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召喚失敗勇者の異世界放浪旅  作者: 転々
一章

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25/220

召喚失敗勇者と魔導騎士団長

 クリスが知り合いから依頼を受けて来たと言って、今日の昼頃に養護院で待ち合わせすることになったから、ファセリアにも伝えておいてと言って、セルリアの家の方に向かって行った。

 依頼内容は、護衛依頼としか教えてくれなかったが、そもそもクリスの知り合いって養護院関係者か、侯爵様の関係者なのだろうから、それ程大きな依頼ではないだろうと思っていたのだが。

 養護院に現れたのは、豪奢な馬車に乗った若い子爵様だった。

 従者として、アイリス様とダイアン様が居る事から、身分を誤っていることは無いだろうけど……これって、侯爵様はご存じなのか?

 しかも、隣国までの護衛依頼で、しかも依頼料は規定の金額だから、断るにも特別な理由が無いと断れないぞ。

 子爵様がクリス様の出自をご存じであれば話が早いのですが、何とかクリス様に聞かれない様に直接話をしなくては。

 

俺とハルさんは椅子に座り、ウィルさんだけは立ったままの状態で説明を始める。


「シクラ子爵様、時間もあまりございませんので手短に説明させていただきます。私達は、建前上クリス様の冒険者仲間ということになっておりますが、私とセルリアはミュラー侯爵家の騎士になります。冒険者としての立場は、クリス様……いえ、クリスティーナ様に警戒されずに護衛するためには、必要な措置だったのです。ファセリアは、私共だけでは年齢が離れており、パーティに加入しにくいと思われたので、妹に冒険者になってもらったのです。」


 ウィルさん少し早口で説明し、現在の状況を納得することが出来た。

 クリスがが危ない依頼を受けた際に止めたり、危険な魔物と遭遇した際に守れるように、同じ冒険者として登録したのか。

 しかし、クリスが侯爵の娘である事は知っていて驚かなかったけど、侯爵家の騎士を冒険者にしてまで、クリスの護衛にするとは驚きだ。

 

 気を取り直し、俺はウィルに続きを促す。


「今回のシクラ子爵様の依頼の件ですが、このような案件ですと侯爵様に確認せずに判断することが出来ず、確認のお時間を頂きたく存じます。本日にでも確認してまいりますが、もし我々が受けることが出来なかった場合、侯爵様に私から別の冒険者や傭兵の方を紹介して頂けるようにお願いいたしますので、ご容赦ください。」


「侯爵様に確認しないといけない事はわかりました。ただ一つだけ確認したいのですけどよろしいですか。」

 

「私に答えられることであれば何なりと。」


「あなたは、私が何者か知っていますか。」

 

「……質問の意図が理解できませんが、私は侯爵家に親しい方しか存じ上げておりませんの、子爵様の事は存じ上げておりませんでした。」


 唐突な質問に、ウィルさんは少し固まったが、姿勢を正したまま正直に答える。

 傍から見ていたハルさんが、肩をすくめているのが見えたけど、とりあえず気にしないことにした。


「わかりました。それでは先に部屋に戻って、トラオウさんにこっちに来てもらうよう伝えてもらっても良いですか。」


 ウィルさんは、「はっ」と敬礼をした後退出していった。


 さてさて、トラオウさんが来るまでの間に、ハルさんにも少し話しておいた方が良いかな。

 さっきの反応を見る限り、大体気が付いてる気もするけど。


「ハルさんは俺が何者か、大体検討が付いてますよね。」


「まあ、悪魔とあんな装備で戦える存在なんて他に居ないからな。それに、王宮住まいで美人の侍女を侍らせてるなんて、王族や上級のお貴族様以外はそれしかないからな。」


 後半は俺が指示したわけではないのだけど……ま、わかるよね。

 

 しばらくすると、トラオウさんが上機嫌な様子で部屋に入って来たので、二人に俺の事を説明する。


 召喚された勇者だが、過去の勇者達とは違い不完全な勇者である事、元の世界に帰還するには神様のお手伝いをする必要がある事、そして……このことを出来れば口外しないでもらいたいと言う事を伝えておいた。

 二人ともやっぱりなと言う顔をしていたが、ちゃちゃなどは入れずに真面目に聞いてくれて、口外しない事も約束してくれた。

 ただ、ミモザさんやアルルさんにも、このの話を伝えてもらう必要があるので、白虎内での秘密にしてもらう事になった。


「それにしても、あの力があって不完全とは、勇者とは凄いな。」


「そりゃそうだろ。トラオウも魔王との戦いは見ただろ? あんなの俺達じゃ到底倒せないようなやつを倒しちまうようなのが勇者だぞ、ボウズの力とはまた桁が違うって。」


「そんなに違うんですか。やっぱり威力とかが全く違う感じです? 」


 勇者の力がどの位か少し興味がわいたので、ハルさんに聞いてみたけど……なるほど桁が違う。

 曰く、勇者が本気で戦えば、先日苦戦した下級悪魔なんて剣の一振りで倒してしまうとか。

 曰く、勇者が使用した魔法で数万の魔物の軍団を消滅させて、数キロに及ぶクレータを作り、魔法でその穴を埋め戻してしまったとか。


 聞けば聞くほど、今の俺とは格が全く違う事が分かった……流石まともに神様の力を宿している事だけはある様だ。

 とりあえず、勇者に付いての逸話や英雄譚は山のようにあるそうで、今聞き始めたらいつまでかかるか分からなそうなので、ハルさんにストップをかける。

 そろそろ戻らないと、色々と感づかれてしまいそうなので、トラオウさんとハルさんにお礼を言って部屋に戻ることにした。


 部屋に戻ると、皆和気藹々とした雰囲気で会話していた。

 俺が入って来たのを察した、アイリスとダイアンが席を立とうとしていたけど、手で制してそのままでいさせた。

 俺の席にクリスが座りアイリスと話していて、トラオウさんが座っていた席には、ファセリアちゃんが座ってダイアンと話している様だ。

 ウィルさんとセルリアさんは話しをしているが、ウィルさんは先程までの違って普通の冒険者の様に振舞っている様だ。


 しばらくこのままでいい気がするので、俺は空いているウィルさんの隣に座りついでに飲み物を注文しておく。

 ウィルさんとセルリアさんと、依頼の件には触れずに冒険者について色々と教えてもらい、トラオウさんが戻ってくるまで楽しく会話していた。

 そのおかげで、薄銅クラスから鉄クラスまでの依頼や、面白い体験や危なかった事など色々教えてもらえた。


 しばらくすると、トラオウさんが戻って来たので、依頼の件をどうするかまとめておこうと思う。


「とりあえず、長期の遠征になるので直ぐに結論が出せないと思うので、また後日クリスの養護院に行くので、その時に返事を貰えればいいですからね。」


「子爵様のご厚意感謝いたします。私共も色々相談しておきますので、色よい返事が出来る様最善を尽くします。」


 ウィルさんとアイコンタクトで、こんな物かなと言っていると、横から異議を申し立てる人が居た……まあ、クリスなんだけど。


「なんでウィル直ぐに受けないの、こんなにいい仕事なんてそうそうないのに。」


「あのなクリス、他国までの遠征をするなら、移動経路の確認、街道に出現する魔物や盗賊の確認、それに俺達の装備の手入れや新しい装備の購入なんてしないといけないんだぞ。クリスは剣すら持ってないから、流石にどんな事態に合うかわからないんだから、その辺りの装備を整えられるかとか考えてから依頼を受けないと迷惑かけるだろうが。」


 ウィルんさんに説得されて、渋々クリスはしたがってようだけど、文句を言いたそうな顔をしている。


 そう言えば、この間暴漢に襲われていた時持っていたのは、短剣の様な短い物だけだったな。

 流石に今のクリスの装備だと、弱めの魔物なら倒せるのかもしれないけど、盗賊とかになるとリーチや体格の差があるから、装備をもう少し充実させないと危ないかもしれない。


「それ程急ぎでもありませんし、また皆さんで相談しておいてください。」


 とりあえずそれで話は終わり、食事費用を清算して陽光宿を出る。

 因みに、陽光宿での出費は銀貨十枚にもなっていた……いやはや、結構な出費になったけど、クリス達やトラオウさんも喜んでくれていたのでいっか。


 馬車でクリス達を送った後、少しやりたい事があったので、王城に戻る前に騎士団駐屯地に向かう。

 移動中に、アイリス達にウィルさん達を雇う事が難しくなったことや、トラオウさん達の部屋での会話を説明しておく。


「クリス達を護衛としてウグジマシカ神聖国に行くのは難しいんだけど、そのかわりウィルさんが他に手配できないか確認してくれるみたいだから、一応その連絡待ちになるね。」


「それでは、他に冒険者を手配するのはその連絡が来るまで待っておきましょう。食料などの雑費は私達が準備いたしますが、他に準備に必要な物などは集まりそうでしょうか。」


 長期間の馬車の旅は流石に初めてなので、どのような物資が必要になるか詳しくわからないんだけど、俺達の食料、衣類などの雑貨、馬の餌、馬車の補修部品などはアイリス達が準備してくれる予定だけど、他に何が必要になるか良くわからないんだよね。

 

「必要そうな物は装備品だと思うから、後は一応防具位なのかな……本当は充電器が欲しい所だけどね。」


「シクラ様ですと、剣と魔法双方使われますので、防具は動きやすい軽装の物が良いかと思います。その、ジュウデンキとは先日リリーがシクラ様のスマホと言う物をジュウデンしていた物でしょうか。」


「アイリス、防具はそれで一回探してみるよ。充電器はそれで合っているよ、それがあればスマホの充電が出来るから何かしら使えると思うんだよね。」


 俺が充電器が欲しいとの要望を聞いたアイリスは、少し考えていたようだが一度国王様に確認してくれるようだ。

 スマホが使えれば、元の世界では見られなかったような景色も残せるし、皆の写真も残せる……元の世界に戻った時にデータが残っている保証は無いけど、残っていたら思い出が残せるからね。


 そんな話をしている間に馬車は騎士団駐屯地に到着したので、立ち番をしている騎士に挨拶をして中に入って行く。

 一応付いた際に、ダイアンに目的の人が居るか確認してもらい、予定などを確認してもらったら問題なく会ってもらえる様だ。


 散々訓練のために来た施設だけあって、迷うことなく目的地にたどり着く……そこは魔導騎士団長室だ。

 騎士団には、ヒューズさんが団長をしている騎士団と、コジーラさんが団長をしている魔導騎士団があり、騎士団と魔導騎士団の違いは戦闘や戦略において、魔法を主力とするかどうかなのだとか。

 俺が今まで訓練していたヒューズさんの騎士団は、魔法を主力とせずに己の力で戦う戦士タイプの騎士団である。

 そして、コジーラさん率いる魔導騎士団は、魔法近接戦が主体の魔法騎士と、遠距離から魔法を放つ砲台要員の魔法使い達で構成されている。

 今の俺は、魔法が使えるようになったので、その辺りが詳しい魔導騎士団長に、魔法ありきの戦闘方法を学ぼうと思っているのだ。



「ご無沙汰しておりますシクラ様。魔法が使えるようになられたとの事で、いつ来られるか待っておりましたよ。」


 ノックして部屋に入ると、コジーラさんが目つきの悪い顔を、満面の笑みにして歓迎してくれる。

 部屋の中はコジーラさん一人で、執務机で何か書類作業をしていたようだが、立ち上がり迎え入れてくれる。

 この部屋には、執務机と応接用のテーブルセット、壁には何種類もの杖が飾られている以外はほとんど何もない部屋だった。


 俺が初めて練兵場に来た時、物凄く魔法オタクっぽい人で、あまり人当たりが良さそうじゃなかったので少し避けていたんだけど、この歓迎は驚きだ。

 

「お久しぶりですね、コジーラさん。突然と邪魔して申し訳ありません。」


 俺が挨拶をすると、コジーラさんは席を勧めて来たので、ソファーに一人で座る。

 アイリス達は、今は一応従者として来ているので、俺の後ろで立っている。


「それで、今回の御用向きをお聞きしてもよろしいですか。もしかして、魔導騎士団の訓練に参加したいとかでしょうか。」


「ええ、それもありますが……先日、私も魔法が使えるようになりましたので、この国で一番魔法に詳しいコジーラさんに、魔法の事について色々教えて頂きたいと思いまして。」


「シクラ様が私に魔法を教えて欲しいとは、望外の喜びです。今の私は、魔導騎士団の団長をして居ますが、私は元来魔法の研究をするために魔導騎士団に入ったのですが、研究を重ねるうちに戦術などにも詳しくなってしまい今の立場になってしまって、新たな魔法の研究が出来なくて困っていたのです。ですが、シクラ様の訓練と称して勇者様の魔法の研究が出来れば、今までの既存の魔法を超える魔法が作れるかもしませんし、もしかしたら勇者様方の魔法の再現が可能になるかもしれません。とりあえず、どの程度の魔法がお使いになれるようになったのか確認したいので、訓練所に行きましょう、さあ行きましょう。」


 俺の言葉を聞いたコジーラさんが急に立ち上がり、興奮した様子俺の手を引いて引っ張っていく。

 突然の発狂具合にあっけにとられた俺は、手を引かれたままついて行くしかなく、唖然とした様子でコジーラさんを止めることが出来なかったアイリスとダイアンも、困惑顔で俺達を追ってきている。


「久々の研究だ、しかも前回の勇者様は教えることなどなかったからこちらから聞く事も出来なかったですが、今回は勇者様の方から聞いて来てくださっているのですから、その魔法を解析しない事には教えることが出来ませんので、じっくり勇者様の魔法を堪能できますね。あ、そこのお前、副団長に解析班と研究班を支給訓練所に来るように伝えてくれ、勇者様が魔法を披露してくれるそうだから手が空いている者全員来るように伝えておけよ。さあ、シクラ様。楽しい楽しい魔法訓練の始まりですよーーーー。」


 俺を引きずったまま、すれ違う騎士団員に連絡事項を伝えて、コジーラさんは訓練所へ走って行く。

 

「いや、ついて行くから引きずるのやめてもらえません!」


「あっはっはー。もうすぐ着きますから気にしないでください。」


 まずったな……こりゃ、とんでもないマッドマジシャンだな。

 俺は引きずられながら、教えてもらう人を間違えたと思いながら、既に後戻りが出来ないことを悟り素直に引きずられていくのだった。


 

次回も更新は月曜日になります。


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