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今日は空が青かった。


 季節の変わり目の日差しが温かくて風が冷たく過ごしやす過ぎる日。俺は家の中で過ごすのが勿体なく感じたので近くのコンビニに出掛けることにした。まぁそのせいで車がぶつかって来て死んでしまったんだけどね。


 忠告しておくとコンビニで立ち読みするならすぐ外に停まっている車が若い奴の車か、それとも糞カスボケ老人の車かを確認してからゆっくり読んだ方が良い。俺みたいにアクセルとブレーキを間違えた車が突っ込んできて死にたくなけりゃあね。


 まぁ今のご時世珍しい事じゃないか。


 俺は自分が死んだら間違いなく地獄に落ちると思っていた。それも吝かではなかったし地獄も結構楽しみにしていたのだが気が付くとそこは閻魔大王の御前ではなく何処か知らない山の中だった。


 天気は変わらず酷い快晴。


 耳を澄ませば小鳥のさえずりが聞こえてきそうな久しぶりの静かさで何処かに続いている慣らされた道が目の前から何処かへと延びていた。


 あまりの平和さに、あれ? ここって天国じゃね? と思いながら俺は歩き出した。


 取り敢えず自分が死んだ自覚はハッキリあった。死ぬってこんな感じなんだな! と死ぬ直前ちょっとテンションが上がったのを覚えている。


 しかし、いくら思い返しても俺が天国に来た理由が分からない。


 俺が天国に来れたなら天国行の審査基準は原付の免許くらい緩いってことだが、それはちょっと考えにくい。それなら今頃天国は定員オーバーの寿司詰め状態だろうし、なんたって俺が行った善行なんて……ちょっと直ぐには思い出せないくらい無い。逆に悪行は数えきれないっす。



 ならここは何処なんだろうなー と結構な距離の山道を歩いていると不意に人の気配があることに気が付いた。


 前に6人、後ろに回り込もうとしているのが更に3人。


 姿を見せずに俺を取り囲もうとしているんだから碌な奴らじゃないだろう。


 ただ、俺が一人だというのに侮らず囲みに来ているのは好感が持てた。


 いいねぇ。悪党でもプロ意識は大事だよ。


「おい、兄ちゃん一人でどこに行くんだ?」


 気が付かない振りをしていると臭そうなおっさん達がそう言いながら現れた。


 ああ、これ山賊だわ、山賊。間違えようのない山賊100%だわー


 革や麻布を組み合わせた服にデカい剣や斧、っていうか今時全身革とか、あれなんていったっけ? ガーリック? まぁそんな感じのニンニクっぽい名前のコーデがこんな中年達にも流行っているんだろうか? それかコスプレ?


「一つ聞くが兄ちゃん魔法使いか?」


 魔法使い? やっぱりこれ何かのコスプレイベントかリアル脱出ゲームかなんかか? 


「まぁここまで来たらどうでもいいけどよ。 やれ」


リーダーらしき男がそう言うと後ろの3人が襲い掛かって来た。




 まず最初に剣を振り上げてきた男の手を掴みそのまま手首をねじ折って剣を落とす。


 腹に蹴りを入れてもう一人にぶつけると同時に剣を拾ってそのまま3人の首を斬り飛ばした。


 血の噴水を上げながら膝から崩れ落ちる死体を見ながら思った。


 あ、これ殺しちゃ駄目だったんじゃね?


 少なくともここが何処か聞いてから殺さないと俺が死んでからの状況がさっぱり分からん。


「てめぇ!! よくもやりやがったな!! 全員でやるぞ!!」


 いやそっちが先にやってきたんじゃん。逆ギレされても困る。襲い掛かられたら殺すしかないでしょ普通。


 ここで一つ覚えていて欲しいのだが相手が大人数の時に最初にリーダーを狙えというのは間違いだ。

 

 それは喧嘩とか相手が殺意を持っていない時の対処法で殺しに来ている時、かつ相手に飛び道具を持っている奴がいない場合だ。今回のようなガチの殺し合いの場合は普通に近い奴から順に殺していこう。そうすれば大体何とかなる。ちなみにこの応用で敵が全員銃などの飛び道具でこちらをハチの巣にしてくるときは逆の一番遠い奴から狙おう。


 そんな訳で俺はいつも通り襲い掛かって来た順に首を跳ね飛ばしていった。


1,2、3、4、5,6


 それがまたいつもの癖で何にも考えないで動いたもんだから、だから殺しちゃ駄目じゃん! と我に返った時にはもう俺以外に生きている奴はいなかった。


 辺りには濃ゆい血の臭いと静かな風の音だけが残っていた。


 全くなんでこんなことになっているんだよ。


 またここが何処かも分からず、なぜ死んだのにこうなっているか分からない振り出しに戻ってしまった。



 俯けば一面の鮮やかな紅い絨毯。上を向けば薄く強烈に晴れた蒼い空。その対比が綺麗だと思った。


 元はと言えば責任は何にあるかというと、俺には何も一切の非はなく。今現在の状況の全ては



 今日空が青かったからだ。


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