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召喚失敗勇者の異世界放浪旅  作者: 転々
第四章

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召喚失敗勇者と次の旅路

 セクメトリー教徒の暴動が終わり、グランツとイザベルは冒険者ギルドで一息ついていると急に頭の中に声が響き渡った。

 その声はトマの声だった。 

 なんでも、ガーネット神の力を借りて念話で話しかけてきた。

 ある程度話を聞いたが、詳しい状況はわからない。しかも、何故かウユシウコダンジョンにいるらしい。

 そこで力を得たマリアとベロニカ、そしてアオイちゃんの訓練をしてからユピリルで合流するとのことだ。

 何故こんなことになったのかよくわからないが、とりあえずトマ達と合流することをイザベルに伝える。

 トマ達と合流する前にエリク達の様子を見に行って来たが、周囲を衛兵達に囲まれて教会近づくことができなかった。

 衛兵達に聞くと、養護院の子供達やその関係者は現在詰所で保護されたとのことだった。

 衛兵詰所に向かうと、エリク達は普通に保護されていた。

 二人に詳しく話を聞くと、教会のシスターを人質にとられ勇者以外教会に入れるないう指示をされており、その後衛兵達は説得しシスターを含め養護院の人たちは保護されたとのことだ。

 シスターはなんらかの毒薬で麻痺状態にされていただけだったので、衛兵の魔道士の解毒魔法により回復し今は宿直室のベットに寝かされている。

 そして二人から、トマ達が何かよくわからないところに入っていって心配そうにしていたので、俺たちが適当に作り話をしてトマ達とこれから合流するところと言うことにしておいた。

 養護院子供や関係者はとりあえず領主様が面倒を見てくれるとのことだったので、衛兵詰所を後にした。


 翌日、ギルドで今回の報奨金の受け取りや、前回の盗賊達の報奨金でかなりの額受け取った後ユピリルに向うのだった。

 






 ダンジョン特有の少し薄暗い通路に女性の叫び声と異常な振動が響き渡る。

 叫び声――というよりも、どちらかというと雄たけびに近いその声がするたび、この頑強なダンジョンが震えてい。

 それはダンジョン自体が脅えて震えているのではないかと思うほどの揺れだが、ダンジョンの主は今眠りについているのでそれはあり得ない事である。

 ただし、この事実を知る者の数は少ない。

 そして、再び雄たけびとともにダンジョンが揺れる。


「あはははは! この程度ですか? この程度で私の大事なチュン様に襲い掛かろうなど百年早いです!」


 少女は自分の身長の数倍はあるトロールを笑いながら拳で殴りつける。

 殴りつけられたトロールはそのままダンジョンの壁に衝突し、耳が痛くなるような騒音と振動をまき散らし息絶えた。

 

 トロールの腹部には大砲でも撃ち込まれたのかと思うほどの穴が開いており、殴りつけた少女の細腕でこのようなことが起きたというのは、なかなかどうして恐ろしい。


「フン! 雑魚のくせに向かってくるなんて馬鹿じゃないの?」


 拳についた血を振り払いながら鋭い目つきで、死骸と化したトロールを罵っていた。

 そして振り返るときには笑顔満開と言っていい顔つきで幼女へと駆け寄っていく。


「チュン様、害虫退治は完了しました」


「うむ。よくやったのじゃアオイ。しかし、まだまだ無駄が多いようじゃの。あの程度の敵であればもう少し力を抑えながら倒せるはずなのじゃ」


「わかりました! 次ぎはもっとスマートに倒して見せます! あ、あっちにまた違うのがいます」


 少女は幼女に言われたことを素直に受け入れ、即座に次の獲物を見つけていた。

 ウンウン肯く幼女を少女が抱っこをしてダンジョンの奥へとかけていった。  

 

「二人ともある程度狩ったら戻っておいでよ!」


 俺は少女たちに声をかけながらトロールを回収する。

 物理のみでトロールを倒すのは凄いのだけど、さすがにもう少し自重してほしいものだ。


「やっぱり彼女は凄いわね。さすがは神様に召喚された従者ってことかな?」


「それはあるのでしょうが、本当にもう少しうまく倒してもらいたいものですね」


 ちなみにトロールの損傷は腹部だけではなく、全身のいたるところがボコボコに殴られた形跡がある。

 通常トロールを物理攻撃で倒すにはかなりの労力が必要になり、その超常的な回復力と怪力でふつうは倒すのにかなり時間がかかる。

 のだが、彼女はモノの数秒で全身に打撃を加えて動けなくした後、渾身の一撃でトロールを倒していた。

 そして、彼女の放つ拳打は相手に直接触れずとも衝撃で相手を殴りつけることができ、その命中しなかったものがダンジョンの壁や床に穴をあけていた。


「まあ、彼女は俺と同じ世界から来たみたいだから、戦い方なんてわからなくて当然だよ」


「ふふふ、そうですね。シクラ様もまだこの世界に来られた当初、騎士団員と一緒に訓練をなされてよくへばっておいででしたね」


「いやまあ、あの時は普通の一般人だったからね」


 この世界の召喚された当初は今のような力もなく、ただの一般人だったので訓練についていくのはかなりきつかった。

 あの時は、へばったら魔法をかけられて強制的に回復させられ、そして再び訓練……とかなりスパルタで鍛えられたからね。

 そのおかげで、最低限の剣技や格闘術を覚えられたのだからいいのだけど。

 

 それはさておき、なぜ俺たちがダンジョンにいるかというと、まずはアオイちゃんの戦闘訓練をするということが一つ目だ。

 彼女は俺同様元の世界から召喚された一般人で、もともとは八咫烏を祀る神社の巫女だった。

 チュンちゃんがこの世界で顕現した際に、自分守る従者として彼女を召喚したのだ。

 彼女はもともと一般人、そのため戦闘は全くの素人なのだが、チュンちゃんの加護のおかげで俺と同程度の力を持っている。

 巨大な力に未熟な戦闘能力では今後問題があると考え、アメトリンの領域があるダンジョンで戦闘訓練をしているわけだ。

 

 一応その前に、俺達が教えられる戦い方などを神域で訓練してからきているのだが、彼女は剣の扱いが壊滅的にダメなため格闘での戦い方になってしまった。

 突きのように刃筋が関係ない状態であればいいのだけど、切りかかるとなぜか押し切るような感じになり刃がダメになってしまう。

 多分槍や鈍器系なら問題なく扱えそうだけど、流石に手持ちにないので諦めた。

 まあ、彼女の場合身体強化などを使用して格闘戦に挑むので、このダンジョン内の魔物であれば特に脅威になりえる魔物はいないので、チュンちゃんをオブザーバーに実践訓練をしている。


 そして、二つ目の目的は俺の従者となった二人の力の確認だ。

 マリアは従者になるまでも鉄級の冒険者で、冒険者の中でも中級から上級に当たる実力を持っているた。

 その彼女が従者になり得た力は単純な身体能力向上だけではなく、対象が自分だけではあるが魔法も使えるようになっていた。

 彼女はもともと大気中のマナを集める体質で、大量に集めることはできるのだが制御ができず魔法が使えなかった。

 しかし、従者となったことで制御方法を獲得したのだ。

 ただし、相変わらず魔法を使おうとすると大量にマナを集めてしまう体質なので完全に制御すことができず、自己に対する魔法以外は使用することができないようだ。


 彼女が使うことができる魔法は、自己身体能力向上や自己回復程度ではあるが、従者になった力とその強化能力を合わせると、元のレベルから比べると格段に強くなっていた。

 自己身体能力向上は、体に魔力を通してパワーやスピード、それに防御力を上げることができるのだが、これは魔力を使用して無理やり強化するもので、訓練初日に喜んで何度も使ったせいで翌日には全身筋肉痛で悲鳴を上げていた。

 まあ、そもそも彼女はそれほど筋肉質ではなかったから余計反動が大きかったのだろう。

 

 自己回復のほうは何とも微妙な能力で、自己回復というよりも自己修復力向上といったほうが正しいだろう。

 多少擦り傷であれば数秒で元に戻り、ちょっと切った(これは料理をしていて間違って切った)のも数十秒で出血が止まり、一分程度で傷口が綺麗にに治っていた。

 それ以上のことはさすがに検証することはできないのでわからないが、ベロニカさんと話した感じでは応用魔法より少し弱い程度の回復量ではないかとのことだった。

 筋肉痛もそれで治したのだが、自己修復能力向上なので治した瞬間にマリアの筋肉が急に引き締まって少し笑ってしまった。

 ただこれで回復魔法で治すのと違う効果があることが分かったので、訓練後にこれを行うことで急速にマリアの力が付いていっているようだ。

 ……まあ、副作用でとてもお腹が空くらしいが、そこは頑張って食べられる魔物を狩ってもらおう。

 

 ベロニカさんのほうだが、彼女の場合は身体能力がそこそこ上がったことと、魔法の威力が格段に上昇した感じかな。

 身体能力の上昇値はマリアよりも劣りはするが、建物の三階くらいまでは飛べるくらいの身体能力になっている。

 これに身体強化魔法を重ねることでそれなりに近接戦はできるようになったが、彼女はもともと魔導士なので上昇した身体能力を持て余し、上手く戦うことができないみたいだ。

 簡単に説明すると、避けよう少しバックステップすると数十メートル後方へ飛んでしまったり、相手の攻撃を受け止めようとして剣を振るうと想定以上に振り回し体勢崩れてしまうのだ。

 その代わり、彼女は魔法の発動が発動句のみで元々の詠唱魔法以上の威力が出るようになり、詠唱して魔法を使うと超越魔法クラスの威力で使うことができるようになっていた。

 そのため、彼女には元と同じように魔導士として援護担ってもらう形になった。


 アオイちゃん達と違う通路へ向かい、戦い方を試してみることにした。

 通路を進むと珍しく小型の魔物の群れと遭遇した。


「あれはゴブリンか?」


「ゴブリンもいるけど、ほとんどホブゴブリンとゴブリンナイトね。マジシャンやキングは居ないみたいだけど、ちょっと数は多そうね」


 言われて良く見てみると、上層にいたゴブリンより少し大きい固体のようだ。

 ホブゴブリンは俺と同じ位の大型ってだけで装備も普通のゴブリンと変わらないが、ナイトはホブゴブリンより小柄だが持っている装備は金属製みたいだね。


 ホブゴブリンは単体なら銅級でナイトは鉄級のになるが、今回のように複数いる場合はその数に応じてランクは変わる。

 索敵魔法で確認してみると、ゴブリン七匹、ホブゴブリン十二匹、ナイト五匹いる様だ。

 その事を二人に伝えると、冒険者なら魔導士が居る銀級と鉄級二、三パーティか、魔導士無しなら銀等級にパーティは欲しいとの事だ。

 これが騎士団であれば、騎士団の魔導騎士団混成中隊が出動するレベルらしい。


「……でも、今の私達三人ならいけるんじゃない?」


「そうですね。私が魔法で先制すればゴブリンは倒せますし、ホブゴブリンは半分までは減らせると思います。ナイトもある程度はダメージが入るので、シクラ様とマリアが突撃してもらえれば勝てる気がします」


 二人がやる気満々なので、力試しも兼ねて戦ってみることにした……まあ、結果は予想外の事態になったけどね。

 まだゴブリン達はこちらに気が付いていないので、ベロニカさんが上級多重石弾アドバンスドマルチプルストーンバレットをゴブリンの集団へ打ち込んだ。

 ベロニカさんは未だ超越魔法が使える訳ではないので、周囲の環境に合わせて一番威力が高くなる石弾を選択した様だ。 

 作り出された石弾二十個が風切り音と共にゴブリン集団へと迫る。


「グギャ? ギャギャグ!」


 異変に気が付き、迫りくる石弾に気が付いたゴブリンナイトの一体は、始め何が起こっているのかわからなかったようだが、危険が迫っていることに気が付き周りのゴブリン達にそれを伝えている様だった。

 しかし、ゴブリンは示された方向を見て固まり、ホブゴブリンは雄叫びを上げながら石弾突っ込んでいく。


「行くよー!」


 ゴブリン達が魔法に気が付いたので、マリアは石弾の後に続いて駆け出す。

 俺もそれに習ってマリアの後を追って行く。

 ……そして、石弾がゴブリン達に突き刺さって――いや、貫通している。


 突進して来たホブゴブリン達は魔法をそのまま受け、強烈な石弾の一撃でほぼ壊滅。

 その背後に居たゴブリン達は、貫通してきた石弾を受けたり倒れてくるホブゴブリンの下敷きになり、これも戦闘継続は不可能になっている。


 そして、ゴブリンナイトだが――残っていたのは最初に異変に気が付いた一匹のみだった。

 ゴブリンナイト達はホブゴブリンを盾にして魔法を防ごうとしていたようだが、貫通してきた魔法を無防備に受け、石弾が顔にめり込んだり腕や足が吹き飛んだりしている。

 ゴブリンナイトは他のゴブリン達よりも頑丈なのかまだ息をしていのだが、継戦出来るのはあの一匹のみの様だ。

 周囲の惨状に生き残っているゴブリンナイトから、怯えのような物を感じ取ることが出来る。


 が、しかし――


「っハ! 」


 その隙をマリアが見逃すはずもなく、二筋の煌めきがゴブリンナイトに迫り――ゴブリンナイトの首を刎ね飛ばした。

 その後、まだ息のあるゴブリン達に止めを刺し、戦闘は瞬く間に終了してしまった。


「ちょっとベロニカ、私殆ど何もしてないんですけど!」


「御免なさいね。思った以上に威力があったみたい」


「もう。これじゃ私の訓練にならないじゃない」


 二人はそんなことを言い合いつつじゃれ合っている。

 俺も流石にここまでとは思ってはいなかったが、そもそもゴブリンという柔らかい相手だったから想定以上の結果になったのかもしれない。


「まあまあ、初めてなんだから加減がわからないんだよ。魔物は他にもいるんだから次で試せば良いんじゃない」


「仕方ないわね。それならちゃっちゃと次を探しましょう」


 俺は再度索敵魔法で魔物を探し、その後何度か魔物と戦った。

 結果として、ベロニカさんの魔法は普通ではありえないほどの高威力になっており、基礎魔法で応用魔法クラスになり応用魔法が超越魔法クラスになったようだ。


 マリアはまぁ……力とスピードが上がったと言うことはわかったけど、その程度ということだな。

 ぶっちゃけ俺が魔法で強化した程度の強さなんだよな。

 まあ、その状態で俺が魔法強化でさらに強くできるんだから、それならかなり強くなれるから良いのかな?


 

 ある程度魔物を狩った後ダンジョンで最も安全なアメトリンの領域へと戻ったのだが、その後帰ってきたアオイちゃんが大量に収納魔法から取り出し、処理をするのがものすごく大変だった。


 たまに魔石持ちの魔物もいたのだが、魔石を打ち砕いてしまったりしていたのでほとんど素材回収でその日一日中が終わってしまった。

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