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超短編と詩とか童話

スポコメ娘のバレンタイン

主人公はスポーツ好きでちょっと愉快な女の子。

(スポコメ=スポーツ+コメディ)

好きな男の子の好きなチョコを知るために親友と協力して……。


狸塚月狂さま主宰「狸バレンタイン企画」

3000文字以内でシチュエーションコメディ的な何かを書きました。

 野球部のエースで四番のイケメン。それが私の好きな藤川くん。

 スポーツ観戦が大好きなだけの普通の女の子。それが私。


 さて、あと一ヶ月でバレンタイン。そろそろ作戦を考えなければいけない。

 私は親友のケイ子に協力をお願いすることにした。

 ケイコは昔から野球をやっており、野球部の男子と仲が良かった。


 私はケイコに、藤川くんがどんなチョコを好きなのか探ってほしいと頼んだ。

 ケイコは少し抜けているが、彼女にしかこんなこと頼めない。


 とはいえ、藤川くんは学校の休憩時間は男友達と話をしているし、昼休みも野球の練習があるので、話しかけるチャンスがほとんどない。

 限りあるチャンスを見計らって仕掛けなければいけないのだ。



 ◇ ◆ ◇



 授業の合間、珍しく藤川くんが教室の中で一人でいる。私はちょうど側にいたケイコに目配せする。


 頼んだケイコ! ケイコが頷いて藤川くんの席に向かう。


「ハロ~、藤川!」

 ケイコが藤川くんに話しかけた。私は藤川くんの右後ろあたりから彼らの話に聞き耳を立てる。


 ケイコが藤川くんに尋ねる。

「ねぇ藤川、甘い物って好き?」


 ケイコ、いきなりド真ん中にストレートを投げ込んだ!

 

 さぁ藤川くん、この球にどう対応する?


「う~ん、好きでも嫌いでもないかな?」


 見逃した! 藤川くん、この球を見逃した!


 これはなかなか困る回答だ。

 

 この二択は早めに回答してくれないと、正解の絞り込みができないじゃないか。


 私はケイコにサインを出した。人差し指をくるくると回す。


「別の方向性で行け」という合図だ。

 ケイコは藤川くんに見えないタイミングで小さく頷いた。



「じゃあ辛いものって好き?」


 いや待て待て! ケイコ大暴投だ!

 流石にバレンタインに辛いものをあげるやつはいないだろ!


「おう! 好きだぜ!」


 なんと藤川くん、この悪球に食いついた~!


 なんてこった……。

 気かつくと、藤川くんとケイコは近所の中華料理屋の四川風麻婆豆腐の話を始めてしまっている。

 そんなこんなでファーストトライは失敗した……。



 ◇ ◆ ◇



 その後、藤川くんに話しかけるタイミングが見つからず、一週間が過ぎてしまった。

 といってもまだ三週間ある。準備期間としては十分だ。


 お、藤川くんが一人になった。


 私は教室の少し離れた位置にいたケイ子に、サッカーの試合中の監督みたいに手を振る。

「上がれ!」というジェスチャーだ、


 ケイコも私のジェスチャーを理解して、藤川くんの席に向かう。

 さすが分かっている奴だ。


 さぁ、ケイコが藤川くんと話しはじめた。


「ねぇ、藤川、好きな色って何?」


 ケイコ、初級からかなりの変化球だ! 藤川くん、この変化を読めるだろうか?


「なんだよいきなり」


 そりゃそうだ、変化球にいきなり手を出すのは考えづらい。

 藤川くんは一度見逃してケイコの狙いを見極めることにしたらしい。


「いや例えば、黒とか白とか」


 よし良いぞケイコ! これはチャンスボールだぞ、藤川くん!


「う~ん、強いて言えば、白かな」


 打った、藤川くん打ちました! これはツーベースぐらいはある!

 ホワイトであればかなり選択肢が絞られたと言っていいだろう。


「へぇ……例えば白いお菓子とかどう?」


 しかしケイコ、欲張った! 二塁を回って三塁を狙っている!



「なんだよ白い菓子って、北海道の白い恋人とか?」


 あ~っと、スリーベース失敗。アウトです!


 二人の話はそこから各地の名産おみやげ品の話に移ってしまい、それ以上の情報は得られなかった。

 しかし、かなり前進したと言えるだろう。



 ◇ ◆ ◇



 そのまま次のチャンスが来ずに一週間が経ってしまった。

 バレンタインまであと一週間。さすがの私も少し焦っている。


 じっと機会を伺う私とケイコ。


 おっと、藤川くんが一人になったぞ。

 私が何も合図を出さなくても、ケイコが察して彼の席に向かってくれる。

 だいぶ慣れてきたな。


「藤川、どんなナッツが好き?」


 ケイコが内角をえぐる速球で勝負する。


「え、ナッツ? ピーナッツとかかな?」


 藤川くん、これをファウルボール!

 バレンタインチョコにピーナッツは少し違うのではないだろうか?

 いや、ないとは言い切れないが、もう少し豪華なナッツにした方が良いのではないか?


 私はケイコに向かって、両手で輪っかを作る。


「もう少し、コースを絞っていけ」の合図だ。


 私のサインにケイコが頷く。


「そうじゃなくて、特別なチョコに入れるようなやつよ」


 危険球だ! ケイコ! バレンタイン一週間前にこの質問は危険だぞ!


「あ? もしかしてお前バレンタインにチョコくれるの?」


 うぁっーと、藤川くん! すばやく反応! この危険球をかわした!

 立ち上がって、危険球を投げたケイコを挑発している。


「は、私が? そんなわけないじゃん!」


 いけない! マウンド上のケイコ、この挑発に乗ってしまった!


「違うのかよ?」

「違うよ!」

 これは乱闘に入ってしまいました! なんてことでしょう!



 ◇ ◆ ◇



 もうだめだ、バレンタイン当日になってしまった。授業が全て終わって、藤川くんが部活に行こうとしている。

 ここが最後のチャンスだ。私は彼を追いかけ、ちょうど下駄箱の近くで彼の目の前に立ちふさがった。


「ふ、藤川くん!」

「お、おぅ?」


「こ、これ……」

 私の手にはチョコが握られている。結局、ホワイトチョコのピーナッツ入りにしてしまった。小さなチョコがたくさん入っているやつだ。悩みに悩みぬいたが、これで正しいのか全く自信がない。


「……」

 ここで私は大変なことに気がついた。

 どんなチョコにするかばかり考えていて、渡す際の告白の言葉を何て言うかを全く考えていなかったのだ。

 事前対策無しでこの難局を乗り切れる訳がない。


 二人の間に沈黙が流れる……。


 気づくとケイコが、藤川くんには見えない位置でサインを出している。

 野球の応援のように手を口に当てた形。

「声出してけー!」

 ということだ。


 私は「分かってるよ!」と思いつつ、声がでない。


 それを見かねたのか藤川くんが、

「……これって本命と思って良いのかな?」

 と聞いてきた。



「お、大穴」

 と私は言った。


 いやいや、何を言っているんだ私、ここでボケをかましてどうする!


「あははは」

 藤川くん、ウケている。


「ぷぷぷ」

 ケイコも腹を抱えている。


 藤川くんは笑い終わると、

「顔が真っ赤だぞ」

 と言ってチョコを受け取ってくれた。



 ◇ ◆ ◆



 その後、信じられないことに藤川くんと私は付き合うことになった。

 「スコアブックをとって実況しながら観戦してるなんて、お前ぐらいだからな」と藤川くんは言っていた。

 我ながらかなりの変人なのだが、それだけ真剣に観戦してくれるということが嬉しかったのだとか……。

 そんな彼も変わり者だと思うが、「お似合いのカップルだね!」とケイコは笑って祝福してくれた。



甘酸っぱい恋愛話を読みたかった方へ 

申し訳ありませんm( )m


感想・ポイント評価お待ちしてます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 作品執筆ありがとうございます。早速エッセイに感想を書かせていただきますね〜
2019/01/31 12:58 退会済み
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