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第32話『VSラスボス』

とりあえず今回でゲートの向こう側編はおしまいです。次回は今回活躍しなかった人たちの博麗神社防衛戦か、それとも宴か、そんな感じで考えてます。宴ならネタバラシもしなければなりませんね。

 霊斗が消えた後景色は一変し、今度は闘技場のように変わる。その中心、少し高いところには鳥かごのようなものが浮かぶ。その中で更に気を失った霊夢が浮かんでいる。


 そして、霊夢の浮かぶ鳥かごの反対側には、1人の少女が立っていた。

 その服装は霊夢に似ているが、容姿だけで言えば真っ正面から相対していれば間違うほどではない。可愛いという共通点はあるが、逆に言えば少し似ていてもその程度だ。



「お前が……黒幕か?」

「ええ、私は博麗 霊乃。しがない救世主よ」

「また博麗かよ……!」


 聖人はもううんざりだと溜息をつきながら、拳を構える。


「お前の目的はなんなのかは知らねぇ。だが、お前のせいでみんな大変な思いをしてるんだ。今、ここでお前を討つ」

「ふぅん……やってみなさい」


 敵の挑発と同時に向かってくる聖人の拳を、霊乃は容易く逸らし、流す。

 その技量は互いに数え切れない年月を重ねている。ゆえにこそ、互いに才能でどうにかなるレベルを超えている。が、それでもなお霊乃の技量は聖人の攻撃を容易くあしらうほどのものだった。


「へぇ……少しはやるようだな」


 そんな中で霊乃によって叩き込まれた三連撃に聖人は怯まず、果敢に向かっていく。

 抜こうとした刀は抜けず、己の拳は砕かれ、しかして聖人は怒りのままにその武勇を振るう。


「ふぅん、根性だけは認めてあげる」

「が……あぁぁぁぁぁ!!」


 霊乃は聖人を認めながら、顎に上段の蹴りを放つ。それは連鎖的に聖人の、既にボロボロの骨に致命傷を与え、聖人の全身を一挙にダメージが押し寄せる。


「なん……だ……これ」

「あなた、あまりにも頑丈なので少しお遊びをしてしまいました。武人としてなんたる不心得か、この悪辣をお許しください」

「てメェ……!」


 怯むほどでもないダメージの蓄積を一気に爆発させたのだろうということは推測できる。だが、それを成せる者などごく僅かだ。


 こんな相手に勝てるのか? 否、不安になっている時間などない。勝つのだ。


「セイっ!」


 聖人が気を振るい立てようとしている間にも霊乃の蹴りは聖人を弾き飛ばし、闘技場の壁に打ち付けられる。


「グッ……」

「大丈夫か?」


 倒れそうになった肩を、誰かに支えられる。見慣れた背格好──磔だ。それに桜に吸もいる。それだけじゃない。幻真も、零も、終作も、

 姿の見えない大和と白界は気がかりだが──彼らなら、きっと大丈夫だ。


 磔の支えを受けて立ち上がる。体にダメージは未だに残っているが、仲間の姿を見て疲れなど吹き飛んだ。


「ふぅん……なるほど。……ラストスペル『救世の果て』」


 霊乃は何か納得したように宣言すると、世界が暗転した。霊乃の背にはどこまでも巨大な十字架が背負われ、その目は紅に輝く。

 だが、その力量自体は変わる様子はない。……真の姿を見せた、ということだろう。


 零が、能力によって真っ先に干渉する。

 終作も同様に能力を使い、その実態を確かめる。次の瞬間、2人の肉体は無惨な姿に変わった。


「なっ……!?」


 そして、霊乃は始動する。

 ──その3分後。


「……フン。臨時とはいえ、救世主はやはりこの程度ですか」

「クソ……っ。俺たちは……勝てないのか……?」

「んなわけねーだろ。諦めんな」


 聖人は傷だらけの肉体で弱音を漏らす。

 周りには、霊乃を除いて誰一人として立っていない。自分を助けた全員が、ほとんど時間もかけずに死んだのだ。

 消え入りそうな意思の中でそんなことを考え、嘆いていた。

 それを聞いたその青年は、しかしその青年とは見るものが見なければ分からぬ姿で霊乃に立ち向かう。


「お前……その姿は!? おい、大和!」

「……大丈夫だ。後は、任せろ」


 たった一つの世界の救世主、日向大和はそう言って、聖人に向けて笑顔を向けた。


◇◆◇◆◇


──白界の体内にて。


「おや。霊斗、よかったのかい?」


 何がだよ。外の話なら、大丈夫だ。大和と白界が揃ってるんだ、安泰だよ。


「いやいや、そうじゃなくて。君の力なら、制限時間も解除できただろう?」


 それはそうだな。だが、別にいい。請われれば力を貸すが……今はまだ、あいつらの時代だ。俺みたいな老害はとっとと幕引きした方がいいってんだ。


「そうだね。その考えには賛同するよ。霊乃はどうなんだい? 彼女の目的は、君の復活だろう」


 知るか。あいつの願いなら、さっき叶えた。あとは妄執の怪物となった、自己犠牲の末に破滅した霊乃を救う救世主が現れるのを待つだけだ。


「ふぅん……。まあでも実際、勝負に決着はついたし良しとしよう。他のみんなには、合わなくてよかったのかい? 優一とか零とか、会いたい人はいっぱいいるだろう」


 だから幕引きだっつってんだろ。


「……そっか。君がいいなら、いいんだけどね」


 おう、それで納得しとけ。

 さて。しばらく寝るとするか。


「うん、おやすみ。また君の力が必要になったら、その時は外に出すよ」

九十九先生のところの作品との関連は、今回はないことにします。

霊斗についての解説は今回の割烹に掲載しておきますねー。

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