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英雄達の消えた街・コラボ編  作者: 四神夏菊
本編・アルダートシナリオ 対ネコS編
7/155

子狐の持つ希望 1

そんな、寂しい話をストレンジャーとアルダートが交わしていた頃・・・



彼らの居る街の中心、高くそびえ立ち雲の上にまで伸びている塔に近いお城。浅い空域にある雲の上、そのまた上に。数人の人影があった・・・




「・・・フフフッ また、あの連中が力を求めて動き出したのね。」

「まったくもって、こりねぇ奴らだよなぁー どんなに力を求めようとも、上から支給されているに等しい力じゃ敵いっこねぇのにさ。」

大きな窓があり、広間に等しいホールで会話をしている2人の人影。1人は小さな羽を動かし飛んでいる妖精であり、1人は大きなブラシに近い棒状のスティックを持っているジャッカルだった。彼らは先ほど起こった流星石の事について、話している様だった。

「大分、散布が終了したみたいだ。 時期にまた、愚かな連中が動き出すだろうな。」

そんな話をしていると、彼らの居るホールに別の人影がやってきた。軽く整えられた髪と尾を揺らしつつ、軽い足取りでやってくる獣人だった。さきほどまで話していた2人違い、こちらは背が高く凛々しい顔立ちをしていた。

「ニャッニャッニャッ。 意味も無いのに、構わずかかってくるのが面白いのニャ。」

さらにそんな彼の後に続いてやってきたのは、これまた背丈が小さい猫のような存在。しかし二足歩行で歩いており、なぜか耳が6つもある。1つはウサギのつけ耳であり、残りは普通の耳と猫耳だった。

「無駄に悪趣味ね、相変わらず。」

「なんとでも言えば良いニャ。 なんと言っても、ニャー達はそんな奴らを管理するのがお仕事ニャ。 楽しめれば、それでいいとは思わんかニャ?」

「ま、それに対しては同意するけどなぁー やり口は同意しねぇけど。」

「ニャニャッ」

どうやら4人はその場の管理を任された存在の様で、この後起こる事に対して行動する事が仕事のようだ。見た目も性格もバラバラの4人が何故仲が良いのかは、とりあえずおいておこう。



カツンッ・・・ カツンッ・・・



「?」

そんな事を話していると、彼らの居るホールにヒールが床に着く音が響き渡った。どうやらもう一人居るようで、4人はその存在の影を見つけるとその場から移動し定位置へと移動していた。

横に一列で並び、間に立っている獣人と妖精の間をその存在は歩いて行った。見た目は妖精とジャッカルに似ているが、雰囲気は何処を比べても何か格が違うようだ。ドレスに近いが鎧にも近いその服装を揺らしながら、その存在は窓辺へと向かって行った。

「・・・愚かね。 本当に・・・」

そして、適当な位置で止まり一言呟いた。そんな容姿が美しいが雰囲気の違う存在を見かね、4人は揃って呟いた。

「この街を管理し、全ての存在がニャー達の物。」

「たとえどんな反感が来ようとも、圧倒的な力でひれ伏せさせる。」

「悲しい出来事は、私達と貴方にとっての害ならば。」

「全力で阻止し、貴方様の心が晴れるよう誓います。」



「我ら、プリンセスに仕える存在は。 今日もその事を誓います。」



「・・・」

4人は口々にそう言い、敬意を示すようにその場で華麗にポーズを取りつつ膝をついた。その行動を前に居た存在は一瞥すると、再び前を向きなおった。すると、窓辺の前に漂っていた雲が徐々に晴れだし太陽が少しずつ顔を出した。それと同時に明るい陽ざしが彼等の元へと差し込み、影に近かった色合いが徐々に色を付けだした。

その場にいた存在は、『茶色の猫』、『青髪の獣人』、『真紅の妖精』、『橙色のジャッカル』

そして、『灰色の狼』だった・・・




一方、その頃・・・




「・・・数年前、この街に居た英雄達が次々と姿を消した事が、事の始まりです。」

「・・・」

灰ビルで流星石が降り止んだと同時に、アルダートはストレンジャーに事の始まりを話していた。自分が経験し、異常現象が起こり、何故こうなってしまったのか。その事を、何も知らずにやってきた彼にだけはと。

アルダートは話していた。

「何かを察したのか、または何かの警告を受けたのかはわかりません。 ですが、僕達の知る英雄達はこの街から次々と外の世界へと出て行ってしまったんです。」

「・・・何故、分からないのに確信を持っているかのように言えるんだ?」

「一応僕も、その英雄達とは顔馴染みなんです。 ですから、大体の考え方や行い。 何故そうしたかは、予想できます。 ・・・でも。 あくまで予想です。」

「話を聞いたわけじゃないから、全てを理解している訳ではない・・・」

「その通りです。」

カーペットの上で寂しそうに話すアルダートを、優しく腕で引き寄せ寂しさを紛らわせようとするストレンジャー


何かの縁で出会ったとはいえ、目の前で寂しそうな表情をする彼を見捨てる気にはならなかったのだろう。同じ接し方は出来ないとは言っていたが、彼なりに何かしようとしていた。あくまで仮説による話ではあったが、街の英雄と呼ばれていた存在達はこの街にはいない。だからこそ暗く、この騒動の元凶となった存在達が現れようとも対抗策が無い。

全て頼りっきりだったゆえに、彼らには力がない。そんな時にやってきたのが、この街特融の物体である『流星石』だったのだ。

「でも、力が無い僕達の所にやってきたとは言っても。 この街を管理する存在の前では、無力でしかありません・・・」

「管理する、存在が居るのか・・・」

「どちらかと言うと『支配』と言う言葉に近いです。 仲たがいをしようとはせず、自分達を好き勝手にコントロールしようとする。 だから、存在を捕まえては地下に閉じ込めるんです。 自制と言う感情に閉じ込めて、思いのままにしようと。」

「・・・そうだったのか。」

流星石はあくまで小さな力であり、その力をどれだけ確保するか。それが、その街に居た存在達がまずする事だと彼は言った。

力がないのなら鍛えれば良いと思うものも居れば、逆にその力事態を奪ってしまえばいい。そう言った力の証明の仕方が個々で別れると同時に、弱肉強食に近い考え方も生まれてしまった。平穏を皆望んでいるのにもかかわらず、どこかで考えがずれてしまい皆が飢えてしまった。

だからこそ『友達』と言う言葉はここにはなく。 意見の会う『仲間』しかその場には存在しなかった。

共存するのなら、利用するまで。そう考えるものも、少なくはないそうだ。

「・・・ストレンジャーさん。」

「何だ・・・?」

話を一通り聞き終えると、アルダートは不意にストレンジャーに声をかけた。先ほどからずっと寂しそうな顔をしているが、今はちょっと違う雰囲気が出ていた。

「貴方は・・・ 僕を、捨てたり・・・しませんよね。」

「・・・」

そんな彼から発せられた言葉は、それだった。どうやら話をすると同時に寂しさが込み上げてしまったようで、もう一度その事を聞きたくなったようだ。問いかけた理由を考えつつ、ストレンジャーは静かにその後の言葉に耳を傾けた。

「弱肉強食の世界だと言うのなら、確実に僕は弱者です・・・ でも、それでも・・・! 僕は貴方のそばに居たい、もう1人は嫌なんです!!」

「・・・」

「お願いですっ! だから・・・だからぁ・・・!! 仲間ではなく、友達として僕を・・・僕自身を見ていて下さい!!!」


ガバッ!


「・・・」

その後アルダートは心に閉じ込めていた事を全て吐き出し、そのままストレンジャーに涙目で抱きついた。友人なんてならないだろうと思っては居ても、それでも利用しあうような関係にだけは絶対になりたくない。彼はその事をもう一度決心したくて、そう言いたかったのかもしれない。

抱きついたまま、彼の懐で涙を流していた。

「・・・ ・・・アルダート。」

そんな彼を見て、ストレンジャーは頭に手を乗せつつ優しく撫でた。その間も、アルダートは泣いている様で体を震わせていた。

「俺は、誰かを利用したりだなんて思ったりはしていない・・・ アイツ等も食料のために利用したり、お前を単に利用出来るだろうという考えで、連れてきたわけでもない・・・」

「ぇ・・・?」

「お前等が寂しそうな表情をするのが、嫌なんだ・・・ 元々そう言った相手の涙が嫌いだからか、そうしたくなるのかもしれない・・・」

ストレンジャーの言った言葉を聞いて、アルダートは目に涙を浮かべたまま彼の顔を見た。相変わらず無表情に近い顔ではあったが、それでも彼なりに言いたい事を言っている様でいつもより親身な目をしていた。

目つきは優しく、相手を思いやっているかのような目をしていた。

「利用したり、何かを好きにするのは・・・好きじゃない。 お前が俺のために何かをしてくれるなら、俺はそれを受け止めてお前に何かを返そうと思ってる。」

「・・・でも、僕は・・・」

「お前は弱者じゃない。 現に、俺の知らない事をたくさん教えてくれただろ・・・ 違うか・・・?」

「・・・」

彼自身が利用すると言う言葉自体が好きではないと同時に、恩を受けたのならそれ相応もしくはそれ以上を返す。そんな考え方を持っている事を伝え、アルダートを弱者ではない。 利用する相手としても見ていないと言った。

彼の知らない事をアルダートは知っており、アルダートが出来ない事を彼が代わりに行っている。寂しいと言うのなら、自分にできる方法で彼を温める。そうやって、先ほどまで過ごしてきた事を悟らせていた。


「・・・もう、泣くな。 むやみに泣いていても、何も始まらない・・・」

「・・・はい。 ゴメンなさい・・・」

そして軽く肩に手を乗せ目を見つめあうと、ストレンジャーはそう言いつつ自らの手で軽くアルダートの目に浮かんでいた涙をふき取った。それを見て、アルダートも彼が嫌う涙を早く止めようと、両手を使い頑張って拭っていた。ずっと就いて来ても良いと思えるように、彼の嫌いなところを見せないように。

アルダートは一生懸命に意識し、表情を元に戻していた。

「お前が俺のために何かをしてくれるなら、ずっとしてくれればいい。 ・・・俺も、何かをしたくてこの街に来たんだ・・・ 出会いは、無駄ではないと思ってるぜ。」

「・・・!」

「さ、行こう・・・ 街が奮起しているなら、早く元を沈めた方がいい。 奪うのではなく、共存したいとお前が望むなら・・・ 俺はその手伝いをするだけだ。」

そんな彼の行いを見て、ストレンジャーは軽く嬉しそうな表情を見せながらその場に立ち上がった。そして、この街を元に戻したいと願う彼のために、何かをしようと決意した様だった。もちろんアルダートも一緒に連れて行くと言いつつ、彼は右手を差出しアルダートの同意を求めていた。

「は、はいっ!」

ストレンジャーの言葉を聞き、アルダートも同意し着いて行くと言う意気込みを言いつつ、彼の手を握った。そしてもう一度、彼のためにと満面の笑みを見せた。


その後彼らは流星石を手にし、食料をその場に外へと駆け出して行ったのだった。街を元に戻し、アルダートの望む『友人』を多くするために・・・


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