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9話 『デュエルストーリー ~世界一ピュアな2人~ 』の世界で勇者一行と改めて顔合わせをしたけれど巫女の設定まだ知らないので立ってるだけです

 巫女として勇者一行の前に出るという事で、この村の巫女の正装に着替えることになった。

 全体的に白いワンピースで、袖や裾にちょっとカッコいい感じの唐草模様がある。何となくファンタジー系によくある巫女ーって感じの衣装。どう見てもコスプレしてる感が凄い。

 あと手足にそれぞれ2,3個アクセサリーを巻き、ペンダントも2つ付けることになった。これ、地味に重い。

「みっちゃん……じゃなかった、ユイのやることは、オレとヴィルド間に立って頷いたりする。それだけ!」

「何か言ったりするってことは」

「無い無い。てかもし何か聞かれても答えられないだろ。オレかヴィルドのどちらかが対応するから」

 立ってるだけならまあ、大丈夫かな。

 さっきみたいに木から落ちるとか変なイベントじゃないみたいだし。さっきよりはマシか。

 でもなぁ、やっぱりこのイベントいるのかな。

 聖剣を渡すだけで終わるんじゃないかなー。

 リュシアンが私に惚れる?いやいや、もうあのエミリア見たら分かるよ。一欠片も可能性なんてあるわけないじゃん。

 超絶美少女が近くにいるのに、ぽっと出の外見普通な巫女に惚れるか?無理でしょ。

 リュシアンはめちゃくちゃイケメンだけど別に私の好みではないしなー。イケメンなら誰でもいいっていう性格だったらやる気出たかもしれないけど、そうでもないし。近くにお似合いの美少女がすでにいるし。

 顔合わせ終わった辺りで、これはリュシアン惚れるの無理だわってなってくれないかな。



 というわけで、勇者一行と顔合わせです。

 場所は村で会議とかやる大きな部屋……という設定の部屋です。

 部屋の内装も歴史を感じますが、この村はこのイベントの為に作られたそうなので、建設は恐らく築1か月に満たなそう。材料で誤魔化してるのかな?


「こちらが、聖剣の巫女のユイ様です」

 ヴィルドさんに案内されて勇者一行が部屋に入ってきた。

 真っ先にヴィルドさんが私を紹介すると、勇者一行の皆さんが驚いた顔をした。

「え、君が?」

「さっきの子が?」

「うそ、あの子が?」

 口々に色々言ってますね。

 分かる、分かるよ。普通巫女って言ったら可愛い子とか美少女を想像するよね。そこにいるエミリアみたいなね。

 普通な私で申し訳ないわ。人選の文句は隣にいる元裸男にね。

「あの!聞いてもよろしいですか?」

 エミリアが厳しい表情で元裸男に問いかけてきた。

「何故、魔王を倒せる聖剣が2つ存在しているんですか?確かに折れてしまった今、もう1つあるというのは助かりますけど、納得がいきません!それに、そのもう1つの聖剣は、本当に魔王に通用するのですか?私達が必死に真の力を発揮させた聖剣でさえ、折れてしまったのに」

 まあ、真っ当な質問だよね。

 確か勇者達は……魔王を唯一倒せる聖剣の真の力を発揮させるために世界中を旅してた……だったよね。

「エミリア殿。その件に関しては前に説明したはずですが」

 問われた元裸男ではなくてヴィルドさんがそう答えた。

「ええ、覚えています。古の勇者が使っていた聖剣は本当はここの村に封印されている、と。本来の力が強すぎるので魔王を倒した後に聖剣の一部を使って新たな聖剣を作った……でしたよね」

 へぇ、そういう事なんだー。

 私、聖剣の巫女だけど設定そこまで知らなかったわー。

「でもそれでは、私たちが死ぬ思いで真の力を発揮させた聖剣が偽物ってことではないですか!」

「エミリア落ち着け」

「だって、リュシアン……」

「僕もきちんと話を聞きたいと思っていたんだ。……ヴィルドさん、僕は僕たちが持っていた剣が偽物とまでは思ってはいません。だけど、何故今頃になって本物の聖剣が出てきたのか、それが知りたい」

 まあ、そうですよね。裏事情なんて知らないこっちの世界の人からすればそうだよね。

 まさか実はヒロインがビッチだったせいで急遽本物の聖剣が作られました、とか知るわけないしね。嫌だなぁそんな裏事情。

 でもなー、この聖剣について怒っているエミリアの様子見ても、ビッチには到底見えないんだよなぁ。

「……リュシアン殿。そなたらは、何故勇者と聖女がいるのかご存知ですかな?」

「え?」

「聖剣を扱うだけなら、勇者だけで充分。だが勇者だけでは本来の力は出せず、聖なる玉の力と聖女の祈りによって本来の力が戻る。……これは、何れ復活するかもしれない魔王に備え、古の勇者が未来を憂いて、我々の為に尽力してくださった結果なのです」

 勇者一行が戸惑うようにざわつき始めた。

「この村に封印されている聖剣は、強力すぎたのです。確かに魔王を倒す事には成功しました。完全消滅には至らず、長い年月をかけて復活してしまいましたが、それでも倒す事が出来たのは聖剣のおかげでございます」

「強すぎる聖剣なら、それをリュシアンに使わせれば良かったんじゃないですか」

「……リュシアン殿、そなたらは何度か会っているのではないですかな?古の聖女と」

 いにしえのせいじょ……あ、古の聖女ってあれか。配役がひーちゃんのあれか。

「はい。直接触れることは出来ませんし、会話できる時間も少なかったですが、何度も旅を助けていただきました」

「不思議に思いませぬか?遥か昔にいた古の聖女が、意思をもって姿を現し会話もできるという事に」

「それは……」

 そういやそうね。よくある残留思念だけ残して後世に伝える的なものって感じじゃなさそうだね。姿を現してアドバイスをするだけなら昔の意思を不思議な力で残したってことになりそうだけど、会話してるなら今もいるって事になるし。

「古の勇者が聖剣を入手した時、実は勇者にも聖剣を扱うことが出来なかったのです」

「……え?」

「古の勇者の一心同体ともいえる彼の想い人の古の聖女が、自らを犠牲にし、聖剣の力を抑え勇者が扱えるようにしたのです。そして今も、封印されている聖剣の中に聖女がいつづけているのですよ」

「なんだって!」

 なんだって!!

 危うく私も声に出そうになったから、誤魔化すように顔を背けたよ。聖剣の巫女の私が、さも初めて聞いたような驚いた顔をしてたらヤバそうだし。

「僕たちの前にたびたび姿を現していたのはどういうことですか!」

「古の聖女もまた、未来の人々を心配しているのです。本来なら聖剣から声も、姿さえも現すことはかないませんが……巫女なら、それが可能なのです」

 巫女ならね。……巫女……

 私じゃん!

 ちょっとまって何その設定!

 思わず顔上げちゃったじゃん。

 ほらー、皆こっち見てるよー。

「話は戻りますが、古の聖女が犠牲になっても尚、聖剣の力は強すぎました。魔王を倒した後、古の勇者はその巨大な力の影響により、二度と剣を握れぬ体になったと聞いております」

「なっ……」

「しかしそれでも、魔王はいつまた現れるか、もしくは復活するか分かりませぬ。その為、後世の人々の為に古の勇者は世界中の者たちの力を借り、聖剣の力の一部を使った新たな聖剣を作りました。ですが出来上がった当初、その剣は本物の聖剣と同様、凄まじい力で誰にも扱うことが出来ぬ仕上がりだったそうです。それでは古の聖女のような犠牲者がまた出てしまうと、さらに力を10つの玉に分散させ、長い時間をかけて人の手でも扱えるように玉の守り人の一族が呪いをかけ続けていたのです。勇者と、やはり勇者の想い人である聖女の祈りによって勇者が扱える真の力を発動できるように、と」

 設定もりもりだね聖剣。

 これのどこまでが後付け設定なんだろう……

「でも!折れたじゃないですか!やっぱり偽物だってことじゃないんですか!」

「折れるわけがないのですよ。本来ならば」

「は?!実際に折れてるだろ!」

「俺たちだって、そりゃ聖剣だけでしか魔王に傷をつけられねーからリュシアン頼みが多いのは申し訳なく思ってるが、それでもリュシアン1人だけ負担にならないよう、皆で協力して苦労し合ってここまできたんだ!それなのに本物は他にあるって、バカにされてるようなもんじゃねーか!」

 分かる。

 そう思うよね。

 折れちゃうような聖剣の為に世界中を苦労して旅して魔王に挑まされ、実は本物は他にありましたーって後で言われたら私だって怒るわ。

「偽物の訳がないだろう!本来ならば外に出ることが叶わない古の聖女を顕現させ、わざわざ勇者を導き助言をさせるようなことを、偽物の聖剣の為にするわけがない!」

 元裸男が、部屋に響き渡るようなはっきりした声でそう言った。

「申し遅れた。私はユイの兄でマリクという。勇者リュシアン、君が扱っていた聖剣は、まぎれもなく魔王を倒せる力を持った聖剣だった。折れるはずがない」

「しかし折れましたっ!!そのせいで、ランドリクが!」

 誰?

 ランドリク……ん?どこかで聞いた?いや、見た?ん?なんだっけ?

「それは聖剣のせいではない。折れてしまったのも、聖剣が本来の力を発揮できなかったためだ。それは」

「マリク殿。それ以上は」

「ですがヴィルド殿!」

「……こうなる定めだったという事だ」

 何?何?何か意味ありげな会話始めちゃったよ。

 ていうかこいつ誰だ!元裸男こんな口調じゃないじゃん!びっくりしたよ。一瞬姿かたちが同じ別人だと思ったわ。

 しかも私の兄設定……だと?

 なんか巫女の設定も、かなりもりもりの予感がしてきた。



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