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10話 『デュエルストーリー ~世界一ピュアな2人~ 』の世界で中二病なやり取りをしたけれどきっとこっちでは違和感なし

 なんだか殺伐とした雰囲気に包まれる部屋で、ぼーっと突っ立ってるだけの簡単なお仕事をしている最中な私ですが、そろそろ気まずさで部屋から逃げ出したいです。

 元裸男……あ、名前さっき言ってたね。なんと私の兄設定だったらしい元裸男のマリクとヴィルドさんのやり取りがとってもあれな感じです。中学二年生辺りで、主に漫画やアニメやゲームに頻繁に触れた方々が発症しがちなあの病気……

 そう、中二病です。


「そうなる運命だったのは分かっている。私は幼い頃より覚悟をしていたつもりだ。しかし、回避も可能だったはず!」

「マリク殿、それは……」

「ヴィルド殿、私も分かっているんだ。ユイの近くで私も見守っていたのだからな。何度村から出て彼らの元へ行こうとしたことか!しかし私もユイに劣るとはいえ巫女の一族だ。定めに従い聖剣を守る者として、この村を出るわけにはいけない。だが、定めの枷さえ無ければ……私は……っ」

「……私がもう少し早く彼らの元へ行く事が出来たのなら、あるいは結果が変わっていたかもしれぬか」

「いいえ、ヴィルド殿にはヴィルド殿の役目があるではありませんか。巫女の……ユイの守護者は貴方しか務まりません。ヴィルド殿が守護者であったことが、どんなにユイの助けになったことか」

「もったいない言葉です。私も、巫女の一族を守護する定めの一族として、ユイ様という偉大な巫女様に仕えることが出来て光栄でございます。彼女が巫女であるからこその我々でございます」

「ああ、ユイは歴代の巫女の中でも特に高潔で素晴らしい巫女だ。……だから、なのか、この結果は……っ」


 ノリノリで会話する2人についていけない。特にマリク。お前キャラ全然違うじゃん。

 ふざけた部分もなく、生真面目っぽい言動と表情なマリク。これじゃただのイケメンだ。顔が同じ別人と言われても納得しそうだけど、会話の内容がアレである。

 いやでも、勇者一行から見れば、意味ありげな会話なのかな?

 ていうかさり気なく私の巫女設定のハードル上げてるのヤメテー。

 歴代で何?とにかくすごい巫女って無理あるでしょ。

 魔力なんか欠片もないと思うんだけど、その辺突っ込まれたらどうするんだろう。

「……ああ、取り乱してしまってすまない。君が持っていた聖剣が折れたことは、この村の住民にとっても、出来るならば避けたい事態だったんだよ」

「マ、マリクさん。あの、私は魔術師なのですが……その、とても言いづらいのですけれど、巫女様からは何の魔力も感じません。人は、魔力を扱えぬ者でも多少は魔力は持っているはずですが、巫女様には全くありません。さっき会った時も魔力なんて感じませんでした」

 エミリアからタイムリーなつっこみ来ちゃったよ。心配した直後にこれだよ。

 私でもそう思ったんだから、気が付く人は気が付くでしょ。

 どうするのよこれ。何もできないよ私。

「ねえ巫女様。どういうことですか?」

 そんなの私が知りたい!

 魔力ってどう出すの?教えてヴィルドさん!

 マリクに頼るのはなんか嫌だったので、助けてーという意味を込めてヴィルドさんを見つめてみた。

「分かっておりますよ、ユイ様」

 意味ありげにそう言いながらヴィルドさんが頷いた。

「あの封印を解かれたいのですね?」

 何の封印ですかね。

「ユイ。いいのか?さっき回復したばかりだろ」

「マリク殿、ユイ様も分かっているはずです。これはユイ様の彼らへの誠意の証でしょう……さあユイ様、そのリグアレベラのペンダントをお外しください」

 意味ありげな会話の後に私に話を振らないでー。

 リ、リグアレなんとかってペンダントを外すの?えーっと、ペンダント2つしてるんだけどどっちだ。

「リグアレベラですって?!貴女、リグアレベラのペンダントを持っているの?!」

「リグアレベラってあれだろ?俺はまだ見たことがないが、光を吸い込むほどの漆黒の魔力石で作られた最高峰の魔具シリーズのだよな」

「僕も名前は知っているけど、確か世界に数個しか存在していないって聞いている。それがここに?」

 え、なんか重要アイテムっぽい?!

 とりあえず巫女っぽいからつけたんじゃなかったのか……

 えーっと、漆黒って言ってたからこっちの黒い方のペンダントだね。初めからつけて出てきてたんだけど、みんな気が付いてなかったのかな?

 ……あれ、よく見たらうまい具合に巫女服のひらひらっとした陰に隠れてたみたいね。一見すると何もつけてないように見えてたっぽい。リグなんとかって名前が出てから勇者達がザワザワし始めたし、すごいアイテムっぽいけど見えないと気が付かないもんなのかな。

 外せって言ってるし、黒い方のリグなんとからしいペンダントをとりあえず外してみた。

「え……!!うそ、何この魔力?!」

 ん?

「すごい、こんな魔力、王宮の高位の魔術師より遥かに凄まじいぞ!」

 へ?

「まさか、こんな膨大な魔力を持っていたとは!」

 な、なにこの勇者一行の反応は。

「そうか、そのリグアレベラのペンダントは、魔力を抑える性質のものか!」

 何言ってんのこの人たち。

「そういう事だ。ユイの魔力はすべて聖剣に捧げるための魔力。普段はこうやって放出を防いでいるんだ。今は回復しているが、つい1時間ほど前に封印されている聖剣に魔力を捧げたばかりだ。魔力を捧げると約1時間は魔力が空になる。恐らく君たちと会ったのはその時だろう」

 すごい。

 マリクってば、よくそんなウソをスラスラ言えるなー。表情もキリっとしていてそういう設定に沿ったウソを話しているように全然見えない。

 でも、魔力なんて初めから空なんだけどなんで皆こんな反応……あ、もしかして他にもジャラジャラつけてるアクセサリーの作用かな。

 わざわざ魔力を出すアクセサリーをつけ、さらに魔力を抑えるペンダントをつけてたって事かな……面倒なことしてるね。

 だけどそのおかげで、魔力が無いのは抑えているからって納得してもらえたっぽいね。

 それを狙って沢山のアクセサリーをつけさせられたって訳かな?なるほどなるほど。

「聖剣の巫女様の事、納得していただけましたかな?」

「……巫女様の魔力が膨大なのは分かりました。ですけど……まだ聖剣が折れたことについて納得がいかないです」

 私の魔力云々に話がちょっと逸れてたけど、本題は聖剣が折れたこと、だもんね。

「折れるはずがないが折れた。納得がいかないだろうが、君たちはそれを自らの目で見ている。それが事実だ」

「それは……本来の力を発揮させられなかったと言っていたことに関係があるんですね?」

「関係は……」

 マリクは言いかけたが止めて、少し俯いて唇をかみしめた後、何でもないかのように顔を上げた。

「……過ぎたことだ。過去を悔いても、すべて今更だ。折れたものは戻せない」

 はっきりと、リュシアンを真っ直ぐ見つめながらマリクは言った。

「君にはきちんとこの村で守っている聖剣を扱える形で渡すよ。その為に2週間……いや、1週間この村に滞在してもらう。勇者リュシアンにはその為に色々と協力してもらうが、構わないだろうか」

「僕は構わない。皆は……」

「私はもちろん一緒だよ」

「俺もだ。当たり前だろ」

 他の勇者の仲間たちも皆頷いた。

 ほー、結束力固そうだなー。

 ……これ、本当に裏で勇者とこっちの関係者以外エミリアと皆……なのかな?

 あまりその辺の事情は知りたくないな。

「ユイ、そろそろペンダントを」

「え、あ」

 そういえばリグなんとかっていうペンダント外したままだった。慌てて首にかけようとしたけど、うっかり落としてしまった。

 しかも落ちたペンダントはリュシアンの足元に跳ねて行ってしまった。ヤバい。

 なんか貴重なアイテムっぽいのに落としちゃった。欠けてても弁償出来ないよ私!

 焦りながら拾おうとしたが、先にリュシアンが拾ってしまった。

「……これは、とんでもない代物だね」

「え……?」

「ただ拾っただけなのに、僕の魔力も吸い込まれそうだ」

 そうなの?私もとから魔力無いからどんな感じかさっぱりわからん。

「こんなものを身に着けていても平然としていられるなんて……君はすごいね」

 そりゃ、もとから魔力なんてないですからね。吸い込まれたり抑え込まれたりするもの無いから何ともないですよ。

「聖剣の巫女……か」

「?」

「この村にいる間、よろしく」

 さわやかスマイルで微笑みながら、ペンダントを優しくかけてくれた。

 

 どうしよう……

 気づいちゃったよ。



 エミリアが物凄い目つきでこっち睨んでるのを!


 やべぇめっちゃ怖ぇっ!!



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