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召喚失敗勇者の異世界放浪旅  作者: 転々
一章

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失敗勇者と遊撃戦

 ミモザさん達を救ってくれたシクラさんって方に合ったけど、何故か初めて会った気がしなかった。

 シクラと言う名前を聞いた時から思っていたけど、あの人はやっぱり……なのだろう。

 アカリ様から聞いていた容姿そのままだったし、それに名前が聞いていた通りだったし僕と初めて会った時の顔がまったくいっしょだったしね。

 僕はあの人の力になってあげたい、アカリ様からのお願いでもあるけどそれ以上に僕の大切の人達を守ってくれた人なんだから。

 だけど……僕にはミモザさん達みたいな力は無いから、戦闘では力になることはできないし……シクラさんについてミモザさん達からよく話を聞いておこう。

 それにしてもアイリスさんは変わったね、昔はもっと……。


 スター=シクラ



「……穴ぼこ大作戦……っぷ。」


「くっくっく。ボウズ、もう少しまともな作戦名は無かったのか。」


「っん……いえ、なんでもありません。」


「良いじゃないですか、作戦は簡潔にわかりやすいほうが。」


 そりゃね、ネーミングセンスは無いかもしれないけど……穴ぼこ大作戦、わかりやすくていいと思うんだけどな。

 ハルさんは少し馬鹿にしたような顔で笑われて、トラオウさんからは普通に笑われてしまった。

 そしてアイリスは、笑いを堪え切れず小さく声を出して俺に謝ってくる……謝る必要はない気もするけど。


「と、とりあえず。気を取り直して、魔法を使って行きますね。目標はブラッドベアはとキングホーンで良いですか?」


「そうだな。今ここから見える魔物で危険なのはその二種類だな。目標は……さっきハルが弓で傷をつけたブラッドベアにしてくれ。」


「えーと、あれですね。」


 ハルさんがさっき攻撃したブラッドベアは、俺達が今いる所から一番近くにいて、魔物達の列の中でも前の方に居るから早くどうにかしないと陣地の方に突撃して行ってしまう位置にいる。


「深さは堀と同じくらいで、ブラッドベアと周りが少し巻き込まれるかもしれないサイズで良いかな? 」


「それで問題ないだろう。あまり穴が小さいと這い上がってくる可能性もあるからな。」


「わかりました。それでは行きますね。」


 俺は魔法を使うために集中していく。

 目標は、さっきトラオウさんが指定したブラッドベアの周囲二メートルに、深さ十メートルの垂直の穴を開けるイメージをする。

 すると、実際の魔法の発動の可否、自分のオドがどの程度消費されるか瞬時に解る。

 今まで何度も魔法を使ってきたが、相変わらず魔法は何でも出来て万能すぎる……でも、それは勇者だけみたいだけどね。


 目標のブラッドベアに向かい魔法を発動させると、地面が淡く光りそのまま急に陥没して魔物が落下して行く。

 ブラッドベアの他にも数匹の魔物が一緒に落ちて行き、後続の魔物も押されてそのまま数体穴へ落下して行った。

 流石にこのまま連鎖的に魔物達が落ちて行かないなと思っていたが……流石にそんなことは無く、魔物達は穴を避けて進んでいった。

 

 ただ、こちらに向かって来たり注意を向ける魔物は皆無で、蜜に集まる蟻のように行列を成してただ前に進んでいく。


「成功のようですね。それに魔物達はこちらへ来る様子も無さそうですね。」


「流石はシクラ様です。目標を違わずこの距離で正確に魔法を使用できるなんて。」


「そうなの? 特に気にしてなかったけど、他の人って出来ないのか。」


「ま、アルルやボウズならできるだろうけど、金クラス以上でもないとこの距離じゃなかなか難しいだろうな。それよりも、魔物はこちらに来る様子はなさそうだな……このまま引き続き魔物を削るか。」


 距離が遠いといつもより集中力が要るけど、誤差程度の差しか感じないんだけどね。

 金クラスと言うと、冒険者でもかなりの上位の人のはずだけどそれを簡単にできるってやっぱりずるいよね。

 

「……上空の魔物達もこっちには来ない様だし、ボウズにはしばらく続けてもらうのが良いだろう。警戒は俺達がやるから、まずは数を減らすか。」


「それは良いんですけど……ここからだと、何処にブラッドベアとかが居るか分からないんですけど、どうしたら良いですかね。」


「ん、そりゃ……って、ボウズは遠視の魔法は使えないのか? 」


「どうですかね……あ、出来ました。」

 

 遠くを見ようと魔法を構築すると、相変わらず簡単に魔法を使う事が出来た。

 遠視の魔法は任意の所を拡大縮小ができて便利なんだけど、視野のすべてが魔法で拡大されてしまうから、近場が全く見えなくなってしまうから少し使いづらい感じもするな。

 しかも、拡大している間は常に集中していないといけなくて、気を抜くと元の視線に徐々に戻ってきてしまう。 

 

「でも、これだけ魔物が居ると流石に探しにくいですが。」


「なら俺が索敵してやるから、ボウズは俺の指示した魔物に魔法を使って行ってくれ。トラオウとアイリスは代わりに警戒を頼む。」


 周辺警戒をトラオウさん達に任せ、ハルさんは俺の援護をしてくれる事になった。

 ハルさんに敵をピックアップしてもらい、俺がその方向に遠視魔法を使って魔物を確認して、落とし穴に魔物達を落としていく。

 ハルさんが観測手で、俺が狙撃手として目標となる強めの魔物を穴に落としていく。


 そこから数十分かけ、ブラッドベアとキングホーンをここから確認できる所は処理することが出来た。

 巻き込んだ魔物も合わせると数百匹近く魔物を落とし穴に落としたけど、魔物達は東京で行われている年数回のイベントの行列の様に途切れる様子はなく、後から魔物達が現れてきて俺に行動が意味があるのか少し不安になって来た。


「粗方やばそうなのは片付いたな。ボウズ、残り魔力の方はどうだ。」


「何故かいつもより回復が遅いですけど、たぶん残りは半分くらいですかね。」


 いつもは魔法を使ってももっと回復が早いんだけど、今はいつもの半分ほどしか回復してない感じがする。

 罠を作った時みたいに回復していたら、既に七割がた回復しているはずだったんだけどな。


「ああ、そりゃ周囲のマナが枯渇気味だからだろうな。オドを回復するときは、自分で回復する分と周囲のマナを吸収しているから、周囲のマナが減っていると回復が遅いんだ。」


「いくらシクラ様の回復速度が速いと言っても、これだけ魔法が使用されていてはマナの回収がままならないのでしょう。しかし、これほど魔法を使用されてまだ半分と言うのは素晴らしい魔力量ですね。」


 オドの回復ってマナも吸収して回復していたんだね……そりゃあ回復が遅いわけだな。

 それにしても、オドとかマナっていったい何なんだろうな。

 元の世界ではそんなものが一切なかったのに、こちらにはありふれたもので誰もその存在を不思議に思わない。

 オドは体の内側から湧き上がる力で、マナは大気中に漂う力。

 オドはまだいい気がするのだけど、マナっていったいどこからやってきているのだろう。

 

 マナは大気中に漂う魔力で、普通の人が魔法を使う時はマナとオド両方を使用して魔法を使う。

 そして、一帯のマナを使いつくすと枯渇状態になり、マナを消費する魔法等が一切使えなくなるが、時間と共に回復していくんだけど、その供給元は謎なんだよね……まあ、今はそんなこと考えても分からないから良いか。


「これからどうしましょう。ここから魔物を減らすのを手伝いますか? 」


「そうだな……これだけ魔法を使ってもこちらに魔物達が来ないのであれば、削ってみるのもいいかもしれないな。ただし、今までと違ってピンポイントに魔法を使う訳じゃないから、直ぐに撤退が出来るようにするのと、魔力の残量には気を付けないとな。」


「そうですね。一度広範囲で効果のある魔法を撃ってみますので、皆は直ぐに逃げられるように準備してくださいね。」


 皆はこくりと頷き、いつでも反転出来るように身構えた。

 

 それにしても、広範囲に攻撃できるような魔法か……何が良いかな。

 大量の火の玉を出して乱れ撃ちみたいなのも良いし、良くある魔法の矢を大量に出して攻撃するのもあこがれるな……ただ、やっぱり俺が一番あこがれるのはこういった魔法かな。


 俺は魔物に人差し指を向けて、魔法を構築する。

 現代にもこう言った兵器は開発中で未だ出来ていないが、工業用では既に実用化はされていて一般的にあるものだが、魔法としてこれを再現出来たらすごく楽しそうだと思ってこの魔法にしようと思った。


 俺の指先に小さな光り輝く球が出てくる。

 その球はオドを込めると徐々に大きくなり、直径が十センチほどで止めた光輝く球が指先のあたりに浮いてる。


「な、ぼ、ボウズ。それはどんな魔法なんだ? 」


「流石はシクラ様。とても美しい魔法ですね。」


「ま、見てのお楽しみです。」


 トラオウさんが驚いたように聞いてくるが、多分見てもらった方が早いので詳細は説明しない。

 それにしてもアイリス……俺まだ何もしてないのに流石って……気にしたら負けか。


 一応ハルさんも気になっていたようだけど、彼は自分の役割をしっかりと果すために周囲の警戒を緩めない。

 普段はふざけていることが多いけど、やっぱりこういった時には役に立つ人だな。


「それでは撃ちますね。」


 そう軽く言って、俺は魔法を発動させる。

 指先で光っていた光の玉は、一瞬強烈に輝き消え去った。


「なんだ? ボウズ失敗か?」


「違いますよ。あっちを見てください。」


 俺が魔物の集団に指をさし、皆の視線がそこに集中する。

 そこには魔物の集団が居るのだが、一部の魔物達は動きを止め硬直し……そして倒れる臥す魔物や、先程のブラッドベア同様に暴れる魔物達が居た。


「いったい何をしたんだ……光ったと思ったら、魔物が倒れているなんてどんな魔法を使ったんだよ。」


「えっとですね、簡単に言うとレーザーですね。」


「れーざー? それは一体どんなものなんだ? 」


 トラオウさんは腕を組み、頭の上にはてなマークを浮かべているような表情になっている。

 

「そうですね。光を集めて撃ち出す魔法と言った方が分かりやすいですかね。物凄い速さで打ち抜くので避けることは出来ないですし、威力もご覧の通りかなりの者ですよ。」


「光を集めて撃ち出しただけでこれほどの威力になる物なのか? 」


「こんな威力になるんですよ。分厚い鉄板なんかも穴が開けられるくらいの威力も出せますよ。」


 トラオウさんがハルさんに問いかけるが、ハルさんは肩をすくめるだけで流石にわからない様だ。

 まあ、アイリスも良くわかっていないと思うが、何故か微妙にどや顔をしている。


 因みに、今使ったレーザーは広範囲に攻撃するために、五十本ほど角度を変えて撃ち出したので、魔物達の先頭集団の数百体が何らかのダメージを受け、魔法のダメージと暴れる魔物達の影響もあり、百体程の魔物の死体が出来上がっている。

 恐らく城郭の上からは、扇状に光が走ったと思ったら魔物が倒れて行ったように見えただろう。

 ただ、レーザーでは魔物達全てを貫通するほどの威力はやはりなく、手前側の魔物はかなり多く倒されていたが、奥に行くにつれて少し傷を負った程度の魔物や、そもそも魔法が届いていないものを居るようだ。


 かなり多くの魔物を倒すことが出来たが、この魔法思った以上にオドの消費が激しいようで、残りの二割程のオドを消費してしまった。

 貯めるだけでもそれなりに魔力が居るが、それ以上にレーザーに方向を調整して発射するのに意外と魔力消費したのが痛かった。


「とりあえず、これだけの攻撃しても向かってこないって事は、こっちからは打ち放題って感じだな。ボウズ、さっきの魔法はまだ使えるか? 」


「それがですね、意外と燃費が悪い魔法だったみたいであまり連射は出来ない感じですね。他の魔法を試してみましょうか? 」


「そうだな……それじゃあ一発でかいのお見舞いして、一旦撤収するか。」


「え!? 撤収するんですか! 」


 俺は驚きの余り大きな声を上げてしまったが、トラオウさんにはやれやれといった感じで俺に説明する。

 

「なあボウズ、お前の仕事はなんだ? 」


「え、遊撃ですよね。」


 何言ってんだこの人みたいな顔をしたら、「はぁぁぁ」っと大きなため息を付かれてしまった。

 俺は頭にはてなを浮かべながら首を傾げる。


「あのな、遊撃って事は殲滅する役目じゃないんだぞ。ある意味自由に戦っていいともいえるが、今回は危険な魔物の無力化とある程度の魔物を倒したんだから十分な戦果だ。それに、長時間敵と相対していると思った以上に気力を削られるから、一旦引いて英気を養って魔力等も回復する必要があるんだよ。」


「しかも今回の様に長丁場になる可能性がある戦いの場合は、休めるときに休まないと体が持たなくなっちまうからな。」


「そんなものですか……わかりました、一発大きいのを放って撤退しましょう。」


 疲れなどは全く感じておらず少し腑に落ちない感じもしたけど、戦いなれているトラオウさん達の指示に従って一旦撤退することにした。


   

  















 

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