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召喚失敗勇者の異世界放浪旅  作者: 転々
一章

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30/220

失敗勇者とミュラー侯爵

 ダイアンを残しカトレアと応接室を出た後、ヒエン侯爵と共に別室に向かっている。

 カトレアも何も聞いていないようで困惑した様子でついて行くと、部屋の入り口にはメイドが二人立っている部屋に案内される。

 カトレアがヒエン侯爵にどう言う事ですかと詰め寄っているが、とりあえず着替えて来なさいと言ってカトレアを部屋に押し込むように押しやり、私もそれについて部屋に入って行く。

 その部屋はカーテンで何か仕切りをされている部屋で、数人のメイド達に背を押されて奥に連れて行かれるカトレアが見えついて行こうとすると、他のメイドにこちらへと言われカトレアと別のカーテンで仕切られたの中へ案内される。 

 そして急に着付けをされそうになりお断りさせて頂きたかったのですが、させて頂かなければ私共が叱られますとか言われて仕方なく着替えをすることになりました……そちらの方がシクラ様が喜ばれますよと言われたのもありますが。

 このドレス姿を見たらシクラ様は驚いて頂けますでしょうか……そして、あわよくばお褒め頂けたら嬉しいな。


by アイリス



 ヒエンさんの掛け声で扉から幾人もの使用人達が、料理の入ったお皿を持ってくる。

 まずは生ハムを添えたサラダのようで、元の世界で言う前菜の様な物なのだろう。

 サラダ共にドレッシングの様な物が入った容器が置かれ、それを掛けて食べるようだ。

 サラダは、レタスの様な葉物野菜とゆで卵のスライスで、そこにドレッシングをかけて食べたのだが、驚いたことにドレッシングは醤油ベースの和風ドレッシングで、日本人の俺に合わせてくれたのかと思って周りを見渡すが、皆美味しそうに食べているのでこちらでは普通なのだろう。

 野菜もとれたてなのか、シャキシャキとした歯ごたえが良く美味しかった。


「どうですかなシクラ様。」


「ええ、とてもおいしいです。」


 サラダを食べ終えた俺にヒエンさんが声をかけてきたが、少し苦笑いをしていた。

 ヒエンさんの表情からして食べ物の話では無く、カトレア達の事を言ってたのだろうと今さらながら思い。


「ん、んん。それにしてもヒエンさんも人が悪いですね、カトレア達を着飾らせて俺を驚かすなんて。入って来た時なんて、誰が入って来たか全くわからなくて驚きましたよ。」


「ははは、驚いてけて良かったです。家の娘達やシクラ様の侍女達は皆素材が良いですから、家の者達も張り切っていたようです。」


「しかも、俺側の席に着くものだからこんな綺麗な人は知り合いに居なかったのになって思って、何か悪だくみしてるのかと思って疑っちゃいましたよ。」


 俺がそう言うよ、ヒエンさんは満足そうに頷き隣の奥さん達と会話をしだす。


 少し大袈裟に言ってはいるが、侍女をしてくれている時は化粧などしていなかったのに可愛かったのに、皆が着飾るとこれほど綺麗だなんて全く思ってなかったよ。

 隣からカチャカチャ音がしたので見てみると、俯いているか表情はわからないが、カトレアがほんのり頬を赤らめさせ、手が震えて音がしていたようだ。


 他の子達は堂々と食事をしているように見えるが、アイリスは顔がトマトの様に真っ赤にさせながら、黙々とサラダを食べていた。

 

 アイリスは勇者フェチだから普通に嬉しかったみたいだけど、カトレアの反応を見るとアイリスとは違う気がする。

 さっきの話の流れだと、俺がカトレアやアイリス達を褒めるしかない流れだったから、それを俺に言わせたことについて怒っているんだろうな。


 因みに、ダイアンは気にせず食事をいて、クリスなんて左手フォークを持ったまま手を振って、後ろから執事の人に窘められていた。


 次の料理が運ばれてくる時間になると、カトレアもアイリスの二人とも落ち着いて普通に食事をしていたが、さっきの俺の発言のせいで微妙な空気になってしまって、会話も無く淡々と食事をすることになってしまった。

 

 この後、スープから始まってコーヒーで終わるフルコースだったのだが、イオリゲン王国が内陸部で塩や香辛料が高価である為か、どれも美味しかったのだけど基本的に薄味の為、少し物足りなく思ってしまった。

 

「シクラ様、すこしお話したいことがあるのですがよろしいでしょうか? 」


「はい、大丈夫ですよ。」


 食後のコーヒーを飲みながらまったりしていると、ヒエンさんから声を掛けられて別室へと二人で移動する。

 アイリス達が付いて来ようとしていたが、ヒエンさんに止められてついて来ることが出来なかった。

 みんなのドレス姿をしっかりと見ておきたかったけど、仕方ないよね。


 ヒエンさんに着いて二階に上がり、重厚な扉がある一室に部屋に案内された。

 中に入ると、奥に執務机と思われるものがあり、その手前にはソファーと机が置いてある。

 壁にはぎっしりとほんの並べられた本棚と、隣の部屋に繋がっていると思われる扉が一つあるだけだった。

 恐らくヒエンさんの執務室か何かなのだろうけど、わざわざ俺だけここに連れて来たって事は、他の人に聞かせられない話があるようだ。


 ヒエンさんにソファーを勧められて座ると同時に扉がノックされ、バスンさんがコーヒーを俺とヒエンさんの前に置いて部屋を出て行った。

 

「シクラ様、この度は我が家の晩餐会に出て頂き、誠のありがとうございます。」


「こちらこそ、貴重な体験をさせて頂きましたし、皆のドレス姿を見る事も出来ましたので。」


 お互いにこやかに対応しているが、俺は内心結構ビビっていた。 

 侯爵は見た目は人の良さそうな見た目だが、そんな人が侯爵と言う地位を維持していると言う事は、何か裏があるのではないかと思っているからだ。

 異世界ファンタジー小説で良くある、一見いい人だけど実は裏ではかなりやばい人ってかなり多いしね。


「あまり遅いと心配させてしまいますから、本題に入らせていただきます。シクラ様はウグジマシカ神聖国に向かう護衛として、クリス達を雇おうとされていましたね。」


「ええ、あまり高ランクの方ですと費用も掛かりますし、それに護衛依頼の様な物は受けていただけない可能性もありますから。」


 ヒエンさんの眼光が鋭くなり、さっきまでとは雰囲気が全く変わった。

 別にクリス達じゃないといけないわけではないけど、護衛として一緒に行くんであれば信頼できそうな人が良いんだよね……クリスならカトレアの妹だから問題ないだろうし、ウィルさん達もクリスの護衛としている位なので、ヒエンさんからも信頼されているだろうから好条件なんだよね。 


「クリスに付いて、どの程度ご存じで。」


「先日ある程度本人から聞きました。侍女との間に生まれた庶子である事や、その後母親が無くなり養護院に引き取られたと言う事などですね。」


 ヒエンさんは「ううむ」と言って、腕を組みながら少し何か考えていたようだった。

 何か面接を受けているような緊張感があり、体に力が入って緊張したままヒエンさんの言葉を待つ。 

 しばらく考えていたようだが、腕組みを解き肩の力を抜いて話しかけてくる。 


「そうですか……シクラ様はクリスの事をどう思いますか? 」


「養護院で最年長なのもあるかもしれませんが、皆の世話を一生懸命頑張っていますし、今は稼いだ金額の大半を養護院に入れているみたいで立派ですよね。それに、今の銅ではなく更に上のランクを目指して頑張っていますし、向上心もあっていい子だと思いますよ。ただ、少し無理をしているよにも見受けられて、少し心配ではありますね。」


 俺の話を聞いて顔がピクッと動いたが、何か変な事言ったかな?


「クリスはシクラ様の事を信頼している様ですね。」


「信頼ですか? 俺とクリスはまだあったばかりですので、流石に信頼とかはしてもらえてない気がするのですけど。」


 クリスと出会ったのは先日の鍛冶屋の帰りに、ゴロツキ共に襲われていたのが初めてで、昨日であったばかりで信頼されるようなことは無いと思うんだけどな。

 

「そもそも、クリスが自分の出自を養護院の者以外に話したのは、恐らくシクラ様が初めてでしょう。ウィル達も立場上知っていますが、クリスから直接聞いたことは無いそうです。」


 そう言われれば、クリスの生い立ちなんて他人が知ったらかなりやばい気がする。 

 悪党どもならクリスをさらって身代金を請求するとか、ヒエンさんが気に入らない貴族が知ったら蹴落とす材料にもなりそうだよね。


「あの子はあれで存外人を見る目があるので、シクラ様であれば問題ないと感じたのでしょう。それに、クリスが無理をしていて心配と仰りましたが、あの子は親しい間柄の者以外にそう言ったところをあまり見せたりしませんので、よほどシクラ様の事を気に入ったのでしょうね。」


「そ、そうなんですか。」 


 ヒエンさん表情はにこやかだが、話している内容が段々まずい方向に向かっている気がする。

 クリスが俺の事を気にっている? 先日あったばかりの人を気に入るとか、そう言ったことは無い気がするんだけど……馬車でカトレアが言っていたことが現実味を帯びて来て、少し嫌な予感がする。


「そうなのですよ。まあそんなわけで、クリスが気に入っている人と引き離すと私が嫌われてしまいそうなので、護衛依頼を受けるのも辞めるのもクリスに一任しようと思っています。」


「……え? 良いんですか? 」


「何かご不満でも? 」


「そんなことは無いですけど……ウィルさんに聞いた話だと、クリス達を護衛にするのは難しいのではないかと思っていたので。」


「そのことですか。では聞きますが、シクラ様はクリス達が何者かと戦闘中そのまま眺めておいでですか? 」


 質問の意図が読めないな……戦闘になったら眺めている事なんかせずに普通に戦うけどな。

 と言うか、クリス達が怪我をしない様に下がっててもらっても良いしね。

 俺が欲しい護衛は、野営をした際の見張りとか盗賊とかに襲われないようにするための見栄えの為だから、実際の戦闘は俺が良いと思っているしね。

 

「いえ、基本的な戦闘は自分が全てしようと思っています。相手が弱く、クリス達の経験になりそうであれば任せるかもしれませんが。欲しいのは野営が必要になった際の見張りと、目に見える護衛と言う存在が欲しいだけですから。」


「シクラ様はそう考えておいでかと思いますが、ウィルなどはそうは思いません。通常護衛とは身を賭してでも対象を守る者なので、そのような依頼を受けさせるわけにはいかなかったのですよ。」


「そ、そうなんですか。それは断られるわけですね……でも、それならなぜヒエン卿は護衛依頼をどうするかクリスに任せたんですか。」


「簡単なお話です。ウィルはシクラ様の事を普通の貴族と思って持っていますが、私はシクラ様が何者か存じておりますので、クリスの身に危険が及ぶことが無い事が分かっておりますので。悪魔にさえ勝利するシクラ様に勝てる者などいないでしょう。」


「……確かに。」


 この世界での一番問題になる敵は悪魔なのだが、下級の悪魔でさえ最上位冒険者白虎の人達でさえ倒せないのに、それを単独で倒せる俺が居ればそうそう危険は無いのだろうな。

 

「シクラ様だけに負担を強いる訳ではありません。ウィルやセルリアは、共に私の騎士団員の者で若いですが実力はありますので、通常の護衛はあの者たちに任せて頂ければと思います。」


 クリス達を護衛として雇う事は出来そうだけど、ある意味俺がクリスの護衛になっているようだが仕方がないかな。 

 

「わかりました。それではその辺りの話は直接クリス達と話すことにしますね。」


「手間のかかる娘かと思いますが、どうかよろしくお願いします。」


「わかりました。任せてください。」


 俺の言葉にヒエンさんは、満足したように笑った。


 話し終えたタイミングを見計らっていたのか、タイミングよくドアがノックされてヒエンさんが入室を許可すると、バスンさんが入室してきてヒエンさんに何か耳打ちしている。


「なに? どういう事だ。」


 ヒエンさんの表情が急激に厳しいものに変わり、かなり焦っている様にも見える。

 

「なんだと! ……至急ヒューズ騎士団長とコジーラ魔導騎士団長を呼び出せ。私は今から国王様に謁見してくる。」

 

 バスンさんが再びヒエンさんに耳打ちすると、ヒエンさんは一瞬激昂しながらも直ぐに落ち着きを取り戻し、バスンさん指示を出す。


「シクラ様急な事で申し訳ありませんが、私と共に王城へ向かっていただきたく思います。詳細につきましては、移動中のにご説明させていただきます。」


「わ、わかりました。カトレア達はどうします? 」


「娘たちはどの道着替えに時間が掛かるでしょうから、このまま屋敷に待機させます。まずは王城へ向かい、至急状況の確認を致しますので、その内容次第で王城へ向かわせましょう。」


 ヒエンさんはそう言うと部屋を退出していくので、俺もそれについて行く。

 玄関に向かう途中にすれ違ったメイドに、さっき俺に行ったことをカトレア達に言伝してもらう事にして、ヒエンさんと共に馬車に乗り込もうとしたと所に……声をかけてくる人が居た。


「シクラ様! 急にどうされたのですか。」


 俺を呼び止めたのは、相変わらず着飾ったままのアイリスだった。


「カタギリ嬢か……時間が惜しい、乗りたまえ。」


 ヒエンさんはアイリスが乗るのを止めるのかと思ったら、馬車の乗るのを許可する。

 その言葉を聞いたアイリスは躊躇うことなく、馬車の駆け込んで俺の横に座った。


 俺達が乗り終わると馬車は直ぐに駆け出し、屋敷から離れ王城へと向かって行く。



「ヒエン卿、いったい何が起こっているのですか?」


「シクラ様、カタギリ嬢。王城に行けばもう少し詳細な情報があるかと思いますが、今私が分かってる情報をお伝えいたします……このキザオカに向かって、多数の魔物達が進軍してきているとの情報が入りました。総数はわからないようですが、数千は居るものと考えられます。」


 ヒエンさんは、引き攣った様な顔をしながら俺達に事態の詳細を伝えてくる。

次回急展開、魔物掃討編になります。


次回更新も月曜日になります。

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