5話 ストーリーに重要な聖女の男性遍歴を見たらビッチだった
魔王を唯一倒せる聖剣。
その聖剣の真の力を発揮させるためには、聖なる玉を集め勇者と聖女による祈りが必要。
で、この概要を読む感じ、その祈りの段階は終わっていて、魔王を倒すために魔王城へ突入している。
つまり、聖剣に真の力を発揮させるイベントは消化済み。
そしてここにあるのは、エミリアの男性遍歴が書かれた書類。
「ちなみに聞きますが、聖剣の真の力を取り戻すために祈った聖女っていうのは」
「エミリアです」
聖女はエミリアで確定。
あれ?なんか清らかじゃなきゃいけないんじゃなかったっけ?
疑問に思いながらページを戻ってみた。
・選ばれし者(勇者)が、心身ともに清らかでなければ扱うことが出来ない。
あ!
この清らかって条件は勇者しかない。聖女には条件ついてないのか。
いやでも、普通聖女ってことは清らかだって思うよね。聖なる女性ってことだよね。
聖女の条件……あ、書いてあった。
※聖女の条件は『勇者の想い人』であることが必須。
雑だな!
勇者が好きな相手なら聖女になりえるのか。
男性遍歴まとめられているような相手で勇者は良かったのかな?
あ、でも生い立ち的に結構エミリア大変だったっぽいし、幼少期のなんたらかんたらで情緒不安定だとか慰めるためだとか、きっと何か深い理由があるんだろう。
とりあえず、続き見てみようかな。
【エミリアの男性遍歴】
(~村襲撃事件の10歳まで)
・リュシアン、ランドリク、ガイ以外の6歳から15歳くらいまでの村にいる男の子たちから好意を向けられる。エミリア自体は「リュシアンが好き」と誰にでも言っていたので、男の子たちとの距離感が近いようだと思っても人懐こい性格だということで疑問視することはなかった(後に3歳年上のオーウェンとキスを済ませていたことが発覚。他にも数名とキスを済ませていた模様)
(孤児院時代~旅立ち前)
・リュシアンの側にいつもいる様子が見られる。
・リュシアンがいない時は従業員の側に行く(男性に限る)女性従業員も声をかけるが、すべてガン無視。他の孤児の子供たちとの交流も男の子のみ。女の子もエミリアと話そうとしているがこちらもガン無視。見かねたランドリクとガイが友達を作るように助言すれば態度が柔らかくなるが、2人が居なくなった瞬間に豹変。孤児院の他の女の子たちはエミリアを怖がり近づかなくなる。
・女の子たちとエミリアの不仲に気が付いた従業員が仲を取り持とうと話し合うが、何故かエミリアが可哀想という結論になる。女性従業員や孤児の女の子たち、この辺りでエミリアに関わることを諦める。エミリア逆ハーレム完成。
・リュシアンは孤児院の異様な様子に気が付かない(エミリアが気が付かせない様に話を逸らす等していた)
・ランドリクとガイが助言を続けるも、その時は素直に聞くがその場限り。
・初体験は従業員。その他配役されている従業員以外の男性全員と関係を持ったことが判明(判明したのは旅の後半。旅の途中で孤児院に立ち寄った時に従業員から言い寄られた場面をランドリクが目撃したことで発覚)
・孤児院の男の子数名とも関係していたらしい(未確定だが本人が他の女の子に話していた)
・リュシアンにもアプローチあり(ランドリクとガイにもあるがこちらは知らないふりでかわす)旅立つ前に勇者の条件を満たせなくなる危機に何度も遭遇。ランドリクとガイの必死の攻防により何とかやり過ごす。
「旅立つ前ですでにヤバいんですけど!」
え、旅立つ前って15歳くらいだったっけ?それでこれ?
いやいや、きっと村が襲撃受けてるからその恐怖か何かで誰かと一緒に居たいんだよね?依存したい的なあれで男の子の側にいるとか!うん!きっとそう!
「旅立つ前で驚いてはいけません。本題は旅立った後です。聖剣を扱える勇者の条件、覚えていますか?」
「え?えーっと……心身ともに清らか、でしたよね」
「そう。心身とは心も体も汚れていない清らかという事です。まあつまり勇者リュシアンは魔王を倒すまで誰ともヤれな……いえ、体の関係を持つことが出来ないんです!」
「はぁ」
「リュシアンたちは旅立つとき、王様から聖剣を扱える条件を聞かされています。もちろん、エミリアも。その時は私たちは安心しました。これで、ランドリクとガイの仕事が一つ減ったんですから」
「そういえば仕掛け人とか役とかの人って、ひーちゃん達の世界の人たちの事だよね」
「はい。彼らには向こうの異世界でストーリーに沿うように導く役目をしてもらっています。ランドリクとガイは、幼少期から勇者リュシアンを導くために幼馴染として旅も一緒にしているんです。彼ら2人の仕事はリュシアンを真っ直ぐに導く事なんです。エミリアからの誘惑を妨害することじゃないんです!」
そっか。聖剣を扱える勇者の条件を知らされる前までは、清らかじゃなきゃいけないって知らないんだもんね。
「じゃあ、旅立ってからは安心ですね」
「いいえ、旅立った後はもっと酷くなりました。リュシアンへの誘惑が無くなっただけで、むしろ男漁りは悪化したので全然安心できませんでした。聖女予定の子がビッ……いえ、性に奔放というのはあまりにも……あまりにもっ!!」
ひーちゃんは顔を両手で覆いながら嘆いた。ビッチって言いかけたね。言い直しても性に奔放としか言えないところで、エミリアのヤバさが伝わってくるよ。
聖女=ビッチは確かに無いわな。
「でも、エミリアが聖女になったんですよね」
「ならざるを得なかったんですよ!聖女候補はその後も何人もいたんですよ。それこそ旅の仲間から貴族、王族の姫とか男装の海賊とかとにかく色々!それらすべて、……むしろリュシアンに近づく女性すべてエミリアが様々な手を使って排除していきました。エミリアのリュシアンに対しての執着はすごいんです。好きだという事を隠しませんからね彼女は」
「なんでそれで他の男に手を出してるんですか」
「こっちが知りたいくらいですよ!何かトラウマがあるとか、やっぱり村を滅ぼすのはやりすぎたんじゃないかとか……でもそういえば、村にいる時から男漁りしていましたから、あれはもう生まれついての男好きだとしか思えなくて。一応女性の友達を作るべきだという案も出たんですよ。女同士の友情が芽生えれば少しはましになるんじゃないかと、リュシアンに好意を向けないような女性を何人か近づけたんですが……無駄でした。エミリアは自分以外の女性を見下す傾向にあるようで、友情が芽生えることはありませんでした」
うわぁ。
つまりこれは、リュシアンの周囲にいる女性はエミリアのみ=聖女になれるのはエミリアのみ、という選択肢一択ルートしかなかったと。
「旅は順調。世界は勇者が魔王を倒すためと力を合わせ、いがみ合っていた国も協力し合い、人々の間での争いはなくなりました。あとは魔王を倒すだけ。……ですがエミリアが!」
「いや、もう魔王を倒すだけならエミリアを放っておいていいんじゃないのかな?聖女の役割は果たし終わってるんですよね」
「そうですね。状況だけ見ればもう良いといっていいんです。でも!この調子で魔王倒すと、間違いなくリュシアンはエミリアの毒牙にかかります!!それだけは断固させたくないんです!!」
「気持ちはまあ、分かりますけど」
「大勢の人がそう願っているんです!エミリアどうにかしろって苦情がたくさん来てるんですよ」
「どこから来てるの苦情?!」
「旅が順調すぎて、聖剣のイベントは進めるしかなかった。リュシアンは周りに女性はエミリアしかいない状況だったので、きっとエミリアの事が好きだと思う……というちょっと微妙な感じでしたけれど彼女しか選択肢がないので結局エミリアが聖女という事になりました……が、皆さん納得がいっていません!もちろん私もです!」
ヒートアップするひーちゃんを横目に、そういえば旅立ち後のエミリアの男性遍歴見てなかったなーっと思ってページを捲ってみた。
……へえ、リュシアンとランドリクとガイ以外の旅の仲間の男性と関係結んでるんだ……やだなーこの勇者一行。
チラ見しただけでもすさまじい男性遍歴が羅列されていたので、もう見るのは止めました。この子私と同年代なのにすごいなぁ。
「みっちゃん!」
「は、はい!」
「覚えていますよね?お願いした事」
がっしりと両肩を掴まれ……痛い痛い指が食い込んでる!
「おおおお覚えてます!聖剣を渡す巫女の役ですよね?」
「それはおまけです」
「おまけっ?!」
「もう一つの方ですよ!」
「勇者を惚れさせ……え?」
え。勇者って……リュシアンだよね?
リュシアンに近づく女をすべて排除したエミリアがいるのに?
最初から無理だと思ってたけど、エミリアの存在がある以上、どうやっても無理にしか思えないんだけど。
ていうか、おまけの方が重要だよ普通。聖剣もう勇者持ってるけど。