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5話 飯を食いに行った

 さて、町についたな。


 町の名はミルレース。小規模な町で、人もそんなに多くなかったはずだ。


 ゲームとの違いがあるのかと思ったが、ぱっとみなさそうだ。


 家の位置もそのまま。

 下手すりゃ地元よりも歩き回った町だから、土地勘はかなりある。


 まずは薬草を売るため、雑貨屋に向かおう。


 雑貨屋はまっすぐ行って、左の角を曲がった所だな。

 よし行くか。


 ちょっと歩いて着いた。


『Mike Shop』と書かれた看板がある。


 マイクって名前の人がやってるから、Mike shopだ。

 俺は雑貨屋に入る。


「いらっしゃいー。あれ? 見ない顔だねー」


 店主のマイクがそう言った。

 小太りで人の良さそうな顔をしている。


 最初にそう言われるのは予測済みだ。

 小規模な町だから、町の人達はだいたい顔見知りなんだ。


「タクマ・サイトウっていいます。南にある牧場を任されることになりました。よろしくお願いします」

「あーミーシャちゃんが言ってた。君がそうかー」


 もう話してるのかよ。


「僕はマイク・テームズ。ここでしがない雑貨屋を10年ぐらいやってるかな。今日は何か買いに来たのかい?」

「いえ、薬草を売りに来たんです」

「ん? 売りたいなら出荷箱に入れておけばいいのに。わざわざ町まで来たのかい?」

「えーと、腹が減っちゃって。何か食いたいけど金が無いもんですから、売りに来たんです」

「そうかー」


 俺はポーチから薬草を取り出し、マイクに渡した。

 この世界での通貨はゴールドだ。

 だいたい100ゴールドあれば、それなりの飯が食べれる。


 薬草は1本10ゴールドだから、5つで50ゴールド。

 50ゴールドだと、パン1つにジャムつけて食うくらいが精一杯だろう。


「薬草5つで150ゴールドだ」

「え?」


 マイクはそう言ってゴールドを渡してきて、俺は驚く。

 100ゴールド想定より高い。

 相場が変わっているのか?

 聞いてみよう。


「そんなするんですか?」

「普通は50ゴールドだけど、品質が良さそうだし、おまけしたよ。これでうまいもんでも食ってきな」


 なるほど、どうやらマイクが親切で多くしてくれたみたいだ。

 かなり良い人だったけど変わってないみたいだな。


「あの、ありがとうございます」


 俺はお礼を言いながらゴールドを受け取る。


「ははは、僕は適正な値段で買っただけだからお礼を言う必要はないよ。食堂は僕の店の3軒右隣にある。あそこのエビフライカレーライスはうまいから、食べてきなよ」


 マイクは人の良さそうな笑みを浮かべながらそう言った。

 俺は1礼し、店を出て、食堂に向かった。






 ○





 マイクショップから三軒隣まで歩き、食堂『オールスマイル』に着いた。

 扉を開けて中に入る。

 カランカラーンと音が響いた。


「「いらっしゃーい」」


 2人の男女から大きな声で出迎えられた。

 この店は中年の夫婦が営んでいる。

 グレイグとローラの2人。

 グレイグは髭の生えたダンディなおっさんで、ローラは小太りのよく喋るおばさんだ。


「あれ? お客さん見ない顔だねぇ」


 俺はミーシャから牧場を任されたと言う事を説明した。


「あーあんたが、ミーシャちゃんの言ってた」

「ちょっとなよっとしてるな。うちの飯食って肉つけていけ」

「は、はい」


 ミーシャちゃんもしかして、町中に言ったのか?

 この感じだとその可能性もあるな。


「何にする?」

「エビフライカレーライスで」

「はいよー。今から作るから、適当な席に座って待っててくれ」



 グレイグにそう言われて、俺は少し奥の席に座る。


 少し寛いでいると、


「こらー! フレッタ! 何くつろいでんだ! お客さんに水を注いで持っていけ!」

「えー客ってこの時間にー?」

「いいから出ろ! クビにするよ!」

「ひぇー。わかった行くから! 行くからさ!」


 そんなやり取りが厨房の方から聞こえてきた。


 しばらくすると、水の入ったコップを片手に持った女の子が俺の座っている席へ歩いて来た。


 赤色のセミロングヘア。眉毛が少し太くキリッとしている。顔は整っておりかなりの美人だ。

 ウェイトレスの格好をしている。


「ほら! 全くなんでこんな時間にくんだよーおこられたじゃんかよー」


 少し怒りながらコップをテーブルの上に置いた。

 この態度最悪のウェイトレス。

 オールスマイルでアルバイトをしている、『フレッタ・アーネット』、ヒロインの1人だった子だ。


「客にそんな事言っていいのか?」

「こっちは怒られてんだぞー? グチくらい言わせろよー」

「何で客として店にグチを言われな、ならん」

「こんな時間に来るのが悪いんだー。もうとっくに昼飯時は過ぎてるぞー」

「腹減ってるんだから、仕方ないだろ」


 そもそも今何時なんだ。

 地球と同じく1日は24時間だったはずだ。

 時間どうやって見れるのか探してみるか。


「あれ? そう言えば、誰?」


 今、気づいたんか。


「全然見た事ない。誰だお前! この町は狭いから大体顔見知りなのに! 怪しい奴め!」

「何が怪しいんだよ。南の牧場をミーシャから任せられた、タクマ・サイトウだよ」

「あー! ミーちゃんが言ってた奴か。タクマって言うんだな。覚えたぞー。あ、私はフレッタ・アーネットだ」


 多分俺の名前、すぐ忘れる。


 このフレッタと言う娘。

 短い言葉で言えば馬鹿だ。

 人の名前やレシピをすぐ忘れる。

 接客もまともにやれてるようには見えない。

 ただこの町は狭いから、多少の無礼は許されており、逆に看板娘として人気ではあった。


「そっかー牧場やってたんだなー。どうりで汗臭いと思ったんだ」

「あせくさっ!?」


 結構作業して汗臭くなってたか!?


 なんか恥ずかしう。

 つうか言うなよそんな事。

 デリカシーもないなフレッタには。


「フレッタ! 出来たから料理を運びなー」

「はいはいー」


 ローラに呼ばれたフレッタは、駆け足で向かった。

 そして料理を持ち、俺の元に運んできた。


「エビフライカレーライスだ。……めっちゃうまそう……」

「やらんぞ」

「くれと言ってないだろー!?」


 顔見りゃ分かる。

 めっちゃ食いたそうな顔してた。


 さてエビフライカレーライスだが……

 現実では食った事はあるが、この店のがどんな味かは知らない。

 ゲーム時代は味覚がなかったからな。


 このエビフライカレーライスを買った事は何回かある。

 結構、優秀な効果があったからだ。


 ただ、頼んで見るたびに、めちゃくちゃうまそうな見た目なのに、味わう事が出来ないのが歯がゆく感じていた。

 異世界だと、どんな味なんか気になって気になって。

 他のキャラがあそこのかエビフライカレーライスは絶品だと言っていたりもしていたので、なおさら食って見たかった。

 今日それが叶うのか。


 スプーンで掬って食べる。

 うまい。

 うん、つーか普通のかなり美味いカレーだ。

 異世界だから違うとか無かった。

 でもかなりうまいはうまい。

 ルーの味は程よく辛くていい感じだ。

 エビもプリプリでうまい。

 俺はガツガツと勢い良く食う。


 ふと、前を見て見ると。


 よだれをダラーと垂らしながら、俺の食っている所を座って物欲しそうな目で見ている、フレッタがいた。


「めっちゃ食いたそうだな」

「えええ!? べべべべ別に食いたくないよー?」


「いや慌てすぎだろ。どう考えても食いたそうじゃん」

「う……だって仕方ないじゃん。今日昼飯早かったから、ちょっと小腹が空いてるんだよー」

「どうしても食いたいなら1口くらいなら食っていいぞ」

「え!? マジ!? やった!」


 フレッタは歓喜して俺の持つスプーンを奪い取る。

 その後、1口と言う言葉が聞こえてなかったのか、がつがつと食い捲くり平らげてしまった


「おい! 1口つっただろ! 全部食う奴があるか!」

「うまかったー」

「うまかったじゃねー!」

 

 何て奴だ。

 それなりに食ったが、まだ全然食い足りない。

 なんてことしてくれたんだと、俺はフレッタを睨みつける。

 食い物の恨みは恐ろしいだぞてめぇー。


「こらー! フレッタあんたお客さんの飯食ったのかい!?」

「あ、やべ!」

 

 まずい事をしたと、逃げようとするフレッタ。

 しかし、逃げ切れずローラがフレッタを捕まえて、拳骨を食らわした。

 

 俺のエビフライカレーだがお詫びにもう1食、貰える事になった。

 食われた瞬間はフレッタの奴をぶっとばしてやろうかとも思ったが、逆に得した。


 俺は二皿カレーを食べ終えて、金を払って店を出た。


 さて、家に帰って農作業を始めるかー。





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