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第10.1話 禁じられた夜遊び 


戻れっ! 戻れっ!


この出来損ないめっ! 知能の低い人間ごときめっ! 


逃げたところで何になる! 死ぬくらいなら草を食う猿になるほうがマシだろう! 



 至近距離でドラムが鳴っているような耳鳴りが谷口を襲う。耳を塞いでも、それは直接脳内に伝わっているため全く効果がない。彼にできるのは、脳を揺らされても必死に抵抗し、耐えることだけだった。


丑三つ時で辺りの光も乏しい道を、彼は重たい体をなんとか自宅まで運ぶ。すれ違った通行人は酔っぱらいと勘違いしているため、彼の危機的状況に何とも思わない。



戻れっ! 糞猿が!


なぜだ、私の操作権限に加え、マザーの催眠作用があるというのに、なぜこの男には通用しない!



「黙れ、俺の中から出ていけ……」


 マザーに支配される形で機能を再生された黄のⅢが、 何度と強い通信指令を谷口へ発信する。その通信は、マザーのドラッグの催眠や陶酔作用を利用した、いわゆるハイブリッド型の……つまりは黄とマザーより優れた支配能力だった。


本来ならば、谷口がこれに抵抗で来ている事実は異様でしかない。不覚だったとはいえ、谷口は一度、黄の支配下にあった経験もある。さらに、マザーの緑の煙を大量に吸って、意識を失ってもよいはずの体だ。通常の論理で考えれば、彼が抵抗できる可能性はほとんどゼロである。 

__もう駄目だ


 しかし、抵抗が出来なくても、黄の通信が彼の脳に深刻なダメージとなる。思考能力は低下し、感情は大きく落ち込む。抵抗があまりに空しく無力だという事だけははっきりとわかっているため、閉塞的になる。


そしてついに、彼は自殺と言う形を取った。


彼がもし、平常の思考能力を得られたならば、有野高校の事実だけはメモに残すだとか、警察への捜査を頼むだとかしただろうか。


 しかし、今は、謎は謎のまま闇の中へ。


 有野高校の実態と、マザー、それに黄の謎は闇の中……。


 加えて、谷口が今になって黄の通信に耐性ができたことの謎も……。



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