失敗勇者と魔導騎士団
今回から前書きではなく、文章の方へ移動させました。
シクラ様がウグジマシカ神聖国に向かう際の護衛として、雇う予定の冒険者のリーダーとシクラ様が席を外されましたが、恐らくクリス様に関する事でしょうね。
リーダーをしているウィルは、昔叔父様について行ったミュラー侯爵家の訓練で手合わせしたこともありますし、実力的には銅ではなく鉄か銀クラスの実力はあるはずですので、護衛としてわざとランクを落としているのでしょうね。
その後ウィルが戻ってきて、トラオウと少し話した後トラオウが退出していったのですが、ファセリアが立ち上がって私の隣に座っていいか聞いて来たので、本人も居ない事ですしもしかしたら一緒に旅をするかもしれないメンバーですので、どうぞと言って席を勧めた。
ファセリアはあまり意味のない自己紹介をしてきたが、一応私も同じように返事をすると花が咲いたような笑顔を返してくる。
アイリス様と同い年のはずだが、見た目が少し幼いせいか私と同じくらいに見えてしまう。
当たり障りのない内容から、徐々に彼女の魔法についてや私の剣術について話をしていくと、不思議と話が盛り上がり楽しい時間を過ごすことが出来た。
シクラ様が戻られた後も話をして、会食が終わるまで楽しい時間を過ごすことが出来ました。
クリス様の件があるから一緒に旅をするのは難しいでしょうけど、またどこかで会えたらいいなと心の中でそう思ってしまうのだった。
By ダイアン
魔法使いとは思えないほどの怪力を見せたコジーラさんに引きずられ、俺は騎士団訓練所まで連れて行かれた。
「到着です! 皆さん訓練は一時中止です! これからシクラ様が魔法を見せて頂けるとの事なので、場所を開けなさい。」
到着と同時に、訓練所に向かいコジーラさんが雄たけびを上げた。
何事かと視線が集中するが、コジーラさんはまったく気にした様子はなく、「さあさあ早く! 」と言いながら場所を開けさせていた。
コジーラさんが雄たけびを上げた際に俺は解放されたけど、周りの騎士たちからは可哀そうな目で見られ、魔法使いの人達からは期待の視線を向けられ、何事もなかったかの様に服を払いながら立ち上がる。
服を払った際に違和感に気が付く、あれだけ全力疾走で石の床を引きずられていたのに、服が破れていないどころか体のどこにも痛みが無かった。
自分をよく見ると、薄っすらと光の膜の様な物が見えた……恐らく防御魔法か何かをかけてくれたのだとは思うのだけど、流石に引きずって行くのはどうかと思うよ。
俺がそんなことを考えている間に、訓練していた騎士団員は壁際へ移動しており、中心付近は訓練で標的に使う木製の人形を何体か置いて、準備万端にして待ち構えている。
壁際は一段低くなっており、その段差の部分には不可視の障壁の様な物が出来ており、恐らく魔法障壁の様な物なんのだろう。
コジーラさんと魔導騎士団員は目を輝かせて待ち構え、騎士団員の方も興味深げにこちらに視線を向けている。
「それではシクラ様、お願いします。」
「いや、お願いしますじゃなくて! 何でこんな状況になってるんですか! 」
コジーラさんは、何で魔法使わないのみたいな顔をしながら俺を見てくる。
そもそも、俺はコジーラさんにこの世界の魔法について色々聞きたいがためにここに来たのに、何故か俺が魔法を披露する場になって困惑する。
「魔法をいろいろ知りたいのでしょ? でしたらまず、シクラ様の魔法を見せて頂いてからの方が説明しやすいと思いますよ。基礎、応用、超越、そしてさらに先の超越魔法と段階があります。最上位であるシクラ様の魔法を見せて頂いてから、そういった説明したいのですがよろしいですか。」
「それならそうと言ってくださいよ。」
コジーラさんってこんな人だったのか、前に合った時はあまり話さなかったからよくわからなかったんだけど、この手の説明をしない人は少し苦手だな。
「それではどうぞ。ああ、この訓練所の中で済むような魔法にしてくださいね。シクラ様の魔法なら王都を吹き飛ばすレベルの魔法が使えると思いますが、それをされてると私も吹っ飛んでしまいますのでご勘弁を。」
「いやいや、そんな魔法なんて使わないですし使えないですよ! 」
などと疲れる会話をしつつ、訝しげな顔をするコジーラさんが何を期待しているか、だんだんわかって来た。
恐らく、トラオウさんたちに聞いた前勇者の様な魔法を期待されているようだが、今の俺ではそこまでの魔法を使う事は出来ないと思う……使ったことが無いから何とも言えないんだけど、感覚で自分が使える魔法が何となくわかるので、そこまでの大魔法は使えないだろう。
全力を振り絞って使っても、この訓練所を破壊する程度しか使えない……って、なんか基準が可笑しくなってる気がする。
「とりあえず、あの目標を粉砕出来尚且つ、周辺被害が出ないような魔法を使ってください。」
目標を粉砕するのであれば、どんな魔法でも壊せそうな気もするけど……周辺被害を考えるのと、コジーラさん達が期待しているような面白い魔法か。
アイリス達に来た魔法は、自然現象で行える、火、水、土、風の四属性が基本だったはずだから、これ以外の魔法で異世界人である、勇者しか思いつかない魔法を使ってみるのも面白いと思うんだけど何が良いかな。
因みに、基本属性以外にも派生属性として、水属性の派生の氷や、土属性の派生の木などがある。
元の世界で遊んだ、様々なゲームや漫画の知識を絞り出し、一ついい魔法を思いついた。
某ロールプレイングゲームで、勇者のみが使えると言う特殊な魔法を思い出すことが出来たので、その魔法が可能か考えてみると、俺が使う事が出来ることが何となくわかったので、その魔法を使う事にした。
この晴れた天気だと、魔法を発動させるのに必要なオドとマナの量がばかげた量になりそうだけど、恐らくみんなが見たことが無い様な魔法になるだろうからね。
俺は見学している皆に魔法を使う旨を伝え、注意を促してから魔力を込め始める。
自分の周りの空間からマナを集め、自分のオドで魔法を制御する。
ここは王都と言う事もあって人が多く自然などが少ないので、滞留しているマナの量が少ない様だけど、少し範囲を広げればかなりの高威力で打つことも可能だろう。
「天よ、我が呼び声に答え、全てを流す雨をもたらしたまえ。」
俺の口から無意識に詠唱が零れる。
「風よ、全てを纏め大いなる雲をもたらしたまえ。」
雨雲が訓練所の上空だけに発生し、雨がぽつぽつと降り始める。
「雲よ、全てを穿つ雷で我が前の敵を打ち滅ぼせ。」
雨雲が積乱雲の様に盛り上がり、王都に急激な雨が降り始める。
「アンリミテッドライトニング。」
俺が魔法を発動すると同時に、目を焼く様な激しい閃光とともに、耳を劈く様な轟音と吹き飛ばされるような強烈な衝撃が訓練所襲う。
体の中から何かが抜け出すような感じがしたが、恐らくこれが強力な魔法を行使した事でわかったオドが抜け出る感覚なのだろう。
抜け出た感じから、恐らくこの魔法は十発程度しか打てないだろうとなぜかわかってしまう。
曇っていたり、雷雨が来ていたりしたら、もっと簡単に発動できるだろうし、オドとマナの消費も極端に低下するだろうけどね。
「「「「め、目がー! 耳がー! 」」」」
魔法を使った俺には、恐らく魔法での防御が働いてダメージは一切ないが……見学していた殆どの人が、近距離に落雷が起きた影響で、目と耳をやられて呻いている。
殆どに含まれていないのは、俺と来ていたアイリス達と、コジーラさん、他には防げた人は数名居たようだ。
衝撃で吹き飛んだりした人居ないようで、魔法障壁が皆への衝撃を抑えたようだ。
目標となった人形は木端微塵になっており、障壁内に散らばった大きな破片はちろちろと燃えている。
人形があた場所にはクレーターの様な穴が開いており、周りには血管の様な不思議な模様が出来ていた。
「アドバンスドオールヒール。」
緑色の柔らかな光が、訓練所に居る全ての人を包み込む。
先程の魔法でダメージを受けた人が多いので、この訓練所に居る人すべてに回復魔法を掛けておいた。
俺の魔法が効いたのか、時間と共に収まって来たのかわからないが、訓練所の中で呻くような人居なくなったが、その代わりにどよめきの様な物が沸き起こった。
恐らく初めて見た魔法だろうし、この威力を見たら驚くのは無理は無いだろう。
俺は少しドヤ顔をしながら、コジーラさんの方に向き直る……が、コジーラさんは少し微妙な顔をしたまま、魔法の落ちたポイントをじっと見ている。
「あの、こんな感じで良かったですか。」
「っ! あ、いえ。さ、流石はシクラ様ですね。これほどの魔法は、魔導騎士団員では使えないでしょう……。」
「どうかしましたか? 」
「いえ……シクラ様の魔法を見させていただきましたので、この世界の魔法については私の執務室でお話しさせていただきますね。」
ドヤ顔を止めてコジーラさん対して話しかけると、はっとした様子でコジーラさんはこちらへ向き直り称賛をしてくれる……が、そそくさと執務室に向かって歩いて行ってしまった。
コジーラさんの取り繕ったような顔が少し気になるけど、ここでは話せない様な内容なのかもしれないな。
コジーラさんが障壁の展開を止めさせると、騎士団員達が駆け寄ってきて皆が称賛の言葉を送ってくれる。
「さっきの魔法は一体なんですか! 見たことも無いですよ! 」
「あの魔法も凄かったけど、その後の回復魔法も凄くなかったか。訓練所の皆をいっぺんに直すような魔法なんて、宮廷魔術師クラスの魔法だよな! 」
わらわらと集まってくる騎士団員に、称賛の礼を言いながらなんとかアイリス達と合流し訓練所後にする。
先に戻ったコジーラさんの後を追い執務室に入ると、複雑な表情をしたコジーラさんともう一人見知らぬ女性が待っていた。
「シクラ様、先程はお疲れさまでした。」
「いえ、ちょっと面白そうな魔法を思いついたので使ってみたのですが……実際の所はどうでしたか。」
さっきの帰り際の反応がおかしかったので、後半声色を変えて真面目に聞いてみる。
コジーラさんはじっとこちらを見た後、ふぅと言いながら隣の女性に目を向けると、その人は頷くような仕草をしたのを確認して話をしてくる。
「そうですね。先ほどの雷の魔法ですが、威力として申し分ありませんが、いかんせん詠唱が長すぎると思います。詠唱が必要と言う事は、あの魔法を詠唱省略や無詠唱でシクラ様が使用できないレベルの魔法であると言う事は、恐らく宮廷魔術師クラスであれば同等魔法が使用可能かと思います。」
ほう、今回無意識に詠唱したけど、詠唱にはそんな意味があったんだな。
「となると、俺が今使える魔法は宮廷魔術師と同等位しか使えないって事ですか。」
「一概にそうとも言い切れません。雷の魔法はそうですが、先程の回復魔法は宮廷魔術師で詠唱省略は難しいでしょう。基本的に回復魔法は、マナを使用せずオドのみで魔法を行使しますので、シクラ様のオド保有量はかなりの物かと思います。恐らくですが、オドとマナ双方の調整がまだ訓練不足で、マナを使用する魔法に負担がかかっているのだと思います。」
「俺は訓練したら更に強力な魔法が使えるようになる可能性があるって事ですかね。」
「恐らくは。シクラ様は先ほどの魔法を使用された際、オドはどの程度減少されたかわかりますか。」
「十分の一位かな。たぶん天候や場所によってはもっと少なくなる気がするけど、制御するのにオドが結構消費したから、威力自体も数倍までが限度なんじゃないかな。」
さっきの威力であのオドの消費量だと、威力が上がるにつれて制御するためのオド消費量も増えていくだろうから、晴れで三倍、曇りや雷雨などがあれば五倍くらいだろうな。
「え、今なんと?」
先ほどからコジーラさんの後ろに立ち、話をしていなかった女性が驚きの表情で俺に問いかけてくる。
「えっと、どれの事です? あの魔法を使うのに消費したオドが、十分の一位って事ですか? 」
「ち、違います! 先程の魔法をオドだけで制御されていたと言うのですか! 」
「そ、そうですけど。何かおかしかったですかね。」
「オ、オドだけで、あの魔法を制御したなんて……」
俺の返事に、コジーラさんと女性が驚き顔を見合わせている。
なんか変な事を言ったかと思い、振り返りアイリス達を見るが特に気にした様子は無い。
ダイアンはそもそも剣術で戦うタイプだからわからないだろうが、アイリスも特に気にした様子は無いので、何か変な事を言ったわけではなさそうだ。
俺が困惑顔でコジーラさん達の方へ視線を戻すと、二人は何やら小声で話し合っている様だが、俺の視線に気がついて、こほんと言ってっこちらに向き直る。
「シクラ様は先ほどの魔法の制御を、全てオドで制御されたと言われましたが……間違いありませんね。」
「ええ、間違いありませんけど、何かおかしいですか。」
俺の返答に再度衝撃を受け、コジーラさんはとてもうれしそうにして、もう一人の女性は顔が強張っている様だ。
「す……しい。」
なんだろう? コジーラさんが小声で何か言っていたが、うまく聞き取れなかったが……何故か顔を伏せて震えている。
「えっと、どうかされましたか? 」
俺の問いかけにコジーラさんは、バンと机に手を叩きつけ立ち上がった。
「素晴らしいですシクラ様! 流石は今代の勇者様です。先ほどの魔法を宮廷魔術師なら使えると申しましたが、あの魔法の制御をオドのみで行うなど、私や宮廷魔術師単独では不可能です! オドだけであの魔法を制御しようとした場合、宮廷魔術師でもトップの者どもを集めて儀式魔法で再現すれば可能かと思いますが、そんなことは無意味ですしマナを使わずに制御するのはオドの無駄遣いです! そうなると、そうなるとですよ、シクラ様はマナの制御訓練を行えばこの世界に存在するほぼすべての魔法を使用できるでしょう! ああ、なんと素晴らしい事でしょう。」
コジーラさんの変貌ぶりにドン引きしてしまった。
ただ、コジーラさんの話をふりかえると、魔法を行使する際に普通はオドとマナで魔法を制御するのが当たり前で、俺みたいにオドだけで制御するのは馬鹿みたいにオドを消費するようだ。
そして、マナの制御訓練を行えば、さっきの魔法や他の魔法も簡単に使用でき、更にオドの消費も下げられると言う事のようだ。
とりあえずいい事は聞けたのだけど、コジーラさんの変貌ぶりを考えると、俺の中での呼び名はマッドマジシャン確定だな。
次回更新はも月曜日になります。




