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第6話『嫉妬と怠惰と馬鹿とクズ』

 海斗の拳が、アルマの拳とぶつかる。


「……チッ。ラチが明かねぇなあ!」

「ギヒッ! これぞ愛の力よ!」

「何ほざいてやがる! 意味わかんねぇ!」

「こういうことよ! 嫉妬『ジェラシーボンバー』!!」


 アルマの言葉に海斗が罵声を飛ばした瞬間、アルマの背後で待機していただけのパルスィが急にビームを撃ち出す。


「ふんっ!」


 奇襲で放たれたその渾身の一撃に対して、シルクはアルマの盾になるように立って腕を突き出した。

 シルクの魔法によって強化された両腕はパルスィのビームを容易く防ぎきり、むしろそれを絡め取ってアルマに撃ちだした。


「うおっと! 暴食『パープル・アイド・モンスター』」


 アルマはそれを紫色の小さな弾幕で捕食すると、反射板(リフレクト)のようにパルスィのビームは撃ち出される。


「おや、これは計算外」


 シルクはそう言いながらも、そのビームの上を走ってアルマへと駆ける。


「そんなのありかよ!? ギヒッ! 面白ェ! 受けてたってやらァ!」


 アルマは、二本のナイフを構えて向かってくるシルクに対して、骨のような双剣……魔双剣・芥骨を装備して迎え撃つ。


「おらあっ!」

「ハッ!」


 双剣と双剣、計4本の短剣がぶつかり合い、火花を散らして舞うようにその刃は振るわれる。


「この程度ッ!」


 アルマはシルクの双剣を弾き飛ばすと、左足でシルクの顎を蹴り上げる。


「ラアッ!」


 そのまま、アルマはかかと落とし──しようとしたところで、海斗によって蹴り飛ばされた。


「大丈夫か!?」

「まあね。さて……こいつは厄介だなぁ」

「そもそも、なんであいつと戦わなきゃいけないんだよ?」

「そりゃ、天に浮かぶあの大陸にアルマが弄ったとしか思えないほどに強い感情の持ち主がいるからね」

「そんな理由で!? アルマが弄ったことが確定してるわけじゃないんだよな!?」

「うん」

「クソだなお前!?」


 海斗はそう言いながら、武装を解く。


「なんだ、ようやく話を聞いてくれるようになったのか。今更」


 アルマがそう言ってニタニタと嗤う。海斗はそれにグッと詰まりながらも、アルマに歩み寄っていった。


「落ち着いたか、お前ら」


 その次の瞬間、アルマ達の元に終作をはじめとする居酒屋に集まった一同が、次元の穴から落ちてきた。


◇◆◇◆◇

──一方その頃、パンゲア


「チッ! さすがに2対1はキツいな!」


 大和はそう言いながらも、ソロモンとなったアイリスによる数多の攻撃を避けきり、尚且つ本命の強撃であるファミルの攻撃を食い止める。


「おらよ!」


 大和はファミルを投げ飛ばし、距離を置きながら向かってくるソロモンの龍達を、弾幕で一つ残らず迎撃する。


「フハハハハ! 抗うか! 無為、無駄、無力! 貴様には我らを倒すことはできぬ!」

「んだとぉ……!」


 大和はそう言いながら、自らの手に鎌を出現させる。


「不死殺しの鎌……その名もハルペー」


 其れはギリシャ神話に名高き英雄、ペルセウスの持つ不死殺しの鎌。神造兵器であるそれは、地球の持つ霊衣として、大和の武器となって顕現した。

 大和はファミルとソロモンの攻撃をくぐり抜け、ハルペーをソロモンへと振るう。


 ソロモンは空間転移でハルペーの鎌の攻撃を回避すると、これでもかというほどの大量の龍を放つ。大和はその攻撃をダメージを吸収する結界で防ぎ、そのダメージを最後に向かってきたファミルに撃ち出す。


「おっと」


 ファミルはそれを回転して回避し、しなやかな左脚の蹴りが大和に打ち付けられる。


「その程度!」


 大和はそれを右腕で防ぎ、左腕でファミルの腹部に一撃を加えようとする。

 ファミルは結界でそれを防ぎ、大和から距離をとった。


「チッ……」

「手伝ってやろうか?」


 大和が舌打ちをした瞬間、唐突に声が響く。

 そちらにいるのは、1人の青年だった。


「……貴様。摩多羅の縁者だな?」

「ご名答」


 青年はソロモンの問いかけに答える。その直後、激しい憤怒は物理的な熱となって、大和達のいる神殿を覆う。


「おぉう……あっつ……」

「あの忌々しい神の名を出すか……! 私から役職を奪い、権能を奪った奴を……! この場所は! 幻想郷は私のものだ! 誰にも渡しはせぬ!」

「どこの誰かは知らねえ。だが、お前が摩多羅にとって良くないものだってのは分かる。お前にゃ恨みはねぇが、覚悟してくれ」


 青年はそう言うと、どこからか刀を取り出して片手で構える。


「……ていうか、お前誰だよ?」

「おっとすまん、自己紹介が遅れたな。俺の名は摩天楼 辰」


 辰は自己紹介を終えると同時に、凄まじい身体能力で歩み始める。

 目視できない速度ではない……が、一瞬での移動に対してファミルの肉体の反応は一瞬遅れる。


 ファミルは為すすべなく辰によって壁に打ち付けられる。


「主人!」

「お。素の人格が出つつあるな」


 ソロモンによる大量に召喚された龍の突撃を、辰は最小限の動きで回避する。

 そのまま少しずつ、ソロモンへ最も効率的な道筋をもって近寄る。


 辰はそのまま刀を振り上げ、容赦なく振り下ろす。


「アイリスちゃ〜ん。そんなに焦っちゃダメだって。不死とはいえ、ね?」


 辰の振り下ろしたその刀は、ニタニタと赤い口の口角を吊り上げる影法師に防がれた。

 全身は黒く染まり、悍ましいそのオーラ故なのかその全貌を把握することは叶わない。

 ただ、その小さな体躯に対してあまりにも大きすぎる巨大な赤い口だけが、辰と大和の瞳に映った。


「助かった、影夢(えいむ)……」

「ありゃ? ソロモンさんはおねむかい? ま、いいや。ファミル様を回収して、撤退するよ」


 影夢と呼ばれた少女はそう言うと、影法師の手を吹き飛ばされたファミルに伸ばした。


「くそっ! 待ちやがれ!」


 その手がファミルに到達した瞬間。眩い光が、影夢とアイリスを包んだ。


「チッ……逃したか」

「お待たせお待たせ。……あれ? 追い払っちゃったの? んで、そちらさんは……おお」


 唐突に次元を切り開いて現れた終作は別の次元から辰の情報を読み取ったのか、ニヤリと厭らしい笑みを浮かべる。


「これは面白いモノを見つけたね。そいじゃ戻ろ」

「モノ……?」


 辰は『モノ』と呼ばれたことに対して、殺気立ちながら刀に手をかける。

 次の瞬間、神速の斬撃が終作の身を八つ裂きにする。


「おーっとぉ。苛烈ゥ! 面倒だから、行くぜ」


 終作はそれに対してなんでもないように再生すると、そのまま次元の穴の中に入っていった。


「……どういうことだ? 奴から不死身の概念は取り除いたぞ?」

「まあ、あいつの『格』を考えりゃ頷けるな。行くぞ」


 大和の催促に従って、辰は次元の穴をくぐっていった。

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