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召喚失敗勇者の異世界放浪旅  作者: 転々
一章

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20/220

失敗勇者テンプレに遭遇する

 陽光宿の親父は、かあちゃんにこってり絞られていた。

 いくら、陽光宿が上級冒険者や、それなりに羽振りの良い商人しか泊まらないような宿だったとしても、料理のレシピに金貨三十枚の大金を払ったのだから、怒られないのが可笑しい。

 一時は家を出て行くと言われたが、購入したレシピで作った料理を食べたら少しは落ち着いたようだ。

 試しにトラオウ達に食わせてみると、反応は上々でかなりの高値で販売しても元が取れそうな感じだった。

 陽光宿の食事代金はおまかせの定食で鉄貨一枚だが、餃子、唐揚、天ぷらの三定食だけ特別メニューにして鉄貨五枚と高値で売り出したが、冒険者の一人が唐揚げ定食を頼むと、その食べっぷりに他の冒険者達も頼みだし、厨房が忙しすぎて材料がなくなるまで注文が続いた。


 冒険者たちが奪い合うような料理が出ると噂になり、一般人も大量にやってくることになるのはもう少し日にちが経ってからになる。



 目の前に現れたのは、半透明な一本の剣だった。

 半透明な剣は、俺の目の前でただ浮いており微動だにしない。


「えっと……何か、良くわからない剣が出て来たんですけど、これがソードシールドですか。」


 俺がオッサン話しかけるが、オッサンは浮いている剣を見て固まっている。

 

「あのー。もしもーし……死んだ? 」


「っは、勝手に殺すな! ううむ、本当に出たのか……しかし……約束だからな……でも、もったいないの……だが、出せたと言う事は……ううむ……しかし、まだ選ぶと決まったわけではないわけで……。」


 プロレスラーみたいな体系の、ごっついドワーフが腕を組んでうんうん唸っているのを見ると、少し可笑しいけど、声に出して笑ったら絶対に殴られそうだから頑張って我慢せねば。

 それにしても、何をそんなに唸ってるんだろう。

 オッサンに言われた通り、呪文を唱えただけなのに……もしかして、本当に出るとは思っていなかったとかなのかな。

 でも、このソードシールドって、ただの半透明な剣が浮いているだけで全く動かないし、剣を動かしても半透明な剣はその場から動かないし、何か意味があるのかな……  


 透明な剣はシクラから一メートル程の位置から微動だにせず、シクラの動きに合わせて移動するただの浮遊しているだけだった。

 

「それで、小僧。どの装備にするか決まったのか。」


「そうですね……そう言えば、材質とかは何で出来ているんです。」


「そうだったな。初めの長剣は、魔法鉄……ミスリルの合金製の剣で、値段は金貨七枚。盾のセットは、剣がこれもミスリルとの合金だが、割合が少し少ない代わりに盾の比率が高くなっていてな、値段は金貨十枚だ。最後の剣だが、これはワシが作った剣ではなので割合がわからんが、ミスリルと何かの合金であることは確かだ……その、ソードシールドが出せる奴に売って欲しいと言われておってな、値段は金貨十枚になるの。」


 ふむふむ、どれにするか悩むところだな。


 一番扱いやすいのは、最初のロングソードだろうな。

 ショートソードと盾のセットはまだ使ったこと無いけど、攻防一体で良さそうだ。

 最後の剣は、ロングソードになるのだけれど、あの特殊な機能が何なのか分かれば買う気にもなるんだけど……まあ、目の前に剣が浮いているだけでも多少は意味があるだろうけど。

 

「そう言えば、この浮いている剣て強度はあるのか。」


 剣が浮いているのに気をとられて忘れていたが、これを出す呪文はソードシールドである。

 シールドと名前が付いているのだから、最低限強度があるはずなのだが、見た目透明なので実際に強度があるのかよくわからないのである。


「ふん。ソードシールドは、その剣と同等程度の硬さはあるらしいが、今まで一度も試せたことがなかったな。よし、これで試すか。」


 オッサンは、腰ベルトから小ぶりのハンマーを取り出し、透明な剣に打ち付けてみると。


 ギイイィィィン! バキィ!


「「はぁ!? 」」


 ハンマーが透明な剣に接触する前に、ソードシールドが急に動きハンマーを弾き飛ばした。

 オッサンは反応が出来ず、ハンマーを吹き飛ばされて唖然としながら、ハンマーが飛んで行った先を目で追っていた。

 ハンマーは吹き飛ばされて、木製の扉に突き刺さっていた。

 

「おいおい! 何だ今のは! 剣が勝手に動いてハンマーを弾き飛ばしおったわ。」


「もしかしてこれって、攻撃されると勝手に動くんですかね。それだと、かなり高価な魔道具になるとおもうんですけど、本当にこの金額で良いんですか。」


 この間街で見かけた盾を出す魔道具でも、金貨二十枚以上の高額な品だったのだが、ロングソードに魔道具としての機能が組み込まれた物なんて、下手したら金貨百枚はしそうな気がする。


「普通ならそんな金額では売れないんだが、その剣を持ち込んだものが金貨五枚で売るから、使える者が居たら金貨十枚で売ってくれと言われていてな。流石に、約束を破るわけにはいかんからその金額で問題ないぞ。」


「それじゃあ、この剣にしますね。」


 俺は懐にしまった金袋から、金貨十枚を出してドワーフのオッサンに渡す。

 オッサンは少し悔しそうにしていたが、代金を受け取った。


「小僧、また金が溜まって用入りになったら来な。他にもいろいろな武具もあるし、オーダーメイドもやっとるからな。」


「その時は、またお願いしますね。」


 俺は礼を言いながら、剣帯に買った剣を挿して店を後にした。

 店を出た後、ハンマーが扉に突き刺さっているのを思い出したが、「まあいっか」と小声で言いながら城へ戻って行く。




 店を出た時には当たりは既に暗くなっており、街の所々で多くは無いが街灯の様な魔道具が光り、道路薄っすらと照らしていた。

 周りの店は鍛冶屋街と言う事もあり、流石にどこの店も閉まっており、通りには人通りが無くなっていた。

 通りはある程度照らされているが、脇道などはかなり薄暗く少し危なそうな雰囲気がする。


 だが、料理のレシピの代金と、その代金でレア物の剣が買えたこともあって、俺はほくほく顔で王城への道を歩いていく。

 先ほどの店は城壁の近くにあった為、王城へ戻るには少し距離がある。

 

「ん~結構遅くなったな。少しショートカットしていくかな。」


 来た道をそのまま戻るとなると、城まで行くのに教会経由してから北区に入り、そこを抜けて城に向かうルートになってしまう。

 そこで、中央に戻るのではなく、西区と北区を直接繋ぐ門に向かいショートカットすることにしたが、道順などは全く分からない為……直線で進むことにした。

 勇者の身体能力を駆使して屋根に飛び乗り、ジャンプしながら門へと跳ねて行く。

 

 なにか黒い人影の様な物が、建物の上を跳んでいく異常な光景を目撃した人々が、衛兵詰め所に悪魔が城に侵入しようとしていると詰め掛け、後々シクラはこってりと絞られるの事になる。


 

「これはいいな。誰かにぶつかる心配はないし、なにより早く移動できるな。ん? 何か聞こえた? 」


 薄暗い屋根伝いを飛び跳ねながら走っていると、何処からか小さな悲鳴のようなものが聞こえて立ち止まる。


「空耳かな……いや、聞こえる。」


 しばらく立ち止まっていると、やはり悲鳴が聞こえて来たので、悲鳴がした方へ急ぎ走って行く。 


 声が聞こえてきたのは、城壁近くの街灯のない路地のようなところで、その場所だけ少し明るくなっていた。


「いったい何が起こっているんだ。」


 近くの屋根から悲鳴が聞こえてきた現場を覗いてみると、ガラの悪そうな風貌をした男に囲まれた数人の子供がいた。

 中高生位の子が二人に、小学生位の子供が三人が絡まれている様だ。


「おら、さっさと捕まえて引き上げるぞ。」

「ほらほら、もう逃げ場はないぞ。さっさとおじさん達につかまって奴隷になっちまいな。」

「うひひひ。なあリーダー、うっぱらう前に味見してもいいよな。どうせ売られたら、そっちの方に使われるか、死ぬまで働かされるだけだしさ。」

「好きにしたらいいが……壊すなよ、商品価値が無くなったら意味がないからな。」


「捕まってたまるか! お前らみたいなゴロツキなんて怖くない! 」

「カウ、早まって先に手を出すなよ。」

「わかってる! クリスこそ、相手を殺すなよ! 」


 子供の二人が、ゴロツキに武器を構えて牽制している。

 カウと呼ばれた子はこん棒の様な物を、クリスと呼ばれた子はナイフの様な物を構えている。

 それに対してゴロツキは、そもそもの体格の差もさることながら、腰には剣を持ち手には槍位の長さの棒を持っている……どう見ても勝てないだろうな。

 それに、二人の子供が守っている子供が三人程おり、二人の背に庇われる様に居るが、どう見ても戦力としては扱えないレベルだろうな。


 ゴロツキ共は徐々に距離を詰めて行き、子供たちを行き止まりの路地まで追い詰めていく。

  

「そろそろ諦めてくれると嬉しいんだがな、お前らも怪我はしたくないだろ。」


「誰がお前らなんかに捕まるか! かかってこいよ、ぶっ飛ばしてやる!」


「おお、怖い怖い。さっさと片付けろ。」


 ゴロツキのリーダーの合図で、ゴロツキ共が距離を詰めていく。

 状況もわかったことだし、そろそろ助けてあげようかな……そうだ、あれも準備しておこう。


「お前ら、そこで何をしてるんだ。」


 ゴロツキ共の後ろに飛び降りて、すっとぼけながら話しかけてみる。


「ああん? なんだてめぇは。こっちは取り込み中なんだ、さっさとどっかに行っちまいな。」


「助けてくれ! こいつら、違法な奴隷狩りのゴロツキだ! 」


「はあ? 何言っているんだお前ら。さっさと家に帰ってこないから迎えに来てやったのに、兄ちゃんは悲しいぞ。」


「だ、誰が兄ちゃんだ! 俺には、お前みたいに兄貴は居ない! 」


「夜遊びしたいのはわかるが、流石にもう遅いから早く帰るぞ。」



 ゴロツキが急に演技を始めたものだから、吹き出しそうになるのを堪えるのが大変だ。

 さっきまでの状況を見ていないと思っているから、こんな嘘を言っているのだと思うけど……やばい、笑いそう。

 

「な、なんだ。子供たちが夜遊びしているから迎えに来ていたのか。それなら、俺も手伝ってあげよう。家族が言うより、他人に言われた方が子供たちもわかってくれるんじゃないか。」

 

「い、いや、大丈夫だ。これは家族の問題なんだから、俺達で処理をする。」


 断るゴロツキのリーダーを無視して、俺はずんずん歩いて行き子供たちの前まで進んでいく……まあ、今の状況を見て家族のいざこざだと言われても、どう考えても可笑しいんだけどね。

 子供たちは俺に対しても経過しているようで、武器を突き付けて牽制してくる。


「気にしなくていいって。さ、みんな流石に周りも真っ暗だから、そろそろ家に帰った方が良いんじゃないかな? 」


 ゴロツキ共には見えない様に、子供たちに合図を送ってみたが、カウと呼ばれた子はわかっていない様だが、クリスと呼ばれた子は俺が何をするか分かったようで小さく頷いた。


「おいに、いい加減にしろ。てめぇはさっさと帰りやがれ。」


「そうですか、まあ家族の問題なら仕方がないですね! 」


 俺は振り向きざまに、隠し持っていたスマホのカメラでゴロツキ共の写真を撮る……フラッシュを焚いて。

 薄暗い路地に慣れた目でフラッシュを見つめてしまったため、ゴロツキ共は目を手で覆いながら後ずさっている。


「掴まれ! 」

  

 俺は手を広げて子供たちを抱えるようにして、子供たちが掴まったのを確認してから屋根まで飛び上がった。

 子供たちは恐怖で引きつった様な声がしたが、どの子もしっかりと俺を掴んで離さなかった。


「め、目がちかちかしやがる。」

「ちくしょう、あの野郎どこに行きやがった! 」


 何やら喚いているが、流石にここまでは追ってこれないだろうから無視しておこう。

 見た感じ、子供たちはどこも怪我をしていない様だが、一応確認しておこう。


「君たち大丈夫かい。どこか怪我とかはしていないかい? 」


「私は大丈夫だが、カウが一撃喰らってしまった。」


「大した怪我じゃねぇから気にするなよ。って、やめおろって。」


 カウは傷を隠そうとしているが、クリスがカウの服を捲し上げて打たれた部分を露出させる。

 殴られた部分が青痣になっており、見ていて痛々しい。


「馬鹿だな、思いっきり怪我してるじゃない。そんなので、よく強がりが言えたわね。」


「うるせーな。こんなの怪我の内に入らねぇよ。」


 なんにせよ、怪我していると痛々しいからさっさと治してあげよう。


「ん~こんな感じだったかな。『アドバンスドヒール』」


 俺の回復魔法が発動して、カウの青痣は不気味なほど綺麗に消えて行った。

 うんうんよかった、しっかりと魔法が発動してくれて。


「兄ちゃんスゲー! 全然痛くないよ! 」


 子供たちは、カウの痣が消えた場所を見たり、つんつん突っついたしている。


「またさっきみたいに襲われてもあれだから送って行くよ。みんなどこに住んでのかな? 」


 子供たちは、南区の外れにある孤児院の住んでいるようで、遠回りになるけど皆を送って行くことにした。

 

 屋根から降りる際に、子供たちを一人ずつ抱えて飛び降りたんだけど、きゃーきゃー言いながら楽しそうにしていた。

 子供たちに好かれたのか、子供たちと手をつなぎながら養護院に向かう。

 少し気になったので、なぜあんなことになったのか聞いてみよう。

 

「そう言えば、何でこんな時間にあそこに居たんだ? 」


「あー、チビの一人が遊ぶに行ったまま帰ってこなくて、探していたらあのゴロツキに追われていて、さっきの状況になったんだ。」


「ま、その時に慌てて襲い掛かって、誰かさんは反撃喰らって悶えてたけどね。周りをよく見ないからそんな怪我をするんだよ。」


「うるせーな、最後には助かったんだからよかったじゃねぇか。」 


「このお兄さんが居なかったら、皆奴隷にされてここにはいなかったんだよ、あんたはもう少し考えて行動しなさいよ。フォローするこっちの身にもなりなさい。」


 この後二人は、昔の小さなことまで持ち出して、養護院に着くまで仲良く喧嘩してた。 


 騒がしい年長組二人と、おとなしい年少組三人を連れて養護院に近づくと扉が開き、中から見覚えのある女性が出て来た。

 

「あなた達、こんな時間までどこに行ってたの。クリスにカウも騒がしいわよ、静かにしな……え、シクラ様!」


 そこに居たのは、驚いた格好で固まったカトレアだった。



筆が遅くて、毎回ギリギリになってしまう転々です。

書いている途中でここはこうしようなど変更していると、いつも遅くなってしまいます。

何故か最後に養護院から出て来たカトレア、彼女と養護院にどんなつながりがあるのかは、次回をおたのしみに。

さて、次回の更新も月曜日に更新できるかと思います。


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