3話 牧場の説明とか
――――牧場の経営をしてください。
そう言われるのは分かっていた。
こっから、簡単な操作方法のチュートリアルを受けるようになってるはずだ。
チュートリアルつってもゲームの中の話しだから、ここが現実になっているのなら、どうなるかわからんがな。
しかし、基本ゲームの流れに沿っているよな。
ここまで同じだと、本当に異世界に来てんのか疑問に思うな。
まあ、本来とは違う行動取れたりもしたから、やっぱゲーム内ではないんだろうけど。
めっちゃリアルな夢って可能性もあるな。
とりあえず、このまま進めるかー。
仮に夢ならいずれ覚めるだろ。
覚めなかったら現実だってこった。
「あの、牧場を経営して欲しいですけど……無理ですか?」
おっと、考えていたせいで、返事が遅れてしまったようだ。
「やるよ」
ゲームでは嫌だって言ったら、やると言うまでループするからな。
この場合どうなるかわからんが、肯定すれば変な展開になることもないだろう。
「よかった! 牧場について説明するので、付いてきてくれませんか?」
「わかった」
ミーシャは家の外に出て行くので、俺も後を付ける。
家の外には農地とモンスター小屋がある。
農地めっちゃ荒れてて、木が落ちてたり岩があったり雑草が生えたい放題だい。
モンスター小屋には最初は何もいない。
俺は外に出た。
やっぱ荒れてるね。
「すいません。結構放って置かれてるので少し荒れてます」
ミーシャが申し訳なさそうに言う。
ゲームを始めたばかりの頃は「少しじゃねぇーだろ!」と突っ込んでたなぁ。
「農作業に必要な道具はあそこにあります。『ジョウロ』と『クワ』と『カマ』に『オノ』に『ハンマー』です。ついでに『カブの種』もありますよ」
最初にボロい農具と、種が貰える。
手渡せるはずだったが、現実ではおかしいので、農地の横に置いてあるみたいだ。
「カブを育てたらあちらにある箱」
ミーシャは家の真ん前にある箱を指差す。
「あそこに入れたら、出荷できます。お金はちゃんと支払われるので安心してださいね。カブ以外にも売れそうな物はなんでも、出荷できます」
これは一緒だ。
ぶっちゃけ現実と考えると結構変だが、細かい事は気にしないでいこう。
「あと、あちらにある小屋」
ミーシャが視線を後ろの方に向ける。
俺もその方向を見る。
小屋が一軒立っていた。
「あれはモンスター小屋です。『テイム』してきたモンスターをあそこで飼うことができます」
「モンスターって?」
当然知ってるけど、一応この世界のモンスターとゲーム時代のモンスターの設定に齟齬があったら困るので、尋ねてみた。
「モンスター知らないのですか? えーと、モンスターは別の世界からやってきた住人です。この世界では攻撃し人間に敵対しているモンスターもいれば、『テイム』されて人間と共に暮らすモンスターもいます。
主に各地にある、ダンジョンに生息しています。
モンスターは死なず、倒したら元の世界に戻ると言われています」
この辺は一緒みたいだ。
倒したら元の世界に戻るというところも一緒みたいで安心だ。
殺したくはないからな。
『ファンタジア・ファームシリーズ』の牧場は、現実における羊や牛などの代わりに、ダンジョンなどにいるそれらに似たモンスターをテイムし、そのモンスターを飼って羊毛や牛乳をとるようになっている。
その他にも、変わった物を生産するモンスターをテイムして、飼うことも可能だ。
何も生み出さないモンスターを戦闘の手助けの為、飼うこともある。
ちなみにテイムとは、モンスターを捕まえて飼う事の事だ。
「えーと、そうですね。あ、そうだ。タクマさんはリターンとステータスの魔法を使えますか?」
ん? ステータスの魔法?
リターンはわかる。この魔法を使えば何処からでも自宅に戻れるようになるんだ。
ステータスの魔法とは聞いたことはない。
俺はミーシャに魔法について説明を求めた。
リターンについては予備知識通り、ステータスは、
「ステータスの魔法は、使えば自分の現在の状態を知る事が出来るんですよ。スキルやレベルがいくつか知れます。魔力をあまり消費せずに使えるので便利ですよ〜」
なるほどステータスが見れるようになる魔法があるのか。
「魔法を使うには、それぞれの魔法の実を食べてばいいんです。ちょうどリターンとステータスが使えるようになる魔法の実があるので食べてみてください」
これは同じだ。
魔法の実ってのは、ダンジョンの中とかに生えてる変な植物になってる実だ。
説明通り、食ったら何らかの魔法が使えるようになる。
魔法の実をつける植物は1個しか実を付けず、実を取ったらすぐ枯れる。
ミーシャが何故そんなもん都合よく持ってるのかは聞くな。
ミーシャは懐から魔法の実を取り出した。
蜜柑くらいの大きさで、色は赤いのと、青いの。
確か赤がリターンの実だ。つーことはオレンジがステータスだな。
俺は実を受け取り、食べる。
最初にリターンの実の方を食べた。
不思議な味がする。まずくはない。
ゲームの場合は味などしなかった。
食べ終わったら、『魔法を習得しました』と頭の中に直接メッセージが響いた。
ステータスの実も食べた。
同じようにステータスを習得したとのメッセージが、頭の中に響く。
「これで魔法名を唱えたら、発動するようになりますよ。ここでリターンを使うのも何ですので、ステータスを使ってみてください」
そうだな俺も試してみたかった。
俺は『ステータス』と言って、魔法を発動させた。
おお。
俺の目の前、空中にステータスが書かれた画面が表示された。
左側に生命力、スタミナ、魔力の残量を示したバーがあり、右側にスキルの項目がズラーと並んでいる。
スキルは全50個ほど存在する。
多いので全部は言えないが、《農耕》、《伐採》とか戦闘だと《剣術』》とか《拳術》とかある。
スキルの項目には、それぞれ溜まった熟練度の数を示すバーがついている。
熟練度がバーいっぱいまで貯まれば、スキルレベルがアップする。
現在は全て1だ。
「ステータス確認しましたか? 他人からは見えないようになっています。もう一度ステータスと言えば消せますよ」
「わかった」
俺はもう一度「ステータス」と言った。
すると画面が消失した。
「とりあえず私に説明できることは、これだけです。テイムの仕方とかは、私は説明できないので、北にある町にいるハリスさんに聞いてください」
ハリス。
NPCの1人だ。髭面の白髪のおっさん。
昔、牧場をやってたらしく、プレイヤーにテイムの方法を教えてくれる。
「最初は、この荒れた畑を整地するといいですよ。私はこれで。何か困った事があれば北にある町に住んでますので、聞きに来てください。では頑張ってください」
「色々ありがとう。頑張る」
ミーシャはそう言って、去って行った。
さて、言われた通り最初は畑を整地するか。
俺は農具を取って、畑の整地を始めた。