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6話 出生の秘密がさらっと判明したり、何故私が巫女役をやるのかが分かりましたが全てが急すぎ


「惚れさせるってさ、ひーちゃん……物凄く言いづらいというか、自虐にしかならないけど…………私、ぶっちゃけ顔面偏差値高くないよ?普通だよ普通」

「そうですか?十分可愛らしいと思いますけど」

「いやいやいや、資料をチラ見しただけでも分かるくらい強烈な女の子相手に勝つって、たとえ私が美少女だったとしても無理でしょ!」

「みっちゃんならできます!」

「どこからその自信来てるの?!」

「みっちゃんにしかできない事なんですよ。エミリアという最強ガードが横にいても勇者に惚れられる人材は、貴女だけなんです!」

 無理ー。

 絶対無理ー。

 というかエミリアみたいな女の子と関わりたくないっていうのが本音だけど、それを考慮しなくても無理でしょ。

「ひーちゃんがやればいいじゃないですか。凄い美女なんだし」

「私はすでに、古の聖女役で様々なイベントで彼らと接していますし、姿も現してしまっているので今更変更は難しいです」

 美女って事は否定しないんだね。まあ、これで美女じゃないですとか言われたら、世の中にいる美女の基準が凄い上がるしね。

「みっちゃんだけなんですよ。私たちの世界の人間が、貴女のいるあの異世界で生まれたという貴重な存在だから出来るんです!」

「さらっと今私の重大な秘密を聞かされた気がするっ!」

「え?あら?言ってませんでしたっけ?まあそういう事ですので、貴女の存在こそが、この危機を脱するたった一つの希望なんです!」

 私の出生の秘密が分かりましたよ。

 こっちの世界の人が私の世界で生まれたのが私だそうですね。

 驚くというか、こっちの世界に来た時からの周囲の態度で何かあるだろうなとは感づいてましたけどね。

「で、元異世界人だったらしい私が危機を脱する希望ってどういうことですか?……もしかして、異世界移動したから特別な能力が芽生えているとか?もしくは元々こちらで仕えた能力が使えたりだとか」

「まさか、そんな漫画とかラノベとかのご都合主義なんて、現実で起きるわけないじゃないですか。そちらの世界ではこちらでは当たり前の魔力はありませんし、そちらで生まれたのに魂がこっちの人間だからと使えるわけないんですよ。体が使える様に対応してませんしね。フィクションはフィクションです。現実にはあり得ませんって」

 異世界人に諭された。異世界移動って時点で現実離れしてるんですけどそれはいいのか。

 ていうか、漫画とかラノベ知ってるんだ。へぇ、まあ、もう色々ツッコミどころだらけだし私の世界のサブカル知っていてもおかしくない気がしてきた。

「話は戻りますが、勇者の聖剣を扱える条件が心身ともに清らかという、ストーリーの題名『デュエルストーリー ~世界一ピュアな2人~』通り、勇者は正義感あふれるピュアな青年に育ちました。誰もが認める好青年です!それなのに、何度も更生させようとしたのにどれも無駄に終わり聖女がビッチ!!由々しき事態です。このまま終われません」

 あー、とうとう隠さずビッチって言っちゃったよ。

「別に世界の崩壊が防げるならビッチでもいいんじゃないかなぁ」

「世界の崩壊を防ぐ方法なんて、最終手段はいくらでもあります。やろうと思えば私1人でもなんとかできます。ですが!このストーリーは1つだけなんです!!」

「え、世界の崩壊を防ぐ方法って他にもあるの?ひーちゃん1人で出来るって??」

「やろうと思えば、ですよ。それは今は置いといてください。いいですか?みっちゃんは元々私たちの世界の人であり、今は5つの世界とは全く関係のない異世界で生まれ変わってしまった稀有なる存在。それこそがカギなんです」

「1人で出来るって?世界の崩壊防ぐの1人で?!」

「私たち5つの世界では、自分の出身世界以外の4つのどれか世界に行くと『目立つ』んです。世界の命が一蓮托生だとしても別の世界という認識なので異物になるんでしょう。まあ、私たちは異世界に行っても目立たないように魔力で調節しているんで目立つことはありませんが、何もしなければとにかく人の目に留まります」

「私の疑問は無視?!」

「それは後でお願いします。それで、目立つという事ですが、5つの世界の中の自分の世界以外に行くと目立つというのに、それよりも全く関係ない別の異世界の人間が来たら、どうなると思います?」

「えー……」

「とにかく物凄くめちゃくちゃ目立ちます。派手な見た目とか関係なく、いるだけで気にせずにはいられないような存在になるんです。つまり、みっちゃんはそこに居るだけでとてつもなく目立ちます」

「は?私が?見ての通り、どちらかというと地味なんだけど私」

 特別可愛いわけでも美人でもない。どう見ても普通のカテゴリーなんだけど。

「見た目なんてどうでもいいんですよ。とにかく気になって気になって仕方がないんです」

「特殊能力、て事ですか?」

「いいえ、別に特別な事ではないんですよ。ただ単純に、この世界の者ではない異世界の者であるための違和感、という感じでしょうか。みっちゃんの魂は私の世界の者ですが、みっちゃんの肉体はあちらの世界の者です。本来魔力で目立つことを誤魔化していますがそれは出来ない。さらにみっちゃんの世界の人間として生まれてしまったため、そこに存在しているだけでとにかく目立つという、2つの目立つ相乗効果により、ただ異世界の人間が来たよりも存在感が凄まじくなってます」

 存在感が凄まじい……?え?なにそれ。

「存在感は……よく分かりませんけど、それと勇者を惚れさせることの何が関係あるんですか」

「ありますよ。大いにあります!存在感が凄まじく、気にせずにはいられない女の子という事ですよ。そんな人がいきなり目の前に現れるんです。……恋だと勘違いしませんか?!」

「は?!」

「今までエミリアのせいで、勇者リュシアンには仲のいい女性はエミリアしかいませんでした。そこに、物凄く気になって気になって仕方がない人が現れる。聖剣の巫女なので勇者の側にいてもおかしくない!エミリアもさすがに聖剣の巫女を排除出来ないでしょう。……側にいる女の子が常に気になって仕方がない、これってもしかして恋?!となりますでしょう?!」

「それってなんか騙してませんか?!」

「騙すなんて人聞きが悪いですよ。エミリアよりも気になる存在を側に置いて気を反らすだけですって。……まあ、恋だと勘違いするのは仕方がないことじゃないですか」

 惚れさせるって、そういう事?!

 気になって仕方がない=恋している、と思わせるって事?!

「で、でも!聖剣はもう持ってるじゃないですか」

「ええ。その辺はぬかりありません。エミリアが更生すれば普通に予定通りのストーリーになってましたが、もう更生は期待できなくなったので急遽変更しました。先ほど渡した概要の続きになりますが、聖剣は魔王によって折られました」

「え。折った?!」

 魔王を唯一倒せる剣だよね?

 折っちゃまずいんじゃないの?!

「聖剣が折れたことにより振出しに戻った勇者達。今度は魔王を倒す手がかりさえありません……と、そんなところへ、古より真の聖剣を守りし民が現れました。全ては古の聖女を媒介して視ていた、と。そして人里から隔離された、本物の聖剣を守り続ける村へ案内するという段階でしたが……その村への案内役のヴィルドの準備が終わってないようでして」

「え、聖剣って本物があるの?」

「急遽ですが用意しました」

 用意……用意って……

「見た目は以前用意していた聖剣よりも派手にしてみました。これぞ真の聖剣!って感じで」

「へぇ……」

 聖剣って用意するものなんだ……

「ちなみにこれです」

 そう言ってひーちゃんが両手を上にかざすと、両手の上で煌めく粒子が集まり徐々に細長く形作られ、一瞬まばゆく光ったかと思えば、そこには剣が出現していた。

「これが『実は古の勇者が使っていた本物の聖剣』です」

「古って……急遽用意した剣ですよねこれ」

「古の勇者がいたという話も今回の話の為に作ったものですから、設定に矛盾さえなければどうにかなります」

 古の勇者の話は作り話だったのか。

 そういや古の聖女の配役はひーちゃんだったっけ。

「……随分手が込んでますね、色々と」

「全力でストーリーを作ってますから!」

 これ絶対、世界の崩壊を防ぐ事より、ストーリーを作る方に重点置いてるよね。

 勇者とエミリアくっつけないために聖剣折っちゃうくらいだし。

 世界の崩壊を防ぐための話ではあるけど、なんかこう、変な感じがする。

 まるで、誰かに見せる為に作っているような……

「あら、ヴィルドが来ましたね」

「へ?」

 ひーちゃんが後ろを振り向きながらそう言うと、そこには元裸男と初老の男の人がいた。

「準備は終わったんですか?」

「それどころじゃない!リュシアン達もうすぐ村に着いちまうんだよ!」

「え?!予定ではまだでしょう?」

「ああそうだよ。そのはずだったんだが、やっぱりガイ1人じゃ止めるのも限界だったんだよ!」

「そんな……そこまで……」

 何?一体何の話?!

「みっちゃん!」

「あ、はい!」

「緊急事態ですのでとりあえず、リュシアンとインパクトあるファーストコンタクトをしていただきます。その後に聖剣を渡すまでの流れを説明しますから、まずは村に行ってください」

「は?!」

「大丈夫だ。まず村の中心の木の上の方で待機。そしてリュシアン達一行が近づいた辺りで落下。リュシアンに助けられつつも急いでその場を離れる……というイベントだから、みっちゃんは落ちればいいだけだ」

「いやまって。落ちればいいって」

「あ、設定は『村の子供が遊んでいた紙飛行機が木に引っかかっていたから取ってあげた』という事だから、これもっといて」

 そう言われ渡されたのは、子供が作ったようなちょっと崩れた形の紙飛行機だった。

「落ちた後、子供がみっちゃんを呼ぶからそっちの方向に走っていけばイベント終了!」

「ちなみに、リュシアンの外見は金髪碧眼のさわやか青年です。勇者一行の中で一番のイケメンですから見ればわかります」

「ちょっとまって!今?!今すぐ行くの?!」

「何かあればヴィルドを頼ればいい。ヴィルドは巫女のお世話係っていう設定だから、何でも言っていいぞ。あ、そうそう。みっちゃんの巫女の時の名前だけど、決める時間が無かったからユイでいいか?」

「ユイ……は、本名だからいいけど」

「ワールドエンドブラックユイでもよかったんだけどなぁ。長いからな」

「そうですねぇ。長いですし、聖剣の巫女なのにブラックは良くないですよね」

「なんでそれ知ってるの?!」

 私の封印した黒歴史!なんで知られてるの?!

「お話し中すみません。私はヴィルドと申します。みっちゃん……いえ、ユイ様とお呼びいたします。急なことで誠に申し訳ございませんが、よろしくお願いいたします」

 え、このヴィルドって人めっちゃ丁寧。

 元裸男も見習ってほしい。

 いやそうじゃない。まってマジでまって!

「会議するんじゃなかったの?!」

「そんな時間も無くなりました。前倒しですが、イベント強行します」

 元裸男にがっしりと腕を掴まれ、目の前が眩しい光に包まれた。


 これ、本当に私が巫女の役をやるの……?え?本当に?



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