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召喚失敗勇者の異世界放浪旅  作者: 転々
第四章

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失敗勇者と夢幻大陸

 明日にはユピリルに着くことが出来そうだな。

 グランツはイザベルと共にユピリルの手前の村まで()()()()()()、トラブルに巻き込まれることなく到着していた。

 そもそもこの街道は基本的には散発的に弱い魔物が出ることはあるけど、盗賊の集団が出ることは稀だからな。

 あるとすると、ダンジョンや船便でかなりの希少品が発見されたとかの場合位だからな。

 ただまあ、今の俺達はある意味盗賊からのカモと言えなくはないが……それでも個人を襲うような盗賊は稀だろうな。

 グランツ達がカモ――というのも、イカザヤム街に行く際に捕縛した盗賊たちの報奨金と、あの騒動の報酬でかなりの金額をギルドから支払われているからだ。

 しかも二人旅で、何かあった際に対処がかなり難しいと言う事もある。

 だがまあ……ここまで来たら問題ないだろう。

 そういって、グランツは村で普通の宿の十倍の金額がする宿泊用の一軒家を借り、ユピリル到着に備えた。

 まあ、わざわざ一軒家を借りるのは皆と合流する前にイザベルとごにょごにょする為だったりすのだが。

 そのくらい必要経費だと、金貨がいっぱいの背嚢眺めつつ床についたのだった。





 好きでトラブルに巻き込まれているわけでないので、その事には抗議をしておいた。

 それはさておき、ユピリルに着いてからの事何故知っているか聞いてみると、ヒエン侯爵の諜報がその辺りの情報を集めて来ていたらしい。

 道中も様々な手段で情報を更新がされて、先日の事件のことまで詳しく知っていたとの事だ。

 一応ハルさんの知っている情報とすり合わせをしてみたんだけど、ダンジョン内で起こったことや俺がゲートに入った後の事以外は大体知っていた。

 ただ、アオイちゃんとチュンちゃんの事は何者か分からなかった――というか、突然現れてかなり困惑した報告書を出してきたそうだ。

 ただ、只人ではないとは気が付いたらしく、要注意人物として扱われていたらしいので二人の事も説明しておいた。

 

「……は? ボウズが居た世界の神様とその従者? それってかなりやばいんじゃないか?」


「やばいって何が? 」


「いやな、神様本人とその従者が居るって事はボウズよりも強いんじゃないかってさ」


 ハルさんの指摘は的を射ているが、この辺りは詳しく話すと色々問題がありそうなので、肩をすくませるだけで誤魔化しておく。


 多分単純な戦闘力であれば恐らくアオイちゃんの方が俺と同等ではあるのだが、チュンちゃんという神――本当は八咫烏だけど――が居ついているのはかなりの差になっているだろう。

 それに、アオイちゃんはチュンちゃんを守る際には実力以上の力を出しそうだしね。

 とりあえず、こちらに協力してくれている仲間だと言う事だけ伝えておいた。 

 

 ハルさんとの情報の摺合せは大体終わったので、今度は白虎の印南の事を聞いてみよう。


「それで、ハルさん達は今までどうしていたんですか?」


「あん? 俺達はボウズが居なくなった後、ヒエン侯爵から依頼を受けて周辺の遺跡やらなんやらの捜索をしていたぞ。まあ、少し前に呼び戻されてここに護衛として雇われたわけだがな」


 遺跡の探索とか中々面白そうな話ではあるが、ここで聞くと話が長そうなのでまた今度聞くことにしよう。


「護衛って事は……ヒエン卿がここに来てるんですか?」


 ヒエン=ミュラー侯爵は俺の侍女をしていたカトレアと、養護院であったクリス――クリスティーナの父親で、イオリゲン王国の重鎮だ。

 まあ、少し偉そうなのは貴族として当たり前なので仕方がないが、俺に対して変な対応をするような人ではなかったな。

 白虎全員を護衛として雇っているのでヒエンさん本人が来ていると思い、来ているのであれば話でもした方が良いかなと思っていたのだが――本人ではなく代理人との事だ。


「その代理人なんだが、今は領主の別邸に居るからボウズと顔合わせさせておきたいんだが、どうだ?」


 ヒエンさんが代理人に選んだと言う事は変な人ではないと思うので大丈夫だとは思うけど、鉄の盾の皆が集まってからの方が良い気がするな。


「良いですけど、明日辺りに他のメンバーもユピリルに着くと思いますので、それ以降でも大丈夫ですかね?」


「かまわない――というか、いきなりに会いに行くのは貴族相手だと失礼になるとか変なルールがあるから、誰か先触れを出すか元々日程を決めておかないと面倒な事になるからな」


 確かそんなことがあるって聞いた事があったな。

 身分を表すものなどは持っていないが、一応俺も仮初ではあるが子爵という爵位を持ってはいるから、その辺りは気を付けたほうが良いかもしれないな。

 少し面倒な感じがしてため息をついたが、ハルさんは苦笑いを浮かべながら肩を同意するように竦めていた。

 

 日取りが決まったら白虎の人が知らせに来てくれると言う事なので、今取って居る宿の名前を伝え店を後にした。


 ……ハルさんが遊んで行かないで良いのか? とにやけた顔で聞いて来たが、流石にパーティメンバーを待たせているのでと言って後ろ髪を引かれながらも宿に戻った。

 

 宿に戻った時には既に日は傾きだしており、通りを歩いているそこかしこにある露店などから良い匂いが漂ってきている。

 その匂いにお腹が反応しそうになっていたので、俺は足早に宿へと戻って行く。


 宿には食堂も併設していることもあり、建物内は既に食事の良い匂いが漂い、限界が近かった俺の腹の虫が鳴り出してしまった。

 急ぎ部屋へと戻るが、誰か入ってきた様子も無いので皆が泊っている部屋を周ってみることにした――が、ノックしてもどちらも返事が無かったので、まだ四人とも買い物から戻って来ていない様だ。

 仕方なしに俺は一人食堂に降りて、久しぶりに一人の夕食を楽しむことにした。


 食堂に入ると、席は粗方埋まっている程の盛況ぶりで空きがあるのか心配になってしまった。


「いらっしゃい! あっちの辺り空いているからどうぞ!」

 

 元気な給仕の子が、奥に空きがある事を教えてくれたのでそちらへと進んでいく。

 奥の辺りも結構埋まってはいたが、二人掛の席はまだ多少空きがある様子だった。

 俺は適当な席に着き、給仕に鉄貨を一枚渡しながら今日のおすすめとシードルを頼んだ。

 

 この世界の食堂は先払いが基本で、俺みたいに適当に頼んでも大体その金額分の食事を出してくれる。

 一応メニューには値段は決まってはいるが、識字率の低いこの世界ではこういったことが普通みたい。 

 それと大体と言うのは、その金額にはチップも含まれていて給仕給料にもなるからだ。

 ……だから給仕に偉そうな態度やなめた口をきくと――出してくれる料理の量が減ったりするのだ。

 まあ、これが出来るのはある程度流行っている店だけなのだが、ここは珍しい料理を出す店なのでかなり繁盛している。

 俺が教えたフライドポテトの影響もあるが、店主がそこから新しい料理を作り出しさらに繁盛しているのだ。


 しばらく待っていると、木のジョッキに入ったシードルと黒パンが二つと野菜入りスープが運ばれてくる。

 これはすぐに出せるものを持って来ているだけでメインは後で持って着てくれる。

 

「……いただきます」


 そして、一人さびしく晩御飯を食べるの……はずだったのだが。


 俺が黒パンをスープに浸して食べながら、後からきたメインの魚のフライ食べ終えて酒の追加をしようとした時、一人の男から声を掛けられた。


「また珍しいな、一人で食事とは。やっぱマリアに振られたのか?」


「ゲホッゲホッ――いきなり驚かせるなよクリス。マリアは新しいメンバーと一緒に買い物行っているだけだ!」


「わりぃわりぃ、ギルドの時でもそうだったがお前が一人で居るってのが珍しくてな」


 そう言いながら空いている俺の目の前の席に腰を掛け、給仕に酒とつまみを頼んでいた。


「っで、一体何の用だ? 昼間も様子がおかしかったし、わざわざ俺が泊まってる店の食堂にまで来るなんていくら道楽貴族様でもそこまで暇じゃないんでしょ?」


「一応俺も仕事としてここに来てるんだから道楽とは失礼だな。それと、その口調からして白虎から話は聞いているみたいだな」


 俺は小さく頷きつつも、少し真剣な眼差しでクリスを見る。

 彼もどうやら俺が何を言いたかったのかわかってくれたようで、小声で「後で少し場所を変えるぞ」と言って来た。

 流石にこんな人が多い所で話すような事ではないし、クリスもいつも通り振舞うために注文もしているのでとりあえず普通に食事をする事になった。


 食事を終えた後、一旦マリア達の部屋に寄ってみたがまだ帰って来てないようなので、クリスと少し話をしてくると書置きだけ残し宿を出る。


「それじゃあトマ二軒目に行くか~!」


「うぇ~い!」


 店を出ると上機嫌な感じで肩を組んでくるクリスに付き合いながら、上機嫌を装いつつ歩いて行く。

 そして、大通りを進みギルド横の路地に入って行き、何故か解体小屋へと向かって歩いて行く。

 解体小屋の正面の扉は未だ鍵がかかっておらずそのまま中に入るが、中はカウンターの所に仄かに灯が付いているだけで他は真っ暗になっていた。


「お、おい、ここで話をするのか?」

 

 人が居ない解体小屋で話をするのはわかるが、流石勝手に入って良いのか少し不信感がわきクリスに話しかけるが、彼は特に気にした様子はなかった。

 

「そうだ――っとその前に、おやっさんまだいるか!」


 彼の大声で奥からドタンバタンと物音がした後、誰かが駆けてくる足音が近づいて来た。

 そして、扉をバタンと勢いよく開いて出てきたのは、ギルドの解体小屋の主人のおやっさんだった。


「いってぇこんな時間になんなんだ――って、トマと……クリスか」


 なぜかクリスの名前を呼ぶ際に一瞬間があり、いつもより少し緊張している感じがする。

 まあ、ハンナさんが来ていた時と比べればどうって事なさそうだけど、やっぱりおやっさんはクリスの身分の事は知っているみたいだね。 


「おやっさんこんな時間に悪いね。今日はクリスとしてじゃなくてクリストフとシクラとして来たんだ」


 クリスの説明におやっさんは少し眉に皺を寄せたが「付いてこい」とだけ言って、前にハンナさんと話をした部屋へと案内された。

 おやっさんは前と同様に自分の席に座り、俺とクリスはソファーに腰を掛ける。


「悪いがこの部屋を使う時は俺が立ち会わなきゃいかんから、そこだけは了承してくれよ」


「ええ、わかっていますよ。それに、おやっさんが誰かに話を漏らす様な人でない事は重々承知していますから」


「ならいい。それにしても先代勇者の従者と今代の勇者が一体何の話をするのやら……」


 そう言いながらおやっさんは一応自分の書類仕事やり始めていたが、こちらにも注意を向けているのは見て取れる。

 それにしても、クリスが一体俺に何の話があるのやら。


「それでは改めまして、私はクリストフ=アイヒホルン。先代勇者アカリ=シクラ様の従者をしており、その功績でイオリゲン王国の子爵を頂いております」

 

 クリスは立ち上がり優雅に貴族の礼をしながら俺に改めて自己紹介をしてくる。

 いつものチャラチャラした感じは一切なく、物凄くキッチリした貴族の様な立ち振る舞いをしている――まあ、本当の貴族なのだから当然なのだが。


「そして今代の勇者トウマ=シクラ様、あなたにアカリ様よりご伝言がございます」


「またあいつは……どこまで先を見て動いているんだか。それで、伝言はいったいなんだ」


 あいつが何かしらの力で未来を予測して俺に色々させようとしているみたいなのだが、自分の元従者達まで使って一体俺に何をさせようとしているのかわからない。

 俺が今まであったことがある元従者はクリスを含めて三人だが、従者ではないが何か指示書のような物を持っているスターちゃんもその一員だろう。

 もしかしたら他の元従者達も今後俺との接触を図ってくる可能性はあるだろう。

 相手がクリスだし、この際だからしっかり聞いておくのもいいかもしれない。


「トウマ様にはユピリルから夢幻大陸に渡って頂き、そこで魔人達と会って頂きたいのです」


「夢幻大陸だと!? 」


 聞き耳をたてていたおやっさんが驚愕を浮かべながら叫んでいた。

 しかし、クリスが視線を向けると「すまなかった」と言って仕事に戻っていた。

 夢幻大陸とはまた興味をそそられる名前だけど、そこが一体どんな所なのか、そしておやっさんがなぜあれほど驚いたのか気になるな。

 まああれだ、わからないときは率直に聞くに限るな。


「その夢幻大陸っていうのはどういう所でどうやって行くんだ?」


「どういった場所というのはなんともお答えしづらいのですが、人種も少数居ますが殆どが妖精種と魔人種たちの大陸です。魔物や植生は少し違いますが、こちらの大陸とそれ程違うわけではありません」


 妖精種と呼ばれる者達は所謂エルフやドワーフ等の有名な物から、()()と付いていないゴブリン達もその一員だったはずだ。

 デミが付く者は魔物として扱われており、付かない物は妖精種として扱われている。

 違いはデミ系はダンジョンなどから自然発生する者達であり、妖精種として扱われる者達は人種と同様に繁殖して増える者達である。

 妖精種のゴブリンは見たこと無いので容姿はわからないが、知能が高く魔法に秀でた種族であると前に本で読んだ気がする。

 

「それと、夢幻大陸はユピリルから北へ船で向かいます……ただ、道中が少し問題があります」

 

「というと?」


「……大陸に行くまでの海路は外洋の為それなりに危険な魔物が出ます。そして、夢幻大陸の門番と言うのでしょうか……その者に許可を頂く必要がございます」


「魔物はまあたぶん大丈夫だと思うけど、門番の許可は簡単に取れるのか?」


 まあ、わざわざ俺に行けって言う事は何かしらの方法で許可を得ることが出来るのだとは思うのだけど、門番と言うくらいだから結構面倒な相手なのだろう。

 クリスは静かに目を閉じた後、深呼吸をしてから俺の問いに答える。


「許可が得れそうな者は既にこちらへ呼び寄せてありますが、なにぶん相手はマウントドラゴン――原初龍様が相手なので確実とは言い難いです」


「……っは?ドラゴン……まじで?」


 俺の問いに頷き返すクリスを見て、俺は頭を抱えたくなってしまった。

 ドラゴン、それはファンタジーを代表する最強種。

 そして、この世界では勇者すら凌駕する力を持つ真の最強種なのだ。


 



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