第3話『逃亡』
今回は颯人先生より白、紅夜阿灸先生よりハリスマリー・吸、あとは未だ名前を明かしてませんがとある兄妹です。まあ、分かる人には分かりそうですが。
他のキャラクターはもう少しお待ちください。また、まだまだコラボの参加もお待ちしております!参加表明をされた先生は、キャラクター情報をなるべくお早めにお願いします。
それでは、第3話『逃亡』どうぞ!
「やぁ。よく来たね」
アイリスに連れられるまま、俺たちはパンゲアの中心にある神殿へと連れられた。
そこにいたのは、ドレスを纏う1人の少女。
玉座に座り、頬杖をつきながらニマニマとこちらを見ていた。
「ボクはアース。ファミル=アース。あぁ、そんなに警戒しないでくれよ。ボクは君たちと話がしたいんだ」
「話?」
この感じなら、交渉の余地はなんとかありそうだ。
「そう。──君たち、僕らのために死んでくれよ」
訂正。交渉の余地はなさそうだ。
「おいおい、そんなに警戒するなって。あと、そこの始祖神。何をしてるんだい?」
「残念ながら俺はお前とは戦う運命にあるのさ。悪いが、交渉とか言ってられねぇ」
終作はそういうと、次元の門を開いてそこから大量の武器を見せつけた。
「あれは……王の財宝!」
「以前ギルガメッシュと戦ったことがあってなぁ。その時にちょっくら盗ませてもらったんだ」
「どうせなら剣作ればいいのに」
「こっちの方が俺っぽいだろ?」
終作はそういうと、大量の……いくつあるか分からないほどの武具を一斉に射出した。
これほどの攻撃なら、大抵の敵はひとたまりもない。
「ふーん……その程度?」
「なっ……」
大抵の敵なら、だが。
周囲はクレーターのような爆発跡があり、未だ硝煙が立ち込めるなか、ファミル=アースはまったくの無傷だった。
「……早くしないと、全員殺しちゃうよ? 解体するよ?」
「……くそっ! 終作! 一旦退避しろ! ここは俺が足止めする!」
「だにぃ!?」
「うるせぇ早くしろ! 『幻想郷の権化』」
俺はファミルの目の前に立ち、幻想郷で得た霊衣の全てを身につける。
「チッ……そんな装備で大丈夫か?」
「大丈夫だ、問題ない。ここに来てから、なんだか体の調子がいいからな」
「……そうか。頼んだ!」
終作はそう言うと、白界、幻真を連れて次元の穴をくぐっていった。
「……あーあ。逃げられちゃった。あの始祖神だけは邪魔だから逃す気なかったのに。ま、いいや。『アトランティス』」
ファミルは逃げた終作を見届けると、白い鎧を身に纏ってこっちを真っ直ぐ見つめた。
「現在の大地の化身である貴方と、過去の大地の化身である私」
「どっちが強いか」
「「試してみるか」」
その言葉とともに、俺たちは同時に駆け出す。
鏡合わせのように全く同じ動きで、同じように放った右拳と左拳がぶつかり合った。
「チッ……」
「ふふん」
「舐めてんなテメェ!」
空気が振動する中、俺の右足による後ろ回し蹴りをファミルは屈んで回避する。
ファミルが上に向かって抉るように拳を振るう直前、俺は右足を無理やり地面につけて軸足を変え、右足で軽く前転するようにステップを踏むことで回避する。
「へぇ……少しはやるみたいじゃんか」
「まぁな」
俺はファミルに向き直り、ファミルの上段への蹴りを横に避ける。
体勢を整えなおしたファミルが、俺の上に突如大量の岩を出現させ、こちらに射出してきた。
「な!」
急に発生したそれに、俺が驚いたその瞬間。首を搔き切るように、閃光が……否、閃光の如き少女が、アイリスが飛び込んで来た。
そのナイフは、寸分違わず俺の首を切り裂く──。
◇◆◇◆◇
「……ふぅん。それであんた、逃げ帰って来たんだ?」
霊歌の棘のある言葉に、終作は口を尖らせながら答える。
「悪かったな逃げて来て」
「いや、聞いている感じだと悪くはないんじゃないか? 相手の情報もわからないで帰って来たのはどうかと思うが」
そう言って、藍はフォローしつつも責め立てる。終作は大和が愛されてるな、と思いつつもそれに受け答えする。
「何にしても、あのままじゃ勝てなかった」
「そんなに言うが……お前、相手の能力を知ってるのか?」
藍の言葉に、終作は考え込み、やがて口を開いた。
「……知ってるぜ、俺ァ始祖神だ。全てを視る者だ。この世界だけじゃない、他の世界、他の宇宙で奴がどんな存在なのか、何をしでかすのかもな」
「へぇ。それを聞いても?」
「……いいが、後悔するなよ」
そう言って、終作は口を開く。自らも躊躇うほどの、彼女……ファミル=アースの遺した惨劇の話を。
◇◆◇◆◇
──博麗神社。
「……ここがあいつの新たな世界か」
「そうみたいですね、兄さん」
そう言って、青年は頷く。それに対して、少女は肯定する。間違いない、ここは『彼』が次の場所として行き着いた場所だ。
「最近まであいつがいた痕跡はあるが……」
「今はいないみたいですね。とはいえ、天空に浮かぶあの大陸とそれが出てきた場所、それに終作さんの痕跡以外、最近次元が開かれた形跡はないですね」
「うーん……信じ難いが、つまりは姫ちゃん。あいつが死んだってことになりそうだな」
「……そう、ですね」
そう言って、少女は悲しげに目を伏せた。
青年はつまらなさそうに欠伸をしながら、文句を呟く。
「ふぁ〜あ。あまりに暇だったもんだから、こっちから出向いてやったってのに……」
「一応、探してみますか? 微弱とはいえ、いた形跡はありますし。私からしたら、あの人が死んだことの方が信じられません」
「そうだな。探してみるか」
そう言って青年と少女は向かってくるガーゴイル達を音も力もなく消しとばしながら、博麗神社を探索した。
◇◆◇◆◇
──魔法の森上空。
「うーん……どうすればいいのかな」
気づいたら私はここにいた。
何も知らされないまま、とりあえず向かってくる敵を撃退し続けてもう30分にもなる。
そろそろ魔力の限界も近いしなぁ。
そもそも、どうして私はここにいるのだろうか。私は未だ、復讐の途中で……いや、そんなのはどうでもいい。
とにかく、どうにかして帰ろう。
その前に、ここら辺一帯にいる石みたいな悪魔が邪魔なんだけれど。
「大丈夫か? 手伝うぜ」
声とともに、突風が吹いた。
うわ、すごい風……。
私は声の問いかけに対して不安に思いつつもうん、と頷くと目の前に人が現れた。その人は仮面で素顔を隠している。にも関わらず、どこか優しげな顔で微笑んでいた。
「ちょっと驚くかもしれないけど、まあ、耐えててくれよ」
そう言って、その人は腰から木刀を抜くと、素振りで刀を振り下ろす。次の瞬間、全てのガーゴイルが一斉に真っ二つに分かれた。
「ギギィ……」
「すごい……どうやったんですか?」
「ん、まあ、色々とな。君は?」
「私はハリスマリー・吸です」
「よし、ハリスマリーだな。俺は白。本名じゃあないんだが、訳あって白と名乗ってる。ツレがいるんだが、どこかで逸れちゃってな。一緒に探してくれるか?」
「もちろんです!」
こうして、私と白さんの奇妙な共闘関係は始まった。