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召喚失敗勇者の異世界放浪旅  作者: 転々
第五章
202/220

失敗勇者とダブルドラゴンブレス

 タケミカヅチの分け御霊だった物は、取り込んだ神々をその身に無理やり宿したようなちぐはぐの体で安定した。

 どこを見ているわからない虚ろな瞳で周囲を見渡した後、ぐりんと顔をセクメトリーたちのほうへと向けた。

 何を考えているか分からない不思議な瞳だ。

 そして徐に手をセクメトリー達の方へ向け、そこから何かが放出された。


「っ!」


 セクメトリーが咄嗟に障壁を展開すると、放出されたそれは激しく障壁と衝突する。

 侵食されたタケミカヅチが放ったのは、ただの魔力をそのまま放出した物。

 魔法に変換する前の純粋な魔力そのもので、威力はさほど大した物ではない――本来であれば。

 常軌を逸した魔力の量放出された魔力の奔流はセクメトリーの障壁をゴリゴリ削ったが、効率の悪さから障壁が破られることは無かった。 

 いつ何が起きても大丈夫な様に障壁を出せる準備をしていたが為に間に合ったが、本来であれば間に合いようがなかった一撃だった。

 

「やってくれるわね」


「事前の準備無しの只の魔力があれほどの威力とは――階位の差だけでは無いな」


 セクメトリーとタケミカヅチは元々階位は同位だったが、先程の階位が上がったことにより一段上になっている。

 階位が一つ上がればそれだけ神としての力は増すが、それでも以上名ほど強くなると言うわけではない。

 簡単に説明するのであれば扱える神としての力が倍にはなるが、扱える力が倍になるだけで倍強くなるわけではない。

 しかし、先程の魔力の奔流はセクメトリーが行っても半分以下――実際には四分の一程度の威力しか出せない。

 そしてタケミカヅチはそれでも余裕のある感じのため、実際にはそれ以上の差があると感じた――のだが。


「全員に強化発動させました。維持はヒエンくんよろしくね」


 アカリが使う強化魔法は神々にも効果を発揮され、実際の地力の差を埋めることが出来るのだ。

 人種に対して行うのと神々に対して行うのでは倍率の差がある為、先程まで戦っていた人々程の強化はされていないがそれでもかなりの強化具合だ。

 アカリが発動し、ヒエンが維持する。

 発動よりも維持の方が魔力を使うように思えるが、そこはヒエンが特殊な勇者と言うところが関係している。

 彼自身勇者としての力はシクラと同等ではあるが、シクラの前借スキルのおかげで後の事を考えなければ無駄に強い勇者である。

 しかし、ヒエンも特殊なスキルを持っておりそのスキルのおかげで勇者や神に対して援護ができるのだ。

 スキル名『維持』

 その名の通り維持することに特化したスキルで、己が発動することが出来ないものでも維持が可能で、通常の十分の一の魔力で維持することが出来る。

 使い方次第ではかなり強力なスキルではあるのだが、本人の魔法を使う才能があまりない為強者と組むことで最大限威力を発揮するのだ。


「シクラは――こちらからは動かせなくなっているわね。ヒエン、強化と障壁両方の維持は可能ですか?」


「障壁数枚程度なら問題ありません」


「ではお願いします。こちらからも気を配りますが、危なくなったら障壁は破棄して構いません」


 そういいながらヒエンを中心に円形の多重障壁を構築する。

 先程と同じ障壁ではあるが、アカリの支援魔法で強化されたセクメトリーの多重障壁なので、先程の攻撃程度であれば一枚で複数回受け止めることが可能だ。

 障壁を維持するとヒエンは少し顔を顰めるが、問題なく維持することは可能なようだ。

 シクラは少し離れた所から成り行きを見守るような形で動く気配が無いし、セクメトリーの呪縛からは既に逃れてしまっているのか指示にも従わない。

 手札が一つ使えないことに内心歯噛みしながらも、それを表情に出すほどセクメトリーは愚かではない。

 ただし、自分の伊のままに操れないとは言え本人は闘う意思を持っているように思えるので、頬って置いても自ずと参戦するとセクメトリーは考えとりあえず様子をみることにした。


「どのような攻撃手段があるかわからん。まずは遠距離から攻めるぞ」


「ええ、ですがこちらも攻撃手段が限られますね」


「水属性が効かぬのがやっかいだが、ブレスや咆哮の様な無属性は関係なかろう」


「もしくは向こうの耐性を上回るほどの威力でなら効果はありそうですが、難しいでしょうね」


 耐性の高い相手のため攻撃手段は限られ、しかし相手の攻撃は障壁などで防御しなければ危険な威力。

 タケミカヅチだったものは先程の攻撃が防がれたことに首を傾げてはいるが、どうにも生物っぽくない動きに何を考えているか分からず不気味な感じだ。

 様子見をしていても埒が明かなそうな相手のため、竜神が障壁を出て攻撃をすることにした。

 相手を警戒しながら障壁を出て、龍神を大きく息を吸った。


「まずは小手調べだ! 」


 竜神は口を大きく開き、ドラゴンの使うブレスを放出する。

 ドラゴンブレスは下手な悪魔を消し去るだけの威力がある。

 それは通常の竜が使った場合でその威力であり、竜神が使うブレスはソレとは比較にならないほどの物だった。

 レーザーのような者を口から吐き出しているようにも見えるが、良く観ると螺旋状に回転する衝撃はだった。

 ただその大きさは竜神よりも大きく直径十メートル程は在るかと言う大きさで、しかも超高速で回避することは不可能だ。

 タケミカヅチはソレを直撃――下かの様に見えたが、目の前に障壁が展開され衝突したブレスは障壁に阻まれ周囲に散っていく。

 しかも障壁は円錐状になっており、周囲に効率よく散っていく様な形になっていた。


「ヌフ?」


 この程度と言ったかのように首を傾げる。

 ブレスは一切タケミカヅチにダメージを与えず、周囲を削るだけだった様だ。

 

「この程度は想定済みと言う事か。ならば!」


 竜神は空高く舞い上がり、今度は上空からブレスを撃つ様だ。


「ヌフフン」


 飛び上がる竜神を眺め、嘲る様な声を上げる。

 

「その余裕打ち砕いてくれる! マウントよ来い!」


 竜神の上空に突如巨大な積層魔法陣が現れ、眩い光が辺りを照らした。

 その光が収まると、そこには超巨大なドラゴンが大量の海水と共に現れる。

 夢幻大陸を守る世界最強のドラゴンであり、竜神の供であるマウントドラゴンが召喚された。

 常に海中に体を収めているマウントドラゴンと共に現れた大量の海水は、直下のセクメトリー達に降り注ぐ。

 障壁を張っているので問題はないが、周りがちょっとした池になるレベルの海水量は驚きだ。

 タケミカヅチも障壁を展開していたのか、彼の周り十メートル程を海水の浸食を受けていない。

 突然の召喚に驚きつつも、自分を召喚できる者がこの世には二人しか存在せず夢幻大陸でもない場所の為、召喚者が誰かは直ぐに察しがついた。


「ここは夢幻大陸ではない?――竜神様!」


「久しいなマウント――大きくなったな。しかし今は懐かしんでいる場合ではない、あれに向かい拡散ブレスを撃てるか?」


「もちろんです。ただ、竜神様の供として周っていらい使っておりませんのでどの程度の威力なのかが……」


「構わぬ。全力であれを殺す勢いで放て」


「畏まりました――」


 その巨体で頷くのを確認した龍神は、マウントドラゴンの頭の上に乗り二人そろってブレスの準備に入った。

 マウントドラゴンは竜神と共にあるのが嬉しいのか、その長大な巨体の尻尾で()()()()()()()()()動かした。


「ヌギ――ヌグググ……」


 流石のタケミカヅチもこれを脅威と取ったのか、マウントドラゴンへと向けて魔力を解き放なとうとするが――障壁を解除すると周囲の海水が入って来るのを警戒したのか障壁を厚くして対処する様だ。


「合わせろマウント! 」


「畏まりました!」


「「ガァアアアアアアア!!!」」


 竜神のブレスとマウントドラゴンのブレスが同時にタケミカヅチに対して放たれる。


 マウントドラゴンのブレスは口元から十二個に分裂しタケミカヅチに対して全方位から襲い掛かり、竜神のブレスは分裂させずに極太ブレスが真っ直ぐに向かって行く。

 周囲と直上共に塞いだ逃げ場のない相手を殲滅するためのブレス――これが竜神とマウントドラゴンがタッグを組んだ際の最強の一撃なのだ。


「っつ! 流石に下がるわよ!」


 想定以上の威力がある事を感じたセクメトリーは、周囲の者達と共にゲートを使い距離をとる。

 そして――神をも殺す究極のブレスがタケミカヅチの障壁と衝突した。

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