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召喚失敗勇者の異世界放浪旅  作者: 転々
一章

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43/220

失敗勇者と未来

 わかっています、いえわかっているつもりでした。

 スキルの有無について、そしてその危険性について。

 ですが私はアカリ様からの指示に従い、カトレア達にもスキルについて聞くことを止めさせていました。

 シクラ様が倒れた原因がスキルにあるというのであれば、前回……そして今回もシクラ様が倒れた原因を作ったのは私になります。

 ただ疑問なのが、アカリ様の場合は初めから自分がどのようなスキルを所持しているかご存じだった様子ですが、シクラ様はそのことをご存じなかったのでしょうか。

 わかっていてお話にならなかったのであれば、それを無理やり聞くのは……いえ、これは言い訳ですね。

 しかし、まだスキルが原因と分かったわけではないので何とも言えませんが、もしスキルであった場合私はどうしたら良いのでしょう。

 まずはシクラ様の回復を待つしかないのですが、何か手立てを考えなければなりませんね。


 ……アカリ様、私はどうしたら良いのでしょうか。


 By アイリス





「何でお前が知らないんだよ! 仮にもボウズの従者で先代勇者の従者だったんだろう! 何故そのお前がこの事を知らないんだ! 」

 

「お、おいって、うお!」


「ちょっとまちなさ、っきゃ!」


 トラオウは完全に激昂してハルとミモザを押しのけてアイリスに詰め寄る。

 流石にアイリスが先ほどまでダウンしていた事とを思い出し、胸倉をつかもうとした手を寸前で止めていた。

 自分の行動にはっとして少し冷静さを取り戻したトラオウは、再度アイリスに問いかける。

 

「アイリス何故だ、何故ボウズのスキルを知らない。一時的にパーティを組んだ俺達が知らないのは問題ないが、専属で付いているお前が知らないのは問題があるだろう。場合によっては死ぬことすらあるスキルもあるんだぞ、それがわかっていないわけではないだろう。」


「それはわかっているのですが……」


 アイリスは口ごもりながら答えるが、その答え方が再びトラオウの怒りを燻ぶらせる。

 が、流石に肉体言語をするつもりはないようで、こめかみを指でぐりぐりしながらイライラを抑えている。


「とりあえずここじゃボウズの回復もままならない可能性があるし、スキルの詳細を確認する必要があるから教会に行ってシュレルに確認してもらうがいいな。」


「……わかりました。」


 しぶしぶ返事をするアイリスの言葉を聞くとトラオウはてきぱきと行動し始める。


「それじゃあハル、先に行ってシュレルに連絡しておいてくれ。俺はボウズを担いで行く。」


「はいよ。って、そう言えばシクラ達の防具はどうするんだ? アイリスは収納鞄か収納魔法あるのか? 」

 

「そこまで容量は無いですが魔法収納のは使えますので、シクラ様の鎧は私が持って行きます。」


「なら大丈夫だな。それじゃあ、先に話付けてくるよ。」


 それを聞いたハルは、さっさと部屋から退出していった。

 その行動の速さにミモザとアルルは顔を見合わせたが、トラオウがイライラしていたのでとばっちりが来ないうちに逃走したことに気が付き落胆していた。


「アイテムボックス開封。」

 

 アイリスが魔法を使うと、真っ白な円盤の様なものが浮かび上がり、そこにシクラの鎧を近づけると吸い込まれるように消えて行き、その真っ白な円盤も消えて行った。

 その後、アイリスは自分がさっき寝ていた部屋に戻り、再び自分の鎧を装着して部屋から出ると、トラオウをシクラを背負い廊下で既に待っていた。


 そして四人は教会へと向かって行った……その間会話と言う会話が無くミモザとアルルは肩をすくめながらついて行った。



 教会の入り口にはハルとシュレル、そしてスターが四人が来るのを待っており、また表から入ると騒ぎが起きる可能性が在る為、皆は裏の入り口に案内されて教会へ入って行く。

 案内された部屋は応接室の様な所ではなく、簡素なテーブルセットとベットが置いてあるだけの少し狭い部屋だった。

 

「シクラ様をそこのベットに寝かせてください。少し狭いですが、ここは私の私室ですのでどなたかが聞き耳立てたりすることは無いのでご安心を。」


 シュレルの指示でトラオウは背負っていたシクラをベットに寝かせる。

 十畳くらいの広さにベットとテーブルもある為、流石にこの大人数では狭く感じるが誰も文句を言う人はいない。

 

「ハルレクターさんは話はある程度聞いておりますが、詳しい話をお聞かせ願いますか。」


「どこから話したもんか……」


 トラオウはシュレルにシクラがなぜこのような事になったのか、そしてその原因がシクラのスキルではないかと思っているがスキルを誰も知らないという。 

 そして、前回森での悪魔との戦闘で倒れたのも今回同様にそのスキルが原因なのではと考えている事。


「シクラ様は勇者なので確実にスキルをお持ちではあるのでしょうが、前回もそして今回も同様に意識不明となるとそれが原因でしょうか。アイリスさん、シクラ様は己のスキルの事についてご存じなのでしょうか。」


「わかりません。シクラ様からはスキルについてお聞きしたことがございませんので、もしかしたらご自身でもご存じないかもしれません。」


「そうですか……スキルの詳細が分からないと治療のしようが無いので、その確認が出来る私の元に来たという事ですか。」


「そうだ。で、シュレルならシクラのスキルの詳細がわかよな。」


 シュレルは少し困ったような顔をする。

 スキルを本人の許可なく覗き見るのは冒険者からしたらタブーに当たるのだが、その条件に当てはまらないのが司祭になる。

 一般的な怪我などの治療であれば教会に来るようなものは殆どいないのだが、今回のように共に依頼を受けた冒険者が意識を失い運び込まれたりすることがある。

 そう言った場合原因となるスキルや状態異常を確認する必要がある為、司祭はスキルを覗き見ることを問題視されないのだ。

 そして司祭になるにはこの特殊な魔法と回復魔法の習得が絶対条件である為、トラオウはシュレルを頼りにここに来たのだ。


 しかし、当のシュレルは珍しく難し顔をしていた。

 

「シクラ様の鑑定を試みることは出来ると思いますが……成功するかは何とも言えませんよ。」


「な、どういう事だよ。おまえは司祭なんだろ。」

 

「ええ司祭です。ですが、私は普通の方の鑑定をしたことはあっても勇者様の鑑定はしたことは無いのです。まあ、ここで何か言ってても仕方がありませんので一度試してみましょうか。」


 そう言いながらシュレルがシクラに近づこうとした時、思いもよらぬ人から声がかかる。


「シクラのスキルなら知ってるよ。」


「「「え!? 」」」


 全員が声がした方へと視線を向けると、そこには可愛いハムスター……ではなくスターがいた。

 スターは皆の視線に動じた様子も無くある人物に向かい視線を向けている。


「アイリスも知ってるんじゃないの? 」

 

「な、なにを! 私はシクラ様からは聞いていませんよ。私も知らない事を何故あなたが知っているのですかスター。」


「だって、アカリ様が言ってたよ? 」


「ア、アカリ様が……」


「スター、本当なのか? 」


 トラオウの問いにスターはこくりと頷くと、アイリスは愕然とした表情をしてうなだれた。

 アイリスは前勇者のアカリからシクラのスキルについては聞いておらず、そのことをスターが知っている事にショックを受けたようだ。

 スターは収納袋から紙の束を取り出し、ペラペラとぺーじをめくり目的の者を見つけて皆に伝える。  


「えっとね、ちょっと待ってね……確かこの辺に書いてあったはず。これかな、『前借』ってスキルらしいよ。」

 

「前借ですか……また珍しいスキルですね。普通の人であれば簡単に治療可能な無いようですが、シクラ様での治療ですか。なかなか大変になりそうですね。」


「あーすまん。そのスキルっていったいなんだな。長く冒険者やってるが聞いたことが無いんだが。というかスター、そんなもの持っていたのか。」


「そうだよ。あ、でも、トラオウでも約束だから見せられないよ。」


「それならしかたがないな。それでシュレル、そのスキルは一体何なんだ?」


 そういいながら紙束を収納袋にしまいこみ、トラオウも流石にそれ以上のことを聞いてはこなかった。


「そうですね。未来の自分から前借をするスキルです。」


「未来からの前借? 」


 シュレルの答えにトラオウは首を傾げ周り見廻すが、他の人達もあまり意味がわかって居ない様子だ。 

 

「そうですね、シクラ様のスキルはあるはずの未来の自分の力を強引に今の自分に引き寄せて使う事が出るのです。簡単に説明しますとシクラ様のオドが十だとします、しかし使い続ければ消費され普通であればゼロになるのですが前借スキルを使うと、将来シクラ様が回復する予定


だったオドを未来から引き出し強引に回復してしまうのです。そして、将来回復する予定だったオドは既に消費済みですので、魔力枯渇を引き起こしたのだと思います。」


「そうなるなにか、シクラは自分が持っている以上のオドを未来から借りてくることが出来るが、使っちまうと未来での回復分が無くなってるから気絶しちまうと、そう言う事か。」


 シュレルが首肯するとトラオウは頭に手を当てた。

 このスキルは冒険者には便利な気がするが、このスキルを持つ冒険者は皆無なのである。

 戦闘中に魔力をを前借り出来ても気絶してしまったら元も子のないのであるが……それ以上に重大な欠陥があるのだ。


「トラオウさんがご存じないのも無理はありませんね、冒険者でこのスキルを持っているものがいれば即刻辞めるように指示いたします。このスキルの問題点は気絶をする事ではなく個人の意志で制御できない事にあります。魔力を枯渇した段階で自動的に発動してしまい、本人から


したら余力があるように感じて魔法を行使してしまうのでたちが悪いのです。」


「なんつうか、また厄介なスキルだな。」


「自分で使用を選べない段階で覚えたくないスキル筆頭だな。まあ、錬金術師なら相性はいいかもしれないし、俺みたいに魔力をほぼ使わないならいいが前衛や魔法職には最悪な組み合わせだ。」


『こんな危険なスキルだったなんて……アカリ様は何故この事を黙っているように仰ったのでしょうか。それに、私とスターで持っている情報の祖語は一体……一度確認する必要がありそうですが、スターが教えてくれるのでしょうか……それにこの件をシクラ様に伝えてないといけ


ないのですが、私には何も書かれて……』 


 アイリスはスキルの詳細を聞いてから悩んでいた。

 前勇者から指示された内容のせいでシクラを危険な目に合わせてしまた事に。

 しかし、そうなることが始めからわかって居てこのような指示をしていたのであれば、私が行動を起こすことはこの先の未来を変えてしまいかねない。

 

「好きにしたらいいと思うよ。」


 どうしたら良いか分からず、周りの話し声も聞こえて来ない程に悩んでいるアイリスを見かねた一人がアイリスの袖を引っ張りながら話しかける。

 振り返るとそこにはスターがにこやか? 笑顔を浮かべながら立っている。

 まあ、傍から見ると子供が袖を引っ張っているようにしか見えないのはご愛嬌。


「アカリ様も言ってたでしょ、数日ならいいけで何年も先の未来だから間違ってる可能性はあるし、なにかあったら各自の判断でよろしくってね。」


「スター……しかし、それでは今後あの予定が狂ってしまう恐れが。」


「はぁ……相変わらずだねアイリスは。今はいいよ、ただ今後少しずつズレが生じることが予想されてるんだよ? 君はそのときにどうするつもりなの? 」


「そ、それは……」


 見た目が可愛らしい外見をしているのだが、意外とまともなことを言うハムスターだ。

 アイリスは口ごもり問いに即座に返すことが出来なかった。

 元々予想されていたことではあったが、今まで全勇者の予言が外れたことがなくそこまで考えていなかったのである。

 今回の件もある程度は予測されてはいたが、こと細やかには予測されているわけではなく大まかにしかわかっておらず、今回シクラが倒れたような事が記載されていないのである。

 

「あの予定通りならシクラさんにもそしてアイリスにも都合がいい未来が待っているかもしれないけど、シクラさんはそれを本当に望んでいるのかな?」

     

「私に都合が言いというよりも、アカリ様とシクラ様にとって一番良い未来のはずです。」 


 アカリ様が確認した中でシクラ様が一番幸せになれる可能性が高い未来への道筋がここに書かれている。

 その結末にはアイリスやスターも深くかかわりがあるのだが、予想される未来は二人にも良い結果をもたらすことになっています。

 しかし、そうなった場合はシクラはこの世界に残り、元の世界に戻らないという決定を下し二度と家族と会うことが出来なくなってしまいますが、当然ながらアカリ様がわざわざ兄を異世界に追いやるのには理由があり、元の世界に戻ってきた場合の未来がひどく悲惨な結末になる


ことがわかってしまったから。

 アカリ様も兄であるシクラ様とは二度と会うことが出来ないのですが、そんな結末がわかっている以上そうせざるを得なかったのでしょうが。


 


「あっちはほっておいて、問題はシクラが治療できるかだがどうだ?」


 部屋の隅……といっても狭い部屋なので小さな声で話しているが内容はある程度聞こえてしまっている二人をとりあえず無視して、シクラの治療が出来るかの話を進めていく。


「そうですね、マジックポーションを飲ませればある程度前借したオドが回復すると思いますが、問題はどの程度前借したかわからないことですね。それによってはどの程度の量がいるのか、そしていつ目覚めるのかがわかりません。」


「なるほどな……ハル、収納の中にあるマジックポーションはどの種類だ。」


「ちょっと待ってくれ。そうだな、下級はそれなりに入っているが中級が十本、上級は二本しか入ってないな。うちは魔力を大量に消費するのはアルルしかいないからそこまでストックしてないな。」


 さて手持ち分で回復できればいいが、出来なかった場合どうやってマジックポーションを入手しようか。

 通常時であれば問題ないが、今は殆ど店がやっていないからな……何か伝手が無い物か。

 トラオウはそこで一人の人物を思い浮かべるが、何とも言えない嫌悪感の様なものが沸き上がった。

 

次回も投稿は月曜なります。

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