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召喚失敗勇者の異世界放浪旅  作者: 転々
一章

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33/220

失敗勇者とネームド

 シクラ様と夜通し陣地を構築しましたが、やはり勇者様の力は素晴らしいです。

 前勇者のアカリ様ほどではないですが、白金ランクの方々でも出来ないような作業でした。

 これほどの陣地をお作りになってもご心配の様子ですが、相手が魔物であれば余裕で勝利できるでと私は確信しております。

 ただ、アカリ様もそうでしたが、勇者様の勘はかなり高確率で当たりますので、気を抜かない様気を付けなければなりませんね。

 それに、不測の事態が発生した時はシクラ様も戦闘に出られるでしょうから、この身を挺してでもシクラ様はお守りします……それがアカリ様との約束。

 もう一つの約束を守ることが出来なくなってしまいますが、シクラ様の命より大切な物は私の中には存在しないのですから。

 アカリ様に頂いた、最後のお力を渡すことが無いのが一番良いのですが。


 byアイリス




 魔導騎士団の放った長距離魔法は、魔物達の先頭集団に命中し炸裂した。

 魔法が炸裂した影響で魔物達は土煙の中で見えないが、直撃した瞬間数多くの魔物達が宙を舞っていたことから、見た目は炎だが爆裂系の魔法なのだろう。

 魔導騎士団の放った三十個程の魔法は、一つ一つの効果範囲も広く今は魔物の姿が見えない程の土煙が舞い上がっている。

 

「第二射用意……放て! 」


 再び魔法が土煙の向こう側へ消えて行き、激しい爆発が起こった。

 魔法が炸裂する度にと、周りから歓声が上がり衛兵たちは大興奮している。

  

 これだけの魔法が連続で発射されては、しかも魔物達は土煙の向こう側から出てこれない様だ。

 その後も魔導騎士団員達は、第三射、四射と魔法を打ち込んでいくが、相変わらず魔物集団は魔法の連射で発生した噴火の様に立ち上る土煙からでてこない……何だろうこの違和感。

 

 幾度も魔法が放たれるが、魔物の姿は最初の一回目しか見れていない。


「……何かおかしい。」


「シクラ様? どうかなさいましたか? 」


「魔導騎士団の魔法は威力もあり、魔物達に有効なのはわかるけど、第一射以降魔物達の姿が全く見えていないのが気になってね。」


「あの魔法は、炸裂した衝撃を相手に与えるのと、同時に地面を陥没させる効果もありますので、それで足止めされているだけではないでしょうか? 」


 アイリスが説明してくれるが、それでも不可思議な事がある。

 説明通りであれば、直撃していない魔物達が前進してこないのはおかしい。

 いくら魔導騎士団員達の魔法の範囲が広いとはいえ、始めに見た魔法の効果範囲を考えると、あれほどの大群すべての先頭集団を吹き飛ばすのは無理だし、その直後に命中しなかった魔物達が進軍してきていないのはおかしい気がする。


「アイリス、最初の一撃以外で魔物が吹き飛ばされたのは見えたか? 」


「ここからですと、土煙がひどくて確認は出来ていませんが……最初以外は見えていません……まさか……」


 俺の問いの意味が分かり、アイリスは驚愕している。


 最初の一撃目では、魔法を受けた魔物が宙を舞うのが見えたけど、それ以降は土煙の向こう側に着弾しているせいもあるが、一切魔物の姿が見えていない。

 マヤシカの森に居た魔物が向かってきていると言う事であれば、俺が戦ったスモールビーの様な飛行型の魔物が確実にいるはずなのだ。

 飛行型の魔物なら地面を炸裂させている魔法だから、地形が変わろうが上空から回ってきたらいいわけなのだが、そんな魔物すら一切いない。


「アイリス。指揮所はどこにある? ヒューズさんやコジーラさんに早く伝えないとまずい事になる。」


「正門近くにある衛兵本部に、騎士団長様達はいらっしゃると思われます。」


「直ぐに向かおう。」


 俺達は急ぎ衛兵本部に駆け込もうとするが、城郭の上には数多くの衛兵や騎士団員が戦果を確認するために登ってきており、通路を抜けるのも苦労しそうだ。

 花火大会の混雑を思わせるような密集具合で、この中をアイリスを連れて行くのはちょっとまずい気がするな。

 城郭の上人の密集地帯だが、正門の町側には殆ど人が居ないな……しかたないか。


「アイリス、ちょっとごめんな。」


「え、あ、シ、シシシシクラ様! 」


「いくよ……てい。」


 アイリスをお姫様抱っこの様に抱き上げ、城郭の上から飛び降りる。

 いきなりの事でびっくりして、アイリスは俺の首にしっかり手を回して、抱き付くようにしがみついている。

 スドンっと重量物が落下した時の様な音がして、周りから騎士団員が出てきたが、俺だとわかるとニヤニヤした顔つきをし、手を振りながら持ち場に戻ってく。

 

「急がないと。」


「は、はい。こちらです。」


 アイリスを地面に下ろし、衛兵本部へと向かって走って行く。

 降ろした際に、耳を赤くしたアイリスが微妙な顔をしていたが、流石に飛び降りるのは少し怖かったのかな。

 

 衛兵本部の入り口には騎士団員が居たが、一緒に訓練をして騎士団員だったので、騎士団長に至急合わせて貰いたい旨を伝えると、一人が中に確認しに行き、戻ってくると俺達を案内してくれた。


 衛兵本部の会議室に臨時本部を立ち上げているようで、会議室内にはヒエンさんと両騎士団の団長、及び副騎士団長などの主要メンバーがそろっていた。

 室内の壁に砲撃をしている映像が映っており、恐らく誰かの視界をここに映し出す魔法を使って状況を把握しているのだろう。

 

「シクラ様、至急のとの事でしたが何かありましたかな? 」


 俺の入室に気付くと、ヒューズさんが俺に問いかけてくる……この感じだと気が付いていないかもしれないな。

 

「今魔導騎士団の長距離魔法ですが、恐らく魔物達に被害を与えられていないように思います。」


「被害を与えられていない? シクラ様は心配心配性ですね。魔物が被害を受けていないのであれば、こちらに向かって突進してこないとおかしいですよ。」


「そうです。我々魔導騎士団の長距離炸裂魔法は、魔物達に衝撃波で攻撃するものですが、副次的な効果の地面に穴をあけ進軍を阻害する効果ある素晴らしい魔法です! それで魔物達が進軍しながら穴にはまり、再び魔法を受けて大量出血を受けているのでしょう。」


「それにしては、初撃では魔物が吹き飛ばされていたのが見えましたが、それ以降の攻撃では魔物の影すら見えないのはおかしいのではないでしょうか。」


「大丈夫でしょう。マヤシカの森の魔物達のそこまで知能がある物はおりませんし、居たとしても種族が違いますか意志疎通などできませんので心配ありませんよ。それに後数撃行ったら、あの辺りのマナが減少致し大規模魔法が使用できなくなるので、作戦通り迷路に誘い込む段階に進むことになります。」


 ヒューズさんやコジーラさんは、少し興奮した様子で視線を映像の方へ移した。

 二人は魔物達は敵を見つけたら突進しかしてこないものと見ているようで、俺の意見は心配し過ぎと言われてしまったが、恐らく魔物達は殆ど被害が出ていない気がする。


 ヒエンさんはこちらの会話は聞いていたが、特に口を挟むことをせずに腕を組んだまま映像を眺めていた。

 

「アイリス。もし、魔物達に先ほどの攻撃の被害が出て居なかったら、こちらはどれくらい不利になると思う。」


「……そうですね。迷路などの罠がうまく作用するのであれば、多少被害は増えると思われますが、それ程悲観する必要はないかと思います。ただ……シクラ様の予想した通りに、魔物達罠を巧みに回避や正解の道のみ進んできた場合ですが……陣地内の騎士団員や衛兵達は全滅する恐れがあります。幾らか食料や予備の装備などを運んではありますが、それ程大規模の集団と一気に戦う事は想定されていませんし、長期戦になると陣地自体が破壊される恐れもあります。」


「城郭の方は大丈夫そう? 」


「城郭側は恐らく大丈夫かと思います。飛行型の魔物はそもそも数が少ないですし、あの森の魔物達であれば弓矢だけでも対応できるかと思います。」


 やっぱり陣地がかなり危ないか。

 いくら城郭からの援護があるとはいえ、長時間戦闘をするのであれば疲労はするし、魔物に囲まれながら休息を取っても、疲れはしっかりとは取れないだろうしね。


「それに……これからマナ枯渇状態に入るのがまずいと思います。」


「と言うと? 」


「シクラ様の様に大量のオドを保有している方なら問題ないのですが、普通の騎士団員等はオドでマナを呼び寄せて魔法を使います。そのマナが減少した場合、そもそも魔法の発動が出来なかったり、想定よりもかなり弱くなりますので、援護も治療も不可能な時間帯が発生すると言う事です。」


 ヒューズさんも言っていたが、もうすぐマナ枯渇状態になりその影響は出そうだ。

 魔物達の数が減っていれば問題ないが、もし俺の予想通り減っていなければこれからの戦いは厳しいものになりそうだ。

 なにか対策を考えないとまずい気がするな。


「そういえば、マナって減少したかどうかってわかるものなのか? 」

 

「そうですね。私の様にマナを使う者は、周囲のマナが減少すると感覚的にわかるのですけど、シクラ様はお分かりになりませんか。」 


 感覚的にって言われてもな……意識集中して周囲を見渡しても、特に何かを感じることが出来ないな。

 そもそも、俺はマナとオドの使い分けが出来ていないから、その辺りが分からないんだろうな。


「うーん、全く分からないな。」


「そうですね……シクラ様あれをご覧ください。」


 俺が首を傾げていると、アイリスは壁に映し出されている映像を指をさす。

 映像は戦場を映し出しており、相変わらず噴煙の様な土煙が舞っている。


「あの映像がどうか……ん? なんか映像が急に荒くなった。」


「これがマナ枯渇状態に近づいている証拠です。魔法の発動が不安定になり、暫くすると映像自体が消えてしまうと思います。」


 荒くなった映像は、暫くすると映らなくなり只の壁が見えるだけになった。

 最後の魔法を使用するためにマナを集めたので、周囲のマナが不足して魔法の維持が出来なくなったのだろう。

 

「シクラ様、マナ枯渇になったようですので、我々は現場に向かいますがいかがなさいますか。」


「自分も行きます。状況の確認をしたいですから。」


 ヒューズさんの問いに頷き、俺達も城郭まで行くことにした。

 城郭に向かうのは、両騎士団長とヒエンさんと護衛の騎士団員達、それに俺とアイリスだ。


 外に出た瞬間に激しい音と振動が伝わってくる……恐らく最後の長距離魔法が着弾したんだと思う。

 特に急ぐ様子も無くゆったりと歩いて行くが、俺にはそれが少しイラだったが特に何も言わずに付いて行く。


 城郭に近づくと歓声が聞こえてくるが、俺はその完成を聞くと何故か不安を掻き立てられる。

 よくわからない苛立ちと焦りを感じているが、なぜそんなことを感じているか分からず、余計に感情が乱れるのを感じていたが……ふと左手が暖かな物に包まれ視線を向けると、何故かアイリスが俺の手を握っていた。

 

 アイリスは俺が視線を向けると、穏やかな笑顔を向け来てくれる。

 アイリスの手の温かさが、俺の荒れた感情を抑え込んでいく。


「アイリスどうかしたのかい。」


「シクラ様には私が居ます。お一人で抱え込まないでください。それに、もしあの魔法が効いていなくても、シクラ様のお作りになった物や城郭もありますので、そうそう簡単には攻め落とされたりはいたしませんよ。」


 ……なぜだろう。


 アイリスの言っている事は理想論であることは分かっているのだが、何故か気持ちが落ち着いて何とかなるような気がしてきてしまった。


「それに、何があっても私がシクラ様をお守り致します。」


「それなら俺がアイリスの事を守らないとな。」


 手を握りながら二人でおかしな話をしている気もするが、気持ちが凄く落ち着いて来るのがわかる。

 もしかして、前の勇者もそのためにアイリスを従者にしたのかもしれないな。


 アイリスと手を繋ぎながら城郭の上に向かい歩いて行く。 

 傍から見れば変な二人に見えるだろうが、今はそんなことも気にならず穏やかな気持ちで進んでいく。


 城郭の上に到着し、魔物の集団が来ている方向を見るが、未だ魔法の影響で土煙に包まれていて全貌が見えない。

 皆に付いて行き、城門上部にある棟の中に入り、棟の最上階に上がって行く。

 最上階の部屋は、木製の机と数人が並んで眺められる様なかなり大きな窓があり、今はその窓が開け放たれて騎士団員が外の様子を監視している。

 その景色は、先程の部屋で見ていた映像と酷似している為、ここの映像が見えていたのだろう。


「さて、第一波攻撃は完了しました。これで魔物達が退散してくれるのが一番良いのですが、向かってくる原因もわかっていないような現状、それはあり得ないでしょうな。」


「これで当分魔導騎士団は行動不能ですが、これだけの魔法を使ったのですからかなりの数が減らせたはずですな。私自身の魔法ではなく先代勇者様の魔法なのが口惜しいですがね。」


「……ん。もうじき土煙が晴れそうですね。」   


 皆の視線が土煙が上がっているあたりに集中していく……その時。

  

 背中にぞわりと悪寒が走り、誰かに見られているような視線を感じた。

 

「どうかなさいましたか? 」


 アイリスが心配して声を掛けてくるが、そんなことを気にする余裕もなく周囲に見渡すが、誰も俺を見ている人は……居た。

 薄くなっていく土煙の中、空中に人影の様なものが見えた。

 かなり距離は遠いのだが、なぜか俺を見ているのがわかる。


 その人影は、人ではありえないようなシルエットをしており、他の獣人種などでも見たことも聞いたことも無いシルエットをしている。

 人間の様なほっそりとした体格をしているが、頭には角が生え、背中には蝙蝠の翼のような物が見える。


 その影は土煙を押しのけ、俺達が今いる棟へと物凄い速度で近づいてくる。


「何か来ます! 気を付けてください。」


「なんだあれは……まさか……。」


 急速に近づいてくる影の様なものに、俺は見覚えがある……多少姿が違うが、あれはマヤシカの森で戦った悪魔だ。


 悪魔が棟に衝突する寸前で急停止し、その影響で暴風の様な風が周囲に吹き荒れる。

 アイリスをかばうように抱き込み、風が収まるのを待つと……窓の外には悪魔が悠然と浮かびながらこちらを睥睨している。


 護衛達はヒエンさんの前に立ちはだかり、ヒューズさんとコジーラさんは共に武器を取り立ち上がる。

 俺も腰に付けていた剣を抜き、アイリスをかばうように剣を構える。


「皆さま初めまして。私はマウシル様の配下、マフォルスと申します。さあ、楽しいゲームの始めましょう。」

   

 


 

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