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召喚失敗勇者の異世界放浪旅  作者: 転々
一章

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45/220

失敗勇者と異変

 とりあえず、シクラ様の作成んは成功した様だ。

 多少は戦線維持も楽になるだろうが、まだまだ魔物達は大量に控えているから油断はできない。

 優勢になった時に限って誰かが失敗したり、何か問題が起きることが多いのだ。

 ふむ、それを言ったら自分がいつまでも前線指令室に来ているのもかなり問題があるな……ヒューズ、コジーラ両名に現場は任せて私は一旦戻り装備品の補充状況など確認にでも行くかな。

 側仕えの者に両騎士団長への伝言を残し衛兵本部から王城へと向かう馬車へ乗り込む。

 ……ん? あれはベロニカ副団長か、何か急いでいる様だが問題があったのか?

 いや、問題があったのであれば両騎士団長に任せると決めたのだから、私は私にしか出来ない仕事をしなければならないな。


 そしてヒエン侯爵を乗せた馬車は王城へと向かって走り去っていく。

 




「何が異常なんです? そんな変なスキルですかね。」


「いや、俺達にはわからんな。そもそも、スキルなんて他人に公開するものじゃないから、有名どころのスキルなら大体は把握しているがボウズの様なスキルは大概秘匿か、パーティメンバーしか知らないことが多いだろう。」


「そうですね。ただ、そもそも前勇者様もかなり特殊なスキルだったのは存じておりますので、勇者様と言うのはそういたスキルをお持ちになることが多いのではないでしょうか。」


 俺が不思議そうに他の人に聞くが、シュレルさん以外は特別異常なスキルだとは思っていない様だった。

 俺自身もこの、『このスキルは使用者が求めた際に発動する。未来からのスキル使用者のオドを前借し、対象にオドを供給する』っていうのは特別な感じが全くしていない。


「このスキルの異常性を説明致しますね。まず、前借というスキルは基本的に使用者本人の未来のオドを前借してくるスキルです。そして、このスキルは使用者本人にしかオドをきょうきゅうできないのです。」


 そんな俺達にやれやれといった感じで何が異常なのかを教えてくれるが、特別変な所が俺にはわからない。

 ゲームとかで良くある自分のマジックパワーを他の人に渡すことが出来るってだけだよね。


「それのどこがおかしいんですか? 」


 俺の問いにシュレルさんはカクッと体が崩れそうになった。

 他の人達も首をこてりと傾げて、やはり異常性を感じられていない様だ。


「か、簡単に申しますと、普通は自分のオドを他人に供給すると言う事ができないのです。オドとは、体内で作られる魔力になり作った本人にしか使用することが出来ないのです。簡単に説明しますと、魔力には個人個人違う色が付いていて同じ色でないとオドを吸収することが出来ないのです。まれにではありますが、同質のオドを持つ人も居ますがそれは世界に数人いるかどうかといった形になり、基本的には一生合う事が無い程の確立になりますね。そしてシクラ様のスキルでは、シクラ様のオドを他人に渡すことが出来ると言う事はかなり異常な事になるんですよ。」


「そうなんですね。スゴインデスネ。」


 内心、「へーそうなんだ」位にしか思っていなかったが、一応長々と説明してくれたシュレルさんが可愛そうなので驚いて見せたが、文字がカタカナで出そうなほどな棒読みに呆れられた。

 トラオウさん達は「便利そうで良いな」とか「勇者なんだから何でもありなんでしょ」とか「新魔法の開発とか手伝ってもらえば、魔法使い放題じゃない」とか「……」無言……あれそう言えば、なぜハルさんはうずくまっているのだろう。

 俺の訝しげな視線に、皆から気にするなと言われてしまった……まあいけど。


「でもよ、そうなるとポーションでオドが回復できるのはなんでだ? 一人一人違うのであれば回復なんて出来ないだろう? 」


 トラオウさんの最もな質問にシュレルさんは少し考えを纏めてから皆に説明する。


「それはですね、ポーションに使用する素材は基本的にはマナを大量に含んだ物質を精製したものになるのですが、マナは色で言えば無色の為誰にでも使用できる反面実際の効力は弱まっているのですよ。」


「ちょっとまって、ポーションの効果が弱まっているなんて聞いて事ないわよ? そんなことがあるのなら、もっと昔から問題になっていても良いと思うわ。それに、それを今まで改良もせずに放置するなんてありえないわ。」


「アルルさんの言う事はもっともですが、これは汎用性を持たせた結果このような事になっていますので誰も改変が出来ないのです。無色と言えば聞こえはいいですが、各個人のオドは色が付いているので取り込み使用するには色を付ける必要があるのです。その過程でポーションのマナが減少して効果が落ちているという事です。」


 なるほど? ってあまり理解していないが、アルルさんのオドが赤であった場合無色を赤に変質させる必要があり、その変質の際にポーション内のマナを使用して変質させているって感じなのかな?

 

「そうなると、もしかして本人が自分専用に色を付けたポーションを作れたりしたらその分回復量が上がるって事になるんですかね。」


「……なります。下級のポーションでも上級並みの回復量があり、十倍近い回復量になります。ただし、問題なのはこれが本人以外が使用した場合、逆の作用が働き通常回復する分のマナが減少することになります。」


 自分用に色を付けたポーションを相手に飲ませると、相手のマナをその分拡散させることが出来るのか……いやこれって使い方によってはかなり危ないのでは?

 

「シクラ様が懸念されていることは昔に実際に起こっている為、今はポーションの作成は国の管理下で資格がある錬金術師のみ作成が許可されています。とはいっても、人を昏睡状態にするようなポーションを作成するのであれば毒薬を入手する方が早いのでそこまで問題はございませんよ。」


 怪訝な表情をする俺の内心を読みシュレルさんが補足してくれた。

 でも、毒薬の方が簡単っていうのもどうかと思うけどね。


「そしてその原理から推測するに、シクラ様のオドは所謂無色のオドではないかと思われます。そうでなければ、相手にオドを渡しても逆にオドが減少する事になりますからね。」


「スキルで変換されているって事ではないんですかね。」


「それも考えられますが、それであればシクラ様が上級とはいえポーション一つで回復されるとは考えられませんから。」


「それは王都中のマナを吸収したからではないの?」


「それもあるでしょうが、そのマナ自体も無色に当てはまるのですよ? いくら王都中のマナをかき集めたといっても上級ポーション何本分になるのでしょう。しかも、魔導騎士団が魔法をあれだけ大量に使っているのですから実際にはそこまで量は多くは無いでしょう。」


 実際にそのポーションでの回復量が俺にはわからず首を傾げそうになるが、アルルさんは険しそうな顔をして何やら考えている様だ。


「そうね……もし、上級十本分であったとしても私ではあの剣を魔力のみで粉砕することは出来ないわね。」


「そうでしょう。それこそがシクラ様のオドが無色である証明なのです。」


 状況が飲み込めない俺にアイリスがポーションの回復量などを教えてくれ、ようやく合点がいった。

 俺のオドが無色であるからマナの吸収は等倍であり、そしてポーションの回復量の通常の十倍程の回復量があったのだろうとの事だ。

 そして、他人にオドを分け与えへ回復させられるのは無色のオドであるからと言う事らしい。

 

 それにしても、ポーションでの回復量が十倍とか俺一人で砲台が出来そうだな……まあ、今でも出来るんだろうけどぶっ倒れるからな。


 そんなことを考えていると、あわただしい足音の後扉がノックされて皆が静まり返る。


「どうぞ。」


「司祭様大変……で……す!? 」


 シュレルさんが入室を許可すると、そこにはシスターが慌てた様子で立っていたがこの部屋の状況を見て固まっていたが、シュレルさんが話を促し何があったか確認する。

 修道女は俺達の存在を気にしていたようだが、シュレルが気にしていないので問題ないと考えて何が起こったか説明する。


「そ、それが、急に魔導騎士団の副団長様がご乱心なされて味方に魔法撃ち始めて多数の負傷者が出ている様なのです。」


「副団長ってベロニカさんの事!? 」


「なんですって! それで、今はどうなっているのですか!? 」


「は、はい。ベロニカ副団長と……伺っています。い、今は……何故か突然発生したマナ枯渇で魔法が使えなくなり、そ、その隙に取り押さえ拘束しているとの事です。」


 シュレルさんと俺が声を荒げるとシスターは委縮してビクビクとしていたが、何とか内容を伝えてくれた。

 ベロニカさんが何故……味方に向かって攻撃するなんて何が起きているんだ。

 他の皆も驚いた様子で、流石にこんなことが起きるなんて予想していなかった。

 

 皆は気が付いていないが、この事態に動じて居ない者が三人程いたのである。


 トラオウとスター、そしてハルレクターなのだが……彼はいまだに倒れたままだった……そろそろ誰か起こしてやれよ。

 それはさておき、トラオウは眉間に皺をよせ厳しい表情になっていた。

 スターは事が起きるのがわかって居たかのように何食わぬ顔をして、先程も見ていた紙を再確認している。


 事態が事態なだけに、流石にこのままここに居る訳に留まっている訳にはいかないので、急ぎ現場へと向かった。


 ベロニカさんが味方に魔法を放ったのは衛兵本部だったとの事で、俺達前衛組は駆け足で現場へと向かいシュレルさん達の様な人達は教会の馬車で現地に向かう事になった。

 流石にスターは上からの指示教会の守備を任されているので離れることが出来ないので、教会にはミモザとハルが残ることになった……流石にハルにはシュレルさんが回復魔法を使用して復帰させていた。


 それにしてもなぜベロニカさんがと言う疑問が頭をよぎる。

 先程あった時……ベロニカさんの実家に行った時は特に変わった様子もなく、食事と休憩をさせてもらって別れただけだったしな。


 そんな疑問を感じながら走っていると、いつの間にか衛兵本部へとたどり着く。

 衛兵本部の前には騎士団員や衛兵達が集まっており、どこかから煙も出ているようで何かしらの戦闘があったことが伺える。

 俺達に少し遅れてシュレルさん達が乗った馬車がやってきて、シュレルさん達が下りると衛兵本部の方から騎士団員の一人が走ってた。


「司祭様お待ちしておりました。」


「事情はある程度聞き及んでおります。怪我人はどこにいますか? 」


「こちらです。」

  

 騎士団員に先導されシュレルさん達が向かうのに合わせて俺達も衛兵本部内へと向かう。

 建物内は少し焦げ臭いが、今は消火されているので建物自体は問題ないとの事だが、建物内では前回来た時よりも人がかなり少ないように思えた。

 その理由が、怪我人が多数出てしまっておりその原因が魔導騎士団の副団長が起こしたという事が現在広まってしまっており、何か問題が起こる前に衛兵本部へ駐屯していた者達を今は外に出しているとの事だった。

 まずは怪我人の治療を行い、その後件のベロニカさんに合いに行くことになった。

 

 

 怪我人が収容されていたのは恐らく夜警をする者達の休憩所のような所で、板の間に布団の様なものが敷かれているだけの場所だった。

 救護所をあるらしいのだが、そこではニ、三人程しか寝かせられないからこちらになったとの事だ。


 うめき声と血や何かが焼けるような匂いが充満した部屋に強い拒否感を覚えるが、シュレルさん達は気にせず部屋に入って行き淡々と治療を始める。

 その部屋の中を見渡すと、部屋には三十人程の人が寝かせられており腕や足などの部位の欠損や全身にわたる広範囲の火傷などの重症者しかいなかった。

 後で聞いた話では、裂傷や軽微な火傷の者は既に魔導騎士団が治療を行ったようだが、重症の者を治療するには超越魔法で回復魔法が使える者でないと治療が出来ず、シュレルさん達を待っていたとの事だ。


 シスターが包帯などを外し傷口をシュレルさんが確認して魔法を施していくが、数人治療した段階で問題が発生した。

 先程俺が王都中のマナを吸収したせいで周囲のマナがまだ回復しておらず、今の治療にマナを使い果たしてしまっていたのだ。

 

「やはりまだこの辺りのマナは回復していませんか。ポーションは何本持ってきました? 」


「下級五本に中級一本です。こんなに早くマナ枯渇になるなんて、司祭様一体何が起こっているのでしょうか? 」


「魔物達が襲撃してきているのですから、そこは仕方が無いでしょう。しかしその数では皆を治療するには量が足りませんね。」


 シュレルさんがチラチラとこちらに視線を向けて来た……ああ、俺のスキルを使って欲しいのかな。

 だけど、スキルを他人に使用したことが無いしどれだけの量のオドを渡せばいいのかが分からないんだけどな。

 でも今は怪我人の治療の方が先かなと思い、シュレルさんの方へと近づいて行く。


「あなたは一度戻りポーションをもっと運んできてください。流石にこれだけの人数を回復させるにはこの量では足りませんので。」


「は、はい! すぐ行ってまいります。」


 俺と入れ違いにシスターが外へと駆けて行く……人払いをしてくれたようだ。

 手招きをして俺を近づけると、小さく耳打ちをしてくる。


「最初はシクラ様の十分の一程のオドを私に渡してみてください。恐らくそのくらいの量であれば、この下級ポーションで回復できるはずですから。」


「でも、大丈夫ですか? 他人に一度もやったことありませんし、今までも意識してやったことは無いんですからね。」


「ええ問題はあるかもしれませんが、ここの人達は皆重症なのです。早く治療しなければ死んでしまう恐れがある人も居ますので、この際そちらを優先するべきだと考えました。」


「わかりました。何か変な感じがしたら直ぐに教えてくださいね。」


 コクリと頷くシュレルさんにスキルを使用してオドを渡すように思考する。


 すると、自分の中の不可視の何かがシュレルさんへ流れ込んでいくのが分かった。

 大体俺のオドの一割ほどをシュレルさんに受け渡し終わるが、俺自身のオドは一割そのまま減っているが意識を無くしたりはしなかった。


「おお、これが……これならなんでもできそうですね。」


 シュレルさんが珍しく少しうれしそうな驚きの声を上げていた。


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