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召喚失敗勇者の異世界放浪旅  作者: 転々
第四章

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失敗勇者と白虎再び

 私は元々孤児だったそうだ。

 教会の前に目も見えぬ赤子を捨てていったらしく、拾い育ててくれたのがセクメトリー教の孤児院だった。

 孤児としての生活は厳しく辛いものだが、私を育ててくれて司祭とシスターの為頑張って孤児院の手伝いをしていた。

 年齢が十歳になったとき、司祭が孤児院の子供たちに魔法を扱う才能があるかを調べると言う事で、色々と試験のような事をしたのだが、私は才能を見出されその教育機関に行かないかと誘われた。

 始めは孤児院の皆と離れるのが嫌で駄々をこねていたそうだが「自分のような人を救える立場になりたくはないですか?」と説得され行くことにした。

 セクメトリー教の教育機関はキサナガ王国の王都に支部があり、そこでは朝から晩まで奉仕作業と勉学かなり厳しい日々だった。

 朝起きて教会や周囲の清掃から始まり、朝食はパンと野菜のスープと質素なもの。

 朝食が終われば聖典の音読や算術などの教養をした後、スラムの住民や孤児院の為の炊き出しを始め、炊き出しをしている間自分達の昼食は後回し。

 おなかを空かせたまま炊き出しをし、空き過ぎたお腹がならなくなった頃その余りものが自分たちの昼食になる。

 そして鍋などの清掃が終わる頃には日が傾き始め、そこから魔法と薬学の勉強が始まり夕食を食べて寝るだけの生活。

 私達見習いを世話をしていたのは壮年の司教だったが、見た目の好々爺と言った感じとは違いかなり厳しく教導をなされた。

 まあ、そんな厳しい生活が嫌になり逃げ出す子供たちも居たのだが、私は司祭に言われたことを思い出しつつ、一生懸命勉学に励んだ。 

数年が経ち、そんな生活になれた成人を向かえた十五歳のとき、私と同時にに来た子供たちは半数ほどにまで減っていた。

 そしていつものように炊き出しの片づけをしていると、シスターから子供達は司教礼拝堂へ集まるようにと言われた。

 朝の清掃時以外に行くことが少ないとこに呼び出され、一体何があるのかと首をかしげながら皆で礼拝堂へと向う。

 すると、そこには祭壇の前に司教と見慣れる人が立っていた。

 司教が各々席に着くように伝え、皆が席に着くと司教は他の人と一言二言話をして後ろへと下がり、司教よりも少し豪華な身なりの老人が前に出てきた。


「敬虔なるセクメトリー神の子等よ、よくぞ今まで厳しい教導に耐えてきた。明日からは皆は修道士と名乗る事を許された」


 初めは皆首を傾げていたが、司教に「お前たちは遂に一人前と認められたのだ」と言われて初めて気が付いた。

 その後、同期の者達はバラバラの所へと修道士として移動して行き、そこで一人前の修道士として働き今は皆司祭になっている。

 そして今……私だけ……いや、これからは私が神の信徒を増やすのです。


 元 セクメトリー教 司祭 フリーダー




 数日間ダンジョン下層の魔物を殲滅するかの勢いで訓練をし、グランツ達がユピリルに到着する予定に合わせて街に戻ることにした。


 フリーダー司祭は既に意識を取り戻し問題なく動くことが出来るようだが、未だセフトランドの残滓が残っているとの事でアメトリンの領域で療養する事になった。

 アメトリンの方は復活のが昨日であった為、回復したばかりで力を使わせるのもあれなので自分たちの足で戻ることになった。


 フリーダーは俺達に謝罪と感謝を物凄く丁寧に言われた。

 簡潔にまとめると、大変迷惑を掛けて申し訳ないことと、助けてくれたこと感謝を丁寧に……いや、大仰に言われた感じだ。

 とはいえ、フリーダーとも数日寝食を友にした仲なので、そんなことになるだろうとは予想は出来ていた。

  

 その数日間に、彼のこれまでの人生を聞く機会があった。

 まあ、彼自身も孤児院出身で拾ってくれた孤児院がセクメトリー教だったので、彼がセクメトリー教徒なのは刷り込みみたいなものだろう。

 そしてその信心深さの為か、セクメトリー教だったフリーダーは改宗してアメトリン教なる物を作るんだそうだ。

 そりゃまあ、助けてもらったんだから感謝をするのはわかるんだけど……あのんな性格のアメトリンを本気で祀り上げるのだろうかと心配になってしまう。

 ま、そこはフリーダー自身の決める事だから俺がとやかく言うつもりはない。

 ただ一言「頑張れ」とだけ伝えておいた。


「そろそろいいかしら?」


 そう言いながら出てきたのはガーネットだった。

 深紅のドレスを纏い、一見どこかの貴族令嬢のようにも見える彼女は、イオリゲン王国で悪魔として戦ったマフォルスという悪魔の真の姿だ。

 フリーダーはガーネットに謝辞をした後、俺に礼をしてから下がる。


「そろそろ行くのね」


「ええ、そろそろ戻らないとグランツ達がユピリルに着いた後待ちぼうけてしまいますから」


「そう。あなた達が居なくなるとまたここも寂しくなるわね」


 この領域には基本的にガーネットとアメトリンの二神が居る以外訪ねてくる人も居ない。

 いまは例外的にフリーダーが残るわけだが、フリーダーはアメトリンの教徒になるわけだし、そもそも人と神では立ち位置が違い過ぎてあまり話す機会は無いだろう。

 哀愁を漂わせながら話しかけてくるガーネットだが、本気で言っているわけではない様だ。

 その証拠に――


「アメトリンの体調が戻ったら、また神石であなた達の事を覗かせて貰いますけどね」


「……まあ、覗き見は程ほどにして欲しいですが」


「そんなの嫌よ。ここにはそれ以外の娯楽なんて無いし、アメトリンの面倒も見ないといけない私のストレスの発散方法を奪わないでよね」


 あまり良い趣味とは言えないが、一番の面倒事を抱えるのは女神(ガーネット)なのだから多少は良しとしよう。

 ガーネットと軋轢のありそうなベロニカさんだが、ガーネットも操られていたという事態を知った彼女はあの事を気にした様子も無くガーネットと話が出来ている。

 まあ、ベロニカさんが気にして居なくてもガーネットの方が気にしているようだが、そのうちお互い気兼ねなく話せるようになったら良いなと思う。

 ……とはいえ、神と人では立場――というか、存在が違うから難しいのかな?

 マリアでも初めて会った時は恐縮していたが、今ではかなりくだけた感じだからそのうち何とかなるかな?

 

 フリーダーとガーネットと簡単に別れの挨拶を済ませた後、一応回復したアメトリンに挨拶に向かった。

 アメトリンが居るのは数日前まで廃墟のようになっていた教会で、今は元通り修復され質素だが静謐な雰囲気が漂っている。

 中に入りアメトリンが居る最奥部へと足を向けると、ベットに横になっていた。

 今みたいに黙って眠って居れば深窓の令嬢の様な雰囲気があるのに、なぜ話し出すとああなってしまうのか。


「シクラ、誰がおバカな駄女神ですって?」


「そんなことは一言も言ってないし、思っても無いのに改変するな! というか、また勝手に俺の記憶を覗き見たな!」


「えへ!」


 また俺の記憶を読んであの素晴らしい世界の情報を引き出しやがったな。

 まあ、勇者達の知識から元の世界の知識を得たせいで微妙にオタクと化しているこの女神が、オタクであった俺の情報を盗むのはいつもの事ではあるのだが。

 俺はため息を付きつつ、アメトリンにも一応別れの挨拶をしに来たことを伝えた。

 

「ふーん、まあいいけど。これから街に戻るんでしょ、次はどこに行くのよ」


 俺が一応なんて考えたせいで微妙に不機嫌な雰囲気を出したが、直ぐに切り替えてくれたようだ。


「そうだよ。こっちに転移しちゃったせいでグランツ達と離れちゃったから、街で合流した後またどこに行くか相談するからまだわからん」


「……そうなのね。でも、最終的にはウグジマシカでタケミカヅチに会うのよね?」


「一応そのつもりなんだけど、どうやって行っていいのかわからないんだよね」


 アイリスがこの辺をうろついている事が分かっているし、イオリゲン王国経由で向かうにしても顔バレしそうだから難しそうなんだよね。

 あとは、グランツ達が嫌いな船での移動位しかないんだけど……そこは合流してから考えるしかないな。


「波乱万丈ね。じっくり神石で見させてもらうわ! あと、タケミカヅチに会えたら神石をを出して貰っていい? タケミカヅチの領域なら多分大丈夫だと思うから」


 二神そろってまぁ……趣味の悪い事で。

 それはさておき、タケミカヅチ神と会った際に神石を出すことを了承した。

 恐らく神同士で何らかの話し合いをしたいのだろうし、もしかしたら二神の解放も出来るかもしれないからね。

 俺達が話し終えた後、アメトリンとガーネットとチュンちゃんが何か話していたが、流石にその内容は聞いていないのでわからない。

 

 そして皆に挨拶をした後、俺達はユピリルに向かって移動する。


ダンジョン下層は昨日までの間にかなりの魔物を倒したのだが、無限リポップなのか今日もまだかなりの魔物が居るみたいだが――

 

「楽ちんだね」


「そうですが、あまり楽をし過ぎても……」


「良いんじゃない? アオイちゃん楽しそうだし」


 最近訓練で魔物を倒しまくっていたせいか、アオイちゃんは魔物を見るとバーサーカーの様に戦い始めてしまった。

 

「アハハハハハ! 雑魚が寄ってたかって集まって、チュン様は大人気ですね!で~も、チュン様に相手をしてもらうなんて百年早いですよ!」


「まあ仕方ないチュン。オレッチ位の神になると存在してるだけで魔物が寄って来るんだチュン。おい、あそこにもいるチュン」


「わっかりました! どりゃあぁあああ!」


 スズメ形態のチュンちゃんはアオイちゃん頭の上から指示を出し、魔物を掃討していく。

 ほぼ一撃で倒すので、解体する時間も無いからとりあえず俺が収納だけしておく。

 下層は殆どアオイちゃんとチュンちゃんペアが倒しながら進んで行き、流石に上層でアオイちゃんに暴れられると目立ちそうなので自重してもらった。

 それと……相変わらず彼女はステゴロの為、返り血なのでベタベタドロドロになっていたので、休憩ついでに綺麗になってもらった。

 まあ、こんな所で水浴びをする訳もなく、彼女は魔法で浄化していた。


 彼女はほぼすべての魔法が使え、近接戦闘もかなり強い。

 ……ある意味俺の上位互換の様な気がしてならないが、チュンちゃん曰く「勇者は勇者足り得るから勇者チュン。だからこそ勇者は強いチュン」と言っていた。

 俺は良くわからず首を傾げてしまったが、チュンちゃんはそれ以上教えてくれなかった。


 休憩を終えた後上層を経由してダンジョンを出た。

 まあ、上層は既に相手にならないレベルの魔物ばかりなので、目立つアオイちゃんには自重してもらって俺達がサクサク倒していった。


 ダンジョンを出た時妙に視線を感じるなと思ったのだが、その視線は全てアオイちゃんへと向けられていた。

 皆がアオイちゃんの容姿に――と言う訳ではなく、単にアオイちゃんが巫女装束と言う見慣れる服装だったからだそう。

 一部の男性諸君の視線がある部分に集中していたのは、まあ仕方のない事だろう。


 街に戻ったらもう少し目立たない服を買っておこうと思いながら、ダンジョン前の露店を抜け街へと急いだ。

 そして、日が陰りだしたころにはユピリルに到着する事が出来た。

 

 街に着いた後、まずは宿をとり寝床を確保する必要がるので、前に泊まった宿に顔を出すと祭りの時期ではないので部屋は空いているとの事だった。

 部屋は基本二人部屋か最上階になるので三部屋を借りて荷物を下ろした後、俺はギルドへと向かい他のメンバーはアオイちゃんの服や装備を買いに向かってもらった。


 俺は一人ギルドへと向かうが、相変わらず夕方のギルドは混雑して人でごった返していた。

 半年もこの街で滞在していたので、俺の顔を覚えている冒険者達もそれなりにいて話しかけてくる人も居る。


「ようトマ。他の街に行くって言ってたのにもう戻ってきたのかよ」


 俺に話しかけてきたのは赤髪の少し身長の低い男だ。


「なんだクリスか。まあちょっと訳があってな」


 見た感じ少し優男っぽい顔つきなのだが、実力はそれなりにある鉄級の冒険者だ。

 しかも、珍しい事にこいつは基本ソロで動いていて、たまに臨時でどこかのパーティにくっ付いて依頼を受けている。

 実は俺達も何度か一緒にダンジョンに潜ったことがあるが、かなり安定した戦い方が出来る実力者だ。

 それと、どこぞのお貴族様という噂もあるが……まあ、無いだろうなと皆口をそろえて言うくらい冒険者が板についた奴だ。


「そういや他の奴らはどうしたんだ? 」


「マリアは今買い物に行ってて、グランツ達は明日にはこっちに着くんじゃないかな?」


「ふーん。ま、いっか。そう言えばお前っぽいのを探している黒髪の女が居たけど、何か揉め事でもあったか?」


 おっと、多分アイリスの事だから知らないふりをして詳しく聞いておこう。


「いや、良くわからんが俺を探していたのか?」


「ん~どうだろう。シクラとか言う人を探してるって話だったんだが、容姿を聞く限りお前そっくりだったからユピリルに向かったって教えておいたんだけどな」


 アイリスがユピリルに向かっていたのはお前が原因かよ。

 と一瞬言いそうになったが流石にそれを言う事は出来ない。

 

「良くわからんな。それに俺はあってないからどこかですれ違ったんじゃないか?」


「ま、俺は関係ないから良いけどな。ああ、引き留めてすまんな。ギルドに用事があったんだよな」


 結局何が言いたかったのかわからないが、クリスは席を立ちギルドから出て行ってしまった。

 俺は肩を竦めた後、気を取り直して混雑するギルドの受付の列に並んだ。


 ギルドに来た理由は二つあって、グランツ達が街に戻った時俺達がどこに泊まっているかわからないだろうから、ギルドの伝言板を使わせてもらう事が一つ。

 もう一つは、アオイちゃんがあほみたいに倒した魔物の買取を解体小屋でして貰おうと思ったんだけど、流石にこの混みようでは明日にした方が良いかもしれないな。


 十数分並んだあと、職員に先の事を伝えると伝言板は良いが大量にあるならやはり解体明日にして欲しいとの事だ。

 なんでもどこかの冒険者が大量に魔物を持ち込み、おやっさん達解体職人が手一杯になってしまっているそうだ。

 伝言板に俺達が泊っている宿を書いた後、ギルドを後にしようとして扉に手をかけた時、ちょうど入って来る人とぶつかりそうになってしまった。


「おっとすみません」


「こっちこそ悪いな……ボウズじゃないか!」

 

「――え? ハルレクターさん?」


 俺がぶつかりそうになったのは、白虎の四人のうちの一人ハルレクターさんだった。


「久しぶりだな! 元気そうで何よりだ。っと、まあこんな所じゃなんだからあっちで話そうぜ」


 入り口で話す俺達に視線が集中していることに気が付いたので、場所を変えて話をする事にした。 

  

 いやはや、こんな所でハルさんと遭遇するとは思いもよらなかったよ。

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