第7話『VSウラノス』
「これで14人も揃ったか。この世界に対しては『観察』はできないし、多分これが最後の戦士じゃないか?」
終作がそう言うと同時にパリンと甲高い音が響いて、結界がガーゴイルに破られる。
「な!?」
「なぜ!? まだ結界には時間があったはずよ!」
霊歌と藍は驚き、全員が居酒屋から外に出る。
「喚神の儀……」
「は?」
「ガーゴイルたちもそうだが……おそらく、原因は奴だ」
藍の指し示す先には、巨大な顔が天に浮かんでいた。真昼間で明るく、天に浮かぶ大陸が覆っていたはずの空は紺色に染め上げられ、星々が瞬く──その星々が光の線によって繋がり、顔を模っていた。
その発する魔力は、まさしく絶大。最古の宇宙王、その名も──。
『──我が名はウラノス。天を統べ、宇宙を統べる者』
「ウラノス!? 最古の神王か!」
優一の問いに、ウラノスは頷きながら応える。
『左様。では、散れ!』
ウラノスがそう言った途端、目視できるほどの凄まじい魔力が収縮、拳となって戦士達の元へ振り下ろされる。
「やられてたまるか!」
「あれを回避したらまずい! 幻想郷がそのまま押しつぶされる! 食い止めるぞ!」
大和のその言葉に従って、14人の戦士達はその拳をそれぞれの方法で食い止める。
あるいはその肉体。あるいは、大量の弾幕の放出。
「くそッ! 相手の持つ魔力が強すぎる!」
大和は悪態をつきながらも、自身の持つ霊衣の全てを発動してその能力を高める。
海斗や白、聖人達はそれに従ってスペルや超技術で戦闘能力を極限以上に引き上げ、降ってくる拳に立ち向かう。
「……ヤベェ! ガーゴイルが!」
戦士達がウラノスを食い止めている間に、ガーゴイル達が人里に襲いかかる。
ウラノスと戦っていない霊歌、藍、パルスィがガーゴイル達に対抗し、またウラノスを食い止めている戦士達もそれぞれの弾幕や能力でガーゴイルを屠っていくが、圧倒的に攻撃の数が足りなかった。
「くそ! どうすれば……」
「総員、突撃せよ!」
次の瞬間。人里に襲いかかるガーゴイル達が、どこからが現れた鎧武者達によって倒されていく。
「これは……?」
「話は後! とりあえずは現状を打開する!」
戦士達の目の前に現れた少女はそう言うと、鎧武者に対して指揮をとばす。
「拙者、名を姫鶴白刃と申す。拙者自身は非力なただの付喪神……ただし、拙者の持つ兵力は日ノ本一! いずれは乱世を統一する我が殿が一の家臣として、妻として! 今ここでその真価を発揮するとき!」
白刃はそう宣言すると、さらに多くの兵士を自分の周囲に出現させる。
「いざ行かん! 友よ、この地を救おうぞ!」
「うぉぉぉぉお!!」
白刃のその言葉と共に白刃の周囲に現れた何百もの兵は、一部はガーゴイルを討伐に、また一部は大和達のサポートへ入る。
『ほう。では、手を一つ増やすとしよう!』
「すまねぇ! ここは頼む!」
優一はそう言うと、戦士達の中から1人離脱した。
「何するつもりだ!?」
「奴を隔離する!」
「やめろ! 奴の格じゃあお前の体が持たねぇ!」
「体が持たずとも、俺なら奴を食い止められるだろ!」
優一はそう言って、自身の持つ全ての力を解放してウラノスへと向かっていく。
『宇宙に抗うか! よかろう、お望み通り叩き潰してやるわ!』
ウラノスはそう言うと、優一へともう一つ拳を作り出してそれを叩きつける。
「零! 短い時間だったが……またお前と会えてよかった!」
「やめろ、優一!!」
白の制止も聞かずに優一はウラノスの拳を受け止める。その直後……優一とウラノスは、諸共に消滅した。
「……クソオッ!」
「ギヒッ! その『憤怒』、強化してやらァ!」
大和が吠える。その瞬間、大和の憤怒は熱となり、力となり、アルマの介入もあって大和自身の霊衣として大和を包んでいく。
それは大和の持つ、唯一の大和の霊衣。
他の英雄、幻想郷の他の人々に借り受けたものでもなく、地球によって与えられた力でもない。
其れは憤怒が如き力。故にこそ、その怒りは灼熱を超え、神の名を轟かせる。
「神怒『憤怒の神王』」
大和が顕現したその瞬間、雷は空を裂き、天は崩落し、ガーゴイルは為すすべなく朽ちていく。
「……行こう。奴を……止めなきゃならない。もう、ウラノスのような神を増やすわけにはいかない! 優一のような人を増やしてはいけない!」
『おう!』
ゼウスの霊衣を纏う大和のその言葉に戦士達は頷く……が、そこで零、神姫、シルク、アルマ、パルスィ、白刃は難色を示す。
「俺たちは待ってる。ガーゴイルがまた現れないとも限らないからな」
「……分かった。幻想郷は頼んだ」
「拙者に任せるが良い! なに、ガーゴイルならば拙者の兵でなんとでもなろう!」
「ああ」
大和はそれに頷いて居残る6人以外は、ウラノスが居なくなったことで天空に再び現れたパンゲアへと飛翔していった。
◇◆◇◆◇
「ハア……ハア……」
「そんなものか。甘いぞ、次元の」
高身長の人間に変貌したウラノスはそう言うと、手元に出現した星を優一へ撃ち出す。
優一は無限の硬度を持つ八式結界で防ぐが、結界は次第にヒビが入っていく。
「無限の硬度の結界だぞ……!」
「我が魔力をもってすれば、干渉するなど造作もない」
「はあ……ならしょうがない。覚醒『創造者』」
スペルの宣言によって、優一の服装と紫色の目は黒く染まっていく。
「……ほう、面白い」
ウラノスがそう言った次の瞬間。雷光と共に青年が現れる。
「お前……! どうやってここに入った!」
「……(後で)」
優一の問いに青年は黙ったまま、ウラノスへ金色に輝く聖剣を向ける。優一は創造の能力によって青年の思考を読み取り、ウラノスへと向かう。
「フハハハハハ! よかろう! 2人でかかってくるがいい!」
ウラノスがそう言ったのを皮切りに、青年は聖剣を振るう。その先から放出される光の一撃は、ウラノスへ真っ直ぐに向かった。
ウラノスはそれを星の変形した盾で防ぐと、その盾を剣へと変形させて2人へと向かっていく。
青年と2人もまた、それを迎え撃つように剣を構えて立ち向かっていった。