白虎の皆だけは、僕が出来る事であればなんでも協力するしなんだってしてやる……この紙の不吉な未来から皆を救って見せるんだ。


 スター=シクラ



「これは……なるほどなるほど……であれば……。」


 俺のスキルでオドを付与したシュレルさんが何かを確認するようにぶつぶつ呟いている。

 シュレルさんを知らない人から見たら何か考え込んでいる様にも見えるが、流石に何度もあっている俺から見ると口角が少し上がりにやにやしているように見える。


「シクラ様、このスキルはやはり異常ですね……詳細はここではあれですので後で詳しくご説明いたします。」


「は、はぁ。」


「流石に殆どオドでこれだけの人を治すのは酷だと思っておりましたが、これなら何とかなりそうです。」


 シュレルさんが生き生きとした顔でこちらを向いて言ってくるが、良くわからないがここの人達が治療できるなら良いのかな。

 

「それでは皆様治療を再開いたします。皆様の怪我の治療は確実に行えますので、気を楽にしていてください。」


 シュレルさんは怪我人たちの方へ振り返り、司祭らしい落ち着いた顔を向けて皆を安心させる。

 そして回復魔法の詠唱始めたのだが……なんかえらく詠唱が長い。

 俺が前に使ったアンリミテッドライトニングですら数十秒だったのだが、シュレルさんの詠唱は既に五分ほど続いている……内容はセクメトリー神への祈りの様な内容で、俺の詠唱とは少し違う感じがする。


「……神の子らに癒しと再生の息吹を『トラセンドエリアヒーリング!』」


 シュレルさんが長い詠唱を終えて魔法を発動させると、シュレルさんから薄緑のオーラのような物が放出され怪我人の傷口に収束していき……うっすらと温かみのある光が溢れだす。

 光が怪我をしていた部分から元の怪我をする前の状態に形を作り、その光が消えると皆の怪我はすべて治っていた。

 そう、全て……腕や足が無くなっていた者、半身がやけどで一部が炭化していたような者まですべて何事もなかったかのように治療されていた。


 いやはや、漫画やアニメなどで回復魔法を見たけど、流石にリアルで見ると凄すぎて唖然としてしまうね。

 現実世界でこの魔法があれば事故などで無くなる人は凄く少なくなるだろうけど……いろんな所で悪用もされそうで怖いけどね。


「シュレル様感謝いたします。シュレル様がいらっしゃらなければ我々の何人かは死んでいたでしょう。それに、死ななかった者も騎士団への復帰はおろか通常生活も儘ならず路頭に迷うところでした。」


「それには及びませんよ。私はセクメトリー様の司祭ですから、感謝であればこのご縁を繋いでくださったセクメトリー様へ感謝祈りを捧げてください。」

 

 恰幅のいい騎士団員はガハハと笑居ないがシュレルさんに感謝の言葉を述べている。

 騎士団員の人達が皆重症だった怪我から復帰し、他の皆もシュレルさんへ感謝の言葉を述べている。

 涙を流すような感謝ではないが、恐らくこの国でも回復の超越魔法が使える者は限られているのだろう。


「それにしてもシュレル様は凄まじいですな。超越魔法が使えるとの事はお聞きしたことがありましたが、回復の範囲超越魔法が単独で使用できるとはいやはや流石はウトサ大聖堂の司祭であられますな。」


「いえいえ、これもすべてセクメトリー様のご縁のおかげです。」


「……なるほど、そう言う事ですね。」


 シュレルさんと話をしている恰幅のいい騎士団員はチラッと俺の方へ視線を向け、シュレルさんも小さく頷いていた。

 たしかこの騎士団員は何度か騎士団で訓練を一緒にしたことがある人で、部隊長か何かをしている人だったから俺の事も何となくわかって居るのだろう……と言うか、騎士団員は皆俺の存在を知ってるんだろうけどね、コジーラさんが俺が騎士団で魔法を披露した時ばらしてたし。

 

 その後もシュレルさんは騎士団員達と何やらまだ話があるようだったので、俺達は一旦部屋から出て待つことにした。


「それにしてもシュレルさんは凄かったね。さっきの話だと、超越魔法の範囲回復って誰でも使えるってわけじゃないんだよね? 」


「シクラ様、あの魔法は普通一人で行う魔法ではありません。しかも今回はマナを使用せずオドのみで魔法を使っていますから、シュレルクラスの司祭が最低でも二人、普通の司祭であれば三人から四人必要な魔法です。恐らくシクラ様のスキルが何かしら関与しているのではないかと思います。」


「そうね。感じ方からしてシュレルは金クラスの魔術師と同程度の魔力しかないから、もし一人で行使しようとしたら普通はオド不足で倒れるか魔法が発動しないわよ。まあ、教会秘匿の神器か何かがあれば出来るのかもしれないけど、それが出来るのであれば始めから使っているはずでしょうしね。」


 アイリスとアルルさんの話を総合すると、シュレルさん自体も凄い様だけどそもそも一人で使えるような魔法ではないとの事だから、さっきシュレルさんがスキルの事で何か言いかけていた事と関係がありそうだね。 

 話に入ってこないトラオウさんを見ると、壁にもたれかかりながら難しそうな顔をしていた。

 

「トラオウさんどうかしましたか? 」


「ん、いや。何でもない。……それにしてもシュレルは遅いな、いつまではなしこんでいるのやら。」


 何でもないといいつつも何故か少しイライラしているように見える。

 他の二人もトラオウさんの変化には気が付いている様だが、肩をすくめて首を振っている。


 

「お待たせして申し訳ありません、ベロニカ副団長の所へ向かいましょう。移動途中で何がおきたか説明いたします。」


 シュレルさんは騎士団員たちから事の顛末を聞いていたようだ……そしてここで何が起きたのかシュレルさんに説明してもらった。


 俺が気を失って教会に運び込まれていた時間帯に今回の事件が起きたという。

 門番をしていた騎士によると特に変わった様子も無く騎士団長達がどこにいるか聞いてきたので、会議室で今後の作戦を練っていることを伝えたらそちらへ歩いていったという。

 その際にすれ違った騎士達によると、何か場違いなにこやかな笑顔で歩いていったということだった。

 そして会議室の近くまで歩み寄るとそのまま炸裂の魔法を放ち、会議室の前にいた騎士もろとも扉を粉砕して中にいる騎士団長建ちやその他重鎮たちを攻撃し始めたそうだ。


 だが、魔法の放つ前の異常なマナの流れを感じ取ったコジーラさんが障壁を展開したことにより部屋の中の人たちは守れたようだが、攻撃に失敗したベロニカさんはその後騎士団長たちを狙うのを止めて通路の騎士たちを襲いだしたとのこと。

 炎や風など様々な魔法を行使して騎士達を翻弄していたようだが、俺が王都中のマナを吸収してマナ枯渇状態にしたことにより、魔法が使えなくなり騎士達に取り押さえられたとのことだった。


 その際ヒューズさんによって殺害ではなく捕縛しろと指示が出なかったら確実に現場で殺されていただろうとのことだ。

 取り押さえた後は特に抵抗することなく捕縛された為、今は地下牢にて拘束され尋問されているとのことなので、今からはそこに向かうことになった。


「そんなことが……いったいベロニカさんになにがあったんですかね。」


 始めに騎士団長達を狙ったのは怨恨などの可能性が無いわけではないけど、その後手当たり次第に騎士達を襲う理由がわからない。

 それに、狙いがコジーラさんやヒューズさんだったとしても、その場合わざわざ扉を破壊して入るのではなく何食わぬ顔で会議に混じって隙を見て襲った方が合理的な気がするんだよね。


「……今はまだ確信はありませんが、心当たりはございます。しかし、一度ベロニカ副騎士団長に面会しないとわかりかねます。」


「わかりました。ベロニカさんのところに急ぎましょう。」


 シュレルさんは確信ではないといいつつも何か原因がわかっているような雰囲気だったが、流石に原因がわかっていない状態でそれを話してくれる様子はなさそうだった。

 ただ、他の三人も何か心当たりがあるようで顔つきが少し緊張しているように見えるが、誰もその原因に付いては話そうとしなかった。

 

 そんな不穏な雰囲気のまま廊下を歩いてゆき地下へ下りる石畳の階段を下りていくと、金属製の扉が見えてきてその前には二人に騎士が立っていた。

 その騎士達にシュレルさんが小声で話をすると、一人の騎士が扉を叩き扉に付いた窓のようなところから別の騎士が顔を覗かせ話をすると、ガチャンと大きな音がして扉が開かれた。


「こちらへ。」


 扉の内側に居た騎士が俺達を先導して歩いていく。

 石造りの薄暗い通路には小さな明かりが点々とついており、所々に鉄格子で作られた牢屋が見受けられた。

 牢屋の中には幾人かうなだれた様子で座っている人が居て少し嫌な気分になるが、他の皆が気にした様子は無いので表情に出さないようにして騎士について行く。 

  

 しばらく歩いて行くと周りには鉄格子が無くなり、石壁に金属扉が付いており中の様子が見えないような所になっている。

 そのまま歩いて行き突き当りにある今までと少し質感の違う金属製の扉が見えてきて、そこにも騎士が二人待機していた。

 俺達を先導してきた騎士が待機していた騎士に話をすると、一人が扉を叩き中に入って行った。


 しばらく待っていると中からコジーラさんが現れた……少し青色が良くない様子だ。

 そして俺の顔を見ると少し驚いて何か考えていたが、気を取り直してこちらへ話しかけてくる。


「シュレル様、それにシクラ様。このような所までご足労頂き申し訳ございません。シュレル様は先にお入り頂いて大丈夫ですが、シクラ様達は少しお話を先にさせて頂いてよろしいでしょうか。」


 俺が首肯すると、シュレルさんは俺に頭を下げてから先に中に入って行った。


「シクラ様、ベロニカの件でこちらにいらしたのだと言う事でよろしかったでしょうか。」


「そうです。ある程度は話は聞きましたが、ベロニカさんが味方に魔法で攻撃したとか。そして、ベロニカさんがここに居ると言う事だたので、事情を聴きたくてきました。」


「そうですか……」


 そう言うとコジーラさんは再び悩みだしてしまった。

 その様子見俺の後ろに立っていたトラオウさんが前でに出てきてイライラした様子でコジーラさんに詰め寄る。


「あいつがああなったの原因はもうわかっているんだろ? それで合わすことが出来ないっていうなら、もう何が原因か言ってるような物じゃねぇか! 」


「い、いやな。まだ確認は取れていないんだ、その確認の為にシュレル様を呼んだのだが。」


「ちっ、シュレルが確認するって言ってる自体で確定じゃねぇか。それでこれからあいつはどうするんだ? 」


「トラオウ落ち着け、まだ確定したわけではない。それにシュレル様であれば、もしもの事があっても何とかしてくださるかもしれない。」


 ベロニカさんがああなった原因はトラオウさんとコジーラさんはほぼわかっているようだが、俺達にはその原因をまだ教えてくれる様子はなさそうだ。

 そして、その状態がかなりまずそうなことだけは良くわかったけど、シュレルさんならそれを治すことが出来るかもしれないと言う事で来てもらっていたとの事だ。


 そうこう話しているうちに再び扉が開き、中からシュレルさんが現れた。

 

「それで、何かわかったのか。」


「そうですね、ベロニカ副騎士団長は悪魔に精神を支配されています。」


 トラオウさんの問いに、シュレルさんが答えると周りの空気が一段低くなったような感じがした。

 そしてシュレルさんの言葉に愕然とした表情のコジーラさんに、歯を食いしばりギリギリ音をさせているトラオウさんが居た。

 俺は状況が良く呑み込めずにいたが、アイリスとアルルの二人も顔色が悪くやはり良くない状態のようだ。


「シュレル様、ベロニカを支配から解放することは出来るのでしょうか? 」


「……申し訳ございません。私では彼女を支配から解放する方法はございませんでした。」


「そんな! で、では、どうすれば彼女を解放することが出来るのですか。」


「可能性が在るとしたら、私よりも高位超越魔法が使える教皇様か神々であれば解放することが出来るかと思います。正攻法で言えば対象の悪魔を討伐すれば解放出来るかと思いますが、どの悪魔が支配を掛けたのかが分からなければ解放する手立てはございません。……申し訳ございません。」


「そうだ! シュレル様より高位の超越魔法ならシクラ様なら可能なのではないですか!? 」


「……可能性で言うならば可能性はあります。ただし、精神支配の解除には緻密な魔法制御が必要になりまので、今のシクラ様ではかなり厳しいかと思います。それに、力技で解放できたとしてもベロニカさんの精神が崩壊する可能性が在るような魔法をあなたはシクラ様に使わせるおつもりですか?」


「そ、それは……し、しかし……いえ、なんでもありません。」


 ベロニカさんを精神支配から解放するにはシュレルさん以上に魔法が使える人でなくてはならず、教皇様とか神様とかってそうやすやすと力を貸してくれなさそうだよね。

 俺でなら一応解除できる可能性が在るのであれば試してみたいが、それが原因で廃人になってしまっては困ってしまうな。

 支配をしている悪魔を倒せば解放はされるのであれば、そちらを探った方が良いんじゃないかな?

 ほら、良く漫画とかである魔力のパスが繋がっているって言うのが分かれば相手までたどれるって事もあるしね。

 一応精神支配解除の魔法を考えてみたが、どうやら俺ではうまく制御が出来なさそうだった。

 たぶん魔法自体は発動可能だけど、絡み合ってぐちゃぐちゃになっている金属性の糸を一本一本解きほぐして、その中から問題になる一本を見つけて取り除き解したときに撚れてしまった糸元に戻す様な複雑な事をしなければならない様だ。

 そしてそれを俺が使用すると、解きほぐす段階で何本も千切り廃人確定路線まっしぐらな事が分かった。


 そしてもう一つの魔力のパスを辿る魔法はと言うと……一応使えるみたいだ。

 ただ、俺自身の魔力制御が未熟なせいで相手に探知していることがばれそうな気がするんだけど……あれ? パスさえ切られれば問題ないのであれば、これで行けるんじゃね?



 


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