第22話 I_was_bone_to_love_you
俺は、お前のことが好きな骨だったらしい
あれから、数か月が経った。
流石にあれほどの事件の中枢にいたのだから、ただで帰れるわけがない。道雄はまるで政治的な大物か金持ちか、それとも化け物か犯罪者のように警察に保護され、飽きるほど取り調べを受けた。
めぐりのことは、流石に話さざるを得ない。というより、本格的な捜査が行われている為に、道雄とめぐりの目撃情報などと矛盾すれば、また紛らわしいことになると道雄は考えたためである。しかし、援助交際的な、いわゆる不純な関係だけは断固として否定した。ただやはり、未成年がタバコを吸っている事実を見逃していたことだけは、大人たちに怒られた。それも本田でさえ、呆れてフォローしなかった。それも恰幅の良い警官の一人が、脅すような声で怒鳴りつけ、彼の心臓は何センチか縮んだ。さらには少年犯罪者ようの更生施設だとかビデオを使用しようかなどと提案もあり、道雄は少しの間ビクビクと震えた。
しかし、緑の煙内で行った盗難行為や、タバコなど商品の無断使用は必要悪であると見逃された。むしろ、皆が皆、道雄を英雄視するところさえあり、道雄の評判は妙に高かった。老若関係ない女性警官にモテたのも初めての体験で、すこし照れていた。もちろん、もっと他に賢い方法はなかったのか、などと疑問を呈す人間もいたが、それでも最後には渋々納得した。
そして、無事に解放されるか……と思えばそうとはならなかった。道雄をぜひ取材したいと、マスコミが殺到したのである。それも、このレベルの事件である。名古屋に留まらず、日本、それに海外からも取材班が殺到。久々にネットニュースを見た道雄は、自身の肖像権が杜撰を超えて冒涜的に乱用されていた事実に頭を抱えた。どうやら、彼の家族も警察に保護されているらしい。しかし、現代の情報の速度は目を張るものある。テレビ局や新聞や雑誌の記者さらには素人の独自捜査によって、少なくとも道雄のプロフィールや住所、それに性格や交友関係(彼の場合は、友達がいない事)まですべて晒されていた。
ちなみに、あの緑の怪物は宇宙人と言うことになった。数千人の被害者が出たディザスターともなれば、下手に隠したところでしょうがない。政府は防衛意識を強く非難された。そして、今後も適性宇宙人を迎えるために、紅のⅠや蒼のⅡなどの文明と連携を求めたが、結果は無念。そもそも紅や蒼の存在が姿を消してしまった。コンタクトを取る方法も他にないし、彼らの怒りは無力な政府や自衛隊に集中した。
「と、言うような顛末なのね」
だいぶ汚れてしまったst250が高速を走る。運転席にはもちろんフルフェイスのヘルメットをかぶった道雄。それに後ろ座席には、優雅に景色を眺める紅。
「ああ、酷いもんだった。極秘で泊まっていたホテルは一日も経たずに特定されて、それでまた引っ越し。顔を見られたら基本的に一悶着あるから、マスクにサングラスをかけるんだが、それでも声で見つかることもある。んでもって。マスコミが本当に容赦ないんだ。夜中に平気でインターフォン鳴らしてくるし、ちょっと面白くないコメントをすると悪評を書くし、スキャンダルが欲しいのか、ハニートラップっぽい女性もたくさん言い寄って来た。そういや、本田さんもその辺で大変らしいぞ。なんせ、有名女優に言い寄られてるらしいから」
「あら。貴方もそういうことあってもいいんじゃないの? 本田よりは少ないと思うけれど」
「……あっても怖い。あと親戚が増えた」
「めでたいわね」
「皮肉だよ。顔も名前も知らない親戚がインタビューを受けていて、好き勝手言ってるんだ。ある種、確かにめでたいよ」
「でも、少し嬉しそうね」
「まぁ、人気者なのはちょっと嬉しかったよ。今は、いろいろと大変だ。大学も当分行けないし、こらもう一年留年かなぁ……」
はぁ、と道雄は大きくため息をつく。紅は後ろでクスクスと笑っていた。紅は道雄と共にした経験からか、より感情が豊かになっていた。
「それにしても、お前、あのメッセージはないだろ」
「メッセージ?」
紅はとぼけた様に聞き返した。まるで道雄の口からそれの正体を明かしてほしいと言わんばかりであった。
「めぐりのスマホを奪って、あの時、俺にメッセージを届けたことだよ。『ナゴヤドームで苦戦。help』って」
「ええそうよ。一応、貴方がずっと気にかけていた女の子からのメッセージだと思ってくれれば、喜ぶかと」
「んなわけあるかいボケ。俺でも不謹慎な言動だってわかるぞ」
「そうかしら……? それなら申し訳ないわ」
紅は人間の機嫌を損ねた時のみ、素直に謝る癖があった。
「それで? これからどうするの?」
「長野に行きたかったが……まぁ、めぐりと行きたかったところに行くなんて未練がましいし、とりあえず富士山を一周してみるか。朝の景色が綺麗なんだよ。めぐりは全く理解しなかったが、お前にはわかると信じてるぞ」
「いいわね。下手なものを見せたらバイクを燃やしちゃおうかしら」
「最悪だね。下手なことをしたらバイクから突き落とすぞ」
道雄は少しおかしくて笑って見せ、バイクのアクセルを少し捻ってスピードを上げた。
紅は少し不快だったのか、st250のライトのあたりに強い熱を加えた。
「おい! マジでやるなよ! あっぶねぇえ!」




