表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄達の消えた街・コラボ編  作者: 四神夏菊
本編・アルダートシナリオ 対ネコS編
4/155

街の力は流れ星 1

「・・・」

「さぁて、どういたぶってやろうかねぇー・・・」

軽く瓶の蓋を締め、手の上で軽く瓶を投げつつ敵はそう言った。


先ほどまでの劣勢ぶりは何処へやらの状態となっており、今は余裕そのものの笑みを浮かべていた。何を使っているのかすらわからない武器を使っていれば、それだけ有利になったと思っているのだろう。

仕方なくストレンジャーは対峙したまま、瓶そのものと先ほど切断された雑草を静かに見比べていた。一部の雑草のみが水平に切断されており、他の部分は先ほどと変わらず天に向かって伸びていた。どうやら振った先の一部分に変化を起こさせる事が出来ると予想し、ストレンジャーは再び敵を見た。

「武器、か・・・ ・・・それを持ち出したと言う事は、俺はそれだけ排除対象として認識されている・・・と、言う事なんだろうな。」

たとえそのまま攻撃された所ですぐには殺られないと判断したのか、ストレンジャーは軽く相手に確認するかのように問いかけた。

「まぁ、別に野放しにしようが見捨てようが構いはしねぇんだけどさ。 一応こっちも仕事っていうか、生きるためにしてる事だ。」

「・・・生きるため?」

「この世界は上の監視下に置かれて、もう俺達には自由はねぇんだ・・・ だからこそ俺達は強さを証明し、この街から出て行こうと思っている。」

「・・・」

先ほどまでの挑発口調とは違い、敵は顔を少し横へとずらしつつそう呟いた。彼等にも生きる意味を探しており、この街に居る事を望んでいないと言う事を知った。だからこそ早く抜けられるためにも、彼らは力を証明しなければならない。そのための手段として持っている物こそが、先ほどの瓶型の武器だった。

理由はさておき、彼の話を聞きストレンジャーは理由があって自分と対峙している事を悟った。

「だからこそ、俺はお前を倒す・・・ 強いと認識したやつを、野放しにはできねぇんだよ!!!」


バッ!!


「ッ!」

自分を倒そうとする理由を知り、そう言った矢先敵は再び瓶の蓋を引き抜きその場で振った。すると、先ほど同様に周囲に風の刃が発生し、ストレンジャーに向かって襲いかかった。

『奴にも理由がある・・ だが、俺にも・・・!』


ガサッ!


「何っ!」

攻撃が向かってくる事を知りつつ、ストレンジャーはその場にしゃがみ雑草の中へと隠れた。先ほどの攻撃で足もと周辺が攻撃される事を思わせていた敵は、ストレンジャーのその行動に驚きつつも再度瓶を振った。

すると、彼のしゃがんだ場所へと向かって攻撃が迫ってくるのを知らせるように、雑草が次々と裂かれて行った。

『見える・・・!』

雑草が裂かれたのを見て、ストレンジャーは身をかがめた体制のまま雑草地帯を駆け回った。攻撃の波が見えないのなら、見えるように工夫するまで。彼はそう考え、今一番視覚として捉えやすい周囲の雑草を盾に使ったのだ。

彼の予想は的中し、敵が瓶を振るごとにストレンジャーへと向かって直線状に波が向かってくるのが見えた。しかし収束させた物を放っているわけではない様子で、雑草の切れ方は場所によって異なり、斜めに切れているところもあれば水平線上に切れているところもあった。また、周囲が切れているにも関わらず何も被害を受けていない雑草もあり、どうやら一定の周波を相手にぶつけている事が分かった。

敵の使っている武器の特徴が解り、ストレンジャーは翼を広げ再び宙を舞った。

「逃がすかっ!!」


パシュッ!


彼の行動を見かね、敵はそのままストレンジャーへと向けて攻撃を放った。宙には視覚で捉えられるものがない事を知っておきながら、彼はそのまま宙を飛び交い先ほど投げ放ったタイヤのうちの1つを回収し、彼に向かって投げ放った。その行動を見かねた敵は瓶を振り、攻撃が命中したのかタイヤの表面は次々と裂かれ、表面のゴムが薄くなった状態で敵の元へと到着した。

しかし裂かれた分威力が下がっており、敵はそのまま素手でタイヤを殴り、叩き落とした。

『裂く力事態は強くない・・・ その上固定周波を放っていないと言う事は、攻撃の波に法則性は無い・・・ 刃を発生させて、相手を攻撃するものか。』

いろいろ攻撃や動作を行い、ストレンジャーは短時間で相手の使っている武器の特徴をあらかた把握していた。攻撃事態は強力なものではない上に、相手も決まったところへは向かわせられるがポイントを決めて攻撃が出来ないのだ。だからこそ最初の一撃はストレンジャーの周囲の草のみが裂かれ、彼自身に傷を負わせることが出来なかったのだ。

一通り確認し終えると、ストレンジャーは再び地面へと降り立ち敵と対峙した。

「いくら遠距離から攻めようとしたり、死角に入ろうとしても無駄だ。 見えない刃がある限り、お前は接近戦では責められない!」

敵はそう言い、先ほどからストレンジャーがしようとしている事を予想しそう叫んだ。今の彼には遠距離から攻めるにも、タイヤのように個体を投げ放つことしか出来ない。敵と違い武器と呼べるものはその場には無く、あるとしたら先ほどの土管くらいだ。

だが投げたり持って戦うにしても、彼の体格からしたら大きすぎるものであり持とうとする隙を見せた時、攻撃を受ける事が目に見えていた。

「・・・そうだな。 ここで俺が逃げた所で、お前が追う事を止める事もないだろうしな・・・ 理由がある限り、お前はついてくるだろう。」

「まぁ、そうかもな。 ・・・さて、大分時間を使っちまったし。 俺もそろそろ立ち尽くしてるのも飽きたから、歩くとするか。」

軽くトークをした後、敵はそう言い止まって居る事を止め歩き出しながらストレンジャーに攻撃を仕掛けようとした。その行動を見かねた彼は、数歩後ろへ下がりつつ間合いを一定に保とうとした。

すると、


コツンッ


『・・・?』

下がった拍子に、彼の履いていた靴のかかと部分に何かがぶつかった感触がした。何もないと思っていたその場に個体があるとは思わなかったからか、ストレンジャーは軽く驚き目線を下にずらした。

するとそこには、彼の持っている瓶に近いものが落ちており、雑草の中に隠れていた。瓶のデザインは敵の持っているものよりも簡素なものだが、液体の色が違い落ちている瓶の中身は『青い液体』のようだった。

『瓶・・・ ・・・アイツと持っているものが似ているのなら、俺にも手段が・・・』

一度目線をもとに戻し、敵の持っているものと一瞥した瓶を見比べた。まさしく瓶そのものは似ており、この街にあると言う事は同種の物である事と彼は確信した。

敵に何かを見つけた事を悟らせないようにしつつ、ストレンジャーは一度瓶を踏み越え、瓶を靴のつま先の前に来る位置で止まった。ストレンジャーが止まると、敵もその場で一度止まった。


「1つだけ、聞いてもいいか・・・」

「? 何だ。」

敵の行動が止まった事を確認すると、ストレンジャーは軽く相手に問いかけた。

「お前の行動理由は、それ以外には今は何もないのか・・・ たとえ希望が薄くても、もっとマシな生き方が出来るだろ。」

一度だけだが話をしたためか、ストレンジャーは敵の中にまだ優しさがある事を思いそう問いかけた。先ほどのように小さな希望がいくつか見つかるこの街では、考え方さえ変えればいくらでも明るく生きる事が出来る。彼らを縛る制度さえなくしてしまえば、街は生まれ変われると彼は思っていたのだ。

「ねぇよ。 ・・・むしろ、希望なんてねぇのがこの街だ。 じゃなきゃ、誰も地下街に閉じこもって表に出ようとは思わねぇよ。 日の光を浴びた所で、何も見つける事はできやしない。」

「・・・だが、暴力が何かを生むとは俺は思えない。」


「・・!! 言わせておけば・・・! 素で力があるやつなんかに、俺達の苦労がわかるわけねぇんだよ!!!」

だが彼らにはそのような考えを持ち合わせている暇はない様子で、ストレンジャーの言った事に反応し再び瓶を振ろうとした。その瞬間を見て、ストレンジャーは右足を軽く動かし、瓶をつま先の上に乗せ手元に向けて蹴り上げた。軽く蹴り上げられた瓶は宙を舞い、ストレンジャーの目線の高さで上昇を止め下降しようとしていた。

「何ッ! お前、何処で・・・!!」

「考え方さえ変えられれば生きられるが、今のお前はその考えを持ち合わせていない・・・ それなら・・・!」

彼の目の前に出てきた瓶に驚く敵を見ながら、ストレンジャーはそう言い瓶を手に取り栓を開けた。すると瓶の中から冷気が漏れ出し、ストレンジャーが瓶を振ると周囲に氷の塊が発生した。サイズが異なり大きいものもあれば小さいものもあるが、紛れもなく『氷結』された塊が生まれたのだ。


氷が出来上がると、そのまま振られた方向へと突撃しだし敵に向かって行った。

「くそっ!!」

急な攻撃手段に圧倒されつつも、敵は瓶を何度もその場で振り刃で氷を切り刻んだ。だが裂かれた氷は無くなることはなく、むしろ段数が増すばかりであり意味をなさない。ストレンジャーからの攻撃を無効化する事が出来ず、敵はそのまま飛んできた氷の餌食となった。

「ぐぁぁっ!!」

普通の氷よりも冷たいのか、冷気と共に飛んできた氷は彼の身体にあたると次々と氷漬けにして行った。個体でぶつかっただけでは痛みが伴うだけだが、この氷は特殊なのか命中する毎に体を侵食するように凍らせていったのだ。冷たさが体を襲い、敵はそのまま攻撃をガードする体制で手足の動きを封じられた。

「・・・」

そんな敵を見てか、ストレンジャーは瓶の栓を閉め敵の元へと歩き出した。もう相手に攻撃するすべはないと思い、追撃する気にはならないのだろう。ただ静かに歩み寄り、目を合わせた。



「ぅぅっ・・・! くそっ! 何で・・・石を使っても、意味ねぇんだ・・・!!」

「・・・」

「紛れもない力で、俺達をここから出してくれるはずだったのに・・・! 何で!!」

手足が動けないのか、必死に動かそうとしながら敵は叫んだ。しかし氷漬けになった手足はもう動かず、溶けきるまでは体制を変えられないと思われた。彼の叫びを聞きながら、ストレンジャーはただ静かに見ていた。

そして、泣き叫ぶ彼にこう言った。


「楽観的な見方が、今のお前には足りないんだ・・・ 力だけじゃ、この世界では生きられない・・・」

「!!」



ストレンジャーが言った言葉を聞いて、敵の顔は豹変した。何か見失っていたものを見つけるかのように、言葉を聞いて絶句していた。

「・・・」


スッ


その後ストレンジャーは敵の様子を見て、もう力はいらないと判断したのか。戦いに勝利した戦利品として、敵の使っていた瓶を回収しその場を去って行った。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ