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8話 『デュエルストーリー ~世界一ピュアな2人~ 』の世界で勇者との出会いのイベントは一応終わりました

 木から落下して出会うというインパクトあるファーストコンタクトは成功した。

 だけど、うっかり名前言っちゃった。

 金髪碧眼のさわやかイケメンが勇者リュシアンだって聞いてたけど、ここまで言われた通りな外見だとは思わなかったよ。

 というか予想以上のイケメンだったから思わず名前言っちゃった。

 初対面なのにこれはヤバいかもしれない。

 いや待て、呟いちゃっただけだから、聞き取れなかった可能性もある!

「何故、僕の名前を?」

 はいしっかり聞こえてましたー。

 やっちゃった感じかなこれ。

 どうしよう。何か言い訳した方がいいのかな。

 言い訳……思いつかない。

 思いつくほど事情が分からない!

 そもそもこの村だって聖剣を守っていた村で本物の聖剣がある……だっけ?言われたこと結構あやふやだよ!あんな立て続けに色々言われて一字一句覚えていられるか!

「君は……?これ、紙飛行機?」

「あ、それは」

 そういえばずっと持ってたわ紙飛行機。落ちた時もよく持って……あれ?なんか指と紙飛行機がくっついてて手が広げられない。

 しかも未だに私はお姫様抱っこされ中だ。

 確か、落下した後はここから離れる予定……だったはず。

 でもこの状態って、リュシアンが下ろしてくれなきゃ私は動けないんですけど。

 下ろしてくださいって言いたい。

 言いたいけど、初対面なのに名前言っちゃったし、言った言葉がまた余計な事だったらどうしようって不安もある。

 だけど下ろしてもらわないとどうしようもないし……

「ユイ様!」

 困っていると、小さい女の子が私の名を呼びながら駆け寄ってきた。

「あ!ヴィルド様お帰りなさい!」

 女の子は私の側まで来ると、くるりと勇者一行を案内してきたヴィルドさんの方へ向いた。

「うむ。……ところで、何故木の上にユイ様が?」

「わたしが飛ばした紙飛行機が引っかかっちゃって困ってたら、ユイ様が取りに行ってくれたんです。ユイ様!ありがとうございました!」

「え、うん」

 おお、さり気ない自然な会話っぽいけどしっかりと状況説明になってる。

 もしリュシアンとかから何をしていた?とか聞かれても、上手く状況説明できる自信がなかったから助かった。

 ヴィルドさんと話し終わった女の子がニコニコしながら振り返り、私の指にくっついたままの紙飛行機を持った。するとスルっと指から紙飛行機は簡単に離れて女の子が嬉しそうに受け取った。

 ……まあ、私が木に登った理由設定の小道具だったしね。女の子に渡すまでは手から離れないような小細工があったんだろうきっと。

「さ、ユイ様!あっちでみんな待ってるから行こう!」

「えっと……」

「リュシアン様。ユイ様を下ろしてくださいませんか?」

「そうよリュシアン。その子だって困ってるじゃない。下ろしてあげなきゃ」

 ん?なんかすごい可愛らしい声が聞こえたけど、私が今見える範囲にいる女の子は目の前のこの小さな女の子だけ。

 勇者一行の中にいる人かな。

 あ、でも確か、勇者一行の中の女性ってたった1人だったはず。

「……君は、ユイというのか」

「え?」

「いや、なんでもない。ごめんね、今すぐ下ろすよ」

 やっとリュシアンが下ろしてくれた。

 イケメンにお姫様抱っこされるって経験、貴重だったわ。でも無駄に緊張するしもういいや。

「大丈夫?ここ、髪の毛に葉っぱが絡みついているわ」

 また後ろから可愛らしい声がして、髪を軽く引っ張られた。

 なんだなんだ?いきなり髪に触るってびっくりするよ。

 反射的に振り返って、そして固まった。

 そこにいたのは、ふんわりした亜麻色の髪と、それと同じ色のパッチリした瞳をし、露出はあまりないのにそれでもスタイルが良いことが分かる格好をしている、ヤバいくらいめちゃくちゃ清楚系な美少女だった。

「ほら取れた。怪我とかはしてないかな?」

 葉っぱを指先でつまみながら、破壊力抜群なスマイルで微笑みかけられた。

 なにこの超絶美少女。声も可愛いとか完璧。

 まさか……いやいや、そんなことないよね?

 だって、あれだよ。この子どう見ても清潔感あふれる絶対いい子だよ。悪意が全然感じられない微笑みだよこれ。初対面から好感度限界値突破だよ。

「エミリア、髪をいきなり引っ張るのはないんじゃねーの?」

「おいガイ!ちょっと言い方キツイんじゃないか?エミリアさんはこの子の髪についていた葉を取ってあげただけだろ」

「バイロンありがとう。でもガイの言う通り、いきなりは良くなかったかも。絡みつきがひどかったから、強めに引っ張っちゃったかもしれないし……痛かった?ごめんね?」

 この衝撃を何と言えばいいのか。

 私は驚きすぎて何も言えなくなっていた。

 だってあの前情報だけだと、きっと外見が派手とか露出が結構あったりしてるんじゃないかとか、いかにもな男好きビッチな女性イメージでエミリアを想像すると思う。私はそういうのを想像していた。

 でも実際は清楚系超絶美少女。

 めっちゃイケメンな勇者リュシアンと並んでも全く遜色がないどころか、2人並ぶことで神々しさも感じそうになる。

 これ以上ないくらいのお似合いな2人だ。

 ……これ、エミリアがビッチっていう情報の方が間違ってるんじゃないかな?

「ユイ様。早く行こう」

 ぐいぐいと女の子に袖を引っ張られて我に返った。

 そうだったそうだった。2人に見惚れている場合じゃなかった。

 私は勇者一行にお辞儀をした後、先に走り出した女の子の後を追いかけた。

 女の子は私が後を追ってきているのを確認するかのように何度も振り返りながら走っていて、大きな屋敷の出入り口の前で立ち止まった。

「ユイ様。……勇者たちは着いてきてないから、ここからは緊張しなくても大丈夫だよ」

「あ、はい。えーっと……」

「わたしはヘレナ。巫女のお手伝いとかもするからよろしくね」

 ヘレナはにっこりしながら小さな手を差し出してきたので、私はその手を優しく握った。

「よろしくねヘレナちゃん。小さいのに随分しっかりしてるんだね」

「え?あー……そっか。忘れてるんだっけ。そっかそっか」

「ん?」

「後でひーちゃんとかが教えてくれるから大丈夫だよ!」

 何がだろう。

 まだ何かあるのか。

 いや、むしろまだきっと教えてもらってない事の方が多いね。

「このお屋敷でユイ様は過ごす事になるから、中を案内するよ」


「よ!みっちゃん……じゃなかった、ユイ!お疲れさん!」

「あ、変態」

「まだそれ言うのかよ!」

 ヘレナに案内されながら屋敷に入ると元裸男がいた。

「ひーちゃんは居ないの?」

「ひーちゃんは次のイベントの準備中だ。こっからはオレがこいつの案内を引き継ぐから、ヘレナは他の手伝いに回ってくれ」

「はい。分かりました!それじゃユイ様!またあとでね!」

 そう言うなり、ヘレナは走って行ってしまった。

「えー、私はヘレナちゃんがいいなー」

「色々準備があるからなぁ。あ、そうそう。さっきのファーストコンタクトの事だけど」

 あ、もしかしてダメ出し?

 初対面なのに名前言っちゃうっていうやらかしをしちゃったからなぁ。

「初めてのイベントなのに上出来だ!!」

「…………へ?」

「いやぁ、中々順調なスタートだな!これなら次のイベントもいい感じにいける!」

「ちょ、ちょっと待って!私うっかり名前言っちゃったりしたんだけど、あれっていいの?しかも走って勇者達から離れなきゃいけなかったのにできなかったし」

「ん?ああ、あれか。名前を言っちゃったのはむしろアリだ。あの場面で名前を言うのは、今後の展開の事を考えるとかなり重要になる。良いアドリブだ」

「アドリブじゃなくてうっかりだったんだけど」

「いいのいいの。ストーリー的にアリならいいの」

 いいんだ。

 まあ、失敗したかと思ってたから、いいならいいか。

「走って離れられなかったのは、あの状況じゃしょうがないな。リュシアンが離さなかったわけだし。でもヘレナとヴィルドが助け船出しただろ?別にオレ達はお前に全部完璧にやれとは思ってないから安心しなよ。これからも全面的にフォローしていくし。難しいことは最後ぐらいかな?あとは長いセリフを覚えるとか、そういうのは無いから」

 安心していいんだか出来ないんだかよく分からないけど、フォローはこれからもしてくれるというのは分かった。

「よしそれじゃあ、あと少ししたらヴィルドがこの屋敷に勇者一行を連れてくる。その時に巫女として彼らと顔合わせをしてもらう」

「また何かするの?!」

「心配すんなって。全部ヴィルドが話をするから、ユイはヴィルドの隣に突っ立ってりゃいいだけだ。話しかけられても返さなくていい。ぜーんぶヴィルドと、あとオレが彼らと話をする。それが終わればしばらく休憩だ」

 しばらく休憩……

 つまり、もしかして、その顔合わせの後も何かやるって事かな。

 もうさっきので疲れ果てたんだけど……

 あー早く帰りたい。


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