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召喚失敗勇者の異世界放浪旅  作者: 転々
一章

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18/220

勇者の金策

 シクラ様が悪魔と戦闘になって昏睡状態になったと言われ、教会から馬車を飛ばして大至急王城へ向かった。

 見た感じ、どこもおかしそうなところは無いが、既に数日起きていないとの事だ。

 魔法で鑑定した結果、全身の疲労と巨大な魔力を操ったことによる、魔力的な損傷と魔力枯渇を起こしていることが分かった。

 ほとんど治りきってはいるが、回復に自信の魔力を使用している為、回復した魔力をすぐさま使用し枯渇状態から回復できないのだろう。

 これは、外部から治すことが出来ないので、寝ているしか出来ないが……状態を見るに数日で起きてくださるだろう。

 それにしても、魔法が使えなかったシクラ様が魔法が使えるようになって、更に悪魔まで倒せるとなると、勇者として名前を出しても問題なさそうですね……まあ、私の一存ではできませんので、国王陛下に相談してからになりますけど。

 流石は、セクメトリー様。何かあった際には、やはり奇跡を起こしていただけるのですね。

by シュレル



 シュレル

 眩しさで目を覚ますと、窓の外に朝靄の上から朝日が見えていた。

 

「おはようございます、シクラ様。今日もいい天気ですね。」


 窓の反対側から声を掛けらたが、ここ最近毎日同じ声の持ち主が、俺の目覚めと同時に声をかけるので、振り返らずとも誰かわかっていたが、いつものように顔を声がした方に向け受け答える。


「おはよう、アイリス。わざわざ毎朝来なくても良いんだよ。」


 そこにはいつものメイド服を着たアイリスが、いつもの笑顔で立っていた。

 まあ、実際に元の世界の様な某アキバ系メイド服ではなく、ワンピースに多少の装飾がされただけのものだが、この世界ではこれが一般的なメイド服になるそうだ。

 この世界に長居するのであれば、魔改造したメイド服をアイリスに来てもらいたいが、今の俺では技術も予算も無いのであきらめている。

 

「シクラ様、これは私が好きでやっているので、お気になさらないでください。」


 元々献身的だったアイリスは、悪魔と戦闘して城に戻ってきてから、前にも増して俺に対して何かしようとしてくる……まあ、悪魔との戦闘後、俺が意識を失ったことが原因の様な気がするんだけどね。 

 悪魔との戦闘後に意識を失った俺は、疲労と多大な魔力を操ったことによる後遺症で、数日間全く目を覚まさなかったのだ。

 城に戻って、アイリスやアルルさんの魔法でわかってはいたが、司祭のシュレルにも来てもらって確認して、疲労は魔法で回復できるが、魔法使用の後遺症は魔法での治療は余計に悪化して、時間が経てばそのうち起きるとの事でいつもの部屋で寝かされていた。


 ただ、目が覚めるはずと言われても、実際に目が覚めるまではかなり皆動揺していたそうだが、俺が意識を取り戻すと国王様から司祭や側付きのメイド達まで、みんなでお見舞いに来るもんだから恥ずかしかったわ……まあ、心配してくれてたんだろうから良いんだけどね。

 流石にトラオウさん達は、城に入る事が出来ないので、お見舞い品などをヒューズさん経由で持ってきてくれた。


 意識は戻ったんだが、体の方が極度に酷使と疲労の為に、体を少し動かすのも重労働でアイリス達に手厚く看護されちゃいました。


 別に変な事は一切なかったからな。


 アイリスを筆頭にメイド達が、動けない俺の着替えさせようとして下着をとろうとしたので、着替えは無理を言って執事の人にお願いしてやってもらった。

 アイリスは本気だったかもしれないけど、カトレアは完全に遊んでいた気がする。

 意識が戻って、二日目くらいからは体を拭くくらいの力は戻ってきていたので、初日以外は玩具にされなくて済んだ。

 まあ、食器を持つと手が震えるもんだから、恥ずかしながら食べさて貰ったりもしたんだけどね……何故か毎食食べさせる人が変わったけど。

 


 そして、悪魔との戦闘から十日が経ち、ようやくまともに動けるようになった……動けると言っても、日常動作に問題が無い程度で、訓練や戦闘が出来るようになるには、まだまだ時間が掛かりそうだ。


 俺は身動きが取れない間に、アイリス頼んでこの世界のいろいろな書物を読ませてもらった。

 この世界の地理や歴史、風土など、今後の事を考えて色々調べておきたくなった。

 

 この世界ではまだ測量などが行われておらず、だいたい何日歩くとかでしか距離がわからずおおよそでしかないが、徒歩が時速五キロメートだとすると、ウグジマシカ国の首都まではおよそ千キロ弱と言ったきょりになるみたいだ……だいたい、東京と博多位の距離になる。

 ただこの日数、旅慣れた商人が歩いた場合の日数なので、素人の俺が歩けば更に日数がかかることが予測される。

 この距離を、徒歩で……しかも旅道具を持って歩いて行くのはかなり厳しい気がするんだけど、現状持ち合わせのお金では馬車どころか、馬一頭すら買えないので仕方のない話ではあるんだけどね。


 それに、装備に関してもどうしたら良いか悩んでいる。

 野営の訓練に行く際の剣は、実はヒューズさんの私物だったので、返却したのでぶっちゃけ武器が無い状態なのだ。

 勇者なんだから国王様に言えばもらえるんじゃね……とも考えたけど、流石に厚かましい気がして言えていない。

 だって、安物の鋳造鉄の剣ですら、金貨一枚は最低するんだよ! 騎士団の給金十か月分もする高級品なんて欲しいとは言えなかった。


 そこで問題になってくるのは、どうやって旅のお金を貯めるかと言う事になる。

 この世界で基本お金を稼ぐには、騎士団のように国に仕えるか、商工ギルドに加入して店を構えるか、冒険者として魔物退治や調査などの依頼を受けるか、迷宮などで魔物や古代の遺物等探索して収集品を売るか、農業や狩猟で稼ぐしかない。

 

 この世界では、衣料品や食料など生活に必要な者は基本激安なのだが、剣や魔道具などはかなり高額なものが多く、その素材となる魔物素材はかなり高額で取引される。

 ただ、王都周辺ではそれ程強い魔物が出現することは無く、運よく現れて翼竜のワイバーン程度との事だ。

 やはり、魔物の素材を手に入れるのが一番手っ取り早くお金稼ぎが出来るが、周辺では高額なお金になる魔物はおらず、先日行ったマヤシカの森の奥に生息する魔物で、ハルさんに注意されたブラッドウルフやクイーンビーの素材ならかなり高額になるそうだけど、流石に逃げるように注意された魔物に闘いに行くのは無理そうだ……それに、今は万全な状態ではないので、戦闘は極力避けたい。


 まあ、そこで少し思いついたのが、元の世界にあったものをこちらで再現出来れば儲かるのでは、と言う事で色々な書物を集めてもらっていたのだ。

 

 王宮での食事は、どれも元の世界の料理に近いものではあったけど、一般酒場などではぶつ切りの肉や煮込んだスープなど、そこまで手が込んでおらず煮る、焼く、炒める程度の物しか出て来ていない。

 甘味等は、一般には果物と蜂蜜しかなく砂糖は殆ど流通していない無いようだったので、簡単に作れそうなデザートは国王達に、家庭料理の様な物は一般の食堂にレシピを売ってお金にしようと思う。


 過去の勇者達は、魔王討伐してほとんど帰還しているので元の世界のレシピや調味料はかなり少ない様だが、味噌や醤油、みりんや酢などはこの国にもありよっぽどの物は作れそうだ。


 とりえずは、アイリスに国王様から許可を貰い、王宮の調理室で食材の物色を始めると……でるはでるは、色々なものに使えそうなものが。


 王宮の調理室には、魔道具の大型冷蔵庫と冷凍庫が置いてあり、様々な食品が並べられていた。

 料理人に聞いて、一応同じようなデザートが無いか確認するも、俺が作ろうとしているデザートは無い様だ。


 簡単に作れる、プリン、あんこ、きな粉物をとりあえず作って実食してみる。

 プリンは、卵の味が鶏と違い結構濃くて少し手間取ったが、それなりに美味しいものが出来た。

 あんこときな粉は失敗のしようが無いくらい簡単だったので、問題なく作れたが……実はこの国にはもち米が無かったのだ。

 仕方がないので、普通のコメを粉にした上白粉を作ることにして、みたらし団子等を作ってみた。

 どれもそれなりに美味しく、レシピを料理長に渡し国王達に食べてもらってから、その辺りの話をしようと思う。


 国王へのデザート進呈は終わったので、次は街に出てトラオウさん達が泊っている宿屋へ向かう。

 服装は、いつも着ている貴族っぽい服装のままで良いとの事なので、その服装で歩いてくのだけど周りから微妙な視線が送られてくる。


 トラオウさん達が泊っているのは、トラオウさん達と宴会をした酒場の二階で、陽光宿と言う名前の宿だ。

 扉を開けると、チリリンと扉に付いている鈴が音がして、酒場の中の人が入り口に視線を向けてくるが、そのうちの一団が俺に向かって手を拱いている……白虎のみんなだ。


「ようボウズ、もう体の方は大丈夫なのか。というか、なんて格好してるんだ。」


「お久しぶりです、白虎の皆さん。まだ戦闘とかはできませんが、普段の生活には問題ないくらい回復しましたよ。この格好は、城では普段着みたいなものなので気にしないでください。それで、例の件はどうですか。」


「せっかちなやつだな、おーい、おやっさん! 」


 トラオウさんが大声をだして厨房の方へ声をかけると、奥から熊みたいなガタイの良い人が現れた。

 

「なんだい、追加注文か。それなら、ウェイトレスに言ってくれればいいものを。」


「いやなに、この間話していて異国の料理を教えてくれる人を連れてきたんでな、その辺の話をしようと思ってな。」


 熊みたいなオッサンは、俺を一瞥して少し眉をひそめた。


「こんなお貴族様が料理を教えてくれるってのかい。言っとくけど、うちには普通の食材しかないからそんなに難しい料理はだせないぜ。それに、うちは酒場だから上品な料理も必要ないぞ。」


 まあ、普通は貴族が来たらそう思うのが当たり前だよね……俺は貴族じゃないけど。

 とりあえず、厨房に案内してもらって、今から作る料理の説明をしていく。


 今回のレシピは、餃子と唐揚げと天ぷらだ。

 どれもこれもお酒に合うと思うし、作るのもさほど面倒ではない。


 小麦粉にお湯を混ぜて、生地をこねてまとまってきたら、打ち粉を引いて伸ばすだけで、餃子の皮が完成する。

 これに、豚肉ミンチ等の具材を入れて皮を閉じて、あとは焼けば焼き餃子、スープにしたら水餃子の出来上がり。

 鶏肉に、小麦粉付けてあげるだけ……以上! 唐揚げ完成です。

 卵を入れた容器に、小麦粉と少量の片栗粉を入れて水で溶くと、てんぷら粉の完成だ。

 後は何でも揚げてみて、美味しければ成功だ!


 とまあ、簡単に出来そうなレシピを店主に伝えて、実際に作って見せる。 

 

「餃子が少し面倒だが、他は簡単だな。ただ、油を大量に使うのが少し厄介だがな。あとは味次第だな。」


 俺が作った、簡単餃子たちを店主が食べる。

 タレは、醤油と酢を使ったタレだ……唐辛子が無いので、ラー油を作ることが出来なかった……あと、胡椒もないんだよな。

 

 店主が、俺が作った料理に手を伸ばし食べ始める……あれ、何も言わないな。

 厨房は、店主が食べている食器の当たる音以外せず、なんか微妙な空気が流れている気がする。


「金貨十枚でどうだ。」


「き、金貨十枚ですか!」


 おお、やばいな。

 元の世界の料理を教えただけで、金貨十枚とかぼろ儲けもいいとこだ。


「おやっさんいいのか? そんな大金勝手に決めて、奥さんに怒られるんじゃないか。」


 トラオウさんを一瞬ギロリ睨むが、トラオウさんはまったく気にしていない様だった。


「あいつは関係ない、俺はこの料理はその位の価値があると思っている。」


「ありがとうございます。それではこのレシピをお納めください。」


 俺はさっき作った料理のレシピと、思った以上に大金で買ってもらったので、念のため作っていたマヨネーズのレシピも一緒に渡した……マヨネーズは簡単なのに、なんにでも合う良い調味料なんだよね。

 

 おやっさんも俺が追加でレシピを渡したのに気が付いたが、どうぞどうぞと言って差し上げた。


「そら、これが代金だ。また、面白い料理があったら教えてくれ、その時もまた良ければ買わせてもらう。」


 金貨の入った袋を受け取ると、ずしりと重みがありなにか量が違う気がして、失礼かと思ったけど中身を見てみると。


「え、金貨十枚以上入っているんですけど。」


 思わずおやっさんに声をかけるが、少し呆れた様な顔をされた。


「あん。さっきの料理のレシピが金貨十枚だろ。三種類……実際は四種類貰っちまったが、一種類金貨十枚って事だ。まあ、後々の投資だとでも思って受け取っておけ。」


「ありがとうございます。また、何かあったらお教えいたしますね。」


 おやっさんは、鼻をぽりぽり掻いていたが、周りの客たちがにやにやしていたため、さっさと奥に引っ込んでいった。


「白虎のみなさん、ありがとうございます。これで、ある程度装備も整えられそうです。」


「おうよ。まあ、この間の悪魔との戦いで助けられたからな、出来る限り手を貸してやりたかったんだ。まあ、想像以上の成果だったようだがな……あれって、そんなにうまいのか。」


 トラオウさん達と先日の戦闘での話や、さっきの料理の話をしていたらいつの間にか、辺りの日が落ちかかっていたので急いで城に戻ることになった。


 


 陽光宿を出る際に、奥から物凄い怒鳴り声と謝る声が聞こえてきたのは……まあね。



 因みに、国王達に出したデザートは好評で、交渉して旅立つ際にお金ではなく二頭曳き幌馬車を貰えることになった。


 お金と移動手段は手に入ったから、今度は一緒に行くメンバーをどうするか考えないとな。

いつも読んで頂きありがとうございます。

遂に次章が始まりました、今後もよろしくお願いします。


次回更新は、8/5予定です。

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